経営企画部とは|役割や仕事内容を詳しく解説
2022.10.05
経営層にも近いポジションである経営企画部は、企業においてとても重要な役割を果たします。この記事では、経営企画とは何か、経営企画が企業に与える影響や外部からの印象などを紹介していきます。経営企画部に向いている人の特徴や求められるスキルなども合わせて解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
経営企画部とは?
CEOの意向を受けて中長期的な経営戦略を立てる、あるいは参謀としてトップの意思決定をサポートする、経営課題の解決に取り組むなど、経営企画部は経営層にとても近いポジションとして重要な役割を果たします。
そのため、さまざまな部署で現場経験を積んだ経験豊富な人や実績を上げた人など、社内でも選りすぐりのエース級メンバーが集められる傾向です。求められるスキルや仕事内容のレベルが高いことから、給与も平均より高いといわれています。
社内で憧れと注目を集めるセクションでもあり、転職市場でも多くの求人が募集されている人気ポジションです。
事業企画部と経営企画部の違い
「経営企画部」と並んで人気のある企画職に「事業企画部」があります。事業企画部は、事業レベルでの成長戦略の策定を行うのが主な仕事です。
「いかに収益を上げるか」というテーマの元に1~2年スパンの営業計画や行動計画を立て、それを各部署に落とし込みます。そして実際に立てた計画の進捗を確認し、必要であれば見直しなども行っていきます。
どちらも目標が達成されるように計画を立てるのが役割ですが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
経営企画部は、「会社全体」を軸に考え、将来どのような会社にしていくかビジョンを打ち出し、ゴールに至るまでの課題と具体的な戦略を立てる職種となっています。一方で事業企画部は、「1つの事業」を軸に考え、事業の方向性や数値目標を設定し、それを達成するための課題と具体的な戦略を立てる職種でsy。
まとめると、経営企画は「会社全体」、事業企画は「事業」の目標達成に向けて動いていきます。
経営企画部の役割
経営企画部門は、会社の心臓部といっても過言ではないほど重要な役割を担っています。市場や消費者、競合他社の情報を常にキャッチし、その情報を踏まえた上で「どう対応していくか」「どの分野に注力するか」などを考えるのです。
主に3~5年スパンの中期経営計画の立案、戦略の策定、予算管理などを行いますが、その他にも取締役会や経営会議の事務局など、さまざまな業務を担当しています。
経営企画部が組織されている企業の特徴
次に、経営企画部が組織されている企業にはどのような特徴があるのかを詳しく見ていきましょう。経営企画部がある企業とない企業でそれぞれ解説していきます。
経営企画部がある企業の特徴
規模が大きくなって組織化された企業では、経営企画部があることが多いようです。経営企画部が組織される理由としては、規模が大きくなることによって、経営層と現場の間に距離ができてしまうことが要因として挙げられます。各部署にしか分からない課題や情報を経営企画部が横断的に吸い上げることで、経営層に届けるのが役割となっているのです。
経営企画部がない企業の特徴
これまで見てきたように、企業の経営目標とそのステップである戦略の立案、実施の管理などを担当するのが経営企画部です。このような業務は、創業してしばらくの間や中小企業では社長や経営層が担っているところが多くなります。また、起業したばかりのベンチャーなどでは組織化されておらず、他部署の担当者が兼務している場合もあるようです。
欧米企業においては、「各部門に管理会計の専門家であるコントローラーが配置されて、各部門の業績目標達成と意思決定を支援する管理会計業務を担い、本社のCFOにレポートする」というコントローラー制度というものがあるため、経営企画部のような全社横断的な部門は見られません。
経営企画部が必要な企業の特徴
ある一定の規模に達しており、さらにそれ以上の成長を目指す場合に必要になってくるのが経営企画部です。
経営企画部は単なるバックオフィスではありません。数値管理や課題の解決だけに留まらず、会社が「未来」に向けて成長していく方法やその価値を最大化する道筋を考える部署です。今後の成長を望んでいる企業には、欠かせない部署といえるでしょう。
外部から見る経営企画部の印象とギャップ
企業の成長には欠かせないポジションともいえる経営企画部は、外部の部署からはどう見られるのでしょうか。ここでは、経営企画部の外部からの印象と現実のギャップを紹介していきます。
経営企画部の印象
経営企画部の具体的な業務内容は企業によって異なるものの、おおむね社長や経営会議の直属です。
そのため、会社組織において横断的な情報収集を行い、役員の集まる重要な経営会議を取りまとめ、その意思決定のサポートを行うプロフェッショナルな部署という印象を持っている社員が多い傾向にあります。
会社の中でも飛びぬけて優秀な人たちが集められている、少数精鋭のエリート集団といった華やかなイメージがあるようです。
理想と現実のギャップ
