上場を目指すなら今すぐ実践!KPIマネジメント 爆発的成長への道!拡大と効率性のジレンマを克服する方法|イベントレポート
2023.7.2
株式会社リブ・コンサルティング様が主催する「上場を目指すなら今すぐ実践!KPIマネジメント 爆発的成長への道!拡大と効率性のジレンマを克服する方法」に株式会社Scale Cloud 代表広瀬がゲスト講師として登壇しました。
オープニング
昨今のVCの投資スタンスが厳格化した背景には、欧米の金融引締による株式市場の下落があり、事業の成長シナリオへの納得は最低限必要な要素として、投資回収期間・利益水準・残余財産の分配比率における求められる水準が上がってきました。
そのような環境下において、
- 効率性を意識してストック収益をメインとしたビジネスモデルに転換してきたが、スケールも効率化も難しく、今何を重点として進めばいいかわからない
- スケールしたいがそのためにはコストが掛かる、一方効率性を求められるが効率性を重視しすぎるとスケールが難しいというジレンマを抱えている
上記のようなお声は多く、3年後の成長へのロードマップは描けているが、事業のフェーズと今期追っている重点KGIの定義・水準にズレが生じていることが往々にしてあるのが現状です。
では、適切な舵取りをするために、今追うべき重点KGI・KPIを考える上で、どんな変数があるのでしょうか。
- 事業フェーズを鑑みた際に、今回の重要KGIはなにを選ぶべきなのか?
- KGIはいくつ選ぶべきなのか?
- そのKGI・KPIはどんな時間軸でPDCAを回し、達成すべきKGIなのか?
- どのレイヤーの人がどのKGI・KPIを責任範囲とするのか?
- 複数事業間のバランスはどうするか?
上記記載の内容のほかにも、たくさんの変数があり、とても難解です。
本セミナーでは、日本初の経営マネジメントダッシュボードの開発者株式会社Scale Cloud 広瀬によるKGIKPI点検シミュレーションと、
SaaS事業責任者視点でのPDCA事例をお届けしながら、成長性と効率性のジレンマを紐解いていきます。
登壇者紹介
講師
株式会社Scale Cloud 代表取締役
広瀬 好伸(ひろせ よしのぶ)
2003年京都大学卒業、あずさ監査法人に入社し、公認会計士として従事。2007年起業、CFO/IPO/M&A/企業再生などのコンサルタントとして800社以上の経営をサポート、4社のIPOに携わり、そのうち2社の社外役員も務める。KPIマネジメントのスペシャリストとして、KPIを活用してPDCAをまわし10xな事業成長を手に入れる日本初のKPIプラットフォームSaaS「Scale Cloud」を開発・提供。
講師
株式会社リブ・コンサルティング
執行役員 兼 アンバサダークラウド事業責任者
石井 祐季(いしい ゆうき)氏
早稲田大学教育学部卒、筑波大学大学院にて教育学修士取得。リブ・コンサルティング入社後、マネージャー・オブ・ザ・イヤーを2年連続受賞、2017年に事業部長に就任。2020年に最年少で執行役員に抜擢。住宅・不動産業界を中心に、メーカー、流通、エネルギー、PR、Tech等、さまざまな業界のグロース支援、新規事業立ち上げ、組織開発支援、経営コンサルティングを担当。現在、紹介口コミを増やすSaaS「アンバサダークラウド」の事業責任者を務める。
モデレーター
株式会社リブ・コンサルティング
ベンチャー事業部 マネージャー
坊 将徳(ぼう まさのり)氏
司会
株式会社リブ・コンサルティング
米山奈緒(よねやま なお)氏
企業紹介
株式会社リブコンサルティング
株式会社リブ・コンサルティングとは「”100年後の世界をよくする会社”を増やす」という企業理念を掲げた経営コンサルティングファーム。
マーケティング/セールス領域から総合経営コンサルティングまで幅広くコンサルティングを行っており、支援している中にはスタートアップ/ベンチャー企業も多く、SaaSのARR上位10社のうちの半数はリブ・コンサルティング様が支援をしている。
株式会社Scale Cloud
「クロス・ファンクショナル・プラットフォーム(CFP:Cross Functional Platform)を創る」ことをビジョンに掲げ、
独自開発した経営マネジメント理論「Scale Model」を活用した、ビジネスモデルを定量化するマネジメントクラウドサービス「Scale Cloud(スケールクラウド)」の開発、提供からコンサルティングまでを行う。
ング/セールス領域から総合経営コンサルティングまで幅広くコンサルティングを行っており、支援している中にはスタートアップ/ベンチャー企業も多く、SaaSのARR上位10社のうちの半数はリブ・コンサルティング様が支援をしている。
セミナー開催の経緯
坊:
本セミナーを開催しようと思った発端として、もしかしたらスタートアップ界隈は敏感になっていると思いますが、昨年SaaSのバリデーションがぐっと落ち込んだりしていく中で、利益を出さなきゃいけないという市況感が大幅に変わってきています。とはいえ、成長・事業加速をしていかなきゃいけないというジレンマがある中でどのようにやっていくのか?というところが共通したお悩みになっていると思います。
そういった背景から、本セミナーアジェンダである「拡大と効率性を追及するために」というところが大きなテーマではありますが、その前段として、世の中で何が起きているのか?というところを皆様と共通認識にできればと思い、本セミナーの開催にいたりました。
VCの投資スタンスの変化
坊氏:
SaaSへの投資姿勢が一気に厳しくなったといわれているのですが、果たしてこれはSaaSだけなのでしょうか?というところは一度立ち戻って考えてみてもいいと思っています。
VCのスタンスの変化
坊氏:
これまではトップラインをいかに早く上げていけるか?というところが重要視されていました。
- 黒字転換まで7年かかかる
- 売り上げさえたって、コストカットしていけば利益が出るモデル
- アクセルを踏んでいるだけでは赤字
このような共通認識の中でいかに売り上げを上げていくかを求めていくか?が今までのモデルとなっています
