マネジメントサイクルとは?基本的なPDCAの実行方法を解説

2022.03.07
マネジメントサイクルとは?基本的なPDCAの実行方法を解説

マネジメントサイクルとは、企業が定めた目標を達成するために用いる管理システムの総称です。日本でも広く普及しており、多くの企業が実践しています。

 

用語としては理解しつつも、「実際にどんなものなのかイマイチ分からない」、「うまく業務に取り入れることができない」と悩んでいる方もいるでしょう。

 

当記事では、マネジメントサイクルとは何か、実行方法や成功させるポイントなどを詳しく解説していきます。チームを引っ張る立場として、正しいマネジメントサイクルについて学びたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

マネジメントサイクル(PDCAマネジメント)とは

マネジメントサイクルとは、企業が目標を達成するために実施する管理システムのことを指します。これは単発で実行していくものではなく、長期的に続けていくことによって成果を発揮するシステムです。

 

マネジメントサイクルを実行していくことによって、製品の品質やサービスの向上、さらには生産性の向上といったさまざまな効果を見込めます。また、結果的に従業員のモチベーションアップも期待できるため、人材の流出を防ぐことにもつながっていくのです。

 

このように経営的なメリットが多いことから、企業ではマネジメントサイクルが重要視されています。

マネジメントサイクルの実行方法

もっとも代表的なマネジメントサイクルの実行方法として『PDCA』が挙げられます。PDCAとは、下記の4つの要素から構成されたものです。

 

  • Plan(計画)
  • Do(実行)
  • Check(確認)
  • Action(改善)

 

一般的に、それぞれの頭文字を取ることで『PDCA』と呼ばれています。この4つの要素を繰り返し実行することで、企業の目標達成へ近づくことができるのです。ここでは、各要素の具体的な内容について解説していきます。

Plan(計画)

Plan(計画)の段階では、目標の設定を行い、業務計画を作成していきます。まずは、下記のような基本的な要素から、情報の収集や解決策を出していきます。

  • 誰が(Who)
  • どこで(Where)
  • いつ(When)
  • なぜ(Why)
  • どのように(How)

 

これらの情報を基にして、具体的な計画へとつなげていきます。ここまでの段階が、PDCAにおけるPlan(計画)です。

Do(実行)

Do(実行)の段階では、Plan(計画)で設定した業務計画を実際に実行していきます。しっかりと計画を立てたとしても実行の段階で、成功することもあれば、失敗することもあるでしょう。

 

しかし、この段階で重要なのは、実行した結果がどうなったのかをしっかりと記録しておくことです。改善点を明確にするためにも、まずは実行していきましょう。ここまでの段階を、Do(実行)と呼びます。

Check(評価)

Check(評価)の段階では、Do(実行)で実行した結果について評価していきます。計画と比較してどのような結果になったのか、どれくらい計画と違いがあるのかなどを総合的に判断していきましょう。

 

これは主観的に評価するのではなく、実際の記録に基づいた事実をベースとして判断する必要があります。ここまでの段階を、Check(評価)と呼びます。

Act(改善)

Act(改善)の段階では、Check(評価)で評価した内容を踏まえて、計画を改善していきます。どうすれば良い部分が継続できるのか、悪い部分を取り除くにはどうすれば良いかをしっかりと次の計画に反映できるようにしましょう。ここまでの段階を、Act(改善)と呼びます。

 

PDCAサイクルは、その名称の通りAct(改善)で終わるものではありません。PDCAを繰り返し行うことで、より良い結果を生み出すことができるのです。

PDCA以外のマネジメントサイクルの種類

PDCA以外にも、目標達成のために利用されているマネジメントサイクルは複数あります。短期的な目標達成に向いているもの、新規事業を行う際に向いているものなど、その目的はさまざまです。現在取り組もうとしている目標に合わせたサイクルを軸にすると、より良い結果を生み出すことにつながるでしょう。

 

