リンクアンドモチベーションのKPIをまとめて分かりやすく紹介

2022.08.11
リンクアンドモチベーションのKPIをまとめて分かりやすく紹介

事業状況を把握するためには、KPIの設定・管理が大切です。しかし、どんなKPIを設定すれば良いのか分からないと悩んでいる人も多いのではないでしょうか。そこで今回はリンクアンドモチベーションが公開しているKPIについて詳しく紹介します。

リンクアンドモチベーションの事業内容や近年の業績、今後の展開、重要視されているKPIなどについて説明しているのでぜひ最後までご覧ください。

リンクアンドモチベーションの会社概要

会社名株式会社リンクアンドモチベーション
所在地本社〒104-0061 東京都中央区銀座4丁目12−15 歌舞伎座タワー 15階
代表取締役 社長坂下 英樹
設立2000年3月27日
資本金13億8,061万円 (2020年12月31日現在)

リンクアンドモチベーションの事業内容

リンクアンドモチベーションは独自に構築した「モチベーションエンジニアリング」と呼ばれる技術を元に、企業の課題解決や個人の成長を支援するコンサルティング業務を主な事業としています。

これは一般的な経験則ではなく、経営学・社会システム論・行動経済学・心理学などの理論と経営コンサルティングの知見を基に開発されており、理論と実践を組み合わせた実効性と再現性の高いサービスが特徴です。リンクアンドモチベーションの主な事業領域は以下の4つです。

  • 組織開発Division
  • 個人開発Division
  • マッチングDivision
  • ベンチャー・インキュベーション

組織開発と個人開発を担う事業、組織と個人をマッチングする事業の3Divisionを展開しており、加えてベンチャー企業を支援するベンチャー・インキュベーション事業を有しています。以下でそれぞれについて詳しく説明します。

組織開発Division

このDivisionでは従業員のエンゲージメントを向上させるための組織支援を行っています。エンゲージメントは「企業と従業員の相思相愛度合い」と定義されており、従業員のエンゲージメントが高いほど営業利益率などのビジネス成果が高くなるとされています。下記3つの会社が本領域の事業を担っています。

  • 株式会社リンクアンドモチベーション
  • 株式会社リンクグローバルソリューション
  • 株式会社リンクイベントプロデュース

また、企業のブランディング戦略を支援するサービスも展開しており、IR領域を対象にメディアやイベント制作を通してサポートしています。事業を担うのは以下の組織です。

  • 株式会社リンクコーポレイトコミュニケーションズ

個人開発Division

このDivisionでは、社会人を対象とするキャリアスクール事業と小学生から高校生を対象とした学習塾事業を展開し、個人の成長をサポートしています。キャリアスクールではパソコン、プログラミング、資格、語学の各スキル開発を、学習塾では学力の向上と社会で有用なスキル開発を目的としています。このDivisionを担う会社は以下の2つです。

  • 株式会社リンクアカデミー
  • 株式会社モチベーションアカデミア

マッチングDivision

このDivisionは、人材紹介事業を通じて組織と個人の最適なマッチングを提供しています。まず大学生と社会人を対象に就職や転職用のプラットフォームを有し、有益な情報の提供と新しい環境へのチャレンジを支援しています。事業を展開する会社は以下の3つです。

  • 株式会社リンクエージェント
  • 株式会社リンク・アイ
  • オープンワーク株式会社

また、英語教育のためのALT(Assistant Language Teacher)の学校への派遣や企業への外国籍人材の紹介も行っています。

  • 株式会社リンク・インタラック
  • 株式会社リンクジャパンキャリア

ベンチャー・インキュベーション

リンクアンドモチベーションが有する人材に関する知見や豊富なコンサルティング実績を元に、将来性のあるベンチャー企業に対し出資から成長のためのノウハウを提供しています。

上述のようにリンクアンドモチベーションは多様な領域で事業を展開していますが、組織と個人が日本の労働環境の変化に適応できるよう、豊富な経験と理論に基づく社会ニーズに最適なサービスを一貫して展開しています。

リンクアンドモチベーションの市場規模

リンクアンドモチベーションが展開する事業の中でも、組織開発Divisionのクラウド事業が伸びており、大手企業での導入も加速しています。

組織を構成する従業員のエンゲージメントは、企業の背長にとって非常に重要です。働き方改革が推進され、さまざまな変化が起きている今の環境下で、エンゲージメントを定量的にモニターすることの重要性はますます大きくなっています。