ただ、これからの戦い方としては、キャッシュフローの面ももちろん当たり前に考えていかないといけないですし、投資家からの一定の水準で成長してくださいという要求がありつつも一方で利益をみておかないと怖いという流れもある、というところが、大きな変化ができてきたところだと思っています。
だからこそ今は成長と効率の両輪を回すことが求められるようになりました。
VCのスタンスの変化の背景
坊氏:
実際問題本当に起きているのか?というとこれは本当に起きている事象です。
これは欧米を発端にしていますが、投資家陣からどれくらいのお金が上場/非上場のどちらに流れているか?を見ていったときに
個々のファンドを見ていっても若干減ってきている傾向があります。
坊氏:
かつてのスタートアップの事業拡大は「顧客獲得」をすればいい、
何でもやる分、赤字になるのは当たり前という流れでした。
グロースのオプションとしても色々な手をつくしてやっていって、ひっくるめてユニットエコノミクスがあっていればよいという考えでした。
坊氏:
そういったところから、
それぞれを分解してみていって、一定のオプションデジタルは切り捨てないといけない、要するに無駄なコストを払わずに的を絞るということが求められています。
評価軸が変わった今求められるもの
坊氏:
こちらのスライドでは造語にて例えておりますが、
これまでの「ユニットエコノミクス型 量的グロース戦略」というところから、これからは「ベストモデル選択型 質的グロース戦略」を取らないといけなくなりました。
評価軸が変わったがゆえに、適切に利益を出せて、世の中・投資家から評価をされるような状況に持っていかないといけない状況になっています。
実際に「アンバサダークラウド(リブ・コンサルティング様の社内で立ち上げたSaaSツール)」の事業をされている側面からも石井さんに伺ってみたいのですが、
こういった世の中の変化・トーンの変化は実際に感じられていますか?
石井氏:
そういった変化は実際に感じる部分があります。
弊社としても同様であり、スタートアップの経営者の話を聞いても同様に思います。
ファイナンスの力を大きく借りられる場合においては、ゲームが変わる側面があると考えていますが、実際にはどんぶり勘定でも構わなかったり、費用対効果を細かく見る必要性も薄かったです。
しかし、最近ではそのあたりが厳格に見られるようになりました。
例を挙げるとすれば、タクシー広告を出す会社がかなり減少したといった変化も感じ取れます。
トップラインの観点から言えば、システム費用以外の収益を、サービスも含めて確保していくことが求められています。
ターゲットをエンタープライズに設定し、儲かりやすい方向性を追求していくことも強まっています。
こういったこともより強まっていっているのが肌でも感じられる状況です。
私自身も経営していく中で、そうしたアプローチを取らないとなかなか求められている状況になっていかないと感じています。
坊氏:
ありがとうございます。
石井さんのお話を聞いて思ったところとして、
最近のSaaS企業のトレンド・流れとしてあるのは、システム自体には月額費用が発生し、その利用を最大限活かすためにカスタマーサクセスという部隊が存在することが一つの特徴です。
カスタマーサクセス部隊は、コストセンターにならないように注意しながら、しっかりと成果を出すために顧客に寄り添いサポートを行います。
その一方で、カスタマーサクセス部隊自体も収益化を図るために、一定の費用の負担をお願いする形で収益を生み出そうとしている、カスタマーサクセスのマネタイズをしにいっている印象があります。
”最適”を選択する際に考えるべき変数は多い
坊氏:
先程の内容を法人で考えていこうと思ったときに、最適解はどこにあるのかを考える上で、
- ビジネスモデル上、こちらでマネタイズをするという方針
- 外部環境がどのように変化しているのか
- 自社が取るべきフェーズであるかどうかを考えること
- 実現に必要なリソースが十分にあるのか、どのように配置すると実現できるのかを検討
これまでは結構どんぶり勘定で、とりあえず売上を伸ばすことが重視されていました。
しかし、「ちゃんと経営していかなければならない」という文脈が強くなり、シンプルにやるだけではなく、よりしっかりとした経営を行う必要性が高まってきています。
経営視点の”最適”ゴールに向けて現場はついてくるか
坊氏:
こうした場合には、
- 当初の予想通りにすぐに黒字転換できるモデルであるかどうか
- 必要な人材やリソースは確保できるかどうか
など、考えなければならないことは多くありますが、
それ以上に重要なのは、経営層がこうした要点に注意を向けることです。
経営視点の最適ゴールに向けて、現場のメンバーとの視点を合わせる必要があります。
経営層の視点では、「事業拡大」と「効率性の追求」ということを重視する中で考えながら動いていかなければなりません。
どうすれば、経営と現場が一丸となって拡大と効率性を追及することができるのか?
坊氏:
どうすれば、経営と現場が一丸となって拡大と効率性を追及することができるのか?
というところを考えていくときに
SaaSにおける一般的なKPIとしては「顧客数 / 単価 / チャーンレート」が考えられます。
ただ、これらだけを見ていても経営上の「コストサイド」は見えてこない部分です。
現場のトップのKPIとしてこれらを重視するのは良いですが、ただそれにだけ追及してコストが増え続けると、経営的にはしんどい状態となります。
経営層と現場の間で共通言語はどのように設定すべきかというお話が今日1番の主題だと思っています。
企業価値を上げる為のROICツリー(一部抜粋)
坊氏:
リブ・コンサルティングとしては、売り上げや利益をトップに据えてツリーを描いていくと、現場の視点を捉えることが難しくなり、結局はPL(利益)中心の考え方になってしまいます。どうしても事業の視点との結び付きをつけることが難しいです。
仮に上場を目指しているような企業であれば、「エクイティファイナンス」を重視することが最上位になることもあります。その場合、ROIC(Return on Invested Capital)をトップに置いたツリーを描くことが良いと考えています。
ROICって上場していない内は関係ないのではないか?
