セールスベロシティとは|営業活動において大事な指標とされる理由は?
2022.04.14
営業効率を測る指標として注目されるセールスベロシティ。言葉を聞いたことはあっても、「ビジネスにおける指標として活用できるほどには理解できていない」という方も少なくないのではないでしょうか。
そういった方に向けて、この記事ではセールスベロシティの計算方法、営業効率化を重要視する理由を踏まえた上で、具体的な活用方法を詳しく紹介していきます。セールスベロシティとは何かについて詳しく知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
セールスベロシティとは?
セールスベロシティとは、営業活動の効率性を数値で示した指標です。近年、働き方改革の促進、インサイドセールス・フィールドセールスといった新しい営業スタイルの普及で、営業の「生産性」「効率性」を考える企業が増えています。
セールスベロシティは営業の生産性を測るだけではなく、営業フローのボトルネックを可視化することにもつながります。ボトルネックを改善できれば、生産性の向上が期待できるでしょう。こういった背景からセールスベロシティは重要視される指標の1つになっています。
セールスベロシティを計算する方法
セールスベロシティとは何かについて解説しましたが、具体的にはどのように計算するのでしょうか。ここでは、セールスベロシティを計算する前に知っておくべき指標と計算方法を説明していきます。
計算前に調べてくべき指標
セールスベロシティはリード数、成約率、平均取引時間、平均商談時間の4つの要素から構成されています。それぞれの要素が何を意味するのか、計算方法を踏まえながら見ていきましょう。
リード数
架電、訪問、紹介や問い合わせ対応など、営業にはさまざまな形があります。そういった日々の営業活動の対象となる見込み顧客を「リード」といいます。一般的に、近い将来商談・契約に持っていける可能性の高い、手ごたえのある顧客をリードと定義するため、コンタクトを取ったすべての人がリードになるというわけではありません。
より確度の高いリードをナーチャリングすることが商談や契約の成功に直結するため、リード数が多いほど企業は将来的な利益や売上が見込めるでしょう。
成約率
成約率は商談・契約が成功し、新規顧客を獲得した割合であり、以下のように計算します。
成約率(%) = 成約件数 ÷ 全体件数 × 100
成約率は、営業フローの最終段階であるクロージングによって左右されます。クロージングは顧客の最終的な意思決定の場であり、企業の売上や収益に直結する営業にとって、必要不可欠なプロセスです。商談や契約につながるクロージングには、段階を踏んで顧客との信頼関係を構築する必要があるため、営業マンの手腕が問われます。
平均取引額
平均取引額とは、成約に至った取引総額の平均です。営業売上を想定する際に基準となる数値であり、平均取引額よりも極端に大きい売上見込みの案件は成約率が低くなる傾向があります。逆に、平均取引額より低い売上見込みの案件は成約率が高くなりますが、その場合、基準となる平均取引額自体が減少してしまいます。
また、成約率向上を目的として、割引などサービスを多用しすぎても平均売上高の下落につながります。こういった場合、顧客層や営業戦略を見直す必要があるでしょう。
突然平均取引額が上昇した際も注意が必要です。取引額のばらつきは企業全体の売上や収益に影響を及ぼす可能性があります。大きな変化があった場合は、その原因を探り、営業プロセスや手法を再検討しましょう。
平均商談期間
平均商談期間は一連の営業プロセスにかかった期間で、セールスサイクルとも呼ばれます。全体の日数に加えて各段階の平均日数も併せて確認することで、営業プロセスや戦略見直しにつながります。平均日数よりも長い期間がかかっている場合、成約見込みが低く、収益や売り上げに影響が出る可能性があるでしょう。
また、平均商談期間から営業目標達成までを逆算する際に、リードタイムを見落としがちなので注意が必要です。
例えば、平均商談期間が80日、1年間の新規顧客目標獲得数を140件だとします。この条件だと1ヶ月に14件の新規顧客を獲得できれば達成可能と考えがちですが、決算が12月に設定されている場合を考えてみましょう。
