テレワークでも活かせる営業マネジメントのKPI
2021.07.01
コロナ禍での営業マネジメント、こんなことで悩んでいませんか?
- 今までの勘や経験に頼ったマネジメントではなかなか目標達成しづらくなった
- 時代に沿ったやり方に変えないといけないけど何をどう変えたらいいのかわからない
- 営業施策がマンネリ化している上にテレワークでメンバーの行動が見えづらくなった
こんな悩みを解決しようと、KPIの活用に取り組み始めた人も多いでしょう。
しかし、取り組み始めたら始めたで、こんな悩みを良く聞きます。
- どのように行動を変えたらKPIがよくなるのか分からない
- 今設定しているKPIを変える必要がありそうだが新たなKPIが思いつかない
- 営業チームにはKPI管理が向かないと思っているメンバーが多くて困る
こういった悩みを解決する「テレワークでも活かせる営業マネジメントのKPI」について、今回は書いていきます。
営業の世界ではもはや必須のKPIマネジメント。
しかし、営業支援システム(SFA)を活用してKPIマネジメントをしようと思っても、コストが高いし、何より運用負担が重くて、難易度も高い。
そういった声をよく聞きます。
もっと簡単に営業のKPIマネジメントができて、成果を上げる方法があります。
それがKPIツリーを使ったKPIマネジメントです。
KGIとは?KPIとは?KPIツリーとは?
まずは、KGI、KPI、KPIツリーについてのおさらいから。
KGIとKPIは、ビジネスにおける「目標管理」「目標に至るプロセス管理」のために使われることが多い指標です。
KGI(Key Goal Indicator)は、最終的な業績目標を定量的に評価するための指標です。
重要目標達成指標とも呼ばれ、例えば、売上や利益、キャッシュ・フローといった経営指標がよく使われます。
ビジネスの最終的な成果を定量的に測る役割で使われ、「最終目標」としての意味合いをもつことが多く、要は、「最終的に何をどれだけ達成したいか」の「何を」にあたるものです。
一方で、KPI(Key Performance Indicator)とは、KGIを達成するために必要な各プロセスが適切に実行されているかどうか、その達成度合いを定量的に計測・モニタリングするための指標です。
つまり、KPIは KGIの達成までの「中間目標」になります。
では次にKPIツリーとは?
これは、最終目標であるKGIをスタートとして、そのKGIを達成するために、中間目標としてどのようなKPIを定めるべきかを、ロジックツリーというフレームワークを使って構造的に分解して図化したものです。
つまり、KGI達成のために必要な要因(中間目標)を、KPIを使ってロジックツリーで分解したものです。
たとえば、KGIを売上とした場合、売上を達成するために必要な要素を因数分解した指標(KPI)の一覧です。
売上の目標を達成するためには、どんな指標をどれだけ達成すればいいかがパッと見てわかるようになるので、目標を達成するためにやるべきことが見えやすくなります。
また、売上目標を達成するために、
- どのKPIの進捗が悪くて、
- 何がボトルネックになっていて、
- どうやってリカバリーすればいいのか
も、わかりやすくなるので、目標が達成しやすくなります。
KPIツリーについて詳しく知りたい方はぜひKPIツリーの具体的な作り方と作成メリットを解説しますをご覧ください。
また、この記事の最後に、営業マネジメントに使えるKPIツリーの例とポイントも列挙していますので、ぜひ最後までご覧ください。
営業チームをKPIで目標達成に導く
ではまず、営業マネジメントにおいて、KPIを使って何を達成したいのかを考えてみましょう。
通常は、営業チーム全体やメンバー個人個人の、
- 売上を上げる
- 売上目標を達成する
ということが多いかと思います。
それであれば、「売上」をスタートとして、KPIツリーを作ってみましょう。
たとえば、
- テレアポから商談のアポをとって成約につなげる
という売上に至るプロセスをKPIツリーにするとこのようになります。
こういったKPIツリーを作るときの詳しいポイントはKPIツリーを作るときのポイント10選 ー入門編ーをご覧ください。
ポイントの1つとして、「これ以上分解ができないところまで分解(細分化)していく」というのがあります。
先ほどのKPIツリーでは、以下の通り、4階層まで分解しています。
このようにできる限り階層を深く分解していくことで、
- 重要なKPIが漏れにくくなる
- 何をすればいいかがわかりやすくなる
というメリットがあります。
では、この中の「何をすればいいかわかりやすくなる」という点について、もう少し詳しく書いてみます。
たとえば、次のKPIツリーを見てください。
この3階層の分解だと、
- 商談数を増やすために何をすればいいか
は、営業マン任せになります。
できる営業マンばかりの場合は、自分たちで何をすべきかを考えて行動し、そして結果を出せるので、これくらいのKPIツリーでも売上目標は達成できるのかもしれません。
しかし、そうなると、できる営業マンに依存した、属人性の高いチームになってしまいます。
では、そうではなく、できる営業マンに頼らなくてもチームとして売上目標を達成し続ける仕組みをつくるにはどうしたらいいのでしょうか?