坊氏:
ROICに関して、上場していない企業には関係ないのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、投資のスタンスや企業の評価方法が変化している現代においては、上場・非上場に関係なく、皆が共通してROICを追求する必要があると考えます。
拡大と効率性を追及するために
坊氏:
ここからは、ROICを追求する話題に加えて、拡大と効率性を追求するためのテーマについてお話しできればと考えています。
実際に広瀬社長がご支援先企業のIPOに関与してきた経験をお伺いしながら、パネルディスカッション形式で「効率性の実現」という観点でお話を進めていきたいと思います。
Scale Cloudとは?
広瀬:
起業をして17年、数字を通した経営管理の領域を中心に、約800社にコンサルティングを提供してきた経験があります。
その中で4回ほど上場に携わる機会があり、現在もその内2社の社外役員を務めています。
上場シーンを見ていく中での、大きな一つの変化として
審査上、予算管理に求められる精度が格段に上がってきたと感じます。
ここ5~6年の中で、予実管理の精度を高める手段として「KPI」というものが広がっている傾向があります。
予実管理とKPIは切り離せない関係ですが、分断されているケースが多く見受けられます。
例えば、予実管理はコーポレート、KPI管理は事業部といったように、うまく連携が取れていないケースが多いです。事業部内でも、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスがそれぞれにKPIを管理しています。バラバラに管理するのではなく、横断的にKPIを通じて全体最適な視点でPDCAサイクルを回す必要があります。
最終的なゴールは予実管理であり、予算達成を目指すという目的の元、それと紐づいたKPIのマネジメントを部門を横断して行える状態を作ることです。その全体最適なKPIマネジメントをしていくためのインフラとして、Scale Cloudというクラウドシステムを開発・提供しています。
予実管理においてKPIが部署ごとに分断されているような状況では、横断的な視点で捉えていく必要があります。
セクショナリズムの課題
坊氏:
予実管理や部署間の分断などこのようなセクショナリズムが生じることについて、
石井さんにお伺いしたいのですが、実際問題起こっているのでしょうか?
石井氏:
現在の社員数は25名で、ちょうど30名の壁にぶつかっています。セクショナリズムが生じていると感じています。
SaaSに関しては、部門の利害が対立する側面もあります。
マーケティングやセールスは契約獲得に注力しなければならず、カスタマーサクセスは顧客の成功に向け手支援をしていく中で、マーケティングやセールスが雑な受注をすると後の支援が大変なことになります。
機能開発に関しても、カスタマーサクセスは顧客の成功のために機能開発をしてほしいと考えますが、マーケティングやセールスは新規獲得のための開発を求めます。
こうした要望が重なると、プロダクトの開発が大変になってしまいます。
それぞれの部門が追うKPIや数字設定がありますが、会議だけでそれを共有しても他の部門には関心を持たれないまま終わってしまうという問題があります。
各部署が追っている数字との繋がりを深堀りして理解を共有しないと、お互いが協力して同じ目標に向かうことが難しい側面も出てくる規模感だと思います。
坊氏:
このようなセクショナリズムが生じるフェーズは、30名の壁や50名の壁などがあると思いますが、実際にその分断を回避するための取り組みはどのフェーズから始めるのが良いでしょうか?
広瀬:
上場を目指す企業では、N期の予実管理の精度を確実に合わせていかなければならないという至上命題があります。ただし、いきなりそれを実現することは組織的にはとても難しいです。その状況に陥らないために、できるだけ早くその練習を始めることが非常に重要となってきます。遅くともN-2の段階からは最低でも始めることが望ましいですし、できればさらに早く取り組むべきです。
たとえ話ですが、N期の目標は100m走を10秒で走ることです。ただし、その競技は特定の個人が頑張って10秒で走れば良い競技ではありません。2人3脚のような競技であり、50人の組織全体が協力して10秒で走ることを目指すのです。そのためには、練習期間が長ければ長いほど良い結果を残すことができるでしょう。
坊氏:
事業立ち上げ期などに関係なく、早い段階で「同じ目線で進める土台」を築くことが重要です。早いうちから土壌が整っている方が、後からジョインするメンバーもスムーズに馴染めます。従業員規模が一定増加した時に一気に取り組もうとすると、より多くのエネルギーが必要になりますので、早い段階での取り組みが望ましいと言えますね。
広瀬:
おっしゃる通りで、もしもそれがデフォルトの状態であれば、50人の組織に51人目のメンバーが加わっても、その運用方法は普通になるでしょう。しかし、デフォルトにならないまま100人の組織になった場合、新しい取り組みは組織的に困難であり、現状維持バイアスが強くなります。なるべく早い段階でカルチャー作りに取り組むことが重要です。
坊氏:
予実管理を適切に行わなければ、部署間のセクショナリズムを解消することは難しいです。部署ごとの横の連携だけでなく、経営者と現場という縦の視点の合わせも重要です。
アンケート
参加されている皆様からの投票機能によるアンケートを実施いたしました。
質問:「KPIマネジメントの中で、どのような課題感が強いですか?」
- 実績管理はしているが予実まで管理するのは管理コストを含めて重たい
- 部署ごとに分断管理しているので横の目線合わせが難しい
- 経営陣と現場側の縦の目線合わせが難しい
- 予実管理のダッシュボードがないので目線合わせが難しい
こちらアンケート結果によれば、「部署ごとの分断管理が行われているため、横の目線合わせが難しい」という課題感が多く見受けられました。
ここからは、皆様の課題感に合わせながらこの後のお話を進めていければと思います。
経営陣の目標に現場がついてくるには?
