スパイダープラスのKPIは?今後の成長と展開と合わせて紹介
2022.09.03
事業状況を正しく把握するために、各社でさまざまなKPIが用いられています。実際に、自社に最適なKPIを模索しているという企業も多いのではないでしょうか。そこで今回はスパイダープラスが公開しているKPIについて詳しく紹介します。
スパイダープラスの事業内容や今後の成長、さらに公開されている情報の中から重要視されているKPIやその活用について説明しているので是非最後までご覧ください。
スパイダープラスの会社概要
会社名 | スパイダープラス株式会社 |
所在地 | 本社〒105-0001 東京都港区虎ノ門2-2-1 住友不動産虎ノ門タワー27階 |
代表 | 伊藤 謙自 |
設立 | 平成12年2月 |
スパイダープラスの事業内容
スパイダープラス社では、建築業界や設備メンテナンス業界向けの業務管理アプリ「SPIDERPLUS」を開発・販売しています。他業界に比べて複雑でデジタル化が難しい業界において、スパイダープラスのサービスはDX化の推進に寄与し、中小から大手企業まで、さまざまな規模の組織で図面や写真の管理、検査記録や作業報告などに掛かる工数や時間の削減などの効率化を実現しています。
では、建設業界で注目されていて、導入が進んでいる本アプリの特徴について詳しく見てみましょう。
標準機能
SPIDERPLUSでは、建設・土木や電気・設備工事など、多くの現場で共通して頻繁に使われる機能が標準で搭載されています。
図面管理(タブレット&PC)
SPIDERPLUSを活用すれば、大量の図面を持ち歩く必要がありません。図面をiPad端末で確認できて、カメラで撮影した画像や保存済みの画像を図面に添付したり、現場の状況を記した手書きのメモやキーボードでコメントを記載したりできます。
さらには、図面上の任意のエリアにおいて2点間の距離や面積、周長などを測ることも可能です。これらは現場での作業で効果を発揮します。写真添付など現場で編集した図面をPDFに返還し、メールで送信できるのです。
持ち歩くことが少ないPCの管理画面では、図面の新規登録や更新、削除ができ、顧客別や現場別など分かりやすく分類して管理できます。当然、現場のiPad端末からアップロードされた図面の確認や、PC側からの写真の貼付け・コメントの記録なども可能です。
工事写真
現場で撮影した写真を写真帳(エクセル帳票出力)にまとめて整理して、実際に現場で使われる黒板の代わりに電子黒板として表示できます。電子黒板は複数のテンプレートが用意されているため、現場に合ったフォーマットを選択可能です。
複数現場の管理サポート
複数の工事現場の管理を同時に担当する場合にも、現場から離れた場所にいても状況や進捗の確認、現場への指示ができます。無駄な移動や作業の削減、リアルタイムでのコミュニケーションによる効率化を図れるのです。
帳票出力・報告書作成
帳票出力や報告書の作成も手間の掛かる作業の1つです。現場で撮影した膨大な写真をオフィスや事務所に帰って整理しまとめるため、かなりの時間を費やします。
しかし、SPIDERPLUSに撮影した写真を登録するだけで報告書を作成できます。またアップロードされた写真はエクセルやPDF形式で帳票出力が可能であり、これらに関わる工数を大幅に減らせるのです。
過去図面の検索と参照
過去の案件の中の特定の図面を検索したい場合、紙の図面管理では探し出すだけでも一苦労です。しかし、その図面がこのサービス上に記録されていれば、図面を簡単に探し出すことができます。当時の工事の際のコメントなども合わせてチェックできるため、より詳しく把握できるでしょう。
オプション
オプションで用意されている機能は業種や現場ごとの異なるニーズに対応できます。ここでは、主なオプション機能の一部を紹介するので、見ていきましょう。
工事進捗管理機能
工事の進捗状況を可視化し、関係者とリアルタイムで情報を共有できます。現場の管理者は全体の進捗状況を一目で把握できるため、人材や材料手配などのマネジメントを行いやすくなるでしょう。
また、現場のiPad端末で記録した進捗や写真などの情報は、進捗管理だけでなく帳票出力にも利用可能で、煩わしく時間の掛かる事務作業を削減できます。
騒音計・温湿度計連携機能
