スタートアップCFOの役割とは|仕事内容や必要なスキルも合わせて紹介
2021.11.19
スタートアップ企業で重要な役割となるCFOですが、CFOとは具体的にどのような仕事をする役職なのでしょうか。
ここでは、スタートアップCFOの役割やCFOの仕事内容、CFOに必要なスキルなどを紹介していきます。CFOに求められる経験や役立つ資格なども解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
CFOとは
以前までは、日本企業で役職というと社長や代表取締役などの呼び方が一般的でした。しかし、現在ではCxOという名称を導入する企業が増えてきています。
CxOとは、「Chief x Officer」の頭文字をとった略称です。xの部分にはそれぞれが担当する業務が入り、翻訳するとxにあたる部分の業務の最高責任者という意味になります。
CFOはChief Financial Officerの略で、日本語では最高財務責任者です。簡単に説明すると会計や予算、信用取引等に関する責任を負う役職です。
そのため、財務に関する幅広い知識を持っていること必要不可欠であり、企業によっては会計事務所などで勤務経験があるプロフェッショナルを引き抜いてくることも珍しくありません。
CEOとの違い
CxOの中でもっとも耳にする機会が多いといっても良いのが、「CEO」ではないでしょうか。
CEOはChief Executive Officerの略で、最高経営責任者という意味になります。CEOと聞くと社長や代表取締役をイメージする方もいらっしゃいますが、厳密にいうとCEOは社長や代表取締役と同じ意味ではありません。
これらの違いは、日本の会社法で認められている役職であるかどうかになります。
代表取締役は会社法に明記されている役職で、企業における業務執行を決定するトップの役割です。一方でCEOは意味合いとしては同じですが、アメリカでの役職の呼び方なので日本の会社法には明記されていません。
また、社長は企業の長として認識されていますが、会社法では社長という役職は記載されていないのです。そのため、代表取締役のように業務執行を決定する権限を持ち合わせていないという社長もいます。
COOとの違い
COOとは、Chief Operating Officer の略で、日本語では最高執行責任者という意味です。CEOが決定した企業としての経営方針をもとに、実行部隊のリーダーとして組織をまとめ上げる職務を担当します。
近年では、企業経営の複雑化や企業の成長スピードの加速によって、執行役それぞれの業務が増加している傾向です。
そのため、CEOとCOOを兼任している企業もあれば、事業ごとにCOOを置く企業もあるなど、それぞれの企業体制に特徴があります。
一般的には、COOの方がCEOよりも現場や従業員に近い立場で、実務に携わる時間が多いです。社内でのコミュニケーションやデータ分析、マネジメントなど、業務内容も多岐にわたります。
スタートアップ企業におけるCFOの役割
スタートアップ企業に限ったことではありませんが、CFOは会社に関わる財務部分の最高責任者としての役割がメインです。そのため、CFOには財務・会計といった会社のお金の管理や動きなどについて、より深い知識が求められます。
スタートアップ企業では、財務や会計に関するエキスパートが起業当初から参画している企業はあまり多くありません。収益力やビジネスプランが安定してきたときなどに、知識やスキルを持った人材を採用する企業がほとんどでしょう。
スタートアップ企業では、会社の継続のために資金調達が必要な場面が多いため、CFOは特に重要な役職です。CFOのスキルによって、会社の成長速度が変わるといっても過言ではないでしょう。
CFOの仕事内容
CFOとはどのような役割なのか、CEOやCOOとの違いなどについて解説しましたが、CFOは具体的にどのような仕事を行うのでしょうか。
ここでは、CFOの主な仕事内容を3つ紹介していきます。
- 資金調達
- 税務戦略・予実管理
- 上場・IPO
それぞれの仕事内容について、詳しく見ていきましょう。
資金調達
会社の状況に応じて、どこから資金調達をするのかを判断して実行するのが、CFOとしての大切な仕事です。
起業当初は、投資家や親族から資金を調達して、ビジネスを開始するのが一般的とされています。その後も企業の成長フェーズに合わせて、銀行融資やVC、補助金、ファクタリングなどの中から、適切な方法を選んで資金調達をする必要があるでしょう。
資金繰りがうまくいかず、ビジネスの継続が困難になってしまう会社もあるので、CFOの業務の中でも資金調達はとても重要です。
財務戦略・予実管理
事業を拡大していくためには、収入と支出のバランスを考えた財務戦略や予実管理も重要です。人件費や開発費、広告費など、事業を行っていくうえではさまざまな支出があります。
企業が大きくなればなるほど、部署ごとの適切な予算の割り振りや売上金額の管理は難しくなるでしょう。
近年では、キャッシュフローが増えており、帳簿上でお金の出入りが発生していたとしても、実際に入金や出金をするのが数か月後というケースも珍しくありません。その結果、売上はあるのに手元に支払い可能な現金がなくて支出に対応できない黒字倒産をしてしまう企業もあります。
