ヤプリのKPIとは|ヤプリで心掛けているポイントと合わせて紹介
2022/08/15
自社のKPIを設定するのに悩んでいる、他社がどんなKPIを設定しているのか知りたいという方もいるのではないでしょうか。
そんな方のために、この記事ではヤプリの事業内容やビジネスモデルとともに、ヤプリで公開されているKPI、主に設定されているKPIなどを紹介していきます。KPI設定にお悩みの方やヤプリのKPIが知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
ヤプリの会社概要
ヤプリの事業内容
ヤプリでは、アプリの開発・運用・分析をクラウドからワンストップ且つプログラミング不要で行えるプラットフォーム「Yappli」と、「Yappli CRM」の開発と提供を行っています。
店舗やEコマースなどのマーケティング支援から、社内や取引先とのコミュニケーションをモバイルで刷新する社内DX、バックオフィスや学校法人の支援まで、さまざまな業界の課題解決に活用されています。
ここでは、下記の2つの事業内容について詳しく見ていきましょう。
- Yappli
- Yappli CRM
順番に解説していきます。
Yappli
Yappliはクラウド型のアプリ開発プラットフォームです。アプリの開発だけではなく運用や分析に至るまで、プログラムやソースコードを書かずにノーコードで利用できるという特徴があります。専門的な知識を持たない事業者でも簡単に開発と運用を行うことが可能です。
Yappliの主な特徴としては、下記の6つが挙げられます。
- スピーディーで自由なアプリ開発ができる
ノーコードでアプリ開発ができるため、スピーディーに開発が行えて、開発にかかる労力と時間を大幅に軽減できます。
- 簡単に管理と運用が行える
事業者が直感的にアプリの編集を実行できる管理画面を採用しているので、管理と運用を利便性高くスピード感を持って作業に取り組めます。
- 多彩なプッシュ通知あり
集客や販促に役立つ多彩なプッシュ通知が用意されているので、メールでの受信に比べて開封率が高く、ECの集客や販促に効果的なツールになります。
- 高度なデータ分析
アプリ内で収集したデータをダッシュボードで素早く可視化し、スムーズなPDCAサイクルを後押ししてくれます。
- 最新バージョンの利用ができる
クラウド型のアプリ開発プラットフォームなので、常に最新のOSにアップデートした状態でサービスを利用できます。
- アクセス支援あり
集客やアプリ運用のPDCA支援、管理画面のサポートやストア申請支援など、アプリのリリースだけではなくその後の成功への道筋までフォローしてくれます。
Yappli CRM
アプリをダウンロードするだけで始められるCRM(顧客関係管理)ツールです。顧客の行動データを活用してアプリならではの多彩な施策を実行することで、顧客との関係性を強化します。
Yappli CRMの特徴は下記の通りです。
- ノーコードでの顧客管理システム
CMRに必要な顧客の会員登録・認証・情報管理などがすべて入っていて、従来のシステム不要でアプリを軸に顧客管理システムを開始できます。
- ポイントの発行化
ポイントカードと電子マネーを外部サービスの連携なしで発行と管理することができます。会員ランク別のポイント発行にも対応できるので、顧客の来店頻度や購買単価の向上に期待できるでしょう。
- 1to1の顧客体験を実現する豊富な機能あり
顧客のタイミングに合わせた多彩なシナリオ設計により、プッシュ通知・クーポン・ポイント付与といった豊富な機能を提供しています。顧客の分析から施策実行まで、1to1の顧客体験を実現できるのです。
- シームレスなサービス連携
顧客の購入データや購買後の行動データなどを外部メールサービスやMA、CDPなどと連携させて、データドリブンなマーケティングに活かすことができます。
ヤプリのビジネスモデル
ヤプリは月額でサービスを利用できるサブスクリプション型のSaaSサービスです。特徴としては、スマートフォンアプリに特化しているという点で、他にはない強みがあるといえます。
また、もともと『Yappli』はセルフオンボーディングを前提に開発されていましたが、理想とするサービスを完璧に作ってからサービスを提供するとなると、そこまで到達しないお客さんも少なくありません。
さらに、小規模な企業では正しく機能できないことが多いことから、ヤプリでは大手企業を中心に法人向けのビジネスモデルに変更し、その結果急成長を遂げたのです。
ヤプリの市場規模
2020年12月期の決算では、売上高が23憶9000万円と39%の増収でした。この数字だけを見ると「すごい売上だな」と思えますが、実は5憶9000万円の営業損失がありました。
アプリ制作費と月額利用料が収益基盤となっているヤプリは、市場規模を1000憶円程度と見積もっていて、代表者である庵原氏は「我々はシェア1%程度で成長余地は大きいと感じる」とブルームバーグのインタビューで話していました。
40%の増収維持へのマーケティングやエンジニア採用といった投資を優先させる方針で、決済もこれに沿った数値になったといえるでしょう。
2022年現在では、アプリ導入企業はトヨタ自動車・NEC・アンダーアーマーなど600社以上に達していて、ヤプリは今後1000社以上のアプリ導入を目標にし、その後は海外展開も視野に入れています。
ヤプリの業績推移
引用:ヤプリ 業績ハイライト
ヤプリは売上が常に右肩上がりになっており、コロナの影響などもなく順調に成長を続けているといえます。一方で、経常利益・当期純利益はマイナスの数値となっており、その原因としてはTVCMへの成長投資などがあるようです。TVCMによって認知度が上がれば、さらなる売り上げ好調が期待できるでしょう。
今後の展開
