PMF(プロダクトマーケットフィット)とは|PSFとの違いも解説

2022.04.18
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは|PSFとの違いも解説

「PMFという言葉は聞いたことがあるけれど、いまいち意味が理解できていない」、「PSFとの違いが分からない」という人も少なくないでしょう。

 

そういった方のために、この記事ではPMFについて詳しく解説していきます。PSFとの違いやPMFを目指す方法なども説明していくので、ぜひ参考にしてみてください。

PMF(プロダクトマーケットフィット)とは

「PMF(プロダクトマーケットフィット)」とは、「企業の商品やサービス(プロダクト)が提供している市場に適合(フィット)し理想的に受け入れられている状態」を意味する用語です。

 

もっと簡単に説明するならばPMFとは「商品と市場との相性」です。どんなに優れた商品であっても適切な市場に供給できなければ売上は見込めません。市場と一口にいっても状況や条件、要望はさまざまです。同じ商品でも、要求や課題が異なる市場にそれぞれ投入すれば当然売上や評判も異なります。

 

企業にとっては「顧客の課題を適切に解決できる市場に効率良く商品を供給すること」が理想です。困っている人の手元に助けとなるような商品を供給できれば、企業としては最小のコストで最大の利益が見込めます。

 

さらに、顧客の課題を適切に解決できる商品が適切な市場で出回れば、顧客も満足ができるでしょう。そんな企業にとっても顧客にとってもベストな形で需要と供給が満たされている状態を「PMFが達成されている」と表現するのです。

PSFとの違い

企業が顧客の課題を達成しているかどうかを示す指標の一つに、「PSF(プロブレムソリューションフィット)」があります。PSFとは「顧客ニーズに適応した商品を企業が提供できているかどうか」を知るために用いられる指標です。

 

商品の売上を伸ばすためには企業が適切に顧客の抱えている課題を把握し、課題を解決できる商品を提供する必要があります。それを判断するために、PSFが用いられます。

 

PMFとPSFの大きな違いは「市場」です。PMFが顧客と企業と市場の3つの要素を考慮しているのに対し、PSFは顧客と企業の関係性のみを捉えているという違いがあります。理想的な「PSF」が達成されたとしても、供給する市場選択を誤れば理想的な業績にはつながりません。PSFに市場の概念を加えたものがPMFであり、PMFにとってPSFは達成の前提にあたります。

 

PMFを目指すならまずはPSFにする

PMFにとってPSFは達成の前提なので、理想的なPMFを目指すなら、まずPSFの達成を目標にしましょう。顧客の課題解決を再優先し、課題解決が達成できてから最適な市場を考える、という流れで進めると、無理なくPMFの実現に向けて進められるでしょう。

 

ここでは、まずPSFを達成するための方法について解説していきます。

 

  • 市場の問題や課題を見つける
  • 問題や課題の解決策を考える
  • ユーザーの購買意欲をチェックする

 

上記の3ステップでそれぞれ説明していくので、見ていきましょう。

市場の問題や課題を見つける

顧客は抱えている問題や課題を解決するために、企業の商品を購入します。そのため、企業は市場が抱える問題や課題を見つける必要があるのです。

 

自分がどれだけ良い商品やサービスだと思っていても、顧客にニーズがなければ意味がありません。市場の問題や課題を見つけて、それを解決できる商品やサービスを提供することが、顧客と企業の適切な需要と供給につながります。PSFを達成するためには、まず市場のニーズを把握するところから始めましょう。

問題や課題の解決策を考える

市場の問題や課題がつかめたら、解決策を考えます。解決策を考えたら、本当に問題を適切に解決できるか、顧客にそれが伝わるかなどを検討してみてください。せっかく解決案を見つけても、それが顧客に伝わらなければ、購入や契約にはつながりません。実際に顧客にヒアリングができると、顧客の理解度をより具体的に把握できるでしょう。

 

