エス・エム・エスではどんなKPIが設定されている?開示KPIを解説
2022.08.07
エス・エム・エスは、「永続する企業グループとして成長し続け、社会に貢献し続ける」を経営理念に、高齢化の進行や生産年齢人口の減少など、日本が抱える問題の解決に貢献できるものを生み出し続けている会社です。そんなエス・エム・エスでは、そのようなKPIを設定して業務を遂行しているのでしょうか。
この記事では、エス・エム・エスの会社概要や事業内容などの基本的な情報とともに、主なKPIとKPIの管理についてを解説します。また、エス・エム・エスが目指している目標なども紹介していくので、ぜひ参考にしてください。
エス・エム・エスの会社概要
エス・エム・エスの事業内容
エス・エム・エスでは、事業として主に5つのサービスを提供しています。ここでは、エス・エム・エスが展開している事業を分野ごとに詳しく解説していきます。
- キャリア
- 海外事業者
- ヘルスケア
- シニアライフ
- 海外
それぞれの事業を順番に見ていきましょう。
キャリア
キャリア事業領域では、高齢社会が直面する問題の解決に貢献するため、1人1人の従事者に寄り添ったキャリア形成サービスを提供しています。高齢化が進行すると、医療や介護の需要が高まる一方で、生産年齢人口が減少しているために従事者の不足が問題になりがちです。
そのため、キャリア事業領域では、人材確保に問題を抱えた地域の事業者に向けてさまざまなサービスを展開しています。「NJBナース人材バンク」や「HJB放射線技師人材バンク」は、専任のキャリアパートナーが条件に合う事業所を紹介してくれるサービスです。
また、管理栄養士向けの人材紹介や臨床工学技士向けの人材紹介なども行っています。求職者の希望をもとにマッチングを行ってくれるので、キャリアを活かして働きたい方におすすめです。なお、キャリア事業領域では、看護師や看護師を目指す学生の方に向けたサービスも広く展開しています。
看護師向け求人情報を掲載している「ナース専科求人ナビ」は、看護師の方のための転職サイトです。全国の人材紹介会社と提携しているので求人数が多く、電話サポートが付いているという魅力もあります。会員の立場に立ったアドバイスをしてくれるため、忙しい看護師の方でも転職活動をスムーズに進めることが可能です。
看護学生向けの就職活動情報を掲載している「ナース専科就職ナビ」では、病院検索や採用試験の申し込みを行えます。高校生や看護学生向けの奨学金情報を掲載している「看護奨学金Navi」や介護職の方向けに人材紹介をする「カイゴジョブエージェント」など、介護・看護に関する求人も多いです。
介護事業者
介護事業者事業領域では、主に介護事業者と経営を支援するサービスをつなぐ「カイポケ」の運営を行っています。カイポケは財務改善や業務の効率化など、介護事業者の経営がより良くなるようなサービスを提供してくれます。
また、カイポケは金融・採用・業務など40以上のサービスを提供する機能が搭載されているサービスです。介護事業者の経営安定に努め、利用者が質の高い介護サービスを受けられるように間接的にサポートをしています。
さらに、介護事業者事業領域では、高齢社会の実態や介護事業者に関するさまざまな調査の情報発信を行う「高齢社会ラボ」を運営しています。あまり知られていない重要な情報も掲載されているので、介護事業者だけでなく研究者からの注目度も高いです。
「介護経営ドットコム」も介護事業者事業領域が管理しているサイトで、帳簿のダウンロードや動画研修などのコンテンツを掲載しているので、日々の業務に役立てられます。このように、エス・エム・エスは、介護現場への人材派遣だけでなく介護事業者事業目線のサービスも行っているのです。
ヘルスケア
ヘルスケア事業領域では、遠隔指導特定保健指導サービスである「遠隔チャット指導」や「リモート産業保健」などを提供しています。遠隔チャット指導は健康保険組合向けのサービスで、完全リモート型なのが特徴です。Web面談で得たデータをもとにして、管理栄養士が定期的な食事指導を行います。
リモート産業保健は、企業の健康管理業務をサポートするプログラムです。企業医によるストレスチェックの実施や衛生委員会の運営などを支援します。なお、Web版のストレスチェックや衛生委員会の運用支援などは無料提供です。