10月~12月の見込み顧客を新規顧客までナーチャリングできる可能性は低く、目標達成が難しいことに気づくはずです。つまり、リードタイムを考慮して1~9月の間で1ヶ月の新規顧客数を考える必要があるということです。この場合、140(件)÷ 9(ヶ月)≒ 16(件)となるため、1ヶ月で16件新規顧客を獲得できれば余裕で目標達成できるはずです。このように、平均商談期間とリードタイムの両方を見ることで、正しい年間営業計画を立てられます。
セールスベロシティの計算方法
セールスベロシティを構成する4つの要素について見ていきましたが、ここからは4つの要素を元に実際にセールスベロシティを計算してみましょう。セールスベロシティは以下の計算式で求めることができます。
セールスベロシティ = (リード数 × 成約率 × 平均取引額)/ 平均商談期間
具体的な例で説明します。1人の営業担当者が、2021年2Qに担当した商談件数は15件でそのうち6件が成約に至った場合、成約率は40%(6 ÷ 15 × 100)になります。成約した商談の平均取引額は120万円、平均商談期間は80日とすると、4つの要素の数値はそれぞれ下記の通りです。
- リード数:15件
- 成約率:40%
- 平均取引額:120万円
- 平均商談期間:80日
先ほどの計算式でセールスベロシティを計算すると、下記のようになります。
セールスベロシティ= (15 × 0.4 × 120)/ 80
= 90,000 / 日
この営業担当者のセールスベロシティは、90,000 / 日ということです。
今回は分かりやすい数字で説明しましたが、実際には参入する市場や業界によって数字や桁数が異なります。市場・業界全体の平均を調べる前に、まずは目安として自社の営業チーム全体や所属する個人で計算してみましょう。セールスベロシティを計算することで営業課題を可視化することにつながり、戦略やプロセスを見直す機会になります。
営業効率を高める重要性
「営業は忙しい」というイメージが強いですが、実際には働く時間に無駄があり、その無駄が数千億円の経済損失に相当するというデータがあります。近年では、働き方改革の推進で残業時間超過などが問題視されていますが、これは非生産的な労働時間があることが原因で生まれている問題といえるでしょう。
また、少子高齢化によるビジネスパーソンの減少が、必然的に営業人材の減少につながっています。これらの背景から、企業は営業効率を高めることに重要性を置くようになりました。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で営業スタイル自体が変化しており、1人の営業担当者が同時に複数の顧客を担当する場面も見られます。こういった場面でも営業効率を高めなければ、企業の売上維持、または向上を目指すことはできないでしょう。
セールスベロシティで営業効率を高める方法は?
セールスベロシティで営業効率を高めるためには、計算に用いる4つの要素であるリード数、成約率、平均取引額を高くし、平均商談期間を短くするのがもっとも簡単な方法です。では、これらを実現させるには具体的にどのような取り組みを行えばよいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
顧客・案件を増やす
顧客・案件数を増やすには、コンテンツマーケティングの実施が効果的です。コンテンツマーケティングとは、顧客が価値を見出すことができる有益なコンテンツを発信して自社商品やサービスに興味を持ってもらい、利用・導入につなげます。
セミナーや販売促進会といったイベントが分かりやすい例ですが、最近では非対面型の営業スタイルを取る企業が増えてきたため、ブログやホームページといったオウンドメディア、定期的に配信されるメルマガなどを活用したコンテンツの配信が一般的になりつつあります。
コンテンツマーケティングを行うことによって、リードの獲得・案件化の導線設計、リードナーチャリングの実現が期待できます。
また、休眠顧客の掘り起こしも、顧客・案件数の増加につながります。過去に自社商品やサービスを利用した経験がある顧客は、1度はその商品・サービスに興味を持ったということです。休眠理由を把握し、それをフォローできるような効果的なアプローチは顧客の購買意欲を再燃させます。そのタイミングを逃さず、適切なコンテンツを配信、顧客・案件を増やしましょう。
成約率を高める