本領域において国内最大級のエンゲージメントデータベースを保有するリンクアンドモチベーションのサービスは、今後さらにニーズは高まると予想され、それに伴って契約数も伸びていくと推測されます。

一方、新型コロナによる影響で個人の仕事や働き方に対する意識も大きく変わっているので、今後人材市場の流動性も高まると予想できるでしょう。そのため、転職を希望する社会人が増え、それに備えてスキルアップを図る人も増加する可能性も高いです。これらのニーズに答えるリンクアンドモチベーションのサービスも同時に成長することが期待できます。

リンクアンドモチベーションの業績推移

2017年12月期2018年12月期2019年12月期2020年12月期2021年12月期
売上高(百万円)36,89439,94138,19130,78532,644
営業利益(百万円)3,3653,8252,0078602,066
当期純利益(百万円)2,0961,9181,090(929)1,020

引用:2022年12月期 第1四半期報告書

過去5年間の売上高の推移を見ると、約300億から400億円の間で推移しています。営業利益は2018年をピークに一旦減少、2020年は新型コロナによる影響を大きく受けていますが、第3四半期以降は好調に転じ、通年で予想より上回りました。2021年は2019年並みに回復しています。2020年と2021年には成長に向けた事業構造改革やコスト構造改革を実施しており、強化された企業体質は今後の成長につながると予想されます。

今後の展開

各事業は今後の社会ニーズにマッチしており、今後も成長を維持することが期待されます。少子化の結果として日本の労働力人口の減少は今後も続くとみられ、企業にとって生産性の向上と優秀な人材の確保・維持はさらに優先度の高い課題となるでしょう。

また、従業員の働き方やワークライフバランスなどへの意識の高まりにより、転職希望者数は年々増加の一途を辿っています。このような変化の激しい環境の中、企業が成長を維持するには高いエンゲージメントが必要であり、その実現に向けて競争力の高いノウハウとサービスを有するリンクアンドモチベーションへの期待はさらに高まるでしょう。

株式会社リンクアンドモチベーションが公開しているKPI

リンクアンドモチベーションの各ビジネスは順調に伸びています。近年では特に組織開発領域における従業員のエンゲージメント向上のためのクラウドサービス導入増加によって売上が伸びている傾向です。

さらに、体制強化へ向けた投資を行っていることから、今後の営業利益の伸びも予想されています。では、リンクアンドモチベーションがどのようなKPIを用いてビジネスを捉えているかを見てみましょう。

  • エンゲージメント・レーティング
  • キャッシュフロー
  • 平均受講者数
  • オープンワークリクルーティング売上高成長率

ここからは上記4つの指標を説明します。

エンゲージメント・レーティング

引用:2021年12月期 決算説明資料

エンゲージメントレーティングは、リンクアンドモチベーションが独自に開発した従業員と企業の相思相愛度を図る指標です。保有するデータベースを元に算出された偏差値(エンゲージメントスコア)からAAAからDDまでの11段階で評価されます。評価が高いほど営業利益率や労働生産性にポジティブな影響を与えることが分かっています。

そのため、リンクアンドモチベーショングループでは、上図のように各企業のレーティングを一つの指標としています。各企業のエンゲージメントスコアは全11社中9社が最高評価のAAA、その他2社も高い評価で全体的に非常に優れたエンゲージメントを有しているといえます。

キャッシュフロー

2021年第一四半期2022年第一四半期
営業活動によるキャッシュフロー482-41
投資活動によるキャッシュフロー-382748
財務活動によるキャッシュフロー-94-377
現金及び現金同等物の四半期末残高6,4585,247

引用:第23期第一四半期報告書 

企業の経営状況を判断するためには、現金の流れ(キャッシュフローも確認しておく必要があります。これによって、財務的に適切な企業活動ができているかの判断ができるようになるのです。

営業キャッシュフローは前年の第一四半期では4.8億円のプラスであった一方、今四半期は4千万円程のマイナスとなっています。その主な要因は以下です。

  • 営業・その他の債権が前年同期比で4.9億円減
  • 減価償却費・その他償却費が前年同期比で4億円減
  • 営業債務・その他債務が前年同期比で約3億円減
  • 法人税等の支払額が前年同期比で約3億円増

