スタートアップ企業のフェーズとは|フェーズごとの課題や失敗事例も紹介
2021.11.16
近年では、スタートアップ企業といったワードをインターネットやSNSなどでよく見かけるようになりましたが、明確に意味を理解している人は意外と少ないです。
この記事では、スタートアップ企業について、フェーズごとに詳しく解説していきます。フェーズごとの課題や失敗事例、資金調達方法なども合わせて紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
スタートアップ企業の成長段階ごとのフェーズとは
スタートアップ企業には、成長段階ごとに大きく分けて4つのフェーズがあります。ここでは、それぞれのフェーズについて、見ていきましょう。
- シード期
- アーリー期
- ミドル・グロース期
- レイター期
フェーズごとの特徴を解説していきます。
シード期
シードは種を意味していて、シード期はまだビジネスのアイデアが種の状態である時期のことです。そのため、アイデアは生まれているが製品やサービスが確立されていない、もしくはプロトタイプのみ完成しているという企業を指します。
この時期は、主に生み出したアイデアをどのように市場へ展開していくかを検討するフェーズになるので、市場調査や事業計画書の作成などがメインの業務になるでしょう。実績がなく資金調達が一番難しい段階ですが、まだ資金調達が必要ではないという企業も多い傾向です。起業する人の自己資本や周囲からの資金援助で賄うケースも少なくありません。
アーリー期
アーリー期は、利益を生むために必要最低限のサービスや製品を開発し、顧客からもある程度のフィードバックを得ている状態にある企業を指します。
顧客からたくさんのフィードバックを集めてビジネスモデルを改善し、今後の事業戦略を考えていくのがメインの業務です。自社の製品やサービスを広めて認知してもらうためのイベント参加や、SNSの活用なども重要な業務の一つとなるでしょう。
ビジネスの収支としては、人件費や開発費などがかかるものの収益が安定しないため、一般的には赤字になる企業が多い傾向です。
ミドル・グロース期
アーリー期の顧客のフィードバックをもとにビジネスモデルを改善して、ある程度の顧客がついて企業が成長フェーズへ入った状態をミドル・グロース期といいます。
ミドル・グロース期の企業では、プロトタイプを無償提供して顧客に検証してもらっていた自社サービスを有料に切り替える、もしくは無料プランに有料サービスを追加するなどの戦略が多く、一気に売上が数倍になるという企業も珍しくありません。
レイター期
企業が軌道に乗って、売上が安定して黒字になっている状態をレイター期といいます。今まで行ってきたビジネスモデルに加え、新たなビジネスモデルの展開や他社とのコラボレーション、海外進出などを目指し始めていくフェーズです。
レイター期にあるスタートアップ企業はある程度の認知度と売上を獲得しているため、資金調達なども難しくなくなってきます。銀行などの融資を得て、新たなビジネスの展開や事業拡大に乗り出す企業も少なくありません。
フェーズごとの課題や失敗事例は
それぞれのフェーズの特徴や概要について解説しましたが、ここからはフェーズごとの課題や失敗事例などを紹介していきます。
これから起業を考えている、今スタートアップ企業の経営を行っているという方は、それぞれのフェーズに応じた課題や失敗事例を確認して、同じ失敗をしないように注意しましょう。
シード期
シード期はビジネスのアイデアが生まれた状態となっていますが、どれだけいいアイデアが思いついていたとしても、ここで失敗してしまうとビジネスを継続していくことが難しくなります。
ここでは、継続した利益を得るビジネスモデルを作っていくために大切な段階である、シード期の課題と失敗事例を紹介していくので、参考にしてください。
課題
シード期の企業では、顧客が見つからないという課題が多く見られます。
資金面に関しては、他のフェーズと比較すると多額の金額が必要になることが少なく、あまり大きな課題にはならないでしょう。ですが、生まれたアイデアが今後継続的に利益を生めるのかについて、しっかりと検討する必要があります。
継続的な利益を得るためには、どれだけ顧客からフィードバックを得られるかが鍵です。アイデアをもとに製品やサービスのメリット・デメリットを分析し、顧客からのフィードバックなども考慮しながらビジネスモデルを改善していくと良いでしょう。
そのため、シード期ではまず顧客を集めるのが重要課題です。製品やサービスにもよりますが、現在ではインターネットやSNSをうまく活用して顧客を探すのが一般的になりつつあります。まずは顧客を集めて、自社ブランドや自社製品・サービスのファンを増やすようにしましょう。
失敗事例
シード期の失敗事例では、顧客を集めようとするあまりにコストをかけ過ぎてしまうというケースが多い傾向です。
顧客を集めてフィードバックをもらうのがシード期における課題であると紹介しましたが、良質な顧客を集めることばかり意識しすぎて、集客にコストをかけ過ぎてうまくビジネスが回らなくなる企業は珍しくありません。
集客ももちろん大切ですが、企業を存続させるために費用面も考慮しながら顧客を探しましょう。