支出と収入を考慮して、きちんとしたコスト管理を行うのもCFOの大切な仕事です。コスト管理を行う際には、予算と実績と管理する予実管理が重要とされています。今後の経営活動において必要な資金の確保、割り振った予算の数値に対して得られた実績の分析など、資金調達や財務戦略には予実管理が欠かせません。
上場・IPO
企業が大きくなってくれば、上場やIPOも検討できるでしょう。上場する際には、市場関係者や投資家などへの説明が上場後の株価に大きく影響するため、CFOの存在は企業の今後を大きく左右します。
また、IPOでは、人事評価の見直しや部署の整理などの社内体制の整備が必要です。また、IPOに向けた申請書類の作成などの業務もCFOの役割となります。
外部と内部の両方に対応して仕事を行っていかなければいけないため、チームでの分業になることも多いでしょう。ですので、CFOにはチームをマネジメントする能力も求められます。
スタートアップ企業のCFOになるには
スタートアップ企業のCFOになるには、以下のような方法があります
- 自分で会社を立ち上げてCFOとして会社設立に携わる
- 昇進でCFOを目指す
- 転職でCFOになる
1番確実なのは自分で会社を設立することですが、優れたビジネスモデルがなければうまくいかないため、あまり現実的とはいえません。
今現在スタートアップ企業で働いている場合は、昇進でCFOを目指すという手もあります。しかし、CFOのポストが空くのを待つ必要があるため、自分の思った通りに昇進できない可能性も高いです。スキルや経験を積んで実力をつけるのが一番の近道でしょう。
スタートアップ企業は人員が足りていないので、外部からCFOを採用することも珍しくありません。上記の2つの方法が難しい場合には、転職でCFOになるのも検討してみてください。
スタートアップCFOに必要なスキル
スタートアップCFOになるための方法を紹介しましたが、スタートアップCFOとして働くにはさまざまなスキルが求められます。
スタートアップ企業CFOに必要なスキルは、主に以下の3つです。
- 会計や財務に関する知識
- 経理に関する知識
- コミュニケーション能力
必要なスキルについて一つずつ解説していくので、参考にしてください。
会計や財務に関する知識
CFOは会社における財務の最高責任者なので、もちろん会計や財務に関する知識は必要不可欠です。
資金調達を行うための予実管理や日々の入出金管理など、業務内容は大小さまざまなので、一つの部門にとどまらない知識が求められます。さらに、一般的な企業で求められる会計や財務に関する知識だけでなく、企業の財務を分析してどのような財務戦略を行っていくかといった知識やスキルも必要です。
経理に関する知識
CFOは財務だけでなく経理の知識も求められます。企業活動を行っていくうえで、お金の流れを把握してどのように利益を生み出すのかといった管理はとても重要です。お金の流れを数値化して目に見える形にすることで、改善点などが見えてきます。
CFOとして働くには、最低でも日商簿記2級以上の知識を理解している必要があるでしょう。
コミュニケーション能力
CFOではコミュニケーション能力も重要です。財務や経理関連の仕事となると、オフィスの中での作業をイメージするかもしれませんが、実際には社外の人とやり取りすることも少なくありません。
資金調達をする際に投資家に会社のビジョンや将来設計などを伝える、キャッシュフローを確認して内容について社内で協議するなど、社内外問わず円滑にコミュニケーションを取れる能力が求められます。
CFOに求められる経験
CFOでは知識だけでなく経験も求められます。ここでは、CFOにはどのような経験が求められるのか、大きく分けて3つ紹介していくので見ていきましょう。
- 財務や経理の実務経験
- マネジメント経験
- 事業会社経験
それぞれ詳しく解説していきます。
財務や経理の実務経験
CFOは、貸借対照表や損益計算書から必要な情報を的確に読み取れなければいけません。そのため、企業で財務部や経理部に所属して、実務を行ってきた経験は高い評価をされやすい傾向です。
特に、上場企業での財務や経理の経験を持っている人材というのは、上場を目標としているスタートアップ企業からすると非常に必要な存在になります。財務部や経理部での実務経験がある方は、その経験をアピールすると転職なども行いやすくなるでしょう。
マネジメント経験
市場や業績が著しく変化する現代では、マネジメント能力はとても重要です。予算と実績の差が発生した場合、その要因の分析や分析結果による実行プランの決定などが必要になってきます。
また、CFOはチームとして事業を遂行するために、部下をマネジメントを行っていかなければいけません。組織の中で働いている人材を最大限生かして、組織が抱えるミッションをこなしていくためのマネジメント力が求められます。
事業会社経験
CFOには、事業会社での勤務経験を求められることも多い傾向です。上場業務を経験した上場実績のある人は、スタートアップ企業においてニーズが高い存在となります。特に、上場やIPOを将来的に検討している企業であれば、上場した経験やIPOの経験がある方をCFOとして迎えたいと考えるのは一般的でしょう。
事業会社が行っている施策や考え方などを参考にしたいというスタートアップ企業も少なくありません。経験を生かしたアドバイスができるといった点をアピールできれば、スタートアップ企業で必要とされる可能性が高いです。
CFOに役立つ資格