ヤプリは2022年5月にセルフサーブ型で中小企業支援と海外進出に着手しました。プラットフォームを利用するアプリは700以上に達し、それらのアプリの累計ダウンロード数が1憶を突破したとされています。
また、これまでは大手企業が利用者層の中心でしたが、事業拡大に向けて中小企業向けのセルフサーブ型モデルとなる「Yappli Lite」のリリースも行っているため、さらなる事業拡大が期待できるでしょう。また、本格的な海外進出をする際にも、ヤプリでは世界各国に営業拠点を確保せずとも効率的にサービス展開を行えるため、ヤプリは今後もスムーズに成長を続けられるのではないでしょうか。
ヤプリが心掛けていること
ヤプリが心掛けているのは、「いかにスピーディーにアプリ上で企画や施策が実行できるか」「分析が早くできるか」「アクションを起こしやすいか」です。前提として、ヤプリは1社1社に合わせた個別対応やカスタマイズをするのではなく、Yappliの中だけで完結することを大事にしています。
例えばECの場合、個別でECベンダーのAPIとダイレクトをつなぐという選択は極力せず、アニメーション・入力項目・レイアウトなどの一定のラインまでをYappli側で決め、色設定・文字サイズ・余白の設定などは顧客に合わせて編集を可能にするといった線引きをしています。
では、そんなヤプリがもっとも心掛けている3点について解説していくので、見ていきましょう。
PDPAを細かく繰り返していく
顧客のアクティブ率を保つために、機能の改善や追加などを短いスパンで定期的に行い、「どうしたら顧客は利用しやすいのか」を常に追求しています。
インストール後に休眠した顧客に再度利用してもらうためには、プッシュ通知を取り入れて顧客とコンタクトを取る方法も良いですが、コンタクトを取りたいが故にプッシュ通知を多用してしまうと、かえってアンインストールの増加につながってしまいます。
PDPAを細かく繰り返して小規模な改善を確実に行うことで顧客離れや休眠を予防するだけではなく、顧客の利用満足度も同時に高めることができます。
アプリ制作をあえてシステム化しない
ヤプリでは社内にデザイナーを抱えて、顧客のアプリ制作の一部を担っています。アプリ制作は一般的に高度な領域で、すべてを自動化できるわけではないため、あえてシステム化していません。
センスが求められる部分は、機械ではなく人がやったほうが顧客のニーズに応えられる場合も多いです。そういった理由から、ヤプリではあえてシステム化せず、アプリの経験が豊富なデザイナーがオンボーディングをサポートする体制をとっています。
かんたんに素敵なものが作れるようにする
顧客全員が自らのプラットフォームを使いこなして、納得のいくアプリを作るのはかなりハードルが高いです。だからこそ、ヤプリでは顧客の要望に対してより広く応えられる状況を作っています。
顧客のニーズに合わせたプロダクト開発を行うことで、かんたんに素敵なものが作れるようになっているのです。ヤプリの努力によって顧客が快適に使えるようになっているともいえるでしょう。
センスが求められる部分は、機械ではなく人がやったほうが顧客のニーズに応えられる場合も多いです。そういった理由から、ヤプリではあえてシステム化せず、アプリの経験が豊富なデザイナーがオンボーディングをサポートする体制をとっています。
ヤプリで公開されているKPI
ここでは、ヤプリで公開されているKPIの一部を抜粋して紹介していきます。ヤプリでは契約アプリ数が約25%を維持、さらに平均月額利用料も向上しているため、今後も維持できれば順調に成長を続けられるでしょう。
アプリ開発やサービスの強化には人員は欠かせないので、正社員数は事業の成長のために重要な指標といえます。ヤプリでは採用活動も好調で、正社員数も増加し続けているため、今後アプリのさらなる成長が見込まれるでしょう。
ヤプリの主なKPI
ここからは、ヤプリが設定している主なKPIを3つ解説していきます。
- MRR
- チャーンレート
- ユニットエコノミクス
順番に見ていきましょう。
MRR
ヤプリではMRRの数値は公開されていませんが、ARRの数値は公開されています。ARRの数値を見ると順調な推移になっているため、MRRも好調な数値を保っているといえるでしょう。実際にKPIとして設定する際には、月ごとの数値を比較できるMRRを設定するのがおすすめです。
MRRについては、「SaaSの主要KPI【MRR】とは?概要や計算方法を分かりやすく解説」の記事で説明しています。
チャーンレート
引用:ヤプリ 2022年12月期 第1四半期 決算説明会資料
チャーンレートは解約率や顧客離脱率を指します。ヤプリではチャーンレートを常に1%以下という低い水準で保っており、今後もこの数値を維持できれば、より事業を成長させられるでしょう。
チャーンレートについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事からご覧いただけます。
ユニットエコノミクス
ユニットエコノミクスは「一顧客当たりの経済性・採算性」を示すKPIで、LTV/CACで算出可能です。ヤプリはユニットエコノミクスも好調な数値を維持しています。常に成長を続けている企業では、これらの数値が重要になるのです。
ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事で詳しく解説しています。
まとめ
ヤプリはアプリの開発・運用・分析をプログラミング不要で行えるプラットフォームの「Yappli」と「Yappli CRM」を提供している企業です。売上高は右肩上がりですが、TVCMに注力したことで経常利益と当期純利益はマイナスになってしまっています。
しかし、MRR、チャーンレート、ユニットエコノミクスの数値はすべて好調で、今後のさらなる成長が期待できるでしょう。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。