KPI(重要業績評価指標)とは|設定方法や注意点、KGIとの違い
企業の目標達成のために重要とされているのがKPI設定です。しかし、KPIについていまいち把握しきれていない方や、どうやって設定すれば良いのか分からないという方も多いでしょう。
そこで、この記事ではKPIについて詳しく解説するのはもちろん、設定方法や具体例もまとめて紹介していきます。KPIの設定を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
KPI(重要業績評価指標)とは
KPIは英語のKey Performance Indicator(キーパフォーマンスインジゲーター)の略で、日本語に訳すと「重要業績評価指標」という意味です。つまり、「目標を達成するためにプロセスが適切に実行されているかを定量的に管理・評価する指標」で、簡単にいうと組織がゴール辿りつくための中間目標ともいえます。
ここでは、KPIを分かりやすく登山に置き換えて考えてみましょう。
登山においてのゴールが「ご来光に間に合うように山頂に辿りつく」ことだとすれば、KPIは「〇時までに〇合目についているか」といった段階的な目標になります。
「山頂でご来光を拝むためには何時までには8合目に到着しないといけない」、「家を〇時に出発する」、「そのためには〇時に起きる」など、最終目標から逆算して計画を立てていくのがKPIです。
しかし、実際にKPI管理を行ってみると、「脚力に自信がないのでまずは日常的なトレーニングが必要」といった発見が出てきて、「1日1時間トレーニングをする」という新しいKPIの追加が必要になるケースもあります。
また、設定した中間目標の達成状況を確認しながら、「今、6合目だけど予定より時間が遅れているからこのペースだと間に合わない。間に合わせるためには休憩時間を少し短くする」というように、達成のために次なるアクションを考えて、実行することをKPIマネジメントといいます。
KPIとKGIの違い
KPIとよく間違われるのがKGIです。KGIはKey Goal Indicatorの頭文字の略で、日本語では「重要目標達成指数」と訳されます。一言でいうと、「目標の達成度合いを定量的に表す指標」です。
先ほどの登山の例でいうと、「ご来光に間に合うように山頂に辿りつく」という部分がKGIとなります。KGIは達成する目的を示すもので、KPIはKGI(目的)を達成するために必要なプロセスと覚えておきましょう。
KPIとOKRの違い
KGIやKPIと似たような新しい指標として、OKRというものもあります。OKRはObjectives and Key Results の略で、日本語で表すと「業績評価制度」です。意味合いとしては、目標とその成果を明確に設定することによって、より高い目標を達成するための指標となります。
KGIやKPIは、一般的にプロジェクト単位や部署単位で設定されるケースが多いですが、OKRは会社全体などの部署を超えた大きな枠組みで設定されるケースが多いのが特徴です。
そのため、OKRはKGIと比較すると、より大きな目標を設定できます。より高い目標を会社全体で設定すれば、企業としての目標が明確になり、社員がそれぞれ与えられた役割に対して責任感を持って取り組む効果も期待できるでしょう。
OKRは米国企業のインテルで考案され、GoogleやFacebookなどの有名なアメリカのIT企業が採用し始めたことで注目を集めました。アメリカ国内だけでなく日本国内でも採用されており、メルカリなどもOKRを社内の指標として採用しています。
大きな目標に対して社員1人1人がどのように取り組んだのかを把握しやすくなるため、より公平な人事評価ができる点もOKRが注目されているポイントです。
KPIとKFS(CSF)との違い
KGIとKPIは、成功するための要因をしっかりと分析した上で設定しなければ、効果が薄れる傾向にあります。より効果的なKGIとKPIを設定するためには、KFS、またはCSFが大切です。
KFSはKey Factor for Success、CSFはCritical Success Factorの略であり、どちらも目的を達成するために重要な要因という意味があります。
KGIとKPIを成功させるための要因としてよく挙げられる分析ポイントは、自社と競合他社の強みと弱み、サービスや商品のニーズや市場動向です。これらをしっかりと分析することによって、より効果的なKGIが見つかり、そのKGIを達成するためにKPIを設定していくという好循環が生まれます。KFS(CSF)は、KGIやKPIを設定するための大切な要因であると覚えておきましょう。
KPIの設定はなぜ重要なのか?
