ウォンテッドリーの主なKPIは?開示されているKPIとともに解説

2022.08.09
ウォンテッドリーの主なKPIは?開示されているKPIとともに解説

ウォンテッドリーは、「シゴトでココロオドルひとをふやす」をビジョンに、働く人が共感を通じてつながりを深めるためのビジネスSNSを提供している会社です。

この記事では、そんなウォンテッドリーがどのようなKPIを設定して業務を遂行しているのかを解説します。ウォンテッドリーの会社概要や事業内容、主なKPIについて紹介していくので、ぜひ参考にしてください。

ウォンテッドリーの会社概要

会社名ウォンテッドリー株式会社
本社〒108-0071 東京都港区白金台5-12-7 MG白金台ビル4F
代表取締役仲 暁子
設立2010年9月
資本金2億5,000万円

ウォンテッドリーの事業内容

ウォンテッドリーは、「シゴトでココロオドルひとをふやす」をモットーに、働く人が共感を通じてつながりを深めるためのビジネスSNSを提供している企業です。また、ウォンテッドリーでは、主にWantedlyというマッチングサービスを展開しています。

Wantedlyは「共感」でマッチングする採用サービスであり、環境ややりがいで求職者と求人者をマッチングする仕組みです。そのため、単に企業と求職者をつなぐだけの人材サービスではない、新しいカタチのビジネスSNSとして注目を集めています。 

なお、ウォンテッドリーでは、「Wantedly PEOPRE」というサービスも展開しています。Wantedly PEOPREは、受け取った名刺を全て1回の撮影で読み込めるサービスです。読み込んだデータはすぐに連絡帳に追加されるので、ビジネスシーンでとても役立ちます。 

さらに、読み込んだ名刺データから相手に関連する情報を検索できるので、名刺に記載されている情報を超えた関係性を構築したい方におすすめです。連絡帳にいる人が異動・転職・昇進などでプロフィールを変更した場合は、変更した旨を簡単に確認できます。無料で使える上にExcelに書き出すことも可能で、多くの企業で導入されています。

ビジネスSNS「Wantedly」の特徴

以下では、ウォンテッドリーのメインサービスである、ビジネスSNS「Wantedly」の特徴を紹介します。ウォンテッドリーが展開しているWantedlyの4つの特徴を詳しく解説していくので、見ていきましょう。

給与・待遇の記載はしない

Wantedlyの募集は、給与・待遇の記載がNGとなっています。給与・待遇ではなく社風や会社の方針で企業に興味を持ち、企業の理念に共感して応募してもらう「共感採用」を目指しています。企業は、給与ではなく自社の魅力で勝負できるので、優秀人材の採用に平等なチャンスを得られるのです。

また、休職者に給与だけで選ばれる心配がないので、離職率を懸念している会社にもおすすめです。なお、Wantedlyの募集では、タイトル・カバー写真・会社のメンバー・業務内容・会社や仕事の魅力などを記載します。自社の魅力に共感してくれた求職者からの応募を得られるので、多くの企業から高い評価を誇っています。

気軽にマッチングできる

Wantedlyは気軽にマッチングできるのも魅力です。一般的な採用媒体は選考へのエントリーから始まる場合が多く、就職意識が高いユーザーでないと応募に結びつきにくいです。一方、Wantedlyは興味を持ってくれた求職者と会って話す機会を作ることを重視しています。 

応募に対する心理ハードルを下げられるので、一般的な採用媒体より多くの方からの応募を得られる場合が多い傾向です。そのため、業界・年齢・経験がさまざまな方からの応募を得られます。 

なお、20歳〜30歳のミレニアム世代の利用者が多いため、若手の人材を採用したいと考えている方にもおすすめです。さらに、登録企業はエンジニアやデザイナーの職種が多いので、エンジニアやデザイナーを目指したい方にも向いているでしょう。

さらに、Wantedlyは利用中無制限で募集を掲載できます。学生のインターン・新卒採用だけでなく、中途採用や業務委託などの募集の掲載も可能です。さまざまな職種の募集ができるという、気軽に利用しやすい点も人気につながっています。

