Sansanが設定しているKPIとは|運用のポイントと合わせて解説
2022.07.03
社内でSansanのサービスを利用しているという企業は少なくないでしょう。Sansanは名刺管理サービスの「Sansan」を提供しており、多くの企業の課題解決に貢献している会社です。今回は、そんなSansanではどのようなKPIを設定しているのか、SansanのKPI運用のポイントなどを紹介していきます。SaaS企業のKPI設定のポイントが知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
Sansanの会社概要
会社名 | Sansan株式会社 |
所在地 | 表参道本社〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-52-2 青山オーバルビル 13F |
代表取締役 | 寺田 親弘 |
設立 | 2007年6月11日 |
資本金 | 64億14百万円(2022年2月28日時点 ) |
Sansanの事業内容
Sansan株式会社では、名刺管理サービスのSansanを始めとしたさまざまな事業を展開しています。クラウド請求書受領サービスのBill Oneやキャリアプロフィールを自動で作成するアプリのEightなど、企業やビジネスマンの役に立つサービスを提供しているのです。ここでは、それらのサービスについて詳しく解説していくので、見ていきましょう。
Sansan
Sansanは、顧客とのつながりをデータ化する機能や顧客にアプローチするための機能などが搭載された営業DXサービスです。Sansanには、企業データベースが標準搭載されています。企業データベースには、帝国データバンクが提供している最新の企業情報や役職者情報などがあり、営業活動やマーケティングにおいてキーパーソンとなる人物の情報が得られるので、効率的に企業にアプローチすることが可能です。
さらに、Sansanには顧客とのつながりをデータベース化する機能もあります。企業データベースと組み合わせることで、ビジネスチャンスの発見につながりやすくなるのです。顧客との接点を活用するための機能としては、名刺管理、メール署名取り込み、スマートフォーム、スマート名刺メーカーなどが挙げられます。
その他にも、Sansanには外部システムと連携することで、情報の質を高める機能やリスク情報をチェックする機能、顧客に一括してメール配信できる機能なども利用可能です。リスクチェックでは、反社会勢力などの情報を素早く検知できるので、企業のガバナンスを高めることになります。Sansanを使ったメール配信では開封率を把握でき、その効果を踏まえた営業活動が行えるのです。蓄積した名刺のデータを企業データと組み合わせれば、営業戦略を練る上で非常に役立つでしょう。
Eight
Eightは、キャリアプロフィールを自動で作成できるサービスです。パソコンでもスマートフォンでも利用することが可能で、スマートフォン用のアプリもあります。
自分の名刺や今までビジネスで知り合った人の名刺、オンライン上で交換した名刺をスキャンするだけでプロフィールが自動で作成されるのです。名刺交換した相手をきちんと管理し、簡単に検索できます。
外出先からも手軽にアクセスできるので、外出時に調べたいことがある場合にも重宝するでしょう。また、共通の知り合いから新たな人脈が構築されることもあります。
さらに、Eightは転職時にも役立つサービスです。Eightを使って興味のある求人に応募できるだけでなく、転職の意向に合ったスカウトメールが企業から届くこともあるので、転職の際の選択肢が広がります。スカウトメールの送り主とそのままメッセージのやり取りをすることも可能です。
Bill One
Bill Oneは、あらゆる請求書をオンラインで受け取れるクラウド型請求書受領サービスです。請求書はさまざまな部署に届く上に、様式などもそれぞれ異なるため、管理に悩む企業も少なくありませんでした。さらに、全国各地に拠点がある場合などは、一元管理するのが非常に難しいという問題もあったのです。
しかし、Bill Oneを使えば、紙の請求書もデジタルで届いた請求書も正確にデータ化されます。Bill Oneは電子帳簿保存法など法律の改正にも対応しているので、法改正の度に変更する必要がありません。Bill Oneは公益社団法人日本文書情報マネジメント協会が、電子帳簿保存法の要件を満たしたソフトウェアとして認定しており、導入する企業が一つ一つ要件をチェックしなくても良いです。
Bill Oneを利用するメリットには、請求書の発行元に負担をかけずにデータ化できるということも挙げられます。紙で請求書を発行している企業にデジタル化を依頼するのは、相手に負担をかけてしまいますが、Bill Oneはそういった負担をかけることなくデータ化が可能です。
また、オンラインで決済できればリモートワークでも業務を進められます。請求書の処理のために出社しなければいけないという問題がなくなるのです。働き方が多様化する現代において、企業の状況や社会情勢などに合わせて臨機応変に対応できるようになるのは大きなメリットでしょう。
Sansanの市場規模
Sansanのクラウドを利用した名刺管理サービスは、8,000社以上で導入されています。名刺管理を行えるツールやアプリはいくつもありますが、その中でもSansanは圧倒的なシェアを誇っており、2007年にサービスを開始して以来、名刺管理サービスのパイオニアとして市場を牽引してきました。現在も80%以上のシェアがあり、多くの企業で利用されていることが分かるでしょう。
近年、どの業界においても情報戦略は重視されており、市場全体が拡大傾向にあります。2020年には、170億円を突破したほどです。市場が拡大している理由には、単に名刺の管理を楽にできるというだけでなく、他のシステムと連携して決算業務を効率化できるなどのメリットが大きいでしょう。日本ではまだデジタル化がうまく進んでいない企業も多いので、そういった企業もデジタル化を進めるようになれば、さらに市場が拡大していく可能性が高いです。Sansanのサービスは経済産業省にも導入されているため、行政での導入も期待できるでしょう。
Sansanの業績推移
Sansanの売上高は、グラフの通り年々拡大していることが分かります。経常利益や当期純利益は、2019年5月期までは赤字であるものの、2020年5月期からは黒字になっています。しかし、どちらも2021年5月期の数値が少し下がっているため、今後の動きが気になるところです。