騒音計や温湿度計との連携ができ、これまで紙への転記が必要だった検査記録を自動で作成することが可能です。 また、帳票も簡単に出力できるので、手作業によるミスの低減にもつながります。
騒音計や温湿度計との連携ができ、これまで紙への転記が必要だった検査記録を自動で作成することが可能です。 また、帳票も簡単に出力できるので、手作業によるミスの低減にもつながります。
これらの他にも、各種測定器との連携機能として配管勾配測定機能や照度測定機能、圧力計連携機能や水圧計連携機能などがあります。
外部機能連携
上記の他に、データ管理や検査業務の効率に寄与する外部機能連携サービスがあります。
その中の1つが、Dropbox/Dropbox Business 連携です。外部のクラウドストレージサービスであるDropboxと連携することで、これまで現場ごとにNASで行っていたデータ管理をクラウドで実施できます。これによって、管理業務や設備を大幅に削減可能です。
SPIDERPLUSでは、その他にも下記のような検査の工数削減を目的とした機能が用意されています。
- 建築設備専用CADWe’ll Tfas®機能
- 建築設備専用CADWe’ll Tfas®機能 建築設備専用CAD Rebro®機能
- Tfas連携防火区画機能
- Tfas連携電子小黒板機能
スパイダープラスの市場規模
SPIDERPLUSの契約件数は1300社を超え、契約ユーザー数は5万2千人に上ります。働き方改革への対応や人材の確保の観点で建築や設備業界などにおいてもDX化は必須であるため、今後その流れは一層強まることが予想されます。2024年に予定されている建設業への働き方改革法適用開始に向けて一層導入が加速することになるでしょう。
近年では業界大手企業の全社導入が進められており、それに伴って業界内で浸透が進むことも予想できるので、ビジネス拡大に備えた投資や組織体制の強化も図られているようです。そのため、業界のDX関連サービス市場の拡大とスパイダープラスのシェア拡大による安定的な成長が期待できます。
スパイダープラスの業績推移
過去の業績と今期の通期予測を見ると、売上高は毎年順調に伸長していることが分かります。一方で営業利益・当期純利益はマイナスを示しています。減少の主な理由は、将来に向けた先行投資によるものです。下記の図のように、スパイダープラスではS&Mや人材への投資を拡大しており、売上高に占める販管費比率も増加しているのが分かります。
人的投資に関しては、S&M(Sales and Marketiong)部門の採用が年々増加しており、フィールドセールスの人員拡大が顕著に見て取れます。
今後の展開
大手企業への全社導入が進んでいる背景から、建設業界内でもネットワーク効果で今後も需要の拡大が継続すると予想されます。また、人材不足の中で猶予されていた働き方改革法(残業規制)が2024年に迫る中、効率的な業務管理の実現に向けたDX化の流れによって、すでに多くの実績を持つスパイダープラスへの需要は急拡大する可能性があります。
先行投資によって組織の強化もされており、さらに認知度拡大やS&Mの機能強化で新規契約数の増加が期待できるでしょう。
スパイダープラスの部門ごとの今後の成長
スパイダープラスは組織力強化の一環でS&Mへの人材投資を行っていますが、セールスとマーケティング部門のそれぞれの変化について見てみましょう。
セールス
市場のニーズが急拡大すると予想される2024年前後に備えてセールス担当者を増加させています。2021年4Q時点では69人でしたが、2022年4Qまでに130人まで倍増させる計画です。
マーケティング
一方で、成長に向けたマーケティング戦略にも注目です。過去自粛していた展示会などへの出展などオフラインマーケティングなどへの投資も再開し、市場へのサービス浸透施策などをユニットエコノミクス等の指標を見ながら行っていくとしています。
スパイダープラスは自治体からの導入事例も多い
実は、スパイダープラスは建設業界だけではなく、自治体への導入事例もあるのです。ここでは、自治体からも導入される理由や事例を見ていきましょう。
DXが進んでいる理由
自治体でDXが進んでいる背景には、下記のような業務の効率化が挙げられます。
- 書面ベースの行政業務のデジタル化
