KPIを設定しない「サイボウズ式」とは|1から分かりやすく解説

2022.07.05
KPIを設定しない「サイボウズ式」とは|1から分かりやすく解説

企業はKPIやKGIを設定して事業を進めていくのが一般的になっていますが、サイボウズではKPIを設定しない「サイボウズ式」という独自の運営方針が注目されています。では、その「サイボウズ式」とはどのようなものなのでしょうか。

この記事では、「サイボウズ式」とは何か、KPIを設定しない理由などを説明していきます。サイボウズの事業内容や市場規模、業績推移なども合わせて解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。

サイボウズの会社概要

会社名サイボウズ株式会社(Cybozu, Inc.)
所在地東京オフィス〒103-6027 東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー 27階
代表取締役青野 慶久(本名:西端 慶久)
設立1997年8月8日
資本金613百万円(2021年12月末時点)

サイボウズの事業内容

サイボウズでは、SaaSサービスなどを提供している「グループウェア事業」、サイボウズのこれまでの取り組みなどを講演や研修という形で提供する「メソッド事業」、子会社のサイボウズ・ラボを中心に研究開発活動を「行う研究開発」の主に下記の3つの事業を行っています。

今回は、その中から「グループウェア事業」に注目していきましょう。グループウェア事業ではさまざまな製品を提供しており、多くの企業を手助けしています。サイボウズのグループウェア事業で提供している製品は、主に下記の4つです。

  • kintone
  • サイボウズ Office
  • Garoon
  • Mailwase

それぞれの製品の特徴を解説していくので、見ていきましょう。

kintone

kintone(キントーン)は、顧客案件管理やプロジェクト管理、交通費申請、受発注管理などのさまざまな業務の手助けをする業務システムです。専門的な知識がなくても扱えるため、業務改善をすぐに実行できるというメリットがあり、業務システムに不満を持っている企業などに幅広く活用されています。

また、その他にも、データの共有が簡単、コミュニケーション方法がシンプル、外部サービスなどとの連携も可能など、メリットが豊富です。業務システムを必要な数だけ追加できて、部署や業種別のテンプレートなども用意されているため、あらゆる仕事に関する課題を簡単に解決に導けるサービスとして、大企業や官公庁などでも活用されています。

サイボウズ Office

サイボウズ Officeは、多くの中小企業に支持されているグループウェアです。日本のビジネスにおいて役立つ機能をまとめて搭載しており、情報共有やコミュニケーションを円滑にします。ユーザーのニーズに合わせてサービスをブラッシュアップしているため、どんどん日本人の働き方に合ったサービスに進化し続けているのです。

プレミアムコースでは、基本的な機能だけでなく、さまざまなカスタムアプリが利用できます。自社に役立つアプリを追加してカスタマイズしていくことで、自社に最適なサービスに変化していき、より業務の効率化が期待できます。

複数のプランが用意されていて、自社の働き方に合わせたプラン選択ができるのも魅力です。自社のチーム力を向上させたい中小企業におすすめのサービスといえるでしょう。

Garoon

Garoonは、組織風土を変えて、チームワークを向上させるツールです。スケジュール・掲示板・ファイル管理・メッセージなどの、企業組織の情報共有に役立つ機能が取り揃えられていて、企業課題の解決やチームワークの向上に役立ちます。

kintoneやMicrosoft 365などの他システムとの連携が可能で、今企業で導入している製品とシームレスにつながれるのが大きなメリットです。

Garoonは管理画面の分かりやすさや大規模な組織に対応できる管理機能の充実さなどから、管理者の負担も少ないツールとして、管理者からも高い評価を得ています。

「規模を拡大する必要が出てきた」「ガバナンスの強化が必要になった」などの理由から、サイボウズ Officeから移行する人も珍しくありません。

Mailwise

Mailwise(メールワイズ)は、届いたメールを複数人で共有して一元管理できるメール共有システムです。メール・ステータス機能・対応履歴などの、メール対応を効率化できるさまざまな機能が搭載されています。その他にも、電話履歴や訪問履歴もまとめて管理できるため、メールから電話・訪問までの流れを一目で把握することが可能です。