その場合は、ぜひ、先ほどの通り、「これ以上分解ができないところまで分解(細分化)していく」ということをやってみてください。
具体的には、たとえば、
このKPIツリーの分解で終わらずに、次のようにさらにKPIツリーを細分化してみましょう。
こうすることで、先ほどの、
- 商談数を増やすために何をすればいいか
というときに、
- テレアポ数を増やす
- アポ率を高める
ということをやるべきだ、とチームメンバー全員が同じように理解できるので、営業マン任せになることなく、
- 商談数を増やすためにはテレアポ数を増やすこととアポ率を高めることが必要
というチームの共通認識を持ちやすくなりますし、ここに、次のように数値を入れていくことで、
さらに理解は深まり、
- 商談数10を達成するためには、テレアポ数は1,000件、アポ率が1%を目指す必要がある。
というように、「何をどれだけやるべきか」の共通認識が持ちやすくなります。
そうして、テレアポ数やアポ率といったKPIの進捗状況を数値で追っていくことで、商談数を達成するための「仕組み」が出来上がってきます。
事業を拡大させていくためには、属人性の高い状態から脱却して仕組み化していくことがとても重要ですよね。
「1人の100歩より、100人の1歩」です。
このようにできるだけKPIツリーを細分化することで、
- 各営業マンが何をすればいいのかがわかりやすくなる
- 営業マネージャーも各営業マンのマネジメントがしやすくなる
- 営業マネージャーはチーム全体の数値管理もしやすくなる
など、たくさんのメリットがあります。
ここで、KPIを次の2つに分けてみましょう。
- 結果のKPI
- 行動のKPI
これを先ほどのKPIツリーで表すとこうなります。
左に行けば行くほど結果のKPIで、右に行けば行くほど行動のKPIです。
結果はあくまで結果であって、コントロールしづらいものです。
では何をコントロールすべきかというと、その結果に至るまでの行動です。
この行動に当たるものが行動のKPIと呼んでいるもので、KPIツリーを細分化すればするほど、この行動のKPIが出てきます。
先ほどまでのKPIツリーで言えば、
このKPIツリーは、結果のKPIばかりで、行動のKPIが出てきていないので、その結果(たとえば、商談数)をよくするためには、どういった行動(たとえば、テレアポ数を増やす)をすればいいのかがわからないということですね。
一方、繰り返しになりますが、
こちらのKPIツリーであれば、テレアポ数といった行動のKPIが出てきているので、どういった行動をすればいいかがわかりやすくなります。
メンバーの行動を変えていくようなKPI運用をするためには、結果のKPIをマネジメントする、たとえば、
- 結果だけをみて、「達成したか達成していないか」「なぜ達成していないのか」「どうするのか」といったマネジメントをする。
だけではなく、行動のKPIをマネジメントする、たとえば、
- 結果が目標未達成であったなら、「どの行動が足りなかったのか」「どうすればその行動を増やせるのか」といったマネジメントをする。
方が、売上目標の達成率はきっと上がるでしょう。
KPIツリーは一旦完成したとしても、常に変え続けることが必要です。
KPIツリーが自分たちで作れるようになったら、その後の変更も柔軟にできますし、何より、自分たちに最適なKPIを自分たちで見つけ出すことができ、チーム力とマネジメントの強化につながるでしょう。
KPIで営業メンバーの育成スピードを10倍に
経験と勘、とても重要ですよね。
ただ、経験と勘に頼った営業だと、結果が出るようになるまで、育成に時間がかからないでしょうか。
なぜなら、経験と勘を養うには、そもそも時間がかかるからです。
特に、コロナ禍でテレワークをしていれば余計に、誰がどこでつまづいているのかがわかりづらく、進捗状況も分かりづらく、コミュニケーションでフォローしづらいということになりがちです。
こういったことをKPIを使って解決していきましょう。
たとえば、先ほどまでのKPIツリーでピックアップしたKPIについて、営業メンバーAさんの進捗状況が次の図のとおりだったとします。
とてもシンプルな例にしましたが、見方としては、
- 売上の達成率が80%となっている。
- その原因を探るべく、1つ階層を下がってみてみると、成約単価の達成率は100%で問題がなく、成約数の達成率が80%になってしまっているので、これが原因だとわかる。
- では、成約数の達成率が80%になってしまっている原因は何かというと、さらに1つ階層を下がってみる。
- そうすると、成約率の達成率は100%なので、商談数の達成率が80%になってしまっていることが原因だとわかる。
- では、商談数の達成率が80%になってしまっている原因は何かというと、さらに1つ階層を下がってみる。
- そうすると、アポ率の達成率は100%なので、テレアポ数の達成率が80%しかないことが原因だとわかる。
というように、Aさんがどのプロセスでつまづいているのか(どのKPIに問題があるのか)が一目瞭然なので、Aさん自身も自分のどこに問題があるのかが理解しやすくなりますし、マネージャーとしてもAさんをフォローしやすくなります。