また、その解決策は現実的に考えて実現が可能かといった観点でも考えるようにしてください。せっかく思いついても、コストがかかりすぎる、技術的に不可能などの問題があると、実現させるのは難しいです。会社の現状などと照らし合わせながら確認してみましょう。

ユーザーの購買意欲をチェックする

課題の解決策や製品の方向性が定まったら、ユーザーの購買意欲をチェックします。市場でニーズがあったとしても、料金が高すぎると顧客の手は遠ざかってしまいます。

 

その商品やサービスを実現した場合に、顧客は本当に購入・契約をしてくれるのか、どのくらいの価格帯であれば購買につながるのかなど、実際に販売するときのことを考えながらユーザーの行動を確認してみてください。時期や条件によって変化するユーザーの気持ちを確認し、適切な形で商品を提供することでPSFの達成が期待できます。

PSFからPMFを目指す方法

PSFを達成できたら、次はPMFを目指していきます。PSFからPMFを目指すときには、下記の3つのステップで行っていきましょう。

 

  • ユーザーの問題を最低限解決する製品・サービスを提供
  • 市場の調査を継続
  • 改善を繰り返す

 

それぞれの工程ごとに詳しく解説します。

ユーザーの問題を最低限解決する製品・サービスを提供

PSF達成までの流れで得た経験を元に、ユーザーの問題を最低限解決できる製品・サービスを開発していきます。PMFでは、まずユーザーに「この製品・サービスには他の企業のものにはない価値がある」と実感してもらうことが大切です。最小限の機能に絞れば、ユーザーにメリットが伝わりやすくなり、シンプルな操作性で初めて使う人への導入のハードルも下げられます。

市場の調査を継続

開発した製品やサービスを実際にユーザーに提供し、その反応を調査しましょう。提供後は反応を常に調査し続け、ユーザーの求めている機能などを実装しながら、製品を感性へと近付けていきます。市場のニーズは常に変わるため、市場の変化するニーズに合わせながら適切な機能を実装していけば、長く顧客に利用してもらえる可能性が高まります。

 

ユーザーにアンケートやヒアリングなどをすれば、効率的に意見を集められて、調査を行いやすくなるでしょう。この際には、サービスの良い点を聞くのも大切ですが、悪い点や要望などを重点的に確認すると、新たに実装すべき機能やサービスの改善点などを発見しやすくなります。

改善を繰り返す

ユーザーの声や市場のニーズに合わせて、製品やサービスの改善を繰り返していきましょう。改善を行う際には、ただ機能の追加などを行っていくのではなく、追加した結果どのような変化が起きたのかもチェックしてください。

 

例えば、機能を追加したことでサービスの利用者数が増えた、ユーザーの満足度が上がったなどの良い結果が出れば、その改善は成功となります。

 

しかし、改善したつもりが逆に悪い結果につながってしまうこともあります。サービスの解約数が増えたなどの悪い方向に進んでしまった場合には、何が悪かったのか原因をしっかりと究明して、同じことが起きないように注意してください。

PMFがビジネスにおいて重要とされる理由

ここまでPMFとは何か、PMFを目指す方法について解説しましたが、そもそもなぜPMFはビジネスにおいて重要とされているのでしょうか。その理由としては、ビジネス成功の大きな手がかりとなることが挙げられます。

 

PMFがないと狙うべき市場があやふやで、ユーザーの課題を解決するための製品・サービスの提供をするのが難しくなるでしょう。狙うべき市場をすぐに判別できるというのは、ビジネスにおいて大きなアドバンテージとなります。

 

また、常にユーザーが望んでいる製品やサービスを提供し続けられるというのも、PMFが重要とされる理由です。競合他社と勝負をする際にも、差を付けられるでしょう。

PMFの状態を測る基準

PMFを目指す方法については紹介しましたが、実際に提供した製品やサービスがPMFに達成しているかどうかが分からなければあまり意味はありませんよね。ここでは、PMFの状態を測るための基準となる指標を紹介していきます。