坊氏:
これまでの繰り返しになるのでここについてはさらっと行きますが、
- 日常で使う言葉で指標が表現されている
- 自分たちの最重点ゴールがわかる
- 経営が目指している指標と、自分の活動のつながりがわかる
というのは理想的なお話です。
かつ、先程のお話でお伝えしたように、営業・CS・開発・バックオフィスなど、様々な部署が存在する中で、自分たちの活動が経営にどのように関わっているのかをより明確に可視化することが望ましいと考えます。
ROICツリーをうまく活用している事例~オムロン~
事例:オムロン
ROICを最上段に置きながら、逆ROICツリーを描いています。
ROICを最上段に配置し、それぞれの独自の指標を部門ごとのKPI/KGIに展開しています。
これらは付加価値率や販管費率につながり、これらが売上高営業利益率に影響を与えています。自分たちが経営の中でどの領域を担っているのかを紐付けながら、横断的にも俯瞰できるようになっているの、非常によい事例と言えます。
- とは言えROICを最上段に置くと管理項目が莫大な量になるのでは?
- 莫大な管理項目の中でだれが何をどの時間軸でみればいいのか?
先の事例はあるべき論的にお話をしましたが、皆様の立場に立って考えると「とは言え、ROICを最上段に置くと管理項目が膨大な量になるのではないか?」「莫大な管理項目の中でだれが何をどの時間軸で見ればいいのか?」という疑問もあります。
あるべき論でツリーをこのように描くことが理想的であると語るのは平面的でいうともちろんそうなのですが、実際の取り組みの際にはどのように進めればいいのか、という疑問が浮かびます。これは皆様の気になる部分であるかと思います。
これは順を追ってシミュレーションもしながら、このように取り組めば意外といけるんだということを広瀬社長に解説していただきながら、この後のお話を進めていきたいと思います。
実際にScale Cloudを使用しながら、ROICツリーを作成していく様子をご覧いただきたいと思います。
皆様には「3分クッキング」を見るような形でご覧いただければと思います。
拡大と効率性の点検シミュレーション
広瀬:
ここからScale Cloudを使用してROICツリーの作り方を解説をしていきます。
ROICのトップは投下資本利益率です。作り方としてはオムロンの例もありますが、それが正とは限りません。
ロジックツリーを作成する際には、「なぜロジックツリーを作るのか」というポイントがあります。
ポイント1:MECE(ミーシー)に漏れなくダブりなく必要なKPI項目を洗い出しやすい
ポイント2:四則演算の関係性を利用してロジックツリーを構築していくと良い結果が得られる
「投下資本利益率」の下には「営業利益率」と「投下資本回転率」があります。
「営業利益率」をさらに分解すると、「売上」と「費用」に分かれます。また、「投下資本回転率」を分解すると、「運転資本回転率」と「固定資産回転率」になります。
このような分解を繰り返していくと、SaaS企業の例では「売上」をさらに「MRR」と「スポット売上」に分けることができます。そして、「MRR」をさらに分解すると、「新規MRR」「エクスパンションMRR」「コントラクションMRR」「チャーンMRR」の足し算と引き算ができます。
こうした分解をどこまで進めるか、どこまで深掘りするかは、重要な課題となります。
他の項目を深掘りしていくと、数百もの要素が軽く出てくることもあります。ROICをトップに置いたときに掘り下げていくと、こういった要素が形成されていきます。
▼KPIツリー(例:SaaS企業)
投下資本利益率
└投下資本回転率
└運転資本回転率
└固定資産回転率
└営業利益率
└費用
└売上
└スポット売り上げ
└MRR
└アップセル(エクスパンションMRR)
└ダウンセル(コントラクションMRR)
└チャーンMRR
└新規MRR
└単価
└契約数
└販売代理店
└直販
└成約率
└商談数
└商談化率
└リード数
└展示会
└SEO
└Web
└CVR
└CTR(クリック数)
坊氏:
すごいですね、ここまで隅々まで可視化されるんですね。
ちょっと気になったところが、ROICの下の部分の大きなカテゴリの「各種(KPI)」のところに直したりするのですか?
広瀬:
ROICの下には「各種」のKPI指標が存在します。これはSaaS企業を例としているので、SaaSビジネスでいうとこのような主要なメトリクスはだいたい決まっています。
KPIを「結果指標」と「先行指標」に分けて考えており、これらはあくまで結果のみを示すものと考えています。結果指標の主要指標は、計算ロジックに必要な要素が、既に作成したロジックツリー内に組み込まれているため、ツリーの数字から取り出し、各種の主要メトリクスのロジックを作り上げる構造となっています。
坊氏:
ROICのツリーではMECE(ミーシー)に一定分解を行い、細かくどこまで見るかという問題がありつつも、このツリーに数字を入れていくことで現時点の状況は把握できることは理解できました。その上で、予実を見ていく部分については、どのように見ていけばよいのでしょうか?
