カナミックネットワークの事業内容や今後の成長戦略は?

2022.09.15
カナミックネットワークの事業内容や今後の成長戦略は?

カナミックネットワークは「『人生を抱きしめるクラウド』で、人と社会に貢献する」を成長戦略の基本方針として介護分野を中心に人々の生活に根ざしたクラウドサービスを提供する会社です。介護ソフト業界の大手として事業拡大を続けるカナミックネットワークはどのようなKPIを設定して業務を遂行しているのでしょうか。

この記事では、カナミックネットワークの会社概要や事業内容などの基本的な情報とともに、KPIの推移なども解説していきます。

カナミックネットワークの会社概要

会社名株式会社カナミックネットワーク(Kanamic Network Co.,LTD)
本社所在地〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿4-20-3恵比寿ガーデンプレイスタワー31階
代表取締役代表取締役副会長 山本 洋子代表取締役社長 山本 拓真
設立平成12年(2000年)10月20日
資本金3億2,412万円

カナミックネットワークの事業内容

カナミックネットワークでは、人々が安心して暮らすための医療・介護に特化した3つの事業を展開しています。

  • 介護保険システム
  • 在宅医療システム
  • 子育て支援システム

それぞれのシステムの内容について、見ていきましょう。

介護保険システム

カナミックの介護保険システムは、2021年より介護業界で運用が開始された新しいシステムであるLIFE(科学的介護情報システム)に対応しています。

LIFEは、利用者の基本情報やケア内容、健康状態のデータを収集して蓄積していくことにより、科学的な根拠に基づく質の高い介護を行うことが目的ですが、データの管理や提出などが介護業務の負担になっているという問題点があります。

LIFEで管理しなければならないデータ項目は「総論(ADL等)/機能訓練・リハビリ・その他」、「栄養」、「口腔」、「認知症」など多岐に渡りますが、従来であればこれらのデータや実績管理報告を介護施設やケアマネージャー、地域包括支援センターでバラバラにやりとりしなければなりませんでした。

しかし、カナミックの介護保険システムは、これらのデータの伝達を効率的に行うことができ、加算などの計算が簡便に行えます。

在宅医療システム

カナミックの提供する在宅医療システムは、個人情報の守られた高度なセキュリティを備えており、医療・看護・介護・自治体が職種の垣根を超えて効率的に情報共有を可能にしています。

地域包括ケアシステムを実現するために、共有された情報をただ集約するだけでなく、データの分析や検索機能も備えています。基本情報や家族情報、住宅情報、ADL、認知項目などが一目で分かるフォーマットのフェイスシートにまとめられるため、さまざまな職種の人が関わる現場でも使いやすいシステムです。

また、掲示板形式で情報管理を行えて、さまざまな業種の関係者がお互いのスケジュールを気にすることなく気軽なコミュニケーションを取れます。ExcelやWord、PDFなどの文書はもちろん、写真や動画のデータも共有できて、分かりやすく利用者の状態を伝えることが可能です。

子育て支援システム

カナミックでは、住民にとっても自治体にとってもメリットのある、地域ぐるみの子育てをサポートする子育て支援のクラウドサービスを提供しています。行政や企業からの子育てに関する情報配信や、子育てに関する相談、また電子母子手帳や子どもの成長記録などの機能があり、長期に渡る子育てを地域の皆で見守ることができるサービスです。

従来の育児支援では、行政機関の窓口や紙媒体による通知が一般的で、積極的な広報活動がないとうまく機能できないという問題点がありました。カナミックの子育て支援クラウドサービスでは、子育て家庭が行政からの情報を一元的に取得しながら、気軽に行政や医療関係者などへの相談が可能となるため、スマートで快適な地域ぐるみの子育てをサポートできます。

また、身長、体重などの成長グラフや食事・トイレ・睡眠時間などの健康管理を手持ちの端末から気軽に入力し、記録に残せる機能もついており、成長を感じられるだけでなく、地域での支援にも役立ちます。

カナミックネットワークの市場規模

カナミックネットワークの代表的なサービスであるカナミックは、現在介護ソフト業界で上位シェアを誇っており、特にサービスの使いやすさやデザインに定評があります。

少子高齢化が進み、高齢者人口が増加し続けている日本では、医療・介護従事者に対して要介護者が超過状態にあり、負担が大きくなっています。また、昨今では新型コロナウイルスの蔓延により、ますます医療現場がひっ迫されています。