KPIの設定は企業にとって非常に重要なプロセスです。
企業が目指す最終目標に到達するまでの過程で存在する各プロセスの進捗度を明確にすることがKPIの目的であり、遅れやトラブルが生じた際に速やかに把握して改善策を講じることができます。
KPIを設定すれば現在行なわれている施策が目標達成に向けて適切か定量的に把握することが可能であり、目標に対する進捗度が明確になります。
目標を達成するために必要なプロセスが見えてくるため、個々人がやるべきことや現在足りていないことが把握でき、結果的に最短ルートで活動することが可能です。
また、KPIはあくまで中間目標のような立ち位置であるため、「年間売り上げ〇億円」のような長期的な目標とは異なり、心理的なハードルを下げられます。
KPIは身近な目標で設定することで、細かな成功体験を積み重ね、着実に最終目標に近づいているという実感につながります。
KPIは定量的な数値を用いて設定されるケースが多いため、評価の基準が統一しやすいです。判断基準が統一されていれば誰が見ても一律の判断ができるため、今後必要になる動きに対する共通認識を持ちやすくなります。
現状を把握し、分析して改善していくプロセスが習慣化されていけばより効率的かつ効果的に目標を達成していけるでしょう。
ただし、分析に時間と手間をかけすぎないように注意が必要です。KPIはあくまで目標を達成するための指標であり、日々の業務を複雑にするものではありません。
自社のニーズに沿ったデータ分析基盤をあらかじめ整備しておくことで、よりスムーズに改善策が講じられるでしょう。
KPIを設定するメリット・効果
ここまで、KPIやKGIなどについて解説してきましたが、KPIをしっかりと設定することによって、どのようなメリットや効果を得られるのでしょうか。ここでは、KPIを設定するメリットや効果について解説します。
将来像を明確に共有できる
実際に組織内でKPIを設定するときは、言葉や概念だけでブレイクダウンしていくのではなく、KPIごとに「単位」を設定し「数値化」していくことになります。逆をいえば、「具体的に数値化できる指標」をKPIにするからこそ、チーム内で合意が形成しやすく、将来像を明確に共有できるのです。
KPI管理によって、最終目標と結びついた形で可視化されれば、ストーリーとして理解しやすくなるという効果も期待できます。
大きなプロジェクトになればなるほど関わるスタッフの数も多くなりますが、KPIを設定すれば、スタッフごとに違う目標を掲げてしまい組織としての最終目標を見失うといった心配がありません。
将来像を明確に共有すれば、スタッフそれぞれにタスクを割り振れて、やるべき業務に集中できます。目標に向かってタスクを1つ1つ達成できるため、スタッフのモチベーション維持にもつながるでしょう。
チーム内の合意形成がしやすい
KPIを設定すればチームで同じ目標を共有できるため、チーム内で合意を得なければいけないシーンでも意見が分裂するリスクが少なく、合意形成がしやすくなります。合意形成がしやすくなれば、よりスムーズにプロジェクトを進められるでしょう。
プロジェクトがスケジュール通りに進まない、いつも会議でチーム内の意見が分離してしまうなどと困っている場合には、しっかりとKGIとKPIを設定すれば解決できる可能性もあるでしょう。
進捗管理がしやすい
目標をしっかりと定めてKPIを設定することによって、やらなければならないタスクが明確化されます。そのため、それぞれのタスクをスタッフに割り振りやすくなり、タスクごとの進捗管理はもちろん、プロジェクトとしての進捗管理もやりやすいです。
タスクによって進捗通りにできていない業務にスタッフを補充するなどの調整もしやすくなります。進捗が見える化されれば、大幅なスケジュールの遅れや作業のやり直しなどを防げて、取引先からの信頼も得られるでしょう。
人事評価の基準を統一できる
同じ目標やKPIを共有して業務に取り組むことによって、社内で人事評価の基準を統一できるというメリットもあります。
KPIでスタッフごとの役割や達成度が分かりやすくなれば、人事評価の基準が統一しやすくなり、客観的で正当な人事評価が可能です。個人の印象などに左右されない、具体的な評価制度ができれば、社員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
指標をストーリーとして落とし込める
KPIは、目標を達成するために設定する具体的なプロセスです。目標に対しての指標にストーリーや流れをつけてチームや個人に落とし込めます。指標にストーリーがつくことによってタスクの優先度が分かりやすくなって進捗管理がしやすくなったり、製品を開発するようなプロジェクトの場合にはスケジュールが組みやすかったりとさまざまなメリットがあります。