ヘルスケア事業領域では、女性の健康形成をサポートする「LADY to GO!」というプログラムも行っています。「LADY to GO!」は、働く女性従業員と管理者に向けたプログラムで、働く女性の健康推進の支援につながるものです。
さらに、ヘルスケア事業領域では、禁煙サポートサービスや認知症とその家族の方に向けた情報を発信するコンテンツなども扱っています。禁煙サポートとして提供しているのは「パーソナライズ禁煙指導サービス」と行動療法に特化した禁煙指導プログラムです。
どちらもアドバイザー支援を受けられるので、禁煙をした方から高い評価を得ています。また、認知症とその家族の方に向けた情報を発信するコンテンツとしては、「認トレ」や「認知症ねっと」などを提供しています。
シニアライフ
シニアライフ事業領域では、主に高齢者の生活で起こる問題解決につながるようなコンテンツを発信しています。「ハピすむ」は住まいに関する基本的な知識を提供しているサービスであり、専任のスタッフが希望に合った事業者を紹介してくれます。そのため、不動産売却やリフォームを考えている方におすすめです。
また、シニアライフ事業領域は、「安心介護」や「らいふーど」などのコンテンツも提供しています。安心介護では介護に関する疑問を専門家に質問できます。また、介護に関する意見を交換し合ったり交換し合ったりできる場としても人気です。
さらに、葬儀社紹介サービスである「安心葬儀」やケアマネージャー向けコミュニティである「ケアマネドットコム」などのコンテンツを展開しています。安心葬儀では、葬儀のスタイルや宗派などをもとに条件に合った葬儀社を紹介してくれるので、多くの方から利用されています。
葬儀社によっては希望の宗派に対応していない場合はあるので、申し込む前に宗派に対応しているかどうかを知れるのはとても便利ですよね。その他にも、高齢者向けの住宅紹介サービスや高齢者向け食事宅配紹介サービスなど、たくさんの種類があります。
海外
海外では、主に「メディカルプラットフォーム事業」と「グローバルキャリア事業」の2つに力を入れています。メディカルプラットフォーム事業は、医療関連事業者と医療従事者をつなぐプラットフォームを展開しており、医療の安全性向上を目指しています。
なお、メディカルプラットフォーム事業で取り扱っているサービスは「MIMS」です。MIMSはアジアやオセアニア地域で医療関連事業者のマーケティング活動支援を行っています。医薬品辞典サービスも行っているので、アジアやオセアニア地域で活動している医療関連事業者の方におすすめです。
また、グローバルキャリア事業では、医療従事者供給プラットフォームの提供を行っています。主に「MELORITA」や「MSR」などの医療従事者向けのサービスを取り扱っており、海外の医療機関から高い評価を得ています。
MELORITAはマレーシアやシンガポールなどの病院へ医療従事者を紹介するサービスであり、マレーシアでは国内最大級の医療人材サービスとして有名です。さらに、MSRはフィリピンの医療従事者を中東の医療機関に向けて紹介している医療人材サービスです。
その他にも、ヨーロッパやオセアニアの医療従事者を中東の医療機関へ紹介しているサービスや韓国の看護師向けのサービスなど、世界規模でさまざまなコンテンツを展開しています。
エス・エム・エスの市場規模
エス・エム・エスではさまざまなサービスを取り扱っていますが、特に代表的なのは介護事業者分野の「カイポケ」です。導入社数は34,850を超えており、多くの企業で活用されているのです。
カイポケはスマートフォンやタブレットでの有料オプションサービスが大幅に拡大しています。介護や医療分野は高齢化社会が進むにつれて需要が高まっていくので、成長余地が極めて大きいといえるでしょう。
エス・エム・エスの業績推移
引用:株式会社エス・エム・エス 2022年3月期 決算及び会社資料
上記の図から、エス・エム・エスでは順調に業績を伸ばしているのが分かります。2022年のグラフはまだ完成していませんが、推移を見る限りでは2022年の売上高にも期待できるでしょう。
今後の展開
現代は高齢化が進行しているので、介護事業者分野の「カイポケ」や医療分野の需要はさらに高まっていくでしょう。2022年3月期のカイポケの売上高は70億1920万円であり、2021年3月期より+ 22%となっています。
その上、介護事業者分野の「カイポケ」は有料オプションサービスの利用拡大が見込まれており、2023年3月期においては2022年3月期の実績+17%の売上高と予想されています。