カナミックの介護保険システムを活用すれば、介護のニーズの把握やパーソナライズがまとめてできる上、地域全体で情報共有ができるため、医療・介護従事者の負担軽減につながるでしょう。

業務内容が幅広く、継続的なサポートが必要となる介護業界では、業務効率化につながるシステムが必要とされており、今後もその需要は高まっていることが考えられるため、カナミックの介護保険システムの市場規模の拡大が期待できます。

カナミックネットワークの業績推移

2018/92019/92020/92021/9
売上高(百万円)1,5041,6851,8812,080
経常利益(百万円)380543676829

引用:カナミックネットワーク2022年9月期第2四半期決算および会社説明資料

上記の図から、カナミックは前年度から順調に業績を伸ばしていることが分かります。2022年第二四半期の業績は予想を上回っており、コロナ禍でも安定した売上を保っていることから、今後の売上も期待できるでしょう。

カナミックネットワークの今後の成長戦略

カナミックネットワークの成長戦略は、「『人を抱きしめるクラウド』で人と社会に貢献する」という価値観が前提となっています。既存事業であるヘルスケアサービスを成長させて、世界中の人々が利用できるようにして、全利用者に付加価値を提供することを目標としているようです。

また、既存事業を成長させるだけでなく、新たな事業への参入にも積極的に挑戦していき、会社全体を成長させる戦略を立てています。

また、事業の拡大・補強の手段としてM&Aも積極的に検討しているとされているなど、今後の成長戦略に期待できるでしょう。ここでは、カナミックネットワークの今後の成長戦略について解説していきます。

人と社会に貢献

カナミックの中心となる事業コンテンツは、人が生まれてから亡くなるまでの健康管理PHRです。

近年、医療分野の情報化の取り組みが重要視されており、住み慣れた地域で質の高い医療サービスを受けながら安心して生活していくために、ICTを活用した情報連携が積極的に進められています。

カナミックネットワークでは、子どもから現役世代、アクティブシニア、要介護者に至るまで、全ての人の健康情報を記録・共有できるコンテンツを構築します。カナミックが提供するサービスは、個人の健康管理だけでなく、医療従事者や介護従事者のビジネスパーソンや、自治体にとっても価値のあるサービスであり、このサービスを通じて人と社会に貢献することがカナミックの目指す目標です。

プラットフォーム化

カナミックネットワークでは、既存事業であるヘルスケアサービスをプラットフォーム化し、ユーザーの拡大を目指しています。そのために、まずは基本となるシステムにAIなどの最新技術を活用して、利用者を拡大するというビジョンを立てているようです。

例えば、ケアプランの作成にAI技術を活用して人にかかる負担を減らしたり、システムを多言語化してより多くのユーザーを取り込んだりする戦略です。また、ヘルスケアシステムに限らず、シェアリングエコノミーやフィンテック、インターネット広告などの事業も展開することにより、カナミッククラウドサービスを人々の生活に根ざしたサービスにし、包括的に人々の生活を支えていくことを目標としています。

新サービスリリース

カナミックネットワークは、これまでサービスを展開してきた医療介護分野でのノウハウを生かして、新たなサービスの提供を開始しています。

「カナミックかんたんWeb明細」は、従来の請求業務で行っていたアナログな作業負担を大幅に軽減させるサービスです。印刷や郵送の手間をカナミックネットワークが代行することで、作業負担が軽減できます。

「健康都市連合の電子健康手帳」は、健康管理として食・運動・認知機能などの日々のデータを簡易的な方法で取得できるようにすることで、未病の段階から保健専門職・医療職によるデータに基づいたアドバイスを得られる仕組みです。

「子育て向けAIシステム」は、児童虐待のリスク要因およびリスク度をAIの活用によって自動的に判定して、小さなリスクを見落とさないための技術です。

このように、カナミックネットワークは医療介護分野で培ったノウハウを活用して、より多くのユーザーが利用できるよう、サービスの幅を拡大しています。

M&A

カナミックネットワークの成長戦略として、M&Aを積極的に推進することによる事業の拡大を掲げています。

2022年5月には、アーバンフィット社の株式を取得し、連結子会社とすることを発表しました。アーバンフィット社は大阪を中心に24時間営業のフィットネスジムの運営およびフランチャイズ展開を行っている企業です。