社員のモチベーション向上につながる
KPIを設定し、達成すべき目標を共有することで社員のモチベーション向上につながります。
KPIが適切に設定されていれば目標達成までのプロセスが明確になり、個々人が何をすべきか理解しやすくなります。
事前に設定したKPIを組織全体で共有することで、目指している目標とそれを達成するためのロードマップを全社員に周知することが可能です。
適切に共有ができていれば、万が一問題が発生した場合でも円滑に解決へ導き、組織全体の結束力と士気を向上させられます。
PDCAサイクルが円滑になる
KPIを設定し、継続的に測定や分析を行うことでPDCAサイクルが円滑になります。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取ったものであり、マネジメントの品質を高める目的で提唱されたフレームワークです。
KPIの設定や円滑なPDCAサイクルがなければ経験や勘のみで仕事を進めてしまうリスクがあり、結果的に仕事がやりっぱなしになる可能性があります。
PDCAサイクルが円滑化されればKPIで設定した目標が達成しやすくなり、中期経営計画や企業の最終目標に到達できる可能性が高められます。
適切なKPI設定と円滑なPDCAサイクルがあれば、現状の問題点を洗い出し改善していくことが可能になり、目標達成に向けた最短ルートが見えてくるはずです。
KPIの設定方法
ここまではKPIのメリットや効果などについて解説してきましたが、ここからは具体的なKPIの設定方法について解説していきます。
まずはKGIを設定する
KPIを設定するためには、KGI(目標)の設定が必要不可欠です。イメージとしては、KGI(目標)の下にツリー型にいくつものKPIが連なっていると考えると分かりやすいでしょう。
KPI設定は、KGI(目標)を達成するためにはどのようなプロセスを辿れば良いのかをしっかりと分析した上で行う必要があるため、まずは基本となるKGIを設定するようにしてください。
KFSで成功要因を明確に
KGIを設定したら、KFSも考慮する必要があります。しっかりと自社のサービスや商品を分析し、競合他社と自社で差別化できるポイントを理解した上で、KGIとKPIを設定するようにしましょう。
KFSをしっかりと分析していないと、KGIを立てたとしても、それに対して有効なKPIを設定するのは難しいです。現状をしっかりと分析することが、ビジネスや事業を成長させていく何よりの近道になるので、KFSの分析を怠らないようにしましょう。
KPIを設定
KGIを設定してKFSをしっかりと分析すれば、有効なKPIが見えてくるでしょう。KGIやKSFを元にして設定したKPIからさらに細分化して、達成するためのフローを作成します。
そのために便利なのがKPIツリーです。KPIツリーは、最終目標からブレイクダウンしたKPIをツリー状に展開した図のことで、作成すれば目標達成へのストーリーが可視化されて分かりやすくなります。 目標の達成に必要なタスクが一目で理解できて、誰が見ても分かりやすいデータになるでしょう。
KPI設定についてさらに詳しい方法や手順、ポイントやコツを知りたい方は下記記事もご覧ください。
KPIの設定には「SMART」が重要
実際にKPIを作成してみたけどうまくできない、設定する際のコツを知っておきたいという方のために、ここではKPIを設定するために大切といわれている「SMART」について解説していきます。
Specific(明確性)
KPIを設定する際には、チーム内で共有するために明確な内容にする必要があります。そのためには、数値や日付などの誰が見てもイメージできる内容でKPIを設定するのが効果的です。
KPIを設定する目的の1つは同じ目標を共有することなので、誰もが理解・解釈できる内容に設定するのが必要不可欠となるでしょう。
KPIを設定する際には、チーム内で共有するために明確な内容にする必要があります。そのためには、数値や日付などの誰が見てもイメージできる内容でKPIを設定するのが効果的です。
KPIを設定する目的の1つは同じ目標を共有することなので、誰もが理解・解釈できる内容に設定するのが必要不可欠となるでしょう。
Measurable(測定可能)
KPIは測定可能であるというのも大切です。現状の数値はいくつなのか、タスクの進捗によってその数値はどのように変わるのか、目標とする数値はどれくらいなのか、それぞれがしっかりと数値として明確に測定できなければなりません。
数値化が難しい、特定地点の数値が見えにくい指標はKPIとして設定するのに不向きなので、できるだけ数値化が可能な部分でKPIを設定しましょう。
Achievable(達成可能)
