経営会議のあるべき姿とは|会議を成功させるためのポイントを解説
2022.03.09
企業を運営していくにあたって、経営層が必ず行うべきものとして「経営会議」が挙げられます。経営会議とは、企業の重要な方針を決定するために行う会議のことを指します。
しかし、実際に経営会議を行っていても、「会議の内容がいまいちパッとしない」、「もっと効率良く進めることはできないのか」と思ってしまう経営者の方もいるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、経営会議とは何か、経営会議を行う目的、会議を成功させるためにはどんなポイントに気を付ければ良いのかについて、徹底的に解説していきます。経営会議に関わる立場の方は、ぜひ参考にしてみてください。
経営会議とは
経営会議とは、「経営方針」、「経営戦略」、「事業の進捗状況」、「予算と実績」などの決定を行う会議のことを指します。
参加者のほとんどは、取締役や執行役員などの経営の中心となるメンバーで構成されており、今後の企業戦略や事業展開について幅広く議論、決定を行っていきます。経営会議とは、企業を運営していく中でも、全体の方針が左右されるほど重要な役割を担っているのです。
経営会議を行う目的
経営会議の最大の目的は、「経営に関する意思決定を行うこと」です。経営会議では、幹部クラスの人間が集まって、現在の状況や課題を明確化して共有していきます。そういった情報を基に、今後の展望や方針を打ち立てて、下部組織に通達していくのです。
また、意思決定の他にも、下記のような議題について話し合う場合もあります。
- 経営計画の確認
- 自社が抱える問題について
- 業績を上げるために取り組むべき課題
- 企業の財務基盤強化のための課題
基本的には、どんな議題を話し合う場合でも、経営に直接関わる内容であることがほとんどです。
また、問題などが発生した際にも軌道修正ができるように、経営会議は月次などで定期的に開催されるのが一般的です。これは、定期開催することによって、現在の経営状況をリアルタイムに把握できることが理由として挙げられます。
上記の内容から、経営会議の目的が非常に重要であるというのが分かるでしょう。
経営会議をうまく進められない理由
経営会議がうまく進まない理由にはどのようなものがあるのでしょうか。代表的な例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 社長のワンマン会議になっている
- 積極的な発言ができない空気がある
- 元となる経営計画が曖昧になっている
上記のような状態では、経営会議を円滑に進めることができません。特に、中小企業の場合は経営計画自体が明確になっていないことも多く、社長の発言力が強い傾向があります。
もし経営会議がうまくいっていないと感じる場合は、上記の内容に心当たりがないか一度見直してみると良いでしょう。
経営会議をあるべき姿にするためには
それでは、経営会議をあるべき姿にするためにはどのような工夫が必要なのでしょうか。ここからは、会議の質を向上させるためのポイントに焦点を当てて解説していきます。
- アジェンダを決める
- 参加者は厳選して社員が議長を行う
- タイムキーパーを決める
- 所持録を作成する
- 決めた内容を実行する
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
アジェンダを決める
アジェンダとは、会議において検討するべき課題のことを指します。また、会議全体の台本といった捉え方をすることもできます。
何について話すべきなのかが明確になっていないと、会議終了時に「結局何も決定することができない意味のない時間だった」と感じてしまうでしょう。
そうならないためにも、実際の会議では以下のような項目をあらかじめ決めておくと良いです。あらかじめアジェンダを決めておくことで、経営会議をスムーズに進められます。
- 具体的な進行方向
- 会議における目的
- 何時までに内容をまとめるのか
上記のようなアジェンダを事前に設定することで、会議の質が上がって効率的な進行ができるようになるのです。アジェンダの書き方については後述しますので、そちらをご参照ください。
参加者は厳選して社員が議長を行う
経営会議の参加者はなるべく厳選して、社員が議長を行うことが望ましいです。
企業の規模によっては、支店長クラスや部長クラスが一堂に会すると、数十人を超える規模になってしまうこともあります。しかし、人数が多ければ多いほど意見がまとまりにくくなるでしょう。そのため、会議の内容ごとに必要なメンバーに絞って開催するのが好ましいといえるのです。
また、社長が議長を務める会議では、空気がこわばってしまい、社員から建設的な意見が出にくくなることが多々あります。社員も積極的に意見ができる場にするためには、社員が議長を務めると良いです。
また、社員が担当制で議長を務めるようにすると、社員も議長の立場を理解できます。社員の意識も高まって、企業にとって良い意見が出るための後押しになるでしょう。
タイムキーパーを決めて効率的に進める
経営会議の進行において、タイムキーパーの存在は非常に重要です。経営会議で話し合うのは経営を左右するような大切な内容なので、しっかりと話し合いたいという人もいるでしょう。とはいえ、時間を定めて効率的に進めていかなければ全ての議題を解決することができなくなってしまいます。
しかし、中小企業の経営会議ではタイムキーパーを用意しておらず、会議が長引くケースが多く見られます。その結果、全ての議題について話し合うことができなかった、議題を解決できなかったという経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
タイムキーパーの設置はすぐに取り組めるので、会議全体の質を高めるという意味でも、事前に担当者を設定しておくことをおすすめします。
議事録を作成して会議内容をまとめる
会議の内容を風化させないためにも、議事録の作成は必ず行うようにしましょう。議事録を作成していないと、会議で決めた内容がそのまま実行されずに曖昧になってしまうことも少なくありません。