会社の魅力を伝えやすいBlog機能がある

Wantedlyには、会社の魅力を伝えやすいBlog機能があります。会社メンバーの紹介や普段の仕事の様子などをアップできるので、募集内容だけでは伝えられない会社の魅力を届けたい企業におすすめです。会社によっては、社内行事の様子や社員インタビューをアップしています。

会社や社員のリアルな様子を見られるので、求職者側も企業をイメージしやすくなるでしょう。会社のカラーを存分に伝えられるため、会社のファンが増える場合も多いです。なお、ファンには会社の記事や募集を開始したときの案内が通知されるようになっています。そのため、魅力的な記事から共感を得てファンを獲得し、応募につなげることも可能です。

さらに、会社の日常だけでなく、優秀なビジネスマンが知りたくなるような情報を記事として載せるのも良いです。優秀なビジネスマンほど、他の会社がうまくいっている情報を知りたくなります。自社の成長の秘密を語ったり、自社がうまくいっている秘訣をあえて公開したりすると、情報に関心の高い人を引き付けられます。 

また、Wantedly内で会社のメインページも自由に作成可能です。フォーマットに沿って文章と画像を入力するだけで、簡単に採用ページを作れます。自社の採用ページとしても使えるので、採用ページを作りたい企業も多く利用しているようです。

企業から直接アプローチできる

Wantedlyには、企業から直接アプローチできるダイレクトスカウト機能があります。Wantedly内のユーザーを自由に検索して直接メッセージを送れるので、採用用件に合った候補者を獲得できるチャンスが高まります。

受動的に応募を待つだけではなく、ユーザーに対して直接スカウトをかけられるため、優秀な人材を手に入れたい企業に向いているといえるでしょう。なお、Wantedlyには学生も多く登録しているので、インターン採用や新卒採用に活用している企業も多いです。

ウォンテッドリーの市場規模

ウォンテッドリーの代表的なサービスであるWantedlyは、登録ユーザー数が339万人を超えています。また、登録企業数も4.2万社を超えており、年々増え続けているので、今後も成長が期待できると考えられるでしょう。 

なお、Wantedlyの年齢構成比は20〜29歳が42%、30〜39歳が32%となっており、学生からビジネスマンまでの若い世代を中心に広く利用されています。若い世代の中では、インターネットを使った就職活動が一般化しており、その広がりは今後も続くと考えられます。

インターネットを使った就職活動は応募に対する心理ハードルの低さがカギとなるので、応募に対する心理ハードルを下げられるWantedlyはかなり有効的です。さらに、Wantedlyでは共感採用を目指せるため、離職率の低下にも効果を発揮できるサービスとして登録企業が増えていくとも予想できます。

ウォンテッドリーの業績推移

2018/122019/122020/122021/12
売上高(百万円)2,1632,9223,0943,574
経常利益(百万円)177294437405
当期純利益(百万円)103146233236

出典:ウォンテッドリー株式会社 業績ハイライト

上記の図から、ウォンテッドリーでは2021年まで順調に業績を伸ばしているのが分かります。2022年のグラフはまだ完成していませんが、推移を見る限りでは2022年の売上高にも期待できるでしょう。

今後の展開

現代は働き方の多様化が進んでいるので、ウォンテッドリーの需要はさらに高まっていくでしょう。なお、ウォンテッドリーでは、世界規模のプロダクトを目指した取り組みが進められています。

ウォンテッドリーは人々が仕事に夢中になるためのユニークな価値の提供を土台としており、想定している潜在的な市場規模は約1兆円です。内訳としては、採用が約4,500億円、エンゲージメントが約5,500億円です。 

今後はサブスクリプションと従量課金を掛け合わせたモデルを展開し、ストックとして基本プラン、フローとしてオプションと従量課金を設けることで、さらなる収益が見込めるとしています。

ウォンテッドリーは成長産業であるWeb領域の人材、ミレニアム世代やZ世代に強いのが特徴です。年齢別構成比の70%以上が20〜39歳となっている他、職種別構成比はエンジニアやデザイナーなどが半数近くを占めています。また、登録企業の業種が多様化しているので、今後の市場規模の拡大も期待できるでしょう。 

さらに、ウォンテッドリーでは、キャリア形成を支援するユーザー向けの新プランをリリースしました。キャリア形成を支援するユーザー向けの新プランは、Story・Pulse・Perkの3つのプロダクトから構成されています。 

