RFV分析とは|RFM分析との違いや計算方法を解説

2022.06.16
RFV分析とは|RFM分析との違いや計算方法を解説

RFV分析とは、顧客の製品活用度や満足度を分析する手法の1つです。現状製品を活用できている顧客の属性を発見したり、現状製品を活用できていない顧客に対して効果的なアプローチを見つけるために行われます。

今回はそんなRFV分析について、よく似ているRFM分析との違いや計算方法を中心に解説していきます。

エンゲージメントスコアとは

RFV分析は、エンゲージメントスコアを明らかにするために行われることの多い分析です。

エンゲージメントスコアは、もともと従業員の企業に対する満足度・帰属意識を計測するスコアのことを指していました。しかし、直近ではマーケティング用語として、顧客の自社製品に対する活用度や満足度を計測するスコアの意味でも使われます。

RFV分析とは

RFV分析は、顧客のエンゲージメントスコアを測る1つの方法で、下記の3つの要素で成り立っています。

  • Recency(直近の利用状況)
  • Frequency(利用頻度)
  • Volume(利用量)

それぞれ、要素ごとに詳細を説明します。

Recency(直近の利用状況)

直近でサービスを活用したのがいつか、を示す指標です。最終利用日が近いほど活用度の高い顧客と判断できて、反対にもう何年も利用していない顧客は休眠顧客といえます。

Recencyが低い顧客に対しては、いかにサービスに戻ってきてもらうかが重要となるため、再度サービスを活用するきっかけとなるアプローチを行ったり、活用していた当時から変わった機能や新商品をプロモーションすることによって再活用のきっかけを示すことが必要です。

Frequency(利用頻度)

どのくらいの頻度でサービスを利用するか、を示す指標です。利用頻度が高い顧客ほど活用度が高いといえます。

また、基本的には最初は利用頻度が低い状態から始まり、徐々に頻度が高まっていくものです。そのため、利用頻度が高い顧客ばかりで低い顧客がいない状態であると、新規に獲得した顧客が少ないと判断できます。

Frequencyが低い顧客に対しては、適切な活用タイミングを提示してあげるのが有効です。本来製品を活用できるタイミングなのに活用できていないために、活用頻度が低くなっている可能性があります。どのようなシーンでどういう目的で活用できるのかを紹介することによって、頻度を高められるかもしれません。

Volume(利用量)

どのくらいの量のサービスを利用しているか、を示す指標です。どうやって量を測るかはサービスによって異なりますが、サービスが消耗品なのであれば利用個数で数えたり、WebサービスなのであればWeb上の滞在時間や閲覧ページ数などで測ったりします。

利用量が多いほど活用度の高い顧客といえます。Volumeが低い顧客に対しては、関連するコンテンツやおすすめコンテンツを提示してあげると良いでしょう。

1つのページや1つの商品だけで満足しているかもしれないので、それに類似する・興味を持ちやすい別のページや商品を案内すると、利用量が増える可能性があります。

RFM分析との違い

RFV分析に似た分析に、RFM分析というものがあります。RとFはRFV分析と同様で、MはMonetary(購入金額)という意味です。ECサイト等でよく使われる指標で、活用度の高い顧客=購入金額が高い、ということであればRFM分析を使用するのも良いでしょう。

購入金額は所得にも影響を受けることが多いため、富裕層がメインターゲットとなるようなサービスにおいては、RFM分析が有効といえます。

しかし、サービス活用において活用量が多いということは、必ずしも購入金額が高いということではないため、金額ではなく「量」を使ったRFV分析が生まれたのです。

RFV分析の計算方法

RFV分析をするためには、以下のデータが必要です。

  • 顧客の利用開始日
  • 顧客の利用日(利用日数・最終利用日)
  • 顧客の利用量(利用時間)

開始日・利用日については特に深く説明する必要はないかと思いますが、利用量については何を元に計測するかを最初に定義しておくと良いでしょう。基本的にはサービスの価値に触れることを利用と定義するのが有効です。