カナミックネットワークはアーバンフィット社を連結子会社として、健康寿命延伸事業分野の成長・拡大を図っています。

近い将来、日本の高齢化率が30%を超えることが予想されています。そんな中、カナミックネットワークは介護世代の高齢者のサポートだけでなく、全ての世代がより長く健康でいられるようにサポートして、人と社会へ貢献するのが目標です。

ブランディング

カナミックネットワークの次なる成長フェーズはブランディングです。カナミックネットワークは、2030年までの成長ビジョンとして4つの段階を設定しています。

1段階目は企業・自治体を対象とするユーザーの獲得です。安定した顧客層を獲得するため、医療・介護・子育てのクラウドサービスを展開しました。2段階目はプラットフォームサービス拡大です。企業としてさらなる成長を遂げるために、従来の医療介護分野から事業の幅を広げています。

そして、3段階目がブランディング、4段階目が海外展開です。現在は海外展開に向けて、国内のブランディング強化に取り組んでいます。ブランディングの一環として、製薬関連のデータビジネスや健康寿命延伸事業の発展を目指しているようです。

カナミックネットワークの主なKPI

カナミックネットワークのビジネスモデルは製品を販売して完了ではなく、契約期間中に利用料が発生するサブスクリプション型です。そのため、売上を確保していくためには新規顧客の獲得だけでなく既存顧客を長期的に維持することも重要です。

このようなクラウドサービスビジネスの収益を左右する重要なKPIについて、見ていきましょう。

MRR

引用:カナミックネットワーク2022年9月期第2四半期決算および会社説明資料

クラウドサービス型のビジネスでは、毎月定期的に発生する収益を表すMRR(Monthly Recurring Revenue)をモニターすることが重要です。MRRは月間の収益を表す数値ですが、年間の収益を表すARR(Annual Recurring Revenue)もよく用いられます。

カナミックネットワークは決算資料の中で直接MRRやARRには触れていないため、具体的な数値は分かりません。その代わり、導入地域を増やすほどユーザーが増えるというスキームになっているため、導入地域数を重視して公表しています。

導入地域の推移から、導入地域数が2018年から安定して毎年増加していることが分かるため、MRRおよびARRも年々増加していると想定できます。

MRRについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事で紹介しています。

チャーンレート

SaaS企業において、チャーンレート(解約率、顧客離脱率)は重要な指標です。カナミックネットワークではチャーンレートの数値を公表していませんが、2021年9月期第3四半期決算説明会で「今年度の比較的早い段階から解約率が安定しだした」という内容のお話をされていました。その状態が続いていれば、現在も安定していると考えられるでしょう。

また、2022年9月期第2四半期決算説明会では、解約やダウンセルに関する対応方針を打ち出しています。これらの対策次第では、解約率の減少も期待できるでしょう。

チャーンレートについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事からご覧いただけます。

ユニットエコノミクス

引用:カナミックネットワーク2022年9月期第2四半期決算および会社説明資料

ユニットエコノミクスとは、顧客や製品などのユニット単位で事業の経済性を測定するためのもので、SaaSビジネスで特に活用されることが多い指標です。ユニットエコノミクスはLTV(顧客生涯価値)とCAC(顧客獲得単価)の比率であり、顧客獲得のためにかけるコストの有益性を図る指標となります。

カナミックネットワークではユニットエコノミクスの数値は公開されていませんが、プラットフォームサービスのさまざまな広告で収益が上がる仕組みになっているため、ユーザーを無料ユーザーと有料ユーザーに分け、それぞれのID数の推移を公開しています。上記の図より、ユーザー数が堅調に伸びており安定した収益が期待されることが分かります。

ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事で解説しています。

まとめ

カナミックネットワークは、医療介護分野におけるさまざまなクラウドサービスの運営や、健康寿命推進事業への展開など、今後も成長が期待できる企業です。2030年までのビジョンでは海外展開も目標としており、新規サービスを次々とリリースするなど着実にステップを進めています。

カナミックネットワークはクラウドサービス型のビジネスを展開していますが、商品販売ではない事業において特に重要なKPIとしてはMRR、チャーンレート、ユニットエコノミクスなどが挙げられます。

カナミックネットワークでは中長期的な視点で事業の拡大に向き合ってもらうため、これらのKPIの推移を公開していません。その代わりに、独自の事業形態に合わせて導入地域数や無料ユーザー・有料ユーザー数の推移をKPIとして設定し公開しています。

KPIを設定することにより達成すべき数値を具体化できるので、目標の達成に向けてモチベーションの維持や方針の修正などを行えるようになります。

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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