広瀬:
まずは予実の予(予算)の部分からいくと
これをベースに予算をどのように作るのか?というところをお話します。
先程ご覧いただいたツリー構造が階層構造になっていますが、
例えば、
- セッション数:20,000
- CVR:2.00%(これくらいのリードが取れそう、というのがわかる)
- 商談化率:40%
- 商談数:160件
- 成約率:25%
- 契約:40件
- 単価:20万
- MRR:800万円
といった具体的な数字をKPIごとに計画立てています。
これにより最終的なROICや売り上げが把握できます。各KPIには目標値が設定されており、その目標を達成することでROICが実現する、というシミュレーションが可能です。
シミュレーションは複数のシナリオで作成することが良いと思います。
- 標準シナリオ
- 社内目標用の強気のシミュレーション
- 外部に公表するための保守的なシミュレーション
など、さまざまなパターンのシナリオを考慮し、パラメータごとに異なるシミュレーションを行うことが計画策定の際には重要となります。
先程の話の繰り返しになりますが、「ロジックツリーをどこまで深掘りして作るか?」という点も関わってきます。ロジックツリーを採用する理由の1つは、「因果関係がわかりやすい」という点です。
では、このロジックツリーを活用してどのように振り返るのでしょうか?
Scale Cloudを使用することで目標と実績の差異が把握できます。そして、「なぜそのような結果になったのか?」という深堀りを行う際、ロジックツリーであれば「未達成の原因」は1つ下の階層にあることがわかりやすく、因果関係が明確になります。これはロジックツリーの大きな特徴になります。
深掘りを進めつつ、因果関係を理解する特性を生かすためには、ロジックツリーの作成が有効です。そのフレームワークに従って進めていき、KPI間のストーリーを理解しやすくすることで、問題があるKPIを可視化することが可能となります。
KPIをどこまで深掘りしていくかに関して、目線合わせの課題があります。
- 経営者と現場
- 事業部間(マーケティング / セールス / カスタマーサクセスなど)
目線合わせを行うためには、どの領域の人がどの指標を追いかけているのかを認識する必要があります。各領域で追いかけている指標や見たい指標をロジックツリーに組み込んでいきます。
深掘りの方法は、分解をどのチームのKPIまで広げるかによって変わります。要素が多くなっていくかどうかは、どこまでの目線合わせをし大火によって変わります。先程の例ではセールス・マーケティングまで広げたパターンです。
目線合わせが難しいパターンとして、各領域で見たいデータや追いかけているデータしか見えていない状況で共通認識を持つのは困難です。そのため、同じ景色を見ることが重要です。
同じ景色を見るために、例えば4つの部門(経営 / CS / セールス / マーケ)からそれぞれKPIを集め、20個ずつ集めたとします。しかし、80個の指標がばらばらに並んでいると情報はあるものの共通認識がバラバラになります。そのため、これらの80個の指標をロジックツリーというフレームワークに収めることで、因果関係が分かりやすくなります。これにより、4つの部門の目線合わせや共通認識がしやすくなります。
このようなアプローチによって、先程のアンケートで出た「部署ごとの分断管理が行われているため、横の目線合わせが難しい」という課題感も解消しやすくなると考えられます。
先ほど、2社ほど社外取締役を務めさせていただいたという話をしましたが、そのうちの1社はKPIマネジメントのレベルが非常に高い会社だと思っております。
その会社は、最初に10人程度の規模から始まり、経営者を中心に常にKPIツリーを皆でアップデートし、その指標を基に皆でPDCAを回す共通の習慣が組織全体に根付いていました。人数が何百人になっても、このプロセスが通常のルーティンとして根付いています。そのため、早い段階での取り組みが重要だと思います。
最初から何百もの指標が必要なわけではないかもしれません。20〜30個程度から始めて、徐々に増やしていくと何百個になるかもしれません。
まずは、同じ目線合わせをするために、みんなでどのような指標を見ていくかを整理することが大切だと思います。
坊氏:
ありがとうございます。なるほどですね。
こうして見ていくと、予実の「予算」の部分を考える際にも、自信を持って進める「強気」の予測や、「確実に目標に向かって進む」というベターケースなどを描いていく中で、どのパラメータがどこまで進めば目標達成のラインに到達するかが明確になるので面白いなと思いました。
一方で、これを実践する際には、ツリー構造になっている以上、MECEに出されている部分もあるので、すべての指標を網羅的に見ることはしんどいのではないか、そのため濃淡や重要度に応じてピックアップして見ていくようなケースも往々にしてあると思いました。その上で、特定の指標をいくつかピックアップする際には、どのような方法が考えられますか?