PDCA以外でよく利用される以下のマネジメントサイクルは、主に下記の4つです。

 

  • PDSサイクル
  • OODAループ
  • CAPDサイクル
  • PDRサイクル

 

それぞれ詳しく解説していくので、見ていきましょう。

PDSサイクル

PDSサイクルとは、下記の3つの要素を繰り返し行うマネジメントサイクルです。

 

  • Plan(計画)
  • Do(実行)
  • See(評価・見直し)

 

PDCAにおけるCheck(評価)とAct(改善)が、See(評価・見直し)という1つの要素に集約されています。要素が集約されていることを除けば、基本的なサイクルの構成はPDCAとあまり変わりはありません。

 

評価と改善を同時に行うことで、短い間隔でサイクルを回せるため、より短期的な目標や規模の小さい業務を行う場合に適しているといえるでしょう。

OODAループ

OODAループは、下記の4つの要素を繰り返し行うマネジメントサイクルです。

 

  • Observe(観察)
  • Orient(判断)
  • Decide(意思決定)
  • Act(実行)

 

PDCAとOODAループは根本的な目的が異なっており、PDCAが業務改善を目的とするのに対して、OODAループは意思決定を目的とします。

 

特徴としては、計画ではなく観察から入ることによって、迅速な意思決定を図れるという点です。また、組織全体の意思決定を行うサイクルとしても用いられるため、PDCAと比べてより経営に近い存在が関わることが多い傾向にあります。

 

上記の点から、新規事業の立ち上げなどを行う場合に適しているといえるでしょう。

CAPDサイクル

CAPDサイクルは、下記の4つの要素を繰り返して行うマネジメントサイクルです。

 

  • Check(評価)
  • Action(改善)
  • Plan(計画)
  • Do(実行)

 

構成される要素はPDCAと同一ですが、取り組んでいく順番が異なっています。特徴としては、初期段階で評価を行うことによって、スムーズに改善から計画に移れるという点が挙げられます。

 

また、現状をよく把握しきれないまま計画を立てるPDCAと比べると、より実行に対するハードルが低いといえます。ただし、初めに行った評価内容がその後のサイクルに大きく影響するため、入念な分析を行う必要があることに注意しましょう。

PDRサイクル

PDRサイクルは、下記の3つの要素を繰り返して行うマネジメントサイクルです。

 

  • Preparation(準備)
  • Do(実行)
  • Review(評価)

 

シンプルで取り組みやすい構造をしていることから、幅広い業務に応用できます。特徴としては、PDCAと比べて高いスピード感で業務の改善を進められるという点が挙げられます。

 

また、予期せぬトラブルがあった際も迅速な対応を行うことが可能です。ただし、迅速な対応ができる反面、「現在どの段階に位置しているか」という部分が混同してしまうこともあります。

 

PDRサイクルを取り入れる場合は、現在は準備・実行・評価のどの段階にいるのかが曖昧になってしまわないように注意しましょう。

マネジメントサイクルで失敗してしまう理由

適切なマネジメントサイクルを実行しているにも関わらず、うまくいかないということもあるでしょう。それにはどのような理由があるのでしょうか。ここでは、失敗してしまう理由の中から代表的な例を2つ紹介していきます。

 

  • 目標の難易度が高すぎる
  • 目標達成までの時間軸を考慮していない

 

失敗してしまう理由を1つずつ見ていきましょう。マネジメントサイクルの導入をお考えの方や、マネジメントサイクルで起こりうる失敗のリスクを知っておきたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

目標の難易度が高すぎる

現実的な目標が設定できていない場合は、サイクルがうまく機能しません。極端に高い目標を設定してしまうと、実行段階で計画との差が大きすぎて、サイクルが回らなくなってしまうためです。

 

あまりにも高すぎる目標は現実性がなく、達成までに必要なタスクが明確にならない、目標が遠すぎて社員のモチベーションが低下してしまうなどの問題が起こりかねません。例えば、前年比数倍の目標設定を行った場合、市場に大きな変化が起きるなどの特別な要素が絡まない限り、目標の達成は難しいです。