KPIは達成できなければ意味がありません。到底達成できないような大きな目標は目標ではなく、夢で終わってしまうことがほとんどです。大きすぎるKPIを設定してしまったためにチームの士気が下がってしまう、もしくは、KPIを誰も意識せず設定した意味がなくなってしまうという場合もあるので、設定する際は注意してください。
また、ポジションやスキルによって達成できるかどうかの度合いが変わるものは、チーム全体のKPIとしては不向きです。誰が見ても達成可能で、同じ認識でプロジェクトや業務を進められるKPIを設定するようにしましょう。
Related(関連性)
KPIを設定するためには、KGIの設定が必要です。そして、1つのKGIに対して1つのKPIというケースは稀で、通常は1つのKGIに対して複数のKPIを設定します。
ここで設定した複数のKPIは、全て同じKGIに辿りつくようにするのが重要です。関係性のないKPIを複数設定してもKGIに辿りつけないため、必死にKPIをこなしたのに最終目標であるKGIは達成できなかったという事態になりかねません。複数のKPIは、しっかりとKGIを達成するために必要なのか、KPIそれぞれに関連性があるかを設定する際に確認しましょう。
Time-bounded(期限設定)
KPIを設定するときには期限の設定も忘れないようにしましょう。しっかりとした期限を設定すれば、タスクに優先度をつけて効率的に業務が進められます。優先度をつけるとタスクの可視化につながり、結果としてプロジェクトとしての進捗管理も行いやすくなるでしょう。
また、期限を設定しないと他の業務を優先して後回しにされてしまうケースも少なくないため、しっかりとした期限設定が大切です。
KPIを設定するときの注意点
KPIを設定するためのコツとして、「SMART」について解説しましたが、次はKPIを設定する上で注意しなければならないポイントを紹介していきます。
市場や環境の変化に合わせて変更する
しっかりと検討した上でKPIを設定したとしても、市場のニーズの変化や競合企業の戦略の変更などによって、既存のKPIがビジネスの方向性に合わなくなってしまう可能性があります。
その際は、無理に最初に設定したKPIを遂行するのではなく、柔軟に変更しながら業務を進めるようにしましょう。
KPIはシンプルな設計にする
先ほども解説したように、KPIは誰が見ても分かるような明確な指標である必要があります。1つのKPIに多くの要素を取り入れすぎると、評価基準を設定するのが難しくなってしまいますし、社員が業務の進め方に迷ってしまうリスクも考えられるのです。また、社員同士で認識の違いが生まれる可能性があるでしょう。
1つ1つのKPIはシンプルで単純化した指標を設定するようにしてください。
KPIの優先順位を決める
KPIを設定する際は、優先順位を決めておくことも大切です。優先順位を決めずに複数ある目標が同時進行で行われた場合、全体的に中途半端な状態で終わってしまうリスクがあります。
設定したKPIの中から緊急性や重要度に応じて優先順位を決めて社内に周知しておくと、個人の判断で優先順位が低い目標から実行されるリスクを軽減することが可能です。
目標達成に向けて活動できる期間は限られているため、重要なタスクから順に片づけてリソースを効果的に配分していくことで成功率を高められます。
KPIの達成度を可視化する
設定したKPIの達成度を可視化し、定期的に確認することで現在取り組んでいる施策の成果や効果が実感できるようになります。
しかし、KPIは単に可視化すれば良いというものではなく、可視化したKPIは社内全体で共有することが大切です。
社内全体で共有することで、目標達成までの距離感やスタートからの成果が簡単に把握できるようになり、社員のモチベーションの維持・向上につながります。
KPIの可視化は組織全体が進むべき方向を示すための重要なステップであり、適切に行うことで生産性や業務効率の向上が期待できるでしょう。
目標の期限を設ける
KPIを設定する際は単に目標を決めるのではなく、目標達成までの期限を設けることが重要です。
期限が決まっていなければ設定したKPIが先延ばしになり、結果的に達成できなかったという事態に陥る恐れがあります。
達成できずに次回もまた同じKPIを設定するようなことが繰り返されれば、社員は成長しないうえに、企業の最終目標に到達することができなくなってしまいます。
明確な期限があり、設定した目標を達成するためにはどのようなアクションが必要か逆算して行動できるようになることがKPIの理想的な形です。
KPIの具体例
採用
以前までは、新卒採用でKGIやKPIはあまり重要視されていませんでした。しかし、現在は新卒採用や第二新卒の採用でKPI設定を行うケースも増えてきています。