広瀬:
KPIという言葉を使ったとき、「何百もあるのはおかしい」と言われることがよくあります。一般的には「もっと絞り込むべきではないか」という意識が広まっていると思います。人間が一度に200〜300の項目を均等に追いかけることは難しいので、絞り込んで数個に絞るケースになることが多いです。
ただし、KPIマネジメントを長く続けている会社が「5個選ぼう」と言われたらまあまあできると思いますが、そうでない状態で急に5個を選ぶことは逆に危険だと思っています。
例えば、皆さんも年に1回の健康診断を受けることがあるかと思います。血液検査の結果が返ってくると思います(血小板数や赤血球数など)。この検査結果表は、例えば次のような2つのタイプがあります。
- 40代の広瀬君はこれらの5つの項目だけを見れば良いという検査結果表
- フルスペックで調べた場合、100個の項目で結果が示される検査結果表
これでいうと、後者の100個の検査結果表の方が僕は欲しいと思います。5個に絞られた結果表に対して、組織全体の納得性があるかというと、納得性はないと思います。また、残りの95個の中に異常値があった場合、どのように対処するのかという点も考慮すべきですので、私は100個の項目が欲しいです。
大前提として、急に5個の項目で絞るというのは危険だと思っており、100個のモニタリングから始めていくべきだと思います。
100個の項目があったところで「しんどい」と感じるのは、同時に全てを追いかけることはできないからです。
検査結果表も、100個の項目の検査結果表の結果が返ってきたからといって、全てを見るわけではありません。
- 赤色になってC判定となっている項目のみを見る
- 3年連続でC判定となっている項目を見る
このように、「重要なもの」「緊急なもの」をそこから絞り込んでいきます。重要であり緊急なものを把握するために、現在何が重要で何が緊急なのかを理解する仕組みを作ると良いのかなと考えています。そのための一つの仕組みとして、「ロジックツリー」を活用することで、次のようなメリットがあります。
- 問題がどこにあるのか?やその原因が何か?というストーリーが分かりやすくなる
- 赤色になっている項目は80〜90%の達成率しかないことが分かる
- グラフから予算を割っているかどうかのトレンドを把握できる
Scale Cloudの方法を考えると、先述の手法に加えて、「達成率が低いもの」「下落トレンドが続いているもの」「下落率が非常に大きいもの」といった異常値の定義を事前に決めておきます。
その後、次のような仕組みを整えることで、項目数が多くても問題にはなりません。
- モニタリングしやすい仕組みを作る
- ピックアップされてきやすい状態を作る
- 見やすい状態を作る
これにより、項目数が多いことが必ずしも負担にはならず、異常値を把握しやすくなります。
坊氏:
なるほどですね。ありがとうございます。
事業をされている石井さん側にもお伺いしたいのですが、。
広瀬さんの話によると、事業のフェーズに応じて見るべき項目が当然変わっていくことが前提となり、とはいえ最初の段階では押し述べて一度見てみないと分からないという話もありました。
「アンバサダークラウド」の中で、石井さんは実際にどのような経験をされてきたのでしょうか?
石井氏:
駄目な事例になるのかもしれませんが、最初の段階ではざっくりと数字を見ることが主でした。PL(利益・損益計算書)の詳細な分析はありましたが、KPIの側面では「まずは商品を作る」という観点から見るべき項目は限られていました。マーケティングやセールスの初期段階では、数字の観点もかなり限定されていたのです。
しかし、事業のフェーズが進むにつれて、より詳細に分析すべき項目が増えてきています。広瀬さんや坊さんのようなSaaS業界で多くの経験を持つ方々とディスカッションすることで、数字をどこまで見るべきかという問いについての理解が深まってきたと感じました。
経営者の感覚や経験、キャリアが「ここは細かく見ていきたい」というニーズに影響を及ぼすと考えていますが、自分たちは本当にバランスよく見ることができていたのか、と坊さんに問われた気がしていて、「あまり自信がないな」と率直に感じました。このような視点を重視することが重要だと思います。
もう一つは、予実の予(予算)の設定が非常に難しいと感じています。例えば先程の資料やオムロンさんのツリーでも「売上高人件費率」という項目がありましたが、この売上高人件費率は業界や業種によっても異なると思います。また、スタートアップやベンチャーのフェーズや自社のビジネスにおいて、どのような数値を設定すべきか悩むことが多いと思います。私自身も答えのない中である程度の設定をしていると言えますが、それに自信を持っているかと言えば、正直に言えばそうではありません。この点については、専門家とのディスカッションを通じてより精度を高めていくことが重要だと感じました。
坊氏:
ありがとうございます。確かに、石井さんがおっしゃったことは非常に共感できますね。
特に、自分が経験を積んできた職歴や経歴に基づいて「これとこれとこれが重要だ」と感覚で進めているという状況が多いのかもしれません。一方で、IPOや自己資本で会社を運営する場合は状況が変わる可能性もありますが、外部の圧力やプレッシャーがかかる中で、それだけに頼るとどこかでつまずくこともあるのかもしれないなと、すごく思い当たる節がありました。
石井氏:
そうですね。特に私はコンサルティング部門の部門長を務めてきた経験があり、そこでは非常に細かく見てきた部分がありました。また、自分がコンサルティングビジネスを始めるとしたら、その経験を活かして延長線上で進めることができると思います。
しかし、SaaSという全く異なるPL(損益計算書)ビジネスからBS(貸借対照表)のビジネスに一気に移行すると、何を見ていくかという観点で大きな違いがあります。
例えば、大手企業が新規事業で完全に異なるビジネスを始める場合、これまで管理してきた数字や項目とはまったく別次元のものを見ていかなければならず、そのような時に悩まれたり不安に感じたりする部分もあるのではないかと思いました。
坊氏:
ありがとうございます。
1枚の絵にして見ていくということ自体も難しさもあり、自分の経験の中で色々なバイアスもがかかっている中で、皆さんが事業を進める中において、どのように事業を前に進めるかに向き合っていく際には、「ちゃんと前に進める・ちゃんと経営する」のはなかなか難しい課題なのかなと感じました。
これまではツリーの話に焦点を当てながらお話ししてきましたが、次はパネルディスカッションでテーマに沿って会話を進めていきたいと思います。
パネルディスカッション・質疑応答
先程お伝えした通りパネルディスカッションの方に戻っていきます。
事前に問いとしては4つほど準備をしてきました。
- 効率性を高めるためにはマネタイズを早める必要があるが、どう工夫したらいいのか?
- 経営者からトップダウンでKPIを現場に浸透させるというよりは、各部門長も能動的に考えてほしい。どうしたらいいのか?
- 成長性と効率性の観点は確かに重要。ただ単月など、短いスパンで見すぎると”仕込み”的な動きができなくなる。どの程度の時間軸で観測をするのがいいか?
- ROICツリーが必要なのは理解できたが、現場の人たちはどこまでの理解をしておけばいいの?