例えば、電子契約サービスのRFV分析を行う際は、電子契約サービスの価値に触れられる、電子上での契約締結を「利用」と定義するのが良いでしょう。そうすると、利用日は契約締結を行った日になりますし、利用料は契約締結の数になります。

単純に利用をサービスログインと捉えて、サイトにアクセスした日や閲覧ページ数だけ測っても、全く契約締結を行っていなければサービスの価値を感じていない可能性もあるので、注意してください。RFV分析を行う上では、サービスの価値に触れるポイントに接したかを利用とみなすと良いでしょう。

これらのデータを得た上で、以下の計算をします。

Recencyスコア = 現時点の日付 – 最終利用日

Frequencyスコア = 利用日数 ÷ サービスの利用期間

Volumeスコア = 利用量 ÷ サービスの利用期間

顧客別にこの3つのスコアを計算することで、顧客のエンゲージメントを明らかにすることが可能です。全てのスコアが良い顧客ほどエンゲージメントが高く、悪い顧客ほどエンゲージメントが低いといえます。

また、どのスコアが悪いかによって、今後どのようにアプローチすれば良いかも明確になります。

RFV分析を利用する目的

RFV分析を利用する目的は、大きく分けて2種類あります。

1つ目が、売上・顧客単価・更新率などの、業績に関連する指標を改善するためのアクションを明確化する目的です。RFVのどの指標が悪い顧客に対してはどういうアクションを取るべきか、を考えることによって、適切なアプローチで顧客をフォローできるようになります。

例えば、直近利用していない顧客と利用量が少ない顧客ではサポート内容が異なります。直近利用していない顧客であれば、そもそもサービスのことを忘れていたり、忙しかったりするだけかもしれないので、メールで案内を出すなどの施策を検討してみましょう。

一方、利用頻度が少ない顧客は利用自体はしているケースもあるため、もっと頻度を増やしてもらえるように、新たな利用シーンを提示するなどの方法が有効かもしれません。

RFVの各スコアによって、サポートとしてどう対応すべきかが異なってきます。スコアの数値によって、顧客へのアプローチの仕方がより明確になるのです。

もう1つが、RFVスコアの良い顧客の共通点を見つける目的です。

RFVスコアが良い顧客は自社製品のヘビーユーザーといえるため、その顧客の共通項を見つけることによって、自社製品のターゲット属性を整理できます。ターゲット属性が把握できれば、今後の営業活動などへ活用できるでしょう。

BtoBであれば、RFVスコアの高い企業の業界や利用者の職種・役職、従業員数に所在地などの企業の特徴を発掘することによって、今後のターゲット層をより具体的に描けます。

BtoCであれば年齢・性別や都道府県などのデモグラ情報をRFVと紐づければ、ターゲットイメージが明確になるでしょう。

RFV分析を活用するメリットデメリット

次に、RFV分析を活用するメリット・デメリットを紹介していきます。RFV分析の活用を考えている方は、参考にしてみてください。

メリット

メリットは、上述したように顧客の状況に合わせたアプローチができるところにあります。サービスの活用がうまく進まない、サービスの解約率が高い、といったケースにおいて、解約率が高いだけでは原因が分からないので、具体的な施策を検討するのが難しいです。

RFV分析をすることで、直近の利用日・利用頻度・利用量どれに課題があるのかが明確になります。その結果、どのようなアクションを取ればそれらを高められるのかが考えやすくなって、適切なアプローチを行うことが可能になるのです。

デメリット

そこまで大きなデメリットはないため、一度分析してみることをおすすめしますが、データが整っていないと必要なデータを揃えるのに時間がかかるかもしれません。また、解約率や売上等、本来改善したい指標との紐付きをしっかり確認しておかないと、意味のない指標を改善することになる可能性があります。

例えば、サービスによっては利用量はそんなに重要ではなく、どんな顧客であれ一定なので、直近の利用日や利用頻度だけが解約率・売上に相関している、というケースもあるでしょう。