企業としてどのような人材がほしいのか、何人採用したいのかなどをKGIで設定して、そのために必要なプロセスとして説明会の頻度や対象などをKPIとして設定するのです。採用活動を行うごとにKPIの設定や分析、改善を行っていけば、採用活動もしやすくなるでしょう。
マーケティング
マーケティングでは、主にサイト経由の売上やCV数などがKGIとして設定されます。そのためには、現状をしっかりと分析し、どのようにすればKGIを達成できるのかを考えた上でKPIを設定する必要があるでしょう。
Web広告を掲載する、SNSなどで商品やサービスをPRするなどが具体的なKPIとして挙げられます。1人1台スマートフォンを持つ現代では、しっかりとしたKGI・KPIの設定が企業を成長させていくことにつながっていくため、今以上に重要視されていくでしょう。
営業
営業職の場合には商品の成約数、売上高などがKGIとして設定されます。KGIを達成するためには、自社で販売している製品の特徴や行っているサービスの強み、競合他社との違いなど、自社の情報をしっかりと分析して、現状を把握することが必要不可欠です。
分析して自社の状況を把握してからKPIを設定すれば、より有効的なKPIの設定ができるでしょう。また、営業職の場合には部署やチームだけでなく、個人単位でもKGI・KPIが設定しやすい職種でもあります。
インサイドセールス
インサイドセールスも営業と同様に、商品の成約数、売上高などがKGIとして設定されやすいです。商談件数や受注件数をKPIとして設定することが多いですが、中には架電数などを設定する場合もあります。しかし、架電数が増える=商談につながるとは限りません。1人1人に丁寧に対応したほうが商談につながりやすいというケースもあるので、企業のビジネスの進め方などに合わせて設定しましょう。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは、「顧客満足度を高めて継続率を上げる」「アップセル及びクロスセルを増やす」などがKGIとして設定されることが多いです。それらにつなげるためのKPIとしては、チャーンレート(解約率)、平均顧客継続契約期間、LTVなどが挙げられます。SaaSビジネスが台頭してきている今、カスタマーサクセスは重要なポジションになるため、しっかりと検討しながらKPIを設定しましょう。
メールマーケティング
メールマーケティングは現代を代表する営業手法の一つであり、従来のようなアポイントメントを取って対面営業するのではなく、メールを利用して顧客にアプローチをかけます。
近年ではメールマーケティング用のツールも進化しており、これまでのメルマガやステップメールに加え、ターゲティングを行なってメールを配信をすることで休眠顧客を発掘します。
配信したメールから売り上げ(購入・契約)につなげることがメールマーケティングの目的です。
設定するKPIとしてはメールの開封率やクリック率、コンバージョン率などが有効であり、分析と改善を習慣化することでPDCAサイクルが円滑に回せるでしょう。
コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングはダイレクトに商品や商材を売るのではなく、役に立つ知識や情報を無償でユーザーに提供することで間接的な宣伝・訴求を行う営業手法です。
提供した知識や情報をユーザーが吸収することで、潜在的・将来的な顧客になってもらうことを目的としています。
ダイレクトな売り上げにはつながりにくいですが、情報提供をする過程でユーザーに企業方針や扱う商品やサービスの傾向を理解してもらえるため、将来的なロイヤルカスタマーを育成できる可能性があります。
コンテンツマーケティングは一般的な営業手法ではないため、売り上げ金額や商談件数ではなく、資料ダウンロード数やメールアドレス登録数、WEBセミナーの参加登録数などをKPIとして設定すると良いでしょう。
KPIに管理(マネジメント)が必要な理由
KPIはよく設定だけされて終わってしまうケースが多いですが、KPIは設定より管理(マネジメント)の方が重要です。
適切に管理が行われなかった場合は目標達成までの段階的なプロセスを見失ってしまい、社員は具体的・効果的な行動が取れなくなってしまいます。
KPIは管理職によって日常的に管理が行われ、PDCAサイクルを回しながら目標に向かっていくことが大切です。
ここでは、KPIに管理(マネジメント)が必要な理由を4つ紹介します。
ビジネスシーンが複雑化しているため
KPIの管理(マネジメント)が必要な理由の一つとして、現代のビジネスシーンが複雑化していることが挙げられます。
ビジネスにおける知識やノウハウ、テクノロジーなどは年々進化しており、常に目まぐるしく変化しています。ユーザーのニーズや価値観も多様化していることから、時代の流れに合わせて企業も軌道修正が必要です。