この問いに閉ざすことなく、参加者の皆様からのご質問があれば優先的に拾っていきながらお答えしていきます。
先ほどのアンケートでいただいた回答の流れ等を考えると、このような質問が来るのでは?と思ったのが、4番の「ROICツリーとか共通言語の作成は理解できたが、一方で現場の従業員はどの程度の理解が必要であり、それを具体的にどのように落とし込んでいくべきか」についても考える必要があるのではないかと思います。
このあたりは広瀬さん・石井さんのご意見をお伺いできればと思いますが、まずは広瀬さんいかがでしょうか?
広瀬:
どの程度の理解が必要かについては、広さと深さの軸で様々な考え方があると思います。いずれにしても私の意見としては、経営者と部門長が存在し、部門長が広さと深さの観点で見えていない状態で現場を巻き込むことは危険です。したがって、組織内で段階的に情報を落としていくのが良いと思っています。
また、「誰から、現場はどこまで」という観点で「どういう人なのか、どういう人まで見せるべきなのか」考えると、私たちは”クロスファンクショナル”という言葉を使っていますが、要は目線合わせをしたい人は誰なのかということを決めていくべきです。例えば、「新入社員までは不要だが、幹部までは必要」という線引きがある場合は幹部まで、のように、その目線合わせをしたい範囲を明確にしてやっていけばいいと思います。
坊氏:
事業に苦心されている石井さんからすれば、「この絵自体を理解しておくべきなのか、そこまでは必要ないのか」という部分において石井さんのご意見も含めて、そのあたりをお聞きできればと思います。
石井氏:
私は最低限の数字を深く理解することが重要だと考えています。現場の従業員は数字に慣れている人と慣れていない人とで差があります。
先ほど広瀬社長からも訓練の必要性について話がありましたが、それに関連して教育や慣れが重要だと思います。大量の数字を投げかけてもついていけず、無視されてしまうようなアレルギー反応が起きることもあります。実際に見てるフリをされるということが経営を進めていく中でも起きたりしたので、限られた数字に対して従業員が深く理解するように時間を割いてきました。
しかし、一度理解してもらえれば、その先にさらに深堀りをしていくことが可能だと思っています。さらに、新たなメンバーが加わるスタートアップやベンチャー企業では、長い年月を一緒にいる人は一緒に数字を深掘りしてきた過程でかなり習熟度が上がっていると思いますが、新しく入った人が一度に多くの数字を見ると困難が生じることもあります。
そのため、教育や訓練の標準化が重要だと考えます。こうした取り組みが進んでいる組織は魅力的であり、数字の理解や深堀りの方法をビジネスパーソンとして教え込むことで成長できると思いますし、そうした成長ができるというのは大きな差別化になると思います。
経営リテラシーや事業リテラシーが大幅に向上し、強力な組織になると思われます。私たちはまだまだですが、そうした目標に向かって進んでいきたいです。
坊氏:
たしかに、今おっしゃられたことがいただいているQAとも被っているので重ねて回答しますが、
現場からの抵抗感やリラクタンスという課題もありますので、それについても考慮する必要があると思いました。ただ、これは経営や会社にとって重要な要素でもあるため、丁寧な説明と理解を求める必要があります。石川さんがおっしゃったように、輪郭が分かればそこから深堀りをしていくことができます。その後は深堀りに乗ってきていただければ、あとはさらに深掘りをしていくだけです。このような側面でも、ツリーや一枚絵の仕組みを持っておくことが重要だと思いました。
例えば営業部長や事業部長、執行役員など、組織内には縦のレイヤーや役職のレイヤーがあります。それぞれの人々が異なる視点を持つため、立場も異なると考えています。
営業部長が事業部長の視点で見ることができるようになると、ビジネスリテラシーの育成において役立つツールの一つとなると思いました。一枚絵が見えることにより、自身の部署だけでなく、上位のレイヤーの人々が自身の部署の数字に対してどのような評価をしているか、足りているのか足りていないのか、さらに補填が必要かなどの視点が広がります。
そういった視座に引き上がっていく意味でもこの一枚絵は機能しそうだなということを思っていました。
広瀬さんのところでは、実際にこのような使い方をしている企業様もあるのでしょうか?