CFOには、必ず必要とされる資格はありません。しかし、持っていると役立つ資格は多いので、CFOになるために知識がほしいという方は、資格取得も検討してみてください。
CFOに役立つ資格は、主に以下の5つです。
- プロフェッショナルCFO資格試験
- FASS検定
- 日商簿記検定
- 公認会計士試験
- MBA(経営学修士)
それぞれの資格の特徴や概要を解説していきます。
プロフェッショナルCFO資格試験
CFO資格は、グレードとジャンルごとに分けられており、以下の4つのコースがあります。
- MBAのファイナンスコースに関する知識が求められる「MBAコース ジェネラルCFO」
- グローバル企業の企業財務に関する知識が求められる「国際コース グローバルCFO」
- 企業財務の課題を解決できる知識が求められる「上級コース プロフェッショナルCFO」
- CFOに関する基本的な知識が求められる「基本コース スタンダードCFO」
その中でもおすすめなのが「プロフェッショナルCFO資格」です。企業財務に関するさまざまな課題を解決に導ける専門知識を持っていることを証明するための資格なので、実務レベルの知識を身に付けられます。
財務・会計・企業経営について幅広く出題されるため、合格すればさまざまな知識を身に付けていることが証明できる資格です。
公式サイト:プロフェッショナルCFO資格試験
FASS検定
FASS検定は、経済産業省が開発した「経理・財務サービス・スキルスタンダード」に、米国テスト理論を取り入れた資格試験です。
財務・経理に特化したスキルの習得度を5段階で評価されるので、自分に足りていないスキルを客観的に判断できます。実務によって身に着けた知識やスキルが、どの程度会社で通用するのかを確認するために受験される方が多い印象です。
CFOを目指している人やこれからCFOになることを検討している人におすすめの資格といえます。
公式サイト:FASS検定
日商簿記検定
日商簿記検定は7,700万人以上の受験実績がある検定で認知度も高いため、知っている人も多いでしょう。
経理などの職種を目指している方が取得しているイメージがあるかと思いますが、財務や会計、経理に関する知識を幅広く問われるので、CFOの方やCFOを目指している方が保有していることも多い資格です。
テクニカルで高度な内容を求められる会社でなければ、日商簿記検定2級を保有していればCFOの業務に役に立つでしょう。
公式サイト:日商簿記検定
公認会計士試験
公認会計士試験は、金融庁の公認会計士・監査審査会が年に1回実施している国家資格です。
財務会計や管理会計、企業法など、さまざまな知識が問われる資格で、合格すれば財務や会計に関する幅広い知識を有していることが証明できます。国家資格ですが特別な受験資格などは必要なく、受験しやすい試験といえるでしょう。
公式サイト:公認会計士
MBA(経営学修士)
MBAは、日本語で経営学修士、もしくは経営管理修士と呼ばれます。明確にいうと資格ではなく、ビジネスに関するテーマを実践的に学んだ人に与えられる修士号です。
そのため、MBAの学位を取得するためには、ビジネススクールに通って単位を取得する必要があります。経営や会計に関する幅広い知識を得られるので、CFOに関するスキルを身に付けたい方におすすめです。
MBAを持っていると外資系企業からも評価されやすく、外資系のスタートアップ企業を目指している方にも向いている資格といえます。
CFO業務を効率化するならScale Cloud
CFOの業務は資金調達や予実管理など多岐にわたり、データ管理なども大変です。しかし、きちんとデータを管理してなければ業務を効率的に進めるのは難しく、データの分析などにも時間がかかってしまうでしょう。
CFO業務の効率化を目指すなら、ぜひScale Cloudをご利用ください。
予実管理が簡単にできる
Scale Cloudは、営業部門やマーケティング部門などの部署の垣根を越えてデータを確認できるため、さまざまなデータの中から必要な情報を簡単に見つけられます。
また、データの可視化も手軽なので予実のズレが分かりやすく、効率的な予実管理が可能です。予実のズレがすぐに把握できれば、改善もスムーズにできて失敗するリスクを軽減できるでしょう。
データが一元管理できて分かりやすい
データの管理方法が複雑になると必要なときにデータを探すのが大変ですが、バラバラに管理されているデータを一つにまとめるのは手間がかかって、通常の業務にも影響が出てしまうでしょう。
Scale Cloudでは、社内の財務データなどを自動で集約・統合することが可能です。手元に必要な情報をまとめて一元管理できれば、フォルダの整理や整頓をする手間もなく、必要なときに必要な情報を取り出せます。
まとめ
CFOとは、会計や予算、信用取引等に関する責任を負う役職のことです。スタートアップ企業においては、会社継続のための資金調達や企業のコスト管理といった役割を担う、とても重要なポジションとなります。
その他にも、上場やIPOのための市場関係者や投資家などへの説明、社内体制の整備や申請書類の作成など、さまざまな業務を行う仕事です。
財務に関する幅広い仕事をこなしていかなければならないCFOの業務を少しでも効率的に進めるためには、予実管理が簡単にできるScale Cloudをご検討ください。社内の財務データを一元管理できて、CFO業務を進めやすくなるでしょう。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。