CSAT(顧客満足度)とは|NSPとの違いや使い分けるポイントは?

2022.02.04
CSAT(顧客満足度)とは|NSPとの違いや使い分けるポイントは?

ユーザーや顧客がどのように感じているかを把握する必要のあるマーケティング担当者にとって、CSAT(顧客満足度)を始めとしたさまざまな指標はとても重要なものになります。

 

かつては多くの事業が対面で行われており、顧客から直接サービスに対する満足度を測ることが可能でした。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響もあり、近年ではオンライン上へのサービス提供が増えており、顧客満足度を測定するのも難しくなってきています。

 

当記事では、CSAT(顧客満足度)とは何か、測定方法やメリット、CSAT(顧客満足度)に関連するその他の指標などをまとめて解説していきます。

CSAT(顧客満足度)とは

CSAT(Customer Satisfaction)とは、自社が提供する商品やサービス、対応に対して顧客がどの程度満足しているかを測る指標となるものです。

 

サービスを利用した際などに見かける「このサービスをリピートしたいか?」などの質問が、CSAT(顧客満足度)を測るために利用されています。

 

総合的な顧客満足度の算出を行うためには、商品やサービスの機能性に対する【機能的価値】と、ユーザーがサービスを利用する際の感覚に対する【感情的価値】の2つに大別した測定を行うのが一般的です。その中で、CSAT(顧客満足度)は主に【感情的価値】を図るために利用されています。

NPS(顧客推奨度)との違い

NPS(Net Promoter Score)は、顧客ロイヤリティを測るための指標です。顧客満足度とは違い、NPSでは顧客推奨度を表すことができます。主に、自社商品への愛着や信頼度を表すために使用されます。

 

CSAT(顧客満足度)がサービスの質を向上させるために活躍する指標であるのに対して、NPS(顧客推奨度)はより業績に直結しやすい指標であるといえるでしょう。

 

NPSについてさらに詳しく知りたい方は、「NPSスコアとは、計算方法や調査方法、注意点などをまとめて解説」の記事をご参照ください。

NPS(顧客推奨度)との使い分け

2つの指標を使い分けるためには、現在提供しているサービスをどういった方向に改善していきたいのかを明確にする必要があります。

 

自社のサービスに対して顧客やユーザーがどの程度満足しているかを調べたい、具体的には「この商品に満足できたか」、「このサービスをリピートしたいと思うか」という意見をユーザーから集める場合は、CSAT(顧客満足度)を測ることになるでしょう。

 

自社商品にどの程度の愛着を持っているかを調べたい、具体的には「この商品を友人や知人に勧めたいと思うか」という意見をユーザーから集める場合は、NPS(顧客推奨度)を図ることとなります。

 

目的に合わせた適切な調査が行えるようにしていきましょう。

顧客満足度を測定するその他の指標

-顧客満足度を測定するために役立つ指標は他にもあります。それぞれの指標で把握できる情報は分かれており、あらゆる指標を総合することで、より具体的に顧客満足度を把握できるようになるのです。

 

顧客満足度を測定するその他の指標は、主に下記の4つです。

  • GCR
  • CES
  • CSI
  • JCSI

これらの指標は一般的に、「デジタルCX」と呼ばれるピラミッド型に結果を積み上げることで測定されています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

GCR

GCR(Goal Completion Rate)は目標達成率を表す指標で、「デジタルCX」では一番下の土台の部分にあたります。ユーザーが商品やサービスを利用したことによって、実際に目的を達成できたのかどうかを測るのです。簡単にいうと、ユーザーのニーズを満たせているのかが分かります。

 

GCRの測定では、CV率のチェックやアンケートの実施を行う必要があります。ユーザーが目的を達成できていない場合は、何を求めているかを確認することで改善につなげられるでしょう。

CES

CES(Customer Effort Score)は顧客努力指標を表す指標で、「デジタルCX」ではGCRとCSATの間の部分を担います。ユーザーが目的を達成するためにどのくらい努力したかどうかの度合いをチェックすることが可能です。

