人時生産性とは|算出方法や向上させるポイントで解説

2022.09.19
人時生産性とは|算出方法や向上させるポイントで解説

働き方改革が注目を浴びている現在、人時生産性が仕事の効率性を考える上で重要なキーワードとなっています。働く人々が多様な働き方を選択できる社会を実現させるためには、仕事の効率を上げるための施策を立てることが必須です。

1時間あたりの労働生産性を表す人時生産性の意味や計算方法を知れば、企業の生産効率アップに一歩近づけるでしょう。

この記事では、人時生産性の意味や計算方法、人時生産性を下げてしまう原因や向上させるためのポイントなどについて解説します。

人時生産性とは

人時(にんじ)生産性とは、従業員が1時間あたりに生み出せる付加価値を示す指標です。人時生産性を算出する際の「付加価値」とは、売上金額から仕入れ金額などの費用を引いた値のことで、商品のうちの原価以外の価値を指します。この付加価値にあたる数値を「粗利益」という場合もあります。

人時生産性が高いほど、仕事の効率が高いことを示しているのです。逆に、人時生産性の数値が減少していれば仕事の回し方や環境に問題点があると考えられます。

人時生産性を分析すれば、ビジネスにおけるコストの投入の仕方や労働環境が適切かどうかを判断することが可能です。

労働生産性との違い

人時生産性と似ている言葉に「労働生産性」があります。これらの2つの指標を混同している人も多いのではないでしょうか。確かに、いずれも投入された労働量に対する価値を表す指標だということには変わりありません。

しかし、人事生産性と労働生産性には違いがあります。労働生産性と人時生産性の違いを分けるポイントは、定義の厳密さです。

労働生産性は全体の労働投入量に対する生産量を広く示す指標で、このときの労働投入量とは、従業員である場合もあれば従業員の労働時間の場合もあります。また、生産量に関しても、付加価値を用いて計算することもあれば、生産数量を用いて計算することもあります。

一方、人時生産性は従業員1人の1時間の労働量が生み出す、付加価値を表す指標として明確に定義されているのです。

つまり、労働生産性は人時生産性よりも広い定義で生産性を表す指標であり、人時生産性は労働生産性よりも限定された意味合いを持っているという点で違いがあります。

人時売上高との違い

仕事の効率性を示す指標として、「人時売上高」というものがあります。どちらも、従業員が1時間あたりに生み出すことのできる数値に焦点をあてた指標であることに変わりはありません。

人事売上高と人時生産性は、時間当たりに生み出した価値が売上か付加価値かという点が異なるのです。人事売上高を計算する際は、単純に売上高を従業員1人の労働時間で割りますが、人時生産性を計算する際は、売上高から仕入れ金額を引いた金額を従業員1人の労働時間で割ります。

人時売上高はあくまでも労働時間に対する売上高を示す数値であるため、それにかかったコストは反映されていません。ただ、人時生産性と人時売上高はどちらも経営状況を判断する上で大切な指標となるため、合わせて活用されるケースも多く見られます。

人時生産性が注目される理由

企業の活動において、人時生産性が注目されるようになったのはなぜでしょうか。生産性という考え方自体は以前からあったにもかかわらず、近年は特に人時生産性に対する注目度が上がっています。

その理由としては、主に「労働人口の減少」と「働き方改革」の2つです。それぞれの理由について、詳しく解説していきます。

労働人口が減少している

人時生産性が注目される背景には、まず少子高齢化の結果として労働人口が減少しているという日本社会の現状があります。

労働人口は労働の意思と労働可能な能力を持った15歳以上の人のことを指し、日本は少子高齢化の影響もあり、若年層が減少の一途を辿っています。労働人口には定年退職者が含まれないため、若い人口が減少している現状から、労働人口は今後も減少していくと考えられるでしょう。

今後も労働人口の減少が見込まれる中、生産数量を確保するためには限られた労働力でいかに効率的に成果を生み出していくかが重要となります。そのためには、人時生産性を確認しながら生産性の向上への対策を立てることが大切です。