どのような内容を話し合ったのかを記載するだけでなく、決議したことを「誰が」「いつまでに」「どのような方法で行う」のかまでを詳しく記載した議事録を作成するようにしましょう。
また、議事録を作成しておけば、会議の冒頭で前回の決議に関する進捗の確認をすることも可能です。会議を行う際は、あらかじめ書記担当も決めてから会議を開始すると良いでしょう。議長・タイムキーパー・書記を事前に決めておくと、中身のある会議になります。
会議で決めた内容を実行する
経営会議で決議したことは、実行に移さなければ何の意味もありません。参加した幹部全員が、決議した内容に責任を持って実行していく意思が大切なのです。
しかし、先ほども少し解説したように、実際は経営会議で決めたにも関わらず、曖昧なまま実行に移せていない企業も多く見られます。このような状況を回避するためには、それぞれの決定に対する責任者を決めることが大切です。
当然、意思決定に関する最終的な責任は企業の代表に付随します。しかし、それぞれの決議内容に責任者を設定することで、結果に責任が伴い、社員により具体的な実行力が生まれるのです。
経営会議を成功させるためのアジェンダの書き方
経営会議をあるべき姿にするためのポイントを解説しましたが、ここからは前述した「アジェンダ」の、具体的な書き方について見ていきましょう。アジェンダを設定する際は、以下のような項目に分けて作成していきます。
- 議題
- 目的
- 進行・所要時間
アジェンダの書き方を参考にしながら作成して、経営会議を効率的に進めていきましょう。
議題
アジェンダでもっとも重要なのは、「何のための会議か」を明確にすることです。議題が曖昧なままでは、会議自体の意義が分からなくなり、質の低い経営会議になってしまいます。
また、会議の議題は抽象的なものは避けて、具体的な議題を設定するのが望ましいです。
例えば「新規事業に関して」という曖昧な議題では、新規事業に関する何の話をしたいのかが分かりません。新規事業についてのさまざまな話題や意見が出てしまい、建設的な会議になるとはいえないでしょう。
そのため、議題を設定する場合は、「新規事業の予算計画について」など、明確で分かりやすいものを記載するようにしましょう。
目的
アジェンダでは、議題に関してどのような目的を持って会議に臨むかという点も、はっきりと明記しておく必要があります。会議のゴールが設定されていないと、内容が迷子になってしまい、会議の質が低下する原因になってしまいます。
例えば、前項の議題を例とした場合は、下記のように何を目的としているかをはっきりと明記します。
議題:新規事業の予算計画について
目的:予算計画における具体的な数値の決定
基本的には、「議題」と「目的」は必ずセットでアジェンダに記載するようにしましょう。複数の議題がある場合は、それぞれの議題と目的を記載してください。
進行・所要時間
効率良く会議を進行するためには、会議の進行や所要時間をあらかじめ設定しておく必要があります。会議全体の大まかな時間を決めておくだけでも良いですが、内容ごとに細かく所要時間を定めておくと、より効率的な会議ができるようになるでしょう。
実際の記載例は以下のようになります。
- 新規事業の予算計画についての説明(10分)
- 競合他社の分析結果について(15分)
- 担当部署による予算案の提示(20分)
- 参加者による意見を募る(20分)
- 意見の選定(20分)
- まとめ・決定事項の確認(10分)
もちろん、定めた時間通りに進まないことも多々あります。しかし、進行や所要時間をあらかじめ記載しておくことで、どの議題にどのくらい時間をかけるべきなのかが判断しやすくなるのです。
また、どうしても長引いてしまう場合は、優先度の高い議題を解決して、次回以降に持ち越すこともできるでしょう。
経営会議に関するQ&A
経営会議をするにあたって、まだ疑問が残るという人もいるでしょう。ここでは、経営会議を実施していくにあたって疑問に感じるポイントを解説していきたいと思います。これから経営会議を行う場合は、ぜひ参考にしてみてください。
経営会議を行う頻度は?
先ほども解説した通り、経営会議は基本的に定期開催されます。企業の場合、月次決算を行う会社がほとんどのため、月次決算で締めたデータを元に毎月開催されるケースが多い傾向です。
毎月開催することにより、下記のようなメリットを得られます。
- 経営状況をリアルタイムで把握できる
- 具体的な月次決算を元に今後の方針を検討できる
- 経営会議の意義が高まる
経営会議をどのくらいの頻度で行えば良いのかお悩みの方は、毎月開催するのを目安として考えると良いでしょう。
経営会議を成功させるために必要なスキルは?
経営会議では、「ファシリテーションスキル」と呼ばれる能力が重要視されています。ファシリテーションスキルとは、会議をスムーズに進めるための能力です。
ファシリテーションスキルを活かして会議の進行を行う人を、ファシリテーターと呼びます。このスキルはリーダーに必要なスキルの中でも、特に重要視されており、経営会議において内容を左右するスキルとして考えられているほどです。
具体的には、以下のような要素を持っています。
- 会議の場を作る:メンバー同士が対話しやすい環境を構築していきます。
- 意見を引き出す:適切に質問や意見を差し込み、メンバーの意見を引き出す
- 意見をまとめる:さまざまな意見が出る会議の場で、全員が納得する形にまとめる
また、ファシリテーターは、会議前の下準備を行うことも大切になってきます。どのような意見が出るのかをあらかじめ把握しておけば、スムーズな進行ができるようになるでしょう。
まとめ
当記事では、経営会議のあるべき姿や成功させるポイントについてまとめて紹介していきました。企業の方針を左右する経営会議においては、いかに内容の濃い会議ができるかどうかが重要です。
今後開催する会議の質を上げるためにも、アジェンダや議事録の作成、参加者の厳選などのポイントに気を付けるようにしてください。今回紹介した内容を元に、意義のある経営会議が行えるよう力を注いでいきましょう。
経営会議に関する情報をさらに詳しく知りたい方は、下記の資料もご参照ください。
監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。