 

  • Product/Market Fit Survey
  • ユーザー調査
  • NPS
  • リテンションカーブ

 

PMFの達成を目指しているという方は、ぜひこれらの指標を元に検証してみてください。

Product/Market Fit Survey

Product/Market Fit Survey(PMF Survey)は、ショーン・エリス氏によって広まった、PMFを定量的に測るための調査です。「自社が提供している製品やサービスを使えなくなったらどう思うか」をユーザーに問いかけて、下記の4つの選択肢から答えてもらいます。

 

  • とても残念
  • やや残念
  • 残念ではない
  • 該当しない(製品を使用していない)

 

答えたユーザーの40%以上が「とても残念」と回答していたら、PMFを達成したといえます。この40%という数値は、実際にあらゆるスタートアップ企業でアンケートを行った際の調査結果から導き出されています。

 

参考:Using PMFSurvey.com

ユーザー調査

ユーザー調査は文字通り、ユーザーの声や評価を調査するための手段です。通常のアンケートやヒアリングと異なる点としては、ユーザーの感想などの表面的な意見だけでなく、ユーザー自身も意識できていない深層心理まで把握できることが挙げられます。

 

ユーザー調査には大きく分けて「定量調査」と「定性調査」の2つがあり、それぞれを使い分けて、より知りたい情報を深掘りして調査していきます。

 

定量調査は、数値などの明確な内容を調査する方法です。この形式では、「はい/いいえ」や5段階評価のような、ユーザーに選択肢から選んでもらう内容でアンケートを作成します。それによって、集計結果が数値で表れるようになります。

 

一方の定性調査は、ユーザーの意見などを記述形式で答えてもらう調査方法です。ユーザーの考え方やニーズを把握したい、製品・サービスの改善点を探す際の参考にしたいという場合に役立ちます。

NPS

NPSは顧客ロイヤリティを測るための指標です。顧客ロイヤリティとは、顧客が製品やサービス、企業に対して感じている愛着・信頼のことを指します。NPSの数値が高ければ高いほど顧客は製品やサービスに満足しており、周囲の人に勧めてくれたり良い口コミを書いてくれたりといった行動につながりやすいです。

 

現在の満足度を表す顧客満足度と違って、顧客ロイヤリティは将来の行動を見るための指標なので、精度が高く長期的な収益性を判断しやすいのも特徴といえます。

 

NPSについては、「NPSスコアとは、計算方法や調査方法、注意点などをまとめて解説」の記事でも詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

リテンションカーブ

リテンション(retention)は、日本語で「保有」や「維持」を意味する単語で、ビジネス用語としては「既存顧客の維持」という意味で使用されています。そして、特定の期間内に同じサービスや商品を再利用・購入した顧客の割合を表すのがリテンション率です。

 

リテンションカーブは、リテンション率を縦軸に、横軸にユーザーに提供してからの期間を置いたグラフを指します。このグラフが横ばいであれば、PMFを達成しているといえます。リテンションを一目で可視化できるため、社内でも指標として共有しやすい指標でしょう。

 

リテンション率(顧客定着率)とは、メリットや計算方法を解説」の記事でリテンション率について説明しているので、気になる方はこちらの記事もご参照ください。

まとめ

PMFは、企業が提供しているサービスや商品が、顧客の課題を解決できる市場で理想的な状態で受け入れられているかどうかを表します。PMFに似た指標としてPSFがありますが、これは顧客ニーズに適応した商品を企業が提供できているかどうかを判断する指標です。顧客のみを注視しているか市場も含めた要素を考慮しているかという点が大きく異なります。

 

PMFが達成できているかを測る基準としては、Product/Market Fit Surveyやユーザー調査、NPS、リテンションカーブなどが挙げられます。しかし、それ以外にも企業が注目すべき指標があるので、気になる方は、ぜひ下記の資料を参考にしてみてください。

 

 

監修者

広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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