広瀬:
人材育成の文脈でも、このツール(Scale Cloud)を使っているパターンはありますね。
先ほど「クロスファンクショナル」という言葉を使用しましたが、横断的に鳥の目で見ることができる人材を育成することが目標です。そのような人材を育てれば、経営層の人々にとって目線を合わせやすくなり、より自分たちのビジョンやロードマップが伝わりやすくなるでしょう。
毎週や毎月の会議を行いながら、メンバーの視座が広がるという効果は実際にあると思います。そのため、会議においてもこのツール「Scale Cloud」を活用し、どのようにPDCAを回していくかを含めた運用設計も非常に重要です。
坊氏:
作ることも重要ですが、運用や定着の段階においても、「Scale Cloud」をどのように活用して会議を行うかが重要ということですね。単にデータを蓄積するツールではなく、PDCAを回すための会議に取り込む運用設計も非常に重要な要素ということがわかりました。
広瀬:
その通りです。
なのでこの「2.経営者からトップダウンでKPIを現場に浸透させるというよりは、各部門長も能動的に考えてほしい。どうしたらいいのか?」の質問とも絡むのですが、
「Scale Cloud」というサービスを導入していただく際に、KPIの設計について僕らのほうでコンサルティングを行ったり、自社で設計から取り組んでいただく場合もあります。どちらのケースでも重要なのは、現場の人々も一緒にKPIの設計に参加することです。経営者が一方的に作り、現場に押し付けるのではなく、現場の人々を巻き込んで一緒に作り上げていくことが必要です。
当然、その段階から完璧なものを作り上げることはできないので、運用しながらアップデートを行っていく必要があります。最初のステップでは、集まったメンバーが共通の視点を持ちながら作り上げることが重要です。そうすることで、後の運用がスムーズになります。
その中で、フレームワークを元に計画を立てることが重要です。たとえば、マーケティングのKPI計画を作成し、それをセールスチームに伝えると、横断的に影響度が分かりますし、KPIの目標値を設定することもできます。これにより、共通の認識を持ちやすくなります。そして、毎週や毎月の会議で同じもの・同じ景色を見ながら共通の認識を持つというサイクルが必要です。
会議の中で行うべきことの一つは、PDCAの振り返りです。先ほどご覧いただいたような「ロジックツリーで振り返る方法」は、KPIマネジメントの利点である「早期の数字把握」と「フォーキャスト・予測のしやすさ」を活かします。
たとえば、ウェブからのリードを商談に繋げるプロセスを考えた場合、ウェブからのリードが少なくなる=CVRが低下する可能性があります。商談までのリードタイムが1か月だとすると、今月のリード数の減少は来月の商談数の減少につながる可能性があります。その結果、再来月の売上も減少すると予測できます。これに基づいて、商談をキープするための対策を事前に打つことができます。さらに、マーケティングの不足をセールスがリカバリーするなど、横断的に議論しながらKGIの目標達成に向けた計画を立てていくことをフォーキャストとともにやっていくことが重要です。
坊氏:
おっしゃっていただいた通り、トップダウンでKPIを現場に浸透させると、「なぜそれを追う必要があるのか?追わなければいけないのか?」が伝わりにくくなり、乗っかるのが難しくなる可能性があります。だからこそ皆で作る形にした方が皆としても乗っかりやすいというのは本当におっしゃる通りなのかなと思います。
私はリブのコンサル部隊側に所属しているので、アンバサダークラウドの部隊は横から見ている印象ですが、アンバサダークラウドの組織にはマーケティング、セールス、カスタマーサクセスの部門がありますが、それぞれの部門が連携しながら活動している印象があります。逆に言えば、アンバサダークラウドの部隊は皆で一枚絵のようなものを作り上げていったのでしょうか?
もし失敗の経験がある場合でも、それを失敗談として共有することも良いと思いつつ、最初の段階でどのように立ち上がっていったのか、是非ここは実体験としてお伺いしたいなと思いました。
石井氏:
そうですね、数字に関しては正直トップダウン型で進めていったというところが強いです。
どのような意味があるのかやその背景を伝えたり、議論を促したりすることが重要だと考えてきました。それぞれのチームでも月次や週次でKPIなどを共有して部門間での議論や質疑を行っていき、そういったことを部門横断でやるところのカルチャーを作りに行くということを大事にしてきました。
結局のところ、数字が見えた後そこに対して提案ができれば理想ですし、そこへの捉え方の深掘りをすることで、個々のメンバーに気付きを与えることができます。それによって実数値に反映できたり、事業のドライブにインパクトを与えることができると思います。
ですので、数字を見た後の行動を加速させるために意識的に経営してきました。
坊氏:
私の中で整理してみましたが、会社やメンバーが存在する状況から取り組みがスタートする場合、まずは皆で作り上げていくという形で進めることで、参加者全員が意義を感じながら取り組むことができると思います。
逆に、立ち上がった段階から取り組む場合は自ずとトップダウン的になると思いますし、新しいメンバーが参加する際にオンボーディングの段階でこの取り組みについて説明し、共に進んでいく流れになると思います。
どの事業フェーズでこの取り組みを始めるか?によって異なるというのが私の中での整理です。
ここまでで、2番と4番の項目は解消し、1番と3番の文脈についても話を進めたいと思いますが、とはいえこれまでの内容の部分が超重要なところでした。一旦まとめに入っていきつつ必要であれば1番と3番に戻りながら質疑応答含めてお話しできればと思ってます。
本日の持ち帰っていただきたいポイント
坊氏:
今日のセミナーを通じて持ち帰っていただきたかったポイントは、次のようなものです。
- 予算の管理と実績の管理を一緒にする
- 1日でも早くセクション間横串でのKGI/KPI管理を始める
- 企業価値向上につながるKGIを設定し、経営と事業と運営、一蓮托生となり最短ルートを進む
まず、「予算と実績の管理を一緒に行うことが重要」です。これは非常にシンプルな話です。加えて、セクション間や部署間でのKGIとKPIの管理体制を早急に整える必要があります。これはROICツリーや売上など、会社によって異なる形で表現される可能性があります。部署間のセクショナリズムが続くと非効率な状態になりますので、しっかりと共通の認識を築くための仕掛けを作りましょう、というのが2番のお話です。
次に、「企業価値の向上」です。仮にバリエーションの最上段に置いたとしたときに、それに繋がるKGIの設定を行い、経営と事業、経営と現場との連携を強化しましょう。これが3つ目のポイントとなります。
そして、パネルディスカッションの中でも触れましたが、「共通の絵」「ダッシュボードやツリー」を活用してPDCAサイクルを回していきましょう。マネージャー会議や役員会などで、ダッシュボードやツリーを基にした議論を行い、運用に乗せていきます。そうすることで、全員が一つの方向に向かって会社の目標に向かって進むことができるでしょう。
「爆発的成長への道!拡大と効率性のジレンマを克服する方法」というテーマの中で、コストの振り分けや避けるべきこと以上に、重要なのは皆で一つの絵を見ることです。
今日のセミナーの大きなテーマは、この点に根本があると捉えていただければ幸いです。
関連記事
No posts found!
監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。