アーリー期
アーリー期はある程度の顧客がついており、ビジネスモデルの改善に成功している企業が多い傾向です。顧客がついてくれば売上は安心と思ってしまう方もいると思いますが、企業の問題は売上だけではありません。
ここでは、アーリー期の課題や失敗事例を見ていきましょう。
課題
アーリー期における課題は、収入と支出とのバランスです。シード期よりも人件費や事務所の費用、開発費などがかかってくるようになり、収益が増えるのと同時に支出も増加するので、予実管理で収入と支出とのバランスを調整するのが重要になります。
事業を軌道に乗せるためには、今まで以上に製品・サービスのPRや顧客の呼び込みが必要です。自社の収益だけで賄うのが難しい場合は、融資や投資家による支援を受けることも検討しましょう。
失敗事例
アーリー期の企業の場合、マネジメントがうまくいかず、人材確保やコスト管理で失敗してしまう企業が多くあります。
人材確保の失敗事例としては、高い給与を設定して役職者を採用したら既存の社員から不満が生まれた、安易に人を採用して人件費がかかりすぎてしまったなどです。人材を採用する場合には、自社の今後を左右する存在として、既存の社員とも話し合いながらしっかりと選ぶようにしましょう。
また、コスト管理では、資金調達で思うような金額を借り入れられなかったなどの失敗もあります。資金調達の際には、今現在どのくらいの金額が足りていないのか、いくら借り入れたいのか、返す目処はあるのかなどをしっかりと考慮しながら予実管理を行ってください。
必要な金額や使用用途などに応じて、資金調達方法も検討するようにしましょう。
ミドル・グロース期
ミドル・グロース期の場合では、ある程度顧客がついて売上が安定してきています。しかし、企業として新たな成長の段階にあるため、組織内の仕組みを明確にしていかなければいけません。
ミドル・グロース期で失敗しないためにはどうすれば良いのか、課題や失敗事例を参考にしてみましょう。
課題
ミドル・グロース期は、人材が増えてさらなる事業の拡大を目指していくフェーズです。そのため、ある程度の社内ルールや品質の基準などを設定する必要がでてきます。企業として成長していくためには、公平公正な基準やルールを設定するのが必要不可欠です。
開発部門や営業部門などの組織体制の確立といった、人材が増えても組織内で衝突が起こらないような社内環境の整備に力を入れて、今後の企業の成長の土台作りをしていきましょう。
失敗事例
ミドル・グロース期の企業では、人材の流失によってビジネスがうまく機能しないといった失敗事例があります。
公平な評価基準の設定が難しく社内から不満が生まれて辞めてしまう人が増えた、方向性の違いで創業メンバーが辞めてしまうなど、人材の確保が必要であると同時に人材が離れていってしまう可能性も高いのがミドル・グロース期です。
また、企業としての目標が見えないことで業務に対して目的を見失ってしまい、より魅力的な目的を掲げている他社へ移ってしまう社員もいます。そうした失敗をしないためにも、しっかりと企業としての目標を設定する、人事評価や業務に対する評価は公平公正なものにするなどの対策をするようにしましょう。
レイター期
レイター期は、ある程度企業や製品、サービスの認知度が高まっていて、売上が安定しているフェーズです。他のフェーズよりも課題や失敗が少ない段階のように見えるかもしれませんが、もちろんレイター期であっても課題は発生します。
レイター期の課題や失敗事例について、詳しく見ていきましょう。
課題
レイター期では、事業拡大や海外進出、IPOなどを目指す企業も少なくありません。
事業拡大や海外進出のためには、資金や人材の確保などが必要ですし、さまざまな下準備を行う必要があるでしょう。
IPOについては、知見のある社員や役員が社内にいる場合は担当者として準備を進めてもらえますが、社内に知見のある人がいない場合にはIPOについて詳しいコンサルタントを迎えるなどといった採用業務も考慮しなければなりません。
さらなるビジネスの成長に向けての準備や決断が増えてくるのが、レイター期の企業の課題です。
失敗事例
レイター期の失敗事例としては、IPOに向けた準備が進まないために資金調達ができず、ビジネスモデルが停滞してしまうなどがが挙げられます。
また、「IPOのために管理会計を導入しようとしたが、今まで会計の管理がしっかりしていなかったために経理担当者に負担をかけてしまった」、「起業当初のずさんな管理のせいで残業代未払いになっている社員への支払いをしなければいけない」など、企業の問題が顕在化してしまうケースも珍しくありません。
IPOのために社内の部署や評価制度を整理したばかりに、納得しない優秀な人材が流出してしまうといったリスクも考えられます。
こうした失敗をしないためにも、レイター期に入ってから準備を始めるのではなく、できる限り早い段階で株式を公開することを念頭に置いて会計や必要書類、給与面の管理、人事評価などを検討しておきましょう。
スタートアップ企業は資金調達もフェーズごとに検討
スタートアップ企業では、フェーズごとに資金調達方法を検討する必要があります。例えば、実績が少ないシード期に銀行などから融資を受けるのは難しいです。