「Story」は社員間の一体感を共有するオンラインの社内報のようなイメージです。「Pulse」は社員が抱える課題や目立たない貢献を可視化してくれるので、現状把握と改善に大きな役割を持ちます。また、目立たない貢献を可視化がされることにより、他の社員のモチベーションアップにもつながります。 

「Perk」は就業において重要な福利厚生の充実を手軽に実現できるサービスです。これらのサービスはコミュニケーション不足や業務の効率低下など、リモートワークで上げられる課題の解決にもつながるので、今後の市場規模の拡大も期待が高まると予想できます。

ウォンテッドリーで開示されているKPI

ここからは、ウォンテッドリーで開示されているKPIについて見ていきましょう。ここでは、以下の3つを紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

  • 広告費
  • 登録ユーザー数・登録企業数
  • キャッシュフロー

順番に紹介していきます。

広告費

引用:20228月期 Q2決算説明

ウォンテッドリーではエンゲージメント広告を実施し、2022年8月期Q2の累計のエンゲージメント広告費は4億7600万円となっています。これまでは広告に力を入れていましたが、Q3~Q4は投資対効果を重視して進めていく方針です。

登録ユーザー数・登録企業数

引用:2022年8月期 Q2決算説明

ウォンテッドリーの登録ユーザー数、登録企業社数は右肩上がりが続いており、2022年8月期Q2の登録ユーザー数は339万人、登録企業数4.2万社になりました。このまま成長が続いていけば、登録ユーザー数と登録企業数は今後も成長を実現できると考えられています。 

キャッシュフロー

引用:2022年8月期 Q2決算説明

ウォンテッドリーのキャッシュフローは年々増加しています。なお、2022年8月期Q2の営業キャッシュフローは4億5000万円です。また、2022年8月期Q2の期末現預金残高は10億9950万円であり、フリーキャッシュフローは4億4700万円となっています。2021年期Q2に比べてかなり増加しているので、このままの調子が続いていけば今後も成長していくと予想できるでしょう。

ウォンテッドリーの主なKPI

ここからは、ウォンテッドリーが実施に設定している主なKPIについて見ていきましょう。代表的な例として3つ紹介していくので、KPI設定の設定に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

MRR

引用:2022年8月期 Q2決算説明

MRRは毎月決まって発生する売上のことで、日本語では「月次経常収益」という意味です。図を見ると、ウォンテッドリーでは具体的なMRRの数値は公開されていませんが、Q1とQ2の数値は公開されています。

Q1と比べると数値は下がってしまっていますが、2021年の数値と比較すると数値は上がっています。この状態をキープできれば、年間の数値も2021年を超えられるでしょう。

MRRについては、「SaaSの主要KPI【MRRとは?概要や計算方法を分かりやすく解説」の記事からご覧いただけます。

チャーンレート

引用:2022年8月期 Q2決算説明

ウォンテッドリーはチャーンレートの具体的な数値は公開していません。しかし、登録ユーザー数が上がり続けていることを考えると、低い水準でキープできていると考えられます。また、解約率低減に注力するとしているため、数値の改善が見込めるでしょう。

チャーンレートについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事をご参照ください。

ユニットエコノミクス

ユニットエコノミクスとは、顧客や製品・店舗などのユニット単位で事業の経済性を測定するための指標で、LTV(顧客生涯価値)÷ CAC(顧客獲得単価)で計算できます。ウォンテッドリーでは顧客の解約率の改善を目指すと同時に、大企業の開拓による単価アップも目指しているため、ユニットエコノミクスの数値の向上も見込めるのではないでしょうか。

ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事からご覧いただけます。

まとめ

今回は、ウォンテッドリーの事業内容や主なKPIについて解説しました。ウォンテッドリーは、主にWantedlyというサービスを展開しています。「共感」でマッチングする採用サービスであり、ミレニアム世代やZ世代から多くの支持を得ているので、ウォンテッドリーの評価は高まるばかりです。

企業の成長にはKPIの設定が重要ですが、ウォンテッドリーではMRR・チャーンレート・ユニットエコノミクスなどをKPIとして設定されています。

監修者

広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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