さらに、指定した条件に合わせてフォルダの振り分けや処理状況などを設定してくれる自動設定機能や、Mailwiseの利用ユーザーを確認するユーザー名簿機能などもあり、企業の使い方に合わせて機能を利用できます。

複数人で同時に管理できることから、「誤送信や二重送信の防止」「返信内容のばらつき」「メール対応漏れ」などの課題を解決しやすくなり、顧客情報の管理なども容易にできるようになるでしょう。

サイボウズの市場規模

サイボウズではさまざまな製品を提供していますが、そのどれもが多くの企業で利用されている人気のサービスです。

kintoneは20,000社に利用されており、クラウド基盤サービス(IaaS/PaaS)部門で3年連続1位を取るなど、外部機関からも評価されています。サイボウズ Officeは、累計導入社数が70,000社を突破するほどで、従業員が数人ほどの中小企業から数百人規模の大企業まで幅広く利用されているサービスです。

Garoonは6400社、290万人の導入実績があります。グループ従業員12,000名の大企業でも活用されているほどで、満足度は92%と高い人気を誇っています。Mailwiseは12,000社以上の企業で導入されていて、メール対応を行う全ての業界や業種で使用されているといわれているほどです。

このように、サイボウズはSaaSクラウドサービス業界での市場を拡大させています。

サイボウズの業績推移

2017年2018年2019年2020年2021年
売上高(百万円)9,50211,30313,41715,67418,489
経常利益(百万円)8211,1941,8042,2721,468
当期純利益(百万円)4146531,0121,435551

引用:サイボウズ 財務ハイライト

売上高は上昇を続けていますが、経常利益と当期純利益は2021年に入って大幅に減少しています。サイボウズは、クラウド事業を強化させるために2021年に広告プロモーションに積極的に投資をしており、テレビCMなども放映されています。そういった広告プロモーションへの投資などが、経常利益と当期純利益が減少した原因として考えられるでしょう。

今後の展開

サイボウズは売上高の上昇が続いており、業績は安定しているといえるでしょう。また、2021年に広告プロモーションに力を入れたことで、「kintone」などのクラウドサービスの知名度がアップしています。世間的な認知度が向上しているため、今後も多くの企業でのサービスの導入が期待できるはずです。

さらに、自治体からのサービスの利用実績も増えており、2021年末時点での自治体導入数は140とされています。地方銀行との協業も行っていて、kintoneを中心としたサイボウズ製品の活用事例は約300社となっているようです。今後も自治体などでの導入が増えていけば、さらなる成長が期待できるでしょう。

KPIを使わない「サイボウズ式」とは

「サイボウズ式」とはサイボウズが運営しているオウンドメディアの名称で、その独自の運営方針から注目されています。「KPI目標を設定しない」「二次情報だけで記事を作らない」「オウンドメディアの撤退ラインを決めない」など、通常のサイト運営とは異なる姿勢でありながらも、テレビ番組にも取り上げられたことがあるほどの影響力と発信力を持っているサイトです。

サイボウズ式では、KPIで数字目標を設定するのではなく、その記事にどういったコメントがついているのかなどの内面を重視して評価します。独自の企画やインタビュー記事のみを掲載することで、数字だけが伸びていく記事ではなく、コメントが多く書かれるような記事を執筆できるのです。

サイボウズでKPIを設定しない理由

「サイボウズ式」について紹介しましたが、なぜサイボウズではKPIを設定しないという方針をとったのでしょうか。ここでは、サイボウズでKPIを設定しない主な理由を5つ解説していきます。

  • 数値を達成することが目標になってしまう
  • 評価も中身を見て行う
  • 社内の空気が悪くなりやすい
  • 定量化できない要素もある
  • 将来とのビジョンと両立できていなければいけない