こういった状況下ではKPIの設定が非常に重要であり、現状を正しく把握して改善策を講じていくためには、適切な管理をしなければなりません。
人材・働き方が多様化しているため
現代では高齢者の増加や女性の社会進出、外国人労働者の受け入れなどに伴い、企業で雇用する人材が多様化しています。
近年では転職する人も増えており、企業が望むような優秀な人材の確保ができないケースも少なくありません。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、テレワークが普及したことで働き方も多様化しており、社内の足並みが揃いにくい場合もあります。
人材と働き方が多様化している現代では業務の無駄を省き、人材を有効活用する施策が必要です。KPI管理を適切に行うことで、多様化する人材を活かせる仕組み作りができます。
生産性・業務効率を向上させるため
少子高齢化の加速による人口減少や労働人口減少により、人材不足に陥る企業も少なくありません。人材不足が長く続いた場合は、既存社員の過労や離職を招く恐れがあります。
企業では限られたリソースを有効活用し、生産性を最大化する施策が求められます。リソースを適切に分配して生産性や業務効率を高めるためには、現状を把握、可視化する仕組みが必要です。
KPIを設定し、適切に管理を行うことで業務の無駄を減らし、必要な場所や業務に労働力を活かすことができます。成果は数値化されて現状把握ができるため、今後するべきことの道しるべにもなります。
業務の進捗状況を正確に把握するため
KPIの設定と実行だけでは、企業の最終目標に到達することはできません。
近年ではビジネスシーンの複雑化に伴って業務も複雑性を増しています。それぞれの分野で進捗状況を正確に把握するためには、KPIの管理が必要不可欠です。
KPIの設定にプラスして管理を行うことで、現在行なっている業務の進捗状況が正確に把握できるようになり、目標達成に向けた道筋が明確になります。
リアルタイムでKPIの管理と分析を行なっていれば、万が一遅れやトラブルが発生しても迅速に軌道修正ができます。
KPIを管理(マネジメント)する方法
ここでは、KPIを管理(マネジメント)する方法を紹介します。
運用・管理に関するルールの決定
KPIを適切に管理していくためには、まず運用・管理に関するルールを決めなければなりません。
KPIの運用・管理におけるルールには以下のようなものがあります。
- KPIの進捗状況や達成度の表記方法
- KPIの進捗を可視化するための仕組みやツールの導入・共有
- KPIの進捗を可視化するための仕組みやツールの導入・共有
- 問題やトラブルが発生した際の対処法 など
KPIは一度設定して終わりではなく、常に分析を行い改善していく必要があります。
より効率的・効果的に管理していくためには正確なデータ収集が大切です。もしデータ収集ができない指標がある場合は、オペレーションやルールの変更を行い、運用体制を整えましょう。
達成度や進捗を見える化する
KPIの管理を適切に行うためには、達成度や進捗を見える化する必要があります。
達成度や進捗の見える化は現状把握に役立つだけではなく、社員のモチベーション向上につなげることも可能です。
達成度や進捗を見える化する際は、報告手順や表記方法をあらかじめ決めておくと管理と運用がスムーズになります。
結果を基に管理の見直しをする
KPIを管理する際は、進捗状況や分析結果などのデータを基に指標や管理方法の見直しを行うことが重要です。
一度設定した指標や管理方法を途中で変更することに抵抗を感じるかもしれませんが、KPIにおいては問題ありません。
KPIの指標はそもそも常に変化するものであり、定期的に見直しを行うことでより自社のニーズや方向性に沿った内容にブラッシュアップできます。
KPI管理(マネジメント)の失敗例
ここでは、KPI管理における失敗例を紹介します。
MECE(ミーシー)になってない
KPI管理における失敗例として、MECE(ミーシー)になっていないことが挙げられます。
MECEには「漏れなく」「ダブりなく」という意味があり、論理的な問題解決に必要な手法としてビジネスシーンで重要視されています。
KPIを設定する際、みんなで案を出し合って指標を決める場合があります。しかし、こういったプロセスで進めてしまうと目的が不明瞭になり失敗する可能性が高まるため、注意が必要です。
必要なKPIを洗い出すためには、KPIツリーを活用すると良いでしょう。
KPIツリーの階層が浅い
前項でKPIツリーの作成はMECEにおいて重要であると述べましたが、作成したKPIツリーの階層が浅い場合は失敗につながる可能性があります。
階層が浅いKPIツリーは目標を達成するまでの要素が分解しきれていない状態であり、日頃から管理をして見ていても、何をすれば良いかわからないという状況に陥ることも少なくありません。