では、外部からの印象と実際に経営企画として働いている人の実情は一致しているのでしょうか。ここでは、理想と現実のギャップを見ていきます。
「偉い人からの休日や深夜でも関係なく色々な依頼が矢継ぎ早に来ます。」
「配属されて数年間は、休日返上で関連書籍に目を通したり、セミナーへ行きました。」
「経営層の考えと事業部門の意向に開きがあり板挟みで辛いです。」
経営企画部は、「会社の心臓」や「CEOの参謀」といわれることもありますが、その一方で、会議の日程調整や資料作成など非常に地味な仕事が多いのが実情です。
シミュレーションを行ったり、サマリー情報をまとめたり、数字を扱う細かく緻密な作業がエンドレスに続くと考えて間違いないでしょう。業務量が多くハードワークなことに加えて、さまざまな領域についての深い知識が必要なので、休日の多くを勉強にあてる人も少なくありません。
また、経営企画部では経営層と現場の橋渡しも重要な役割ですが、事業部門からは「現場が分かっていない」「この予算ではできない」と突き上げられ、経営層からは「全社的視点で考えて説得してくれ」と指示されるなど、両者からのプレッシャーを受けながらもその調整役をこなす必要があります。
華やかなイメージがありますが、どちらかというと経営層の意思決定を支える黒子的な存在といえるでしょう。
経営企画部の具体的な仕事内容
ここからは、経営企画部の具体的な仕事内容を紹介します。広範囲な経営企画部の仕事の中から、中長期の経営戦略の企画立案と経営管理を例に、どのような流れで進められていくか見ていきましょう。
①プランの立案
社長や経営層のビジョンを具現化するための企画を立案します。(PDCAの始めのPlanの段階)
②計画の策定
数値目標を策定して、プランが達成できているかを客観的に検証できるレベルまで具体化していきます。
③実行と進捗管理
次に立案された計画の旗振り役をつとめ、実行・運用していきます。それに加えて、中間目標に届いているかどうかをチェックし、計画が予定通りに進んでいるかの確認も必要です。(PDCAのDoとCheckの段階)
④プランの修正
もちろん計画を進めていく中で、目標達成を阻害している要因が見つかった場合には、その課題を解決するための改善や修正を行います。(PDCAのActionの段階)
以上のような流れで経営戦略の立案・策定・実行・運用・チェックを行い、これと平行して、さまざまな業務や複数のプロジェクトを進めていきます。
企業規模による仕事内容の違い
経営企画部の業務範囲は、一般的に大手企業ほど多岐に渡ります。
基本的な仕事内容は、経営戦略の立案策定から実施運用、そのチェックです。これと平行して、内部統制のような社内既定の策定、子会社支援、他社との共同事業の交渉、新たな収益の柱となるべき新規事業の創造、部署横断型プロジェクトのリーダーや調整役、IR、海外企業も含めたM&Aの推進なども経営企画部が携わります。
上場前の企業であれば、IPO準備なども経営企画部の業務といえるでしょう。
中小企業の場合は、一言でいえば、経営者がそのときに気になることを解決するのが役割になります。人数的にも少数精鋭になるので、一人の担う業務の幅は広いです。
他職種と最も異なる点
幅広い業務範囲を担っている経営企画部が、他職種と最も異なっている点は「全体的な視野」と「未来志向」です。
他職種は現在の目標に向かって必死に邁進していきますが、経営企画部では少し引いたポジションから幅広い事業領域を見渡して、長期的に会社の価値を高めるための「未来」のビジョンを作り上げていく必要があります。そして、それを現実のオペレーションに落とし込んでいくのも仕事の1つです。
経営企画部員に向いている人の特徴
経営企画は、企業の課題解決という正解のない「問い」について考え、戦略として立案していくわけですから、高いレベルの論理的思考力がある数字に強い人が向いています。市場や競合の動向などの情報収集力も求められるので、常にアンテナを張っているような情報感度の良い人にも向いているといえるでしょう。
また、情報を分析し「グラフ・プレゼン資料・議事録」を作成することも多いため、収集したデータをうまくまとめられる事務処理能力の高さも求められます。経営に関わる専門知識を業務外でも学び続けられる、成長意欲を持っていることも重要です。
以上のようなビジネススキルにプラスして絶対に必要とされるのが、高いコミュニケーション能力です。
経営層から各部署の担当者、社外のステークホルダーまで、経営企画では多くの関係者との地道で膨大な調整が必要とされます。多くの人を巻き込むだけの魅力がある、人間力の高さがある人ほど、仕事の成果を上げられるといえるのではないでしょうか。
精神的プレッシャーに耐えうる心身のタフさや時間や労力の配分を自律的に管理して状況に適応できる自己マネジメント力の高さなども持っていると、より適性があるといえます。
また、いつか経営者になりたいと思っている人は、経営企画として働きながら経営者からの視点を学べるのでおすすめです。
経営企画部に求められるスキルや資格
経営企画部に向いている人の特徴を解説しましたが、ここからは経営企画部に求められるスキルや資格を解説していきます。経営企画として働きたい方は、参考にしてみてください。