成約率を高めるためには、MQLとSQLを抽出する必要があります。マーケティング担当が創出する確度の高い見込み顧客がMQLです。MQLを創出するためにマーケティング担当はコンテンツマーケティングを実施し、リードナーチャリングを行います。マーケティング担当から引き継いだMQLに対して営業担当が優先的にアプローチすることで、営業プロセスをクロージングまで進めやすく、成約率のアップが期待できるのです。
次にSQLとは、営業担当者が日々の営業で創出した見込み顧客のことを指します。過去の問い合わせや要望の履歴を元に顧客を創出するのが一般的ですが、マーケティング部門から引き継いだMQLがSQLになることもあります。SQLはニーズや課題を拾いやすいため、他の顧客と比べて効果的なアプローチがしやすい傾向です。せっかくのチャンスを逃さないようにSQLの動きを把握することで、成約アップを目指しましょう。
成約が見込めない顧客へのリソースを減らす
成果が見込めない顧客に対して、リソースを費やすことは非常に無駄です。「営業効率を高める重要性」で非生産的な営業活動を問題視しましたが、無駄なリソースを減らすことが結果的に営業効率を高めることにつながります。
例えば、自社サービスに対して問い合わせがきた場合、それは必ずしもすぐにサービスを利用したい人ではありません。「今すぐサービスを利用したいわけではないがどんなサービスなのか少し知っておきたい」といった、成約につながりにくい顧客からの問い合わせもあります。
しかし、成約につながりにくい顧客の対応に時間をかけてしまうのは非生産的です。そこで、サービスについての詳細が分かるように、ホームページに掲載する情報を分かりやすく具体的にするなどの施策が求められます。
また、営業プロセスの一連の流れを俯瞰して、訪問や架電を別のアプローチ方法に変えることはできないか、遠方への営業訪問をオンラインで済ませることはできないか、などさまざまな視点から考えてみるのも効果的といえるでしょう。
成約までの期間を短くする
成約までの期間を短くするためには、ツールなどを活用して効率的に顧客のニーズを読むことが大切です。ツールを導入することで、蓄積されたデータから自動的に資料を作成し、顧客情報を一括管理することが可能になります。これによって、成約に至るまでの期間の短縮や効率アップが期待できるでしょう。
取引単価を上げる
平均取引額よりも高すぎる場合は、成約率が低下すると前述しましたが、妥協しない価格提案であれば成約率を高めつつ営業効率アップが期待できます。顧客にとって無駄な機能が付いたサービスではなく、課題に沿った最適なソリューションであれば、やや価格が高くても顧客は利用したいと思うものです。
プランの単価やグレードを上げるだけでなく、サービスの性質を理解した上でアップセル・クロスセルを狙っても単価の引き上げになります。顧客の情報やニーズを網羅し、積極的な提案を行いましょう。
営業に関する書類作成や手続きを効率化する
先ほど、成約までの期間を短くするためにはツールの利用がおすすめと紹介しましたが、ツールを活用すれば、営業に関する書類作成や手続きも効率化できます。ここでは、営業支援ツールについて見ていきましょう。
営業支援ツールは、営業活動のどのプロセスで活用するかによってMA、SFA、CRMの3種類に分類できます。まず、MAは見込み顧客の獲得から成約率の高い顧客を選別するために活用するツールです。MAの導入で効果的なリードナーチャリングが期待できます。
次に、SFAは顧客管理、案件管理、行動管理、予実管理、レポート管理などの機能が搭載されており、営業をトータルサポートしてくれます。
最後に、CRMはすでに獲得した顧客の管理に活用するツールです。ニーズの分析でアップセル・クロスセルの提案、解約しそうな顧客の把握などに役立ちます。営業プロセスの段階に合わせて適したツールを活用することで、書類作成や手続きの他にもさまざまな作業の効率化につながるでしょう。
まとめ
この記事では、営業効率化の指標となるセールスベロシティについて説明してきました。セールスベロシティを活用することで、高い成約率で収益や売上を支える、強い営業チームを作れるでしょう。
自社でセールスベロシティを指標として導入したい、営業に関係のある指標をさらに詳しく知りたいとお考えの方は、ぜひ下記の資料をご参照ください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。