さらに、コロナの影響でデジタルソフト化が進んだことにより、海外分野のメディカルプラットフォーム事業が大きく成長しました。デジタルソフト化は今後も進んでいくと予想されるので、将来の市場規模の拡大も期待できるでしょう。
なお、キャリア分野は、コロナの影響によって成長率が一時的に押し下がる形となりました。しかし、エス・エム・エスは事業者の採用意欲の回復を背景として、当初の予定数を大きく超えるキャリアパートナーを採用しています。そのため、2023年3月以降の成長も期待できるでしょう。
2023年3月期の計画
高齢化の進行及び生産年齢人口の減少によって、介護・医療人材ニーズはさらなる需要拡大が予想されます。そのため、キャリア分野では、2023年3月期の計画としてキャリアパートナーの採用拡大を行うとしています。
さらに、海外分野のメディカルプラットフォーム事業では、アジアのヘルスケア市場のさらなる拡大を進める予定です。一方、グローバルキャリア事業は、コロナによる渡航制限が緩和されることにより、大きな成長が見込まれるでしょう。なお、2023年3月期の売上高は、2022年3月期実績の+24%になるとされています。
エス・エム・エスの開示KPI情報
エス・エム・エスでは、主に看護師人材紹介サービスがシェアを拡大させています。しかし、最近は人手不足が深刻化している介護職向けサービスや、保育士向けのサービスが成長をけん引しています。さらに、キャリア分野は全体的な大きな成長の余地が見られるので、今後の向上に期待ができそうです。
エス・エム・エスのキャッシュフローは年々増加しており、特に、営業活動によるキャッシュフローと現金及び現金同等物の期末残高が大幅に増えているのが分かります。2021年3月期に比べて大幅に増加しているので、今後も成長していくと予想できるでしょう。
エス・エム・エスの主なKPI
ここからは、エス・エム・エスが実施に設定している主なKPIについて見ていきましょう。ここでは3つ紹介していくので、KPI設定の設定に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
MRR
エス・エム・エスのIR情報で紹介されているのが月間の数値を表すMRRではなく、年間の数値を表すARRなので、ここでは年間の数値を表すARRの図を貼っています。なお、図を見ると常に数値が上昇しているのが分かるでしょう。この図から、エス・エム・エスは毎月のMRRをチェックして原因の把握と分析を徹底していることから、数値の上昇につながっているといえます。
MRRについては、「SaaSの主要KPI【MRR】とは?概要や計算方法を分かりやすく解説」の記事をご参照ください。
チャーンレート
引用:株式会社エス・エム・エス 2022年3月期 決算及び会社資料
エス・エム・エスは、チャーンレートの数値を公開していませんが、創業以来それぞれのサービスの売上が増加し続けていることを考えると、チャーンレートの数値も低い水準で保ち続けているのではないでしょうか。チャーンレートの数値が高いと、新規顧客を獲得できても思うように売上が上がらないため、成長をし続けるのは難しいです。
チャーンレートについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事からご覧いただけます。
ユニットエコノミクス
エス・エム・エスではユニットエコノミクスの数値も公開していません。しかし、業界での高いシェア率を維持し続けているため、ユニットエコノミクスの数値も高い水準をキープできていると考えられます。
ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事で解説しています。
まとめ
今回は、エス・エム・エスの事業内容や主なKPIについて解説しました。ウォンテッドリーは、主にカイポケというサービスを展開しています。介護事業者の経営や業務の効率化をサポートするサービスであり、多くの介護事業者から支持を得ているので、エス・エム・エスの評価は高まるばかりです。
これらの成長の背景には、適切なKPIの設定が大きく影響しているでしょう。エス・エム・エスでは、MRR・チャーンレート・ユニットエコノミクスなどがKPIとして設定されており、いずれも健全な状態を維持していると予想できます。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。