 

簡単に説明すると、自社の商品・サービスはユーザーにとってどのくらい使いやすいものなのか、ということが分かります。

 

CESの測定では、5点満点のスケールの提示や、質問に対する7段階の評価などを行ないます。CESを測定することにより、GCRだけでは把握しきれない自社の商品・サービスの弱点を洗い出せるのです。

 

CSI

CSI(Customer Satisfaction Index)は、30カ国以上で活用されている顧客満足度指数です。

 

  • 顧客期待値
  • 顧客満足度
  • 顧客忠実度
  • 知覚品質(商品に対する主観的評価)
  • 知覚値(品質と価格への満足度)

 

などの複数の要素をかけ合わせて算出され、世界中の多くの企業で他社と比較するための指標として利用されています。十分なデータ数が用意できれば、信ぴょう性の高い結果が出やすいことから、各国の政府機関や大企業での調査にも用いられる指標です。

JCSI

JCSI(Japanese Customer Satisfaction Index)は、上記のCSIをより日本の産業向けにカスタマイズした指標です。

 

サービス産業生産性協議会」が毎年調査を行っており、30種以上の業種から累計12万人以上の利用者に向けて集計しています。各業種の上位企業は、ホームページ上で公表されているので、気になる方は確認してみましょう。

 

JCSIでは、CSIの測定で用いた

 

  • 顧客期待値
  • 顧客満足度
  • 顧客忠実度
  • 知覚品質(商品に対する主観的評価)
  • 知覚値(品質と価格への満足度)

 

上記5つの要素に

 

  • 推奨意向(友人や家族に勧めたいと思うか)

 

を追加した6つの要素から測定して、100点満点で数値化します。JCSIでは多種多様な業種・企業が調査の対象となっているので、あらゆる業種や業態に対して統一の設問が行われています。そのため、業種の枠を超えた顧客満足度を測るための指標として、毎年の指数向上を経営目標とする日本の企業は多いです。

CSATを測定するメリット

CSATやそれに関連する指標について解説しましたが、実際にCSATを測定することによって、どのようなメリットを得られるのでしょうか。CSATを測定するメリットは、主に下記の2つです。

 

  • 顧客ロイヤリティの向上につながる
  • 顧客獲得や集客コストの削減が期待できる

 

CSATの数値が企業に与える効果について、詳しく解説していきます。

顧客ロイヤリティの向上につながる

CSATの測定によって感情的価値の評価を把握できれば、自社のサービスの課題や欠点が明確になります。

 

どのような改善を施せばユーザーにとってメリットがあるのかを把握することが可能です。結果として、顧客ロイヤリティの向上へとつながり、顧客が離れていくことを防止できるようになるでしょう。

 

自社のサービスに対する課題や欠点を明確にして、中長期的な目線で収益の向上を目指す場合は、CSAT(顧客満足度)の測定は必要不可欠といえます。

顧客獲得や集客コストの削減が期待できる

CSATを測定することにより、数値化された顧客満足度は新規ユーザーや顧客を獲得するための指針として活用できます。

 

CSATを用いた改善を行って、満足度が高いユーザーが増えれば、口コミなどでさらに多くの人々へ自社の商品やサービスの魅力が伝わるでしょう。それによって、新たなユーザー・顧客が増えるだけでなく、商品やサービスのブランディング強化にもつながっていきます。

 

また、評価の高い口コミによって自然と商品が広まっていけば、集客コストを削減した効率的な宣伝効果を期待できるのです。

 

このように、CSATは単なる顧客満足度の指標としてだけでなく、長期的にあらゆる効果をもたらしてくれることが分かります。

CSATの測定方法

CSATは、あらゆる方法で測定することが可能です。5段階〜10段階の評価で測定するケースが一般的ですが、他にも電話やメールでの調査や、直接顧客に対してアンケートを取る方法などもあります。

 