今後の展開
Sansanでは、企業の営業力の強化やガバナンスの向上に役立つサービスの提供に力を入れています。例えば、オプションとして導入されている「反社チェックオプション」は、反社会的勢力とのつながりのある企業を一次スクリーニングできる機能です。
近年は企業のコンプライアンスが強く求められるようになっており、知らずに反社会的勢力と関わりを持ってしまった場合であっても責任を追及されてしまいます。「反社チェックオプション」は、そういった事態を避けるのに役立つサービスです。
また、経費精算などで不正が起きる事件などもあり、そういったリスクに対応するサービスの需要も高まっています。Sansanに求められているのは、企業が抱えるリスク管理を支えるサービスですが、それらに応えられるさまざまなサービスを提供しているため、今後の利用も期待されるでしょう。
SansanのKPI運用のポイント
ここからは、SansanのKPIについて見ていきましょう。SansanではKPIを運用する際にいくつかのポイントを重視しています。SansanのKPI運用のポイントを紹介していくので、KPI設定や運用に悩んでいる方などは、ぜひ参考にしてみてください。
- 部門間のトップで話し合いを行う
- 個性を重視した人員を配置する
- 商談にオンラインを取り入れる
順番に解説していきます。
部門間のトップで話し合いを行う
Sansanでは、同じ目標に向かって会社全体で取り組むという姿勢を非常に重視しています。一般的な企業では営業部門だけが営業目標の数字を掲げて頑張るというところも少なくありませんが、Sansanでは部門同士のコミュニケーションを重要視しています。
同じ目標に向かって全体で取り組むことで、パフォーマンスを最大限に高める効果が期待できるからです。とはいえ、社員全員で話し合ってもまとまりませんから、何か決断を迫られているときには部門同士の話し合いによって決めます。日々変化する状況にスピーディーに対応するためには、トップ同士で話し合いすぐに決定を下す決断力が重要になります。
個性を重視した人員を配置する
Sansanでは、スタッフの配置にしても一人一人の個性を重視しています。個人が培ってきたスキルも勿論ですが、性格など元々の資質も考慮して配置を決めているのです。
例えば、きめ細やかなサポートができる人は営業に向いているように見えますが、押しが弱いとなかなか契約に結びつかないといったケースもあります。そういった人の場合、サービスを導入してからのアフターフォローをする方が能力を最大限に発揮できるでしょう。
一人一人の個性を見極めて、適切なポジションに人員を配置することで、最大限のパフォーマンスが期待できるのです。
商談にオンラインを取り入れる
Sansanでは、取引先と商談をする際にオンラインを取り入れています。昔は営業の担当者が企業を訪問して商談を行うという形でした。しかし、当然ですがこの方法では企業に訪問する度に移動に時間がかかります。
そういった無駄を省いて営業の効率化を進めるために導入したのが、オンラインによる商談です。実際に行ってみた結果、移動時間を省ける分1日に対応できる件数が増えて、受注率に大きな影響がなかったとされています。無駄な時間を削減するオンライン化は、営業スタイルの効率化に非常に役立ったといえるでしょう。
Sansanの主なKPI
Sansanで設定している主なKPIとしては、MRR、チャーンレート、ユニットエコノミクスなどが挙げられます。ここでは、それぞれのKPIごとに見ていきましょう。
MRR
Sansanで設定しているKPIの1つにMRRがあります。MRRは毎月の収益を指し、年間の収益を表すARRという指標もありますが、MRRのほうがより細かく状況を把握することが可能です。
Sansanでは、名刺管理サービスに新たな機能を追加するなど進化を続けています。その影響を加味したMRRを設定することで、需要の動向などもより把握しやすくなるのですSansanは大きく成長を続けており、図の通りMRRは前年同期比886.7%増という結果を残しています。
MRRについて知りたい方は、「SaaSの主要KPI【MRR】とは?概要や計算方法を分かりやすく解説」の記事をご参照ください。
チャーンレート
Sansanでは、チャーンレートもKPIに設定しています。チャーンレートは簡単にいうと解約率のことで、Sansanの名刺管理サービスのようなサブスクリプション型のサービスにおいては重要な指標です。
Sansanの料金体系は基本的に月額制で、毎月安定的な収益が得られることで、サービスを継続してもらえれば毎月の売上として利益は大きくなるというメリットがあります。そのため、新規顧客を開拓するのと同時に、解約を防ぐ取り組みが求められるのです。
Sansanの直近12ヶ月の平均解約率は常に1%以下という低い水準を維持しています。今後もこの水準を維持したまま新規顧客が増えていけば、大きく成長できるでしょう。
チャーンレートについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事で紹介しています。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスとは、SaaS業界で「顧客生涯価値」と意味される単語で、顧客にどれだけ長く契約してもらうかが重要なSaaSビジネスにおいて重要な指標です。Sansanではユニットエコノミクスの数値は公開されていませんが、解約率の低さから考えると高い水準を維持できているのではと考えられます。今後もサービスの進化を続けて、ユーザーのニーズに応えていけば、ユニットエコノミクスの数値も維持し続けられるでしょう。
ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事をご覧ください。
まとめ
Sansanでは、法人向け及び個人向けの名刺管理サービスを提供しています。単に名刺を管理するだけではなく、営業活動やマーケティングに役立つさまざまな機能が搭載されているのが大きな特徴です。名刺管理サービスの分野では圧倒的なシェアを誇り、今後も市場の拡大が見込まれます。
そんなSansanでは、MRRやチャーンレート、ユニットエコノミクスなどのKPIを設定しています。運用する際には部門のトップ同士で話し合い、一人一人の個性を活かす配置にするなどの工夫をしており、これらの工夫の結果が今の成長に結びついているのでしょう。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。