働き方改革が推進されている

2019年4月1日より、働き方改革関連法案の一部が施行され、中小企業から大企業に至るまで、ワークライフバランスの重要性が幅広く認知されるようになりました。旧来の日本の価値観では、長時間労働が賞賛される風潮があり、生産性よりも労働時間が重要視されていました。

しかしその結果、日本では長時間労働が深刻な課題となり、過労死や精神的なハラスメントによる自殺が増加する結果となったのです。また、働き盛りの年齢が出産・育児の年齢と重なることから、長時間労働の問題は出生率の低下にも影響を及ぼしています。

こういった問題を解決するために、厚生労働省から働き方改革が提示され、企業に対して従業員の労働時間の制限や休日の確保が求められることとなりました。

限られた時間内で成果を維持し続けるためには、生産性の向上が欠かせません。そこで、人時生産性が注目を浴びています。

人時生産性の算出方法

人時生産性は以下の計算式で算出できます。

  • 人時生産性 =(売上金額 – 仕入れ金額)/ 総労働時間

人時生産性とは、従業員1人が1時間働くことで生み出される付加価値のことなので、付加価値(売上金額 – 仕入れ金額)を労働時間で割った数値が人時生産性になります。つまり、同じ売上金額でも総労働時間が短ければ人時生産性は上がります。また、同じ売上金額でも仕入れ金額が多くなれば、人時生産性は下がってしまうでしょう。

人時生産性を高めるためには、売上の向上、仕入れコストの削減、総労働時間の短縮の3つのアプローチがあります。

人時生産性を低下させるロス

人時生産性を低下させるロス要因にはさまざまなものがあります。そして、どんな組織にもロスは潜んでおり、完全に合理的な業務体制がとれている組織は存在しません。なぜなら、時間の経過や時代の流れに合わせて状況は変化しロスが発生するからです。

人時生産性を上げるためには、さまざまなロス要因を排除していく必要があります。ただ、現場で毎日働いている従業員にとっては、ロスがあることが当たり前になってしまっていて、改善しなければならないロスを発見するのは難しいです。

まずは、どのようなロス要因があるのかを見ていきましょう。

生産ロス

生産ロスとは、製造現場で発生する損失のことです。このロスは生産性に直結するため、改善できれば業務効率の大幅な向上につながります。生産ロスが生じる原因はさまざまで、機械の故障や段取り不足、不良品の発生による時間的ロスが代表的です。

生産ロスは、どのような現場でも多く発生するため、当たり前であると認識されていることが多く、軽微なロスであれば見過ごされてしまうケースもあります。しかし、生産ロスを少しでも排除できれば、人時生産性を大きく改善できるため、見過ごさずに改善策を講じることが大切です。

管理ロス

管理ロスとは、指示待ち、材料待ち、故障修理待ちなどの、管理上生じる待機時間のことです。管理ロスは、管理者の業務指示や手配の段取りの悪さによって生じるロスですが、外部との連携が関わってくるため、組織内で抜本的に減らしていくのが難しいといわれています。

管理者が発生する待ち時間を少しでも短くするために連絡体制を見直したり、従業員が待ち時間を効率的に他の業務にあてたりすれば、管理ロスの低減につながるでしょう。

動作ロス

動作ロスとは、非効率な動作によって作業効率が下がることで発生する時間的ロスのことです。

作業員の配置や、設備のレイアウト、定められた作業方法に無駄があると、動作ロスが多くなります。動作ロスには、従業員のスキルの差によって発生する時間的ロスも含まれます。従業員の編成が変更されたときに従業員の特性に合った配置に替えたり、設備が更新されたときに作業スペースの設備のレイアウトを変更するなどの方法で、常に無駄のない動作ができるスペースにしておくことが大切です。

作業ごとに作業風景を撮影し、従業員や作業場ごとの作業の様子を客観的に見直すして、改善点を明らかにするのも良いでしょう。

自動化置き換えロス

自動化置き換えロスとは、自動化できるはずの業務を人力で行うことにより生じる時間的ロスです。設備の投入時には大きなコストがかかるように見えても、実際は人件費などの費用面でも時間の面でもコストを抑えられるケースも多数あります。自動化置き換えロスを削減するためには、中長期的な視点から設備投資の判断を下すことが大切です。