- インフラ工事での活用
行政においても、人材不足やコスト削減の圧力は避けられません。区内にある膨大な施設の管理や修繕工事などの管理を旧態依然のプロセスやツールで行っていては、これらに対応できません。その解決策の一つとしてDX化が推進されています。
活用事例
例えば、管理や工事の元請企業と設備工事を請け負う企業が進捗管理にスパイダープラスを利用していると、区の担当者も現場の状況を効率的に把握することが可能です。最近では豊島区が導入を決定し、区が管轄する施設の管理や修繕工事で利用しています。
スパイダープラスの主なKPI
次に、スパイダープラスの事業運営で利用されている主要なKPIについて見てみましょう。
- MRR
- チャーンレート
- ユニットエコノミクス
これらについて詳しく解説していきます。
MRR(Monthly Recurring Revenue:月間経常収益)
サブスクリプション型のビジネスモデルでは、毎月定期的に発生する収益を表すMRRをモニターすることが重要です。MRRは月間の数値ですが、年間の収益を表すARR(Annual Recurring Revenue)もよく用いられます。
スパイダープラスではARRの数値が公開されています。ARRは各四半期ごとに順調な推移を示しており、今期第二四半期は前期比YoYで+28%の増加となっています。下に示すように新規顧客数(ID数)が伸びていることからも、ARRが増加する理由が分かるでしょう。
MRRについては、「SaaSの主要KPI【MRR】とは?概要や計算方法を分かりやすく解説」の記事をご参照ください。
チャーンレート
チャーンレート(Churn Rate)は離脱状況を示す指標で、解約率と表現されることも多いです。スパイダープラスでは以下のように解約率を公表しています。上図から分かるように解約率は1%を下回っており、さらに減少傾向を示しています。2022年12月期の第二四半期には0.4%の低水準にまで下がり、好調を維持しています。
チャーンレートについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事からご覧いただけます。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスは一般的には「1顧客当たりの経済性・採算性」を示す指標で、LTV(Life Time Value : 顧客生涯価値)とCAC(Customer Acquisition Cost : 顧客獲得コスト)を元に計算されます。
- LTV = 平均利用額 x 平均利用年数 x 粗利益率
- CAC = 顧客獲得コスト/新規獲得顧客数
- ユニットエコノミクス = LTV / CAC
LTVは1顧客から得られる生涯収益を表し、CACは新規1顧客を獲得するために費やすコストを表します。ユニットエコノミクスはLTVをCACで割ることで算出可能です。
スパイダープラスはユニットエコノミクス自体の数字を公開していませんが、ソルトウェアの機能拡大によって平均利用額も増加し、極めて低い解約率であり、粗利益率(売上総利益率)も65%を維持していることでLTVは大きくなっていると想定されます。
一方、CACについては顧客獲得コストが不明で具体的な数値は算出できませんが、新規顧客数が増えるほどCACは小さくなります。スパイダープラスへのニーズを想定すると今後もしばらく増加傾向は続くと見られCACは減少し、結果としてユニットエコノミクスは増加すると予想できます。つまり1顧客当たりの経済性・採算性が良くなっていく可能性が高いでしょう。
ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事で解説しています。
まとめ
業務の効率化や働き方改革が迫られている建設業界において、DX化の推進や業界の活性化ニーズが次第に高まってきており、当業界でのこれまでの知見と実績を活かしてサービスを浸透させてきたスパイダープラスは、今後も契約数の増加が期待されます。
ビジネスの現状を適切にモニターし、意思決定につなげているスパイダープラスで利用されているKPIの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。