KPIツリーを作成する際は「これ以上分解できない」という状態まで可能な限り要素を分解することが大切です。そうすることで、目標を達成するために必要な各ステップが明確になり、より効果的なアクションを起こせるようになります。
KPIツリーの作り方が最適ではない
ボトルネックとなるKPIを見出すためのツリー設計になっていない場合、失敗する可能性が高まります。
KPIで設定した指標が同じでも、ツリーの作り方によっては分析できるデータが異なります。
KPIツリーを作成する際は、以下の手順を参考にしてみてください。
- 売上を商品・サービス別に分けるかどうかを決める
- 売上を顧客カテゴリー別に分けるかどうか決める
- 売上を新規売上とアップセル・クロスセルに分けるかどうか決める
- 顧客数を新規顧客とリピート顧客に分けるかどうか決める
- チャネル別に分けるかどうか決める
手段ごとの良し悪しを判断することで、どこで手を打つべきか、いつ行動するべきかがわかりやすくできます。
たくさんのKPIのなかで優劣をつけられていない
たくさんのKPIを追いかけすぎると、データ集約に時間と手間がかかり失敗する可能性があります。
KPIはその数が多ければ多いほど収集するデータが増えるため、どうしても時間と手間がかかるものです。
しかし、KPIツリーをあらかじめ作成しておけば、KPIの数が多い場合でも問題のある指標が特定しやすくなります。
KPIの運用を負担にしないためにも、クラウドシステムを活用してKPIデータを自動(半自動)で取得することも一つの選択肢です。
部門ごと・事業ごとにバラバラで管理している
部門や事業ごとにKPIを管理している場合、頑張っても目標を達成できない状況に陥る可能性があります。
ビジネスシーンにおいては、営業やマーケティング、経営管理など、それぞれの部分最適な管理になってしまっているケースは少なくありません。
たとえ各部門ごとに目標を達成できたとしても、他部門が未達成となれば事業KPIが伴わず、結果的に最終目標に到達できなくなってしまいます。
こういった事業課題を解決するためには、各部門のKPIを集めてKPIツリーにまとめると全体管理がしやすくなります。
予算や財務と紐づいていない
KPIと事業計画が別々で管理されている場合、予算の未達成原因が把握できずに失敗する可能性があります。
KPIを管理を行なっている企業の多くは、スプレッドシートやダッシュボードで管理を行なっていますが、予算は別の管理ソフトや会計ソフトで管理されている場合が多いです。
このように、KPIと事業計画が一元管理されていない場合は、どのKPIが原因で事業計画通りに進捗していないのか把握することはできません。
KPIの進捗を正確に把握するためには、各KPIの目標値と予算を結びつける必要があります。
結果の分析ばかりで予測に活用できていない
目の前の結果の分析に気を取られすぎて、未来に向けたアクションの意思決定ができずに失敗する可能性があります。
過去のKPIを分析すること自体が目的になってしまい、これから何をすべきか考えられていないケースも少なくありません。
KPIを使って過去の分析をして報告するだけではなく、KPIを活用して未来を予測して経営の意思決定に役立てることが大切です。
未来に向けたアクションを予測する際はシミュレーションをKPIツリーに組み込むことで、より効果的な意思決定ができるようになります。
週次で追えていない
KPIを組織的に管理する場合は、組織全体で数値化したデータを活用することが大切です。
しかし、企業によっては月単位や年単位など、中長期的に数字を管理しているケースがあり、これではKPIのメリットである迅速な改善・軌道修正がしづらくなります。
せっかくKPI管理をするのであれば、週単位で管理・分析していくことでKPIの恩恵が受けられるようになります。週次で追うことで月次の目標達成に向けてより具体性のある動きができるため、最終目標に到達しやすくなるでしょう。
盲目的になってしまっている
KPIを盲目的に追いかけてしまうと、ビジネスの本質からズレていく可能性があります。
ネットや人伝で得た情報を鵜呑みにし、達成していない指標のギャップを埋めにいくのは失敗する原因の一つです。
ギャップを埋めるための対策ばかりに目がいってしまい、ユーザーに対するサービスクオリティが落ちてしまっては本末転倒になってしまいます。
KPI管理においては、見聞きした情報を鵜呑みにせず、自ら検証していくことが何よりも重要です。
詰めるけど責めない
KPI管理は敬遠する人が多く、他者を責めたり見て見ないフリをしたりするケースがあります。