RFV分析を行う際の注意点

RFV分析を行う際は、まず各スコアの定義を明確にしておきましょう。「利用」の概念や基準が多少ぶれることがあるので、複数人に結果をシェアする際は定義まで明確にしておくと親切です。

また、何となくでRFVスコアだけ出しても、特に何も得られないケースというケースもあります。分析にあたって、仮説は準備しておきましょう。

上述の通り、RFV分析の目的は大きく分けて2つあります。その中でも、何が目的で、どういった指標との相関を出したいのか、などを明確にした上で、現状どういった課題を持っているのかについて仮説を立てておくと良いでしょう。

RFV分析の活用方法

最後に、RFV分析の活用方法を例とともに紹介していきます。

  • SaaS企業
  • BtoB企業
  • ECサイト

それぞれ詳しく見ていきましょう。

SaaS企業

SaaS企業は基本的にサブスクリプションモデルでビジネスを展開しているため、顧客の更新率をいかに高められるかが事業成長の要です。更新率・解約率とRFV分析を紐づけるケースが多く、更新率を測るための指標としてRFV分析を用いている企業もあります。

更新率とRFVスコアに相関が見られれば、更新率を高めるために顧客の利用頻度や利用量を増やす、という動きを取ることが可能です。

更新率はあくまで結果指標であり、利用期間中に満足できる体験ができたかが最終的に更新判断をするかどうかに関わってきます。その満足度をRFVスコアで計測して、低い顧客に対しては積極的にCSフォローをするなどの施策を実行することで、満足度と更新率を高めていくなどの活用方法があります。

また、顧客のセグメンテーションとターゲティングにも活用されている傾向です。CS活動によってRFVスコアを向上できるケースもありますが、一方で、もともとの顧客属性によってRFVが一定決まっているケースもあります。そういったケースにおいては、RFVが高くなる傾向にあるセグメントの顧客に製品を提供することが重要となるため、マーケティングや営業の戦略におけるターゲットとして定義されるのです。

BtoB企業

SaaS企業もBtoB企業なので重なる部分はありますが、BtoBにおいてはリードナーチャリングでのRFVが使われるケースがあります。

リードナーチャリングとは、リードとして獲得したものの商談化しなかったり受注しなかった顧客に対して、メルマガなどで情報提供をしながら製品導入意向が高まるよう顧客を育成していくことです。

この、リードナーチャリングのスコアにRFV分析を用いることがあります。メルマガなどで送ったコンテンツに対してのRFVスコアを見れば、提供したコンテンツをいつどのくらいの頻度でどのくらいの量閲覧しているかが分かるため、RFVスコアが高い顧客ほどコールした際の反応が良かったりするのです。

一度は商談化せずハウスリストに蓄積されたリードに対して、適切な再アプローチタイミングを推測する手段として活用されています。

ECサイト

ECサイトでは、商品のレコメンドなどに活用されます。例えば、閲覧頻度の高いユーザーは、消耗するスピードの早い商品を購入しにきている可能性が高いので、そういった消耗品系の商品をレコメンドします。

また、スコアに応じて購入されやすい商品の傾向を掴めば、RFV分析の結果からどのような商品をレコメンドするか、というロジックを作ることも可能です。

さらに、広告出稿のセグメントにも活用されていて、直近のアクセスがないユーザーに広告配信をしたり、スコアに応じたおすすめ商品の広告を配信するなどの方法も実施されています。

まとめ

RFV分析は顧客のエンゲージメントスコアを分析する1つの手法で、マーケティングにおけるアクションやターゲティングの精度を高められるものです。データを集めるのが多少大変かもしれませんが、目的と仮説を持って分析することでさまざまな示唆を得られる分析ですので、ぜひ挑戦してみてください。

RFV分析に役立つ情報を知りたいという方は、下記の資料を参考にしてみてください。

監修者

広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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