順番に見ていきましょう。

数値を達成することが目標になってしまう

サイボウズでは、KPIに具体的な数値目標を設定してしまうと、数値を達成すること自体が目標になってしまうことがあるという点を懸念して、KPIの設定をしていないのです。もちろん、チームで仕事を進めていくにあたって、数値で具体的な目標を決めて、目標に向かって全員で協力していくのはとても大切といえます。

しかし、中には「数字だけを追い続けてしまう」チームもあるのです。目標を達成するために目標を低めに設定する、数値にばかり気を配ってチーム同士のコミュニケーションが取れていないなど、目標を達成するという行為自体が足枷になってしまっては意味がありません。そういったリスクを回避するために、KPIの設定を行っていないのです。

評価も中身を見て行う

先ほども少し解説しましたが、サイボウズでは数値だけでなく中身を見て評価を行います。「サイボウズ式」では、多くの人に読まれるけど印象の薄い記事よりも、数は少なくても読者の印象に残りやすい記事のほうが重要とされているのです。

単純にPV数などの数値を目標にすると、どうしても数値が優先になってしまって、「読者の印象に残っているかどうか」が後回しになってしまいます。そのため、サイボウズでは数値での目標設定を行わず、「他メディアでも行っていそうな企画はやらない」などの独自の基準を元に記事を作成しちえるのです。数値的な目標を設定していないので、評価をする際もPV数などよりも読者のコメントなどを重視しています。

社内の空気が悪くなりやすい

数値目標が達成できていてもチーム内の雰囲気や士気が最悪となれば、働いている人のモチベーションが下がってしまいます。ノルマが厳しい企業やチームでは、ノルマを達成することに躍起になって社員同士がピリピリしている、ノルマを達成するまでの間に社員が何人も辞めてしまう、といったケースがあります。

もちろん全ての企業でそういった問題が起こるわけではありませんが、目標を厳しく設定していると、そういった事例が起こりやすいのです。

定量化できない要素もある

KPIに具体的な数値で評価できる目標を設定していると、どうしてもその数値にばかり目がいってしまいます。しかし、ビジネスでは定量化できない要素もあるのです。先ほど解説した、「チーム内の雰囲気や士気」も定量化するのが難しいでしょう。

「なぜこの業務が必要なのか」「自分がこのチームとしてやるべきことは何なのか」などを意識した上で、チーム全体で成長していくことが大切です。そのためには、定量的な要素だけでなく、さまざまな要素に注目しながら業務を行っていく必要があります。

将来のビジョンと両立できていなければいけない

KPIはあくまでKGI(企業の最終目標)に至るまでの過程で、中間目標の段階です。しかし、企業の中にはKPIそのものが最終目標になってしまっているところも少なくありません。

将来のビジョンに至るまでにKPIがあるのであって、KPIがゴールになってしまうと将来的なビジョンを達成できなくなってしまいます。KPIを設定する際は、「そもそもなぜKPIを設定する必要があるのか」「将来的に企業・チームとしてどうなりたいのか」を明確にしなければいけません。

企業でKPIを設定する場合は、企業内・チーム内で、将来のビジョンとしての目標(KGI)とそこに至るまでの中間目標(KPI)を共有し、KGIとKPIを両立することが大切です。サイボウズでは、KPIだけに集中してしまわないように、そもそもKPIを設定しないという方針を選びました。

まとめ

企業では一般的にKPIやKGIを設定して、社内で目標を共有しながら業務を進行していきます。しかし、サイボウズでは、KPIを設定しないで運営を行っている「サイボウズ式」が注目されています。

サイボウズ式を行う背景として、「数値を達成するのが目標になってしまう」「定量化できない要素もある」といった点が挙げられており、実際にサイボウズではこの方針で成功を収めています。

しかし、全ての企業がこの方法で成功するのは難しいでしょう。KPIは、正しく設定すれば企業の成長に大きく役立ちます。

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

Twitter