未達成のKPIがある場合は、「原因を明らかにすることが必要」「担当者を責めるわけではない」などのルールを明確にして社内全体で共通認識を持っておくことが大切です。こうすることで、健全な状態でチームとしてPDCAサイクルが回しやすくなります。
社内全体で共通認識を持つためには、KPIツリーの作成がおすすめです。
KPI管理(マネジメント)を成功させるポイント
目的を明確にする
KPI管理を行う際は、まずはじめに目的を明確にしておくことが重要です。
明確な目的なく管理をした場合はKPIの意味が薄れてしまい、期待するような効果が得られない可能性があります。
KPIを管理する目的は、KGIという目標に到達するまでの途中経過を把握・測定・分析することであり、一歩ずつ着実にゴールを目指すことです。
KPI管理をする際は、企業の方向性やKGIを理解・決定し、同時にKPIを管理する目的を明らかにすることが大切です。
社員・管理者のモチベーション・意識を高める
KPI管理は管理職や社員、チームなどによって行われるものであり、成功させるためには管理業務を担う社員・管理者のモチベーションや意識を高める必要があります。
たとえ経営者が立派なKGIを掲げたとしても、その目標に向かって取り組む社員本人にその意識がなければ達成することはできません。
KPI管理する際は、組織全体で「KGIを達成する重要性」や「KGIの達成にはKPI管理が欠かせない」などの意識を共有しておくことが重要です。
運用・管理方法を最適化する
KPIの運用・管理は業績に関わるあらゆる数値やデータを把握・分析する必要があり、膨大な時間と手間がかかります。
紙媒体の管理シートや自作の管理データなどでは円滑に管理できない可能性があり、運用が困難になることも想定されます。
運用・管理方法を最適化するためには、KPI管理に特化したツールの導入が有効です。
KPI管理(マネジメント)で失敗しないためのコツやポイント、失敗例を知りたい方は下記もおすすめ!
KPIを設定するならScale Cloudがおすすめ!
画像引用元:Scale Cloud
KPIを設定・管理するのであれば、KPIマネジメントツール『Scale Cloud』がおすすめです。
『Scale Cloud』は業績に関わる数値を可視化することが可能であり、組織や部門内での情報共有にも役立ちます。
ここでは、『Scale Cloud』の特徴を2つ紹介します。
企業全体でKPIの共有ができる
企業全体でKPIを共有することは時として困難な場合がありますが、『Scale Cloud』であれば簡単に企業全体でKPIの共有ができます。
部門ごとに管理されている数値やデータを自動的に集約・統合でき、管理業務の効率化を図ることが可能です。
KPIの進捗管理もできるため、遅れやトラブルなどが発生した際も迅速に対応できます。
部門・チームごとに課題の分析・改善ができる
『Scale Cloud』は、部門やチームごとの課題の分析と改善をサポートします。
進捗状況が良くないKPIがある場合は、通知機能でいち早く予実のズレを把握することが可能です。現状の課題が把握できれば分析すべき部分も特定しやすく、必要な改善策を講じられます。
さらに、『Scale Cloud』にはシナリオフォーキャストというシミュレーション機能が備わっています。
現在の計画で最終目標まで到達できるか否かが予測できるため、KPIの設定や見直しが容易です。
まとめ
今後は、働き方改革の実現、コロナ禍でのリモートワークを行う企業の増加、ダイバーシティが今以上に浸透していくことなどから、明確なKPIの設定がプロジェクトをうまく進めていく上で重要になります。
KPIを設定するのは大変ですが、今回紹介したKPIの設定に重要な「SMART」や設定する際の注意点をしっかりと踏まえていけば、有効なKPI設定が可能です。
しかし、たくさんのKPIを設定すれば、それだけ管理に手間がかかります。KPIの継続ができなくなってしまう、レポートを完成した時点でデータが古い、といった事態が起こると、現場への負荷が大きいのに実際には役に立たないということにもなりかねません。
そんなときには、KPI管理ツールの導入をご検討ください。 KPI設定では、KPIを管理することではなく、KPIに基づいたアクションにこそ時間をかけるべきです。具体的なKPIツリーを作成したり、KPIマネジメントを運用するときには、Scale Cloudが役に立ちます。
詳細を知りたい方は、ぜひ資料をダウンロードしてみてください。
監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて800社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKYホールディングス社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。