次に投資活動によるキャッシュフローでは7.5億円のプラスとなっていますが、これは主に、事業譲渡による収入と敷金・保証金の返還によるものです。また、財務活動に投じた金額は前年同期比で約2.8億円増えています。長期借入による収入が増え、資金が増加した一方で短期借入金が前年同期比で減少し、加えて長期借入の返済による支出が前年より増加したためです。

平均受講者数

引用:2022年12月期 第1四半期 決算説明資料

キャリアスクールや学習塾を展開する個人開発Divisionにおいて重要な指標が、平均受講者数です。上図は過去1年間の四半期ごとの受講者数を表しています。受講者数は新型コロナのオミクロン株の影響を受けて若干の減少が見られますが、全ての講座がバーチャル化されたことで顧客単価は堅調に推移しています。

オープンワークリクルーティング売上高成長率

引用:2022年12月期 第1四半期 決算説明資料

人材紹介事業のオープンワークリクルーティングの売上は過去急速に伸びており、2年前の1Qを基準とすると昨年の1Qには180%、今年の1Qには347%と好調な業績を納めています。

リンクアンドモチベーションの主なKPI

リンクアンドモチベーションのいくつかのビジネスモデルは、契約期間中は毎月課金が発生するサブスクリプション型です。例えば、組織開発のモチベーションクラウドや人材紹介サービスでは契約期間中は料金を支払います。収益を伸ばすためには顧客の新規獲得と同時に既存顧客を長期的に維持することも重要です。これらを確実に捉えるために重要なKPIが以下の3つです。

  • MRR
  • チャーンレート
  • ユニットエコノミクス

これらについて詳しく見てみましょう。

MRR

引用:2021年12月期 決算説明資料

サブスクリプション型のビジネスモデルの場合は、月単位で契約するのが一般的です。そのため、毎月定期的に発生する収益を表すMRRを管理することが重要になります。MRRの算出式は以下の通りです。

MRR = 顧客数 × 月間利用料金

リンクアンドモチベーションは決算資料の中で直接MRRやARRには触れていないため、具体的な数値は分かりませんが、モチベーションクラウドの月会費の売上は上図のように四半期毎に増加していることが分かります。今年の4Qにおいては、過去最高の3.2億円の売上に達すると予想されているため、MRRの向上も見込まれるでしょう。

MRRについては、「SaaSの主要KPI【MRR】とは概要や計算方法分かりやすく解説」の記事で紹介しています。

チャーンレート

チャーンレート(Churn Rate)は、サービスの解約率などを示す指標になります。新規顧客が増えても、解約率が高ければ穴が空いたバケツに水を注いでいるようなものです。そのため、解約率をモニターすることも大切です。

リンクアンドモチベーションのサービス解約率は決算報告書には記載されていませんが、サブスクリプション型の事業においては、売上や導入件数の増加の状況から解約率は低く抑えられていることが推測されます。

チャーンレートについては、「SaaSの主要KPIチャーンレート】とは種類や目安を解説」の記事をご覧ください。

ユニットエコノミクス

ユニットエコノミクスは企業によって定義は変わりますが、一般的には「一顧客当たりの経済性・採算性」を示します。そして、この指標を求めるために考慮されるのがLTV(Life Time Value : 顧客生涯価値)とCAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得コスト)です。ユニットエコノミクスは、LTVをCACで割ることで算出できます。

リンクアンドモチベーションはユニットエコノミクスを公開しておらず、CACに関する数値も未公開であるため、具体的な数値は算出できません。しかし、リンクアンドモチベーションのクラウドサービスはシェア率No.1を獲得していることからも、LTVは高い水準を維持していると推測されます。また、新規獲得顧客数も増加してCACが低くなれば、ユニットエコノミクスの数値は大きくなっていると考えられるでしょう。

ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事で解説しています。

まとめ

リンクアンドモチベーションは、労働環境や従業員の仕事に対する価値観が変化する中で、組織と個人の両方の成長を導く競争力の高いサービスを有しています。エンゲージメントの強化が組織の成長に不可欠であることを多くの企業が認識している上に、社会の状況を鑑みると今後さらに新規顧客の獲得が期待できます。各種KPIを見ることで過去の不確実な環境に適応し、今後の成長に向けて戦略的な対応を取っていることが分かります。

監修者

広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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