必要なスキル
経営企画では、主に下記のようなスキルが必要とされます。
- 情報収集力
- 情報分析力
- 論理的思考力
- 事務処理能力
- プレゼンテーション力
- コミュニケーション力
- タフネス
- 自己マネジメント力
簡潔にまとめると、「データを集めて分析して理論を導き出したら、それを分かりやすくまとめて周囲に伝えられる能力」です。さらに、周りを巻き込みながら実行できる力もあると良いでしょう。
これらのスキルに加えて「コーポレートファイナンスに明るい」「株式市場に明るい」「M&A経験がある」「会計リテラシーがある」「企業法務に詳しい」といった強みがあると、経営企画部の中でも価値のある人材になれるでしょう。
活かせる資格
経営企画に必ず必要な資格というものはありません。しかし、目標達成の管理やCEOの意思決定のサポートを行うためには、管理会計やコーポレートファイナンス、経営学、企業法務の知識が必要です。そういった知識を深めるためには、以下のような資格があると良いです。
- 中小企業診断士
- MBA(経営学修士)
- 公認会計士
- 税理士
これらの資格を持っていると、仕事に活かすことができるでしょう。
経営企画になるまでに身につけておきたいこと
経営企画部は企業の行く末を左右する責任あるポジションなので、「経理財務に強い」「事業で成果を上げた」など、ある分野に精通した人が集まっていることが多いです。そのため、会計・財務、マーケティング、人事などの分野でのハイレベルな業務経験と専門知識があるに越したことはありません。
「中期経営計画の策定」「財務シミュレーションの作成」などの経験がある人は、経営企画への転職を成功させやすいでしょう。例えば、経営コンサルファーム出身者の方は経営企画部の業務と親和性が高いので、転職しやすい傾向にあります。
また、経営企画部と一口にいっても、企業によって求められるスキルや人物像は幅広いです。例えば、海外進出を模索している企業であれば、これらの経験に加えて語学や海外情勢のキャッチアップを得意としている人材のニーズが高いでしょう。
ビッグデータやAIの事業活用が推し進められているような企業では、データサイエンスに強い人が求められていますし、ベンチャーにおいては、柔軟な発想力と実行力で次々と事業を立ち上げていくようなスピード感があってマルチタスクが回せるような人が求められています。
経営企画部員のキャリアパス
最後に、経営企画部員のキャリアパスについて解説していきます。経営企画部員として働いた後は、どのような道に進めるのか、経営企画部を通じて磨かれるスキルとともに紹介していきます。
経営企画部を通じて磨かれるスキル
経営企画部で働く人は、能力・人間力ともに素晴らしい人が多いです。彼らから学べることは多いため、自分自身の成長スピードも早くなるでしょう。
大規模な構造改革、新規事業の立案などの際には、複数の事業部を巻き込んでプロジェクトを進める機会が多く、自然と社内でよく知られた存在になっていきます。また、取引先などの社外のステークホルダーと交渉、利害調整を行う機会も多いです。例えば、両社の経営陣で合意した内容を、経営企画部がプロジェクト的に推進をしたり、合意前の下準備を経営企画部同士で進めていく場面もあります。
このような調整や渉外の機会が他部署に比べて多いため、実は経営企画部で磨かれる一番のスキルは「人間力」ともいえるのです。
経営企画経験以降の代表的なキャリアパス
経営企画では、新規事業立上げ、IPO準備、M&A、資金調達、管理会計などの企業経営に関わる知識が深まる経験を幅広く積むことができます。そのため、転職の際にはそれを活かせるキャリアを選択する人が多いです。
具体的には、財務部長・CFO・COOなど役員へのステップアップなどが挙げられます。また、経営・戦略コンサルタントとして独立する人もいれば、自身で起業する人もいるようです。
まとめ
機密事項や極秘プロジェクトを推進していることもあるため「何をしているのかよく分からない」といわれることもある経営企画部ですが、実際にはさまざまな業務範囲をカバーしています。
特にベンチャーにおいては高い裁量権を持ち、多様なミッションをスピード感を持って推進しています。しかし、それだけの作業を行わなければいけないとなると、1つ1つの作業に時間をかけられません。
経営企画は経営陣にも近いポジションであることから、KPIの管理も重要な仕事といえますが、他の仕事をしながらExcelやGoogleスプレッドシートで管理をするのは難しいです。効率的に仕事を進めるためにはシンプルにKPIを活用し、予実の精度を高める方法を模索していく必要があります。
また、有名企業のKPIについての考え方を学び、真似をするということから始めるのも良いでしょう。
当社では、ユーザベース社のCFOにKPI設計の仕方やモニタリングするべきKPI、KPIの伸ばし方など直接インタビューしていますので、ぜひ以下資料を参考に自社のKPIを考えてみてください。
監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。