フェーズに合わせた資金調達方法を選ぶことで、比較的スムーズに資金の調達ができるでしょう。ここでは、フェーズごとのおすすめの資金調達方法を紹介していきます。
シード期なら日本政策金融公庫や個人投資家がおすすめ
シード期では、資金調達が必要ないという企業も多いですが、多額の資金が必要な場合にはもっとも資金調達が難しいフェーズです。シード期は実績がないので、銀行などの融資を受けるのは不可能に近いでしょう。
そのため、日本政策金融公庫の融資制度の活用や、個人投資家による投資を受けるのがおすすめです。
特に、日本政策金融公庫では、立ち上げたばかりの企業に向けた融資制度なども多数行っています。新創業融資制度や各地方自治体が実施している融資制度などを利用してみると良いでしょう。
また、エンジェル投資家と呼ばれる、起業して間もない企業に対して出資をしてくれる投資家もいます。起業したい人とエンジェル投資家をマッチングするサービスなども存在しているので、エンジェル投資家による投資を受けたい人は利用してみましょう。
アーリー期ならVCも活用可能
アーリー期の企業は、設備投資や人件費などの支出が増加してくる時期になるため、シード期よりもたくさんの資金が必要となります。しかしながら、このフェーズの企業はまだ収益が安定しない場合が多いため、銀行などで融資を受けられる可能性は低いでしょう。
アーリー期の企業で、将来上場を考えているのであれば、VC(ベンチャーキャピタル)の活用を検討してみてください。
VCとは、未上場の企業に対して出資して株式を得て、将来その企業が上場したときに株式を売却して大きな利益を獲得することを目指している投資家です。
VCは銀行などの融資と違って返済の義務はありませんが、出資に見合うだけのリターンを発生させる必要があります。
VCから出資を受けるには、スタートアップ向けの企業イベントなどに積極的に参加して、VCに企業や企業の製品・サービスについて知ってもらうことが重要です。
ミドル・グロース期なら銀行融資も狙える
ミドル・グロース期の企業であれば、ある程度ビジネスモデルが固まってきているため、銀行からの融資も検討できるでしょう。特に、黒字化が見えてきている企業では融資を受けやすいです。
投資家からの出資を受ける場合は、出資比率によって投資家が経営に参画してくる可能性がありますが、融資の場合にはそういった干渉がありません。
干渉を受けないというのは大きなメリットですが、一方で融資を受ける際には毎月の返済と融資額に対する利息を支払わなければいけないという点に注意が必要です。融資を受ける前には毎月の返済プランをしっかりと立てて、後々返済できる金額分だけ融資を受けるようにしましょう。
レイター期は資金調達をしやすい
レイター期の場合には、事業拡大や新規事業の立ち上げなどで、必要となる資金が大きくなります。しかしながら、レイター期になるとある程度企業としての認知度や信用度が高くなっているため、他のフェーズと比較すると融資を受けやすいでしょう。
出資や投資、融資方法をそれぞれ比較して、自社に適した手段を選ぶと良いです。今後の企業としての方針を社内で検討する際に、資金調達の方法も同時に考慮しておくと、よりスムーズに事業を進めやすくなるでしょう。
資金調達をスムーズに行うには予実管理が必須
いずれのフェーズにおいても、資金調達には予実管理が必須です。予実管理とは、企業としての予算、および実績の管理を意味します。
融資などの資金調達方法では「事業計画書」の提出を求められるケースも多く、フェーズごとに設定した予算に対してどの程度実績がともなっているのかが重要視される傾向です。予実管理がうまくできていないと、資金調達に時間がかかったり、最悪の場合には資金調達に失敗する可能性もあるでしょう。
スムーズに資金調達を行うためには、予実管理をしっかりと行うことを意識するようにしてください。
予実管理ならScale Cloudで手軽にできる
Scale Cloudなら予実管理も手軽に行えます。Scale Cloudは、部署を超えた事業全体の数値を自動で集約・統合できるだけでなく、一元管理も可能なので、部署ごとに管理方法が異なるデータの集計や管理が簡単です。
予実管理は、資金調達に役立つのはもちろんですが、今後のビジネスモデルを成長させていくためにも大変重要になります。手軽に予実管理を行いたい場合には、Scale Cloudの導入を検討してみてください。
まとめ
スタートアップ企業は、シード期、アーリー期、ミドル・グロース期、レイター期の、大きく分けて4つのフェーズに分かれています。
それぞれのフェーズごとに異なる課題があるため、「自分の会社がどのフェーズにいるのか」、「どんな課題点に注意しなければいけないのか」を明確にして、自社のフェーズに応じた対策を行っていくことでビジネスモデルを発展させていきましょう。
また、スタートアップ企業にとっては、資金調達が大きな課題となります。資金調達をスムーズに行うためには、予実管理が重要です。予実管理ができなければ事業計画書を立てるのが難しく、融資を受けるのも大変でしょう。
予実管理には、ビジネスモデルの成長にも役立つScale Cloudをぜひご利用ください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。