編成ロス

編成ロスとは、ライン設計が原因で生じる時間的ロスのことです。1人の作業者が複数の機械を受け持つ多台持ちや、1人の作業者が複数種の機械を担当する他工程持ちの体制をとっている場合、手持ち時間が発生するようなライン設計を組んでいると効率化が阻害されてしまいます。

また、コンベア上で装置や作業者が順次加工する直線ラインの製造工程において、工程のバランスが乱れた場合の時間的ロスも編成ロスに含まれます。

人時生産性を向上させるポイント

人時生産性は、従業員1人が1時間で生み出す付加価値です。したがって、人時生産性を向上させる方法として、人事面で可能な対策としては労働時間の減少、付加価値の増加という2つの方針があります。

もちろん、2つを同時に改善できれば良いのですが、簡単にはできないでしょう。そのため、実際には工程をいくつか分けて段階的に実施していくことになります。人時生産性を向上させるために実施される施策にはさまざまなものがありますが、ここでは代表的な方法を2つご紹介します。

人員の配置を調整する

社員を適材適所に配置することで、業務の効率化を図る方法です。従業員ごとに人時生産性や勤務態度を見直して、個人の特性を分析し、配置を調整します。

配置の調整では、部署ごとの労働生産性も見直して、生産性が高く余剰人員がいる比較的余裕のある部署から慢性的に人手が不足しており生産性の低い部署へ異動、といったことを行います。

このような配置転換によって、組織全体の労働力のバランスを調整できて、生産性のアップや総労働時間の削減につながるのです。これによって、人時生産性の向上を図れます。

業務を効率化させる

業務の手順や連絡体制を見直し、業務の効率化を図る方法です。拠点や部署ごとに従業員の勤務体制や業務のやり方、手順や連携に改善点がないかを確認します。

あまりにも無理のある工程があったり、人によって進捗が変わってしまうような業務内容があったりする場合は、設備投資などを行って業務の効率化を推進します。このような方法をとることで、生産数量の増加や投入資源の削減を図れて、結果として人時生産性の向上につながるのです。

ITツールなどを導入する

ITツールなどを導入して業務を自動化し、業務の効率化を図る方法です。IT技術を利用したツールを活用することで、これまで人間が行っていたデータ入力業務や集計・分析業務を機械に任せられるようになります。人間にしかできない仕事に回せる時間が増え、貴重な人材を有効活用できます

業務の自動化によって、人的ミスの削減や事故リスクの低減などが期待できるため、リスク管理や安全対策にかけるコストを節約できるでしょう。

このように、ITツールを導入することで、より生産性の高い業務に人材をあてられる上、リスク管理や安全対策にかけるコストを削減できるため、人時生産性の向上につながります。

人時生産性の改善における注意点

人時生産性を向上させるために、あらゆる施策に取り組むのは大切なことです。しかし、人時生産性を上げることばかりに気を取られて、改善を急ぎすぎたり、やり方を間違えたりすると、かえって生産性が下がってしまうこともあります。最後に、人時生産性の改善における注意点を2つ紹介するので、見ていきましょう。

生産性の向上や効率性の改善を進めていく上で気を付けなければならないのは、根拠となる人時生産性の数値が正確であるかを確認しておくことです。根拠となる数字が間違っていると、適切な改善ができないだけでなく、場合によっては誤った方向性に進んでしまうことも考えられます。

人時生産性の改善に向けさまざまな方法を実行しても、一向に改善が見られない場合は人時生産性の根拠となる数値が適切に算出されていない場合があります。人時生産性の改善がなかなかうまく行かない場合は、売上高、費用、総労働時間が適切に計算されているかどうかを確認しましょう。

まとめ

人時生産性は近年ますます注目されている指標で、今後組織が成長していくうえでキーポイントになります。これまでは生産性を意識しなくても業務がうまく回っていたとしても、ネットワークの広がりによる競争の激化や社会情勢の変化により、従来の業務体制が通じなくなることも十分に考えられます。

なるべく早い段階から生産性の向上に目を向け、労働環境の改善や、無駄な業務の削減など現状の見直しに取り掛かってみてはいかがでしょうか。

監修者

広瀬好伸
株式会社ビーワンカレッジ 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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