接客業では、普段からお客様の声が届きやすいため、満足度も推し量りやすいです。しかし、オンライン上でのやり取りが増えている現在は、顧客満足度を測定するために工夫した測定方法が必要になってきています。

 

CSATには決まった測定方法などはないので、自社商品やサービスに適した方法を選ぶようにしましょう。

 

一般的には下記のような方法が取られています。

 

  • アンケート調査
  • リサーチ会社による調査
  • ツールを用いた調査

 

それぞれの方法には、どのような目的で測定を行うのかによって向き不向きがあります。短期的な測定を行う場合と長期的な測定を行う場合に分けて、見ていきましょう。

短期的な測定

短期的な測定方法は、時期によって顧客満足度に変化が現れやすい小売業でよく使われている測定方法です。ユーザーや顧客から問い合わせがあった直後に、簡単なアンケートを送信するなどの方法が一般的とされています。

 

このタイプの調査では、直前の対応が顧客の期待に添っているのかどうかをすぐに確認することが可能です。時期ごとに販売戦略を考える必要がある小売業では、短期的な顧客満足度の調査によるフィードバックはとても重要といえます。

長期的な測定

ユーザーや顧客と末永く良好な関係を築いていくためには、継続的なCSAT(顧客満足度)の測定が必要になってきます。

 

長期的な測定では、ツールを用いて総合的に調査を行うのが一般的です。通常は、初回に購入してからの期間が長ければ長いほど、顧客満足度が高い傾向があります。しかし、実際に長期ユーザーを満足させられているかどうかを測定していないと、顧客のニーズを把握しきれず、顧客離れが起きてしまう可能性もあるでしょう。

 

そのため、長期的な顧客満足度の測定はどんな業種でも必要です。しかし、この方法で得られるのはもっとも大きい顧客の声で、極端に印象に残る体験があった場合や、すでに常連として高い評価をしている人を中心とした結果となります。

 

この方法では、それほど企業と関わりのない潜在的ユーザーの顧客満足度は把握しにくいという点には注意してください。

長期的なCSATの測定にはツールの活用がおすすめ

長期的なCSAT(顧客満足度)の測定には、CRMツール(Customer Relationship Management)の活用がおすすめです。

 

CRMツールとは、ユーザーや顧客に関する情報を一元管理できるツールです。このツールを使えば、顧客の個人情報や購入に関する履歴、問い合わせやアンケートの結果などをまとめて管理できるため、長期的な顧客やユーザーの動向を測るためにとても有効なツールといえます。

 

CRMツールの機能として、一般的に以下のようなものがあります。

 

  • 顧客の情報管理
  • 営業サポート
  • マーケティングサポート
  • カスタマーサポート

 

上記のような機能を異なる部署間で共有できるため、企業全体として今後どのような改善が必要なのかといった情報をデータとして把握することが可能です。

 

また、自社のSNSアカウントを用いてユーザーや顧客とコミュニケーションを取ることによって、より近い距離から情報を収集できます。自社SNSアカウントで役立つ情報を発信していけば、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。

まとめ

顧客満足度を表すCSATは、企業として今後の収益にも関わる重要な指標であることがお分かりいただけたと思います。CSATの測定によって、新規顧客の獲得や集客に関するコストの削減など、さまざまな効果が期待できます。

 

最終的には、ユーザーや顧客が満足できる商品・サービスを提供することがCSATの向上につながっていくのです。CSATが低下してしまうと、新規顧客を開拓し続ける必要があるため、企業の成長の妨げになってしまう可能性も高いでしょう。

 

顧客が1度の利用だけで満足してしまわないよう、CSATをはじめとするさまざまな指標を用いて自社の製品やサービスを愛してもらう努力を怠らないことが大切です。

 

企業にとって重要な指標をしっかりと把握しておけば、経営戦略の立案や商品・サービスの改善などに大きなメリットがあります。CSATの他にどのような指標があるのか詳しく知りたいという方は、下記の資料をご参照ください。

 

監修者

広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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