 

高い目標を設定することは大切ですが、あまりにも難易度が高いとマネジメントサイクルで失敗してしまう原因になりかねないので、目標設定の際には注意しましょう。

目標達成までの時間軸を考慮していない

目標達成までの適切な時間軸を考慮していないと、サイクルの機能を失う原因となります。

これは、全ての目標が短期的に成果が出るとは限らないためです。

 

例えば、向こう6ヶ月で前年の売上を上回ることを目標に設定するとします。そして現在取り扱う製品は、受注から納品まで2〜3ヶ月の期間が必要です。この場合、実際に受注できる期間は4ヶ月程度しかありません。

 

このように時間軸が考慮されていない目標は達成するのが難しく、意味のない指標となってしまうでしょう。結果として、PDCAサイクルを活かせずに失敗してしまうリスクが高くなるのです。

マネジメントサイクルを成功させるポイント

それでは、マネジメントサイクルを成功させるためにはどのようなポイントに気を付けていけば良いのでしょうか。ここでは、実際にサイクルを回すためのポイントについて解説していきます。

 

  • 目標を明確にする
  • 評価は客観的に行う
  • 原因をしっかりと突き止める
  • 継続的にサイクルを回す

 

マネジメントサイクルを成功させるためには、どのようなポイントに気を付けるべきなのか、1つずつ見ていきましょう。

目標を明確にする

マネジメントサイクルを成功させるためのもっとも大切なポイントとして、目標を明確にすることが挙げられます。

 

目標が曖昧なままでは、計画段階から内容が抽象的になってしまい、その後のサイクルにも悪影響を及ぼしてしまうのです。このような悪循環が起こると、マネジメントサイクルを取り入れた意味そのものが失われてしまいます。

 

目標を設定する際は、具体的な期限を付ける、数値化したデータにするなど、誰が見ても明確な内容にするようにしましょう。

評価は客観的に行う

評価の段階は、主観ではなく客観的な視点で行っていきます。評価の段階では、次のサイクルに向けた準備も兼ねているため、適切な評価を行わないとその後のサイクルにも影響を及ぼしてしまうでしょう。

 

これまでのプロセスの評価を行う際は、良い結果や悪い結果、結果に至った原因などを詳しく評価してください。その際には、主観や感覚で行うのではなく、実際の記録データを用いた事実ベースで行っていきましょう

原因をしっかりと突き止める

評価を行う際は、しっかりと原因を突き止めるのが大切です。これは、結果だけを見ても、原因が判明しなければ適切に改善することができないためです。

 

  • なぜ良い結果が生まれたのか
  • なぜ達成できなかったのか
  • どうしてこのような結果になったのか

 

上記のように、あらゆる角度から原因を分析することで、改善につなげられるでしょう。良い結果が出たからそのままにするのではなく、良い結果が出たとしても原因を突き止めて、より良い結果が生み出せるようにしてください。

継続的にサイクルを回す

マネジメントサイクルは継続的に回していくようにしましょう。これはサイクルを常に改良して回し続けていくことが、成功の秘訣といえるためです。

 

実際に1つのアプローチが、すぐに成功につながるとは限りません。実行した内容に対する適切な評価・改善を行い、次のサイクルにつなげていくことを心掛けましょう。

まとめ

当記事では、マネジメントサイクルやその内容について、詳細に解説させて頂きました。

 

マネジメントサイクルを上手に活用することによって、効率的な目標達成をうながせます。もちろん、状況によってはなかなか結果に恵まれないこともあるかもしれません。しかし、常に改善を繰り返していくことで、よりより結果を手繰り寄せるようになります。

 

まずは置かれた状況をしっかりと見極め、明確な目標を立てることから始めてみましょう。また、マネジメントサイクルについてさらに詳しく知りたい方は、下記の資料をご参照ください。

監修者

広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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