つまり、ボトルネックを一瞬で突き止められるので、すぐにリカバリーできて売上向上や売上目標の達成につながりやすくなります。
仮に、KPIツリーが細分化されておらず、次の図のような状態だと、結果のKPI(ここでは成約数)の達成率が悪いことがわかったとしても、各メンバーが具体的にどこでつまづいているのかまではわかりません。
実務的なポイントとしては、こういったKPIの状況を、KPIマネジメントツールなどを使って、オンライン上でいつでも最新状況が見れるようにしておくといいでしょう。
そうすることで、早くリカバリーしやすくなります。
また、次の図をみてください。
これは営業メンバーである、Aさん、Bさん、Cさん、3人のKPI状況をまとめたものです。
このように3人を横並びで比較してみると、
- Aさんはテレアポ数が多い
- Bさんはアポ率はいいけど成約率と成約単価が低い
- Cさんは成約単価と成約率は高いけどテレアポ数が少ない
といったことが一目瞭然です。
メンバー同士の”違い”がわかれば、
- Aさんがどうやってテレアポ数を増やしていっているのかをBさんやCさんに教えてあげる。
- Bさんがどうやって高水準のアポ率を維持できているのかをAさんとCさんに教えてあげる。
- Cさんがどうやって成約単価や成約率を高めているのかを AさんやBさんに教えてあげる。
というように、チーム内でノウハウを共有しやすくなります。
できればKPIごとのそういったノウハウを「ノウハウ集」としてまとめていくといいでしょう。
このようなチームマネジメントで、
- チームとして営業力を底上げできる
- 個人個人の成長スピードが上がる
- チームみんなでクリティカルな打ち手を議論できるようになる
といった効果が出てきます。
これは、既存社員の底上げ(育成)だけではなく、新入社員の育成にも活用できます。
先ほどまでの既存社員に対するマネジメントと同様、新入社員に対しても、
- 自分のどのKPIが先輩に比べて足りていないのかがわかりやすくなる。
- そのKPIを改善するのにどうすればいいかをノウハウ集を見ながら自主的に学べる。
- マネージャーや先輩も、新入社員のどのKPIがよくないのかがわかるのでフォローしてあげやすい。
といった効果があって、新入社員の育成スピードもきっと上がることでしょう。
先を見ながら行動する
継続的に売上目標を達成できる社員とできない社員、その違いはなんでしょうか?
もちろんいろいろあるはずです。
ここでは、その1つとして「先を見ながら行動できる社員とそうでない社員」の違いを考えてみましょう。
先ほど、結果のKPIと行動のKPIの話をしました。
ではどちらのKPIが重要でしょうか?
答えは「どちらも」です。
ただ、「重要の意味」がちょっと違います。
結果のKPIは、今月の売上目標を達成するために重要です。
行動のKPIは、来月以降の売上目標を達成するために重要です。
ここで、リードタイムについて考えてみます。
この図のように、テレアポから商談までのリードタイムが1ヶ月、商談してから成約までのリードタイムも1ヶ月だったとします。
たとえば、今月の売上が、このままでは目標未達成になってしまいそうだ、とします。
その時の対応策として、「テレアポ数を増やす」ということは有効でしょうか?
今から頑張ってテレアポをしても商談になるのは(リードタイムが1ヶ月だとすると)来月になってしまいますし、さらにそこから成約に至るまでのリードタイムを考えれば再来月の売上にはつながるかもしれませんが、今月の売上をあげるためには有効な施策でないかもしれません。
次に、「新規商談のアポを早めてもらって今月の商談数を増やす」という施策は有効でしょうか?
仮にそれができたとしても、商談から成約までのリードタイムが1ヶ月のままだと、来月の売上にはつながりそうですが、今月の売上をあげるためには有効な施策ではないかもしれません。
では次に、「先月までの商談のフォロー(後追い)をして成約率を高める」という施策は有効でしょうか?
これであれば、商談から成約までのリードタイム1ヶ月を考えた時に、今月の売上につながる可能性が高いのは先月に商談した案件なので、そこにフォーカスして、成約率を上げていく施策を取るのは、今月の売上をあげるためには有効な施策かもしれません。
KPIツリーでは、左にいけばいくほど結果のKPI、右にいけばいくほど行動のKPIですが、
- 当月の売上をあげるためには結果のKPI(たとえば、成約率)が重要。
- 来月以降の売上をあげるためには行動のKPI(たとえば、テレアポ数)が重要。
だったりします。
ここで、「継続的に売上目標を達成できない社員」の特徴について考えてみます。
そういった社員の特徴として、
- 結果のKPI(目先の売上獲得)ばかりに目がいってしまっている
といったことはないでしょうか?
もちろん今月の売上目標を達成するには重要なことです。
しかし、その結果、今月の行動のKPI、たとえば、商談数やテレアポ数が減ってしまう、または、目標が未達成になってしまう、ということになってしまえば、リードタイムを考えれば、来月の商談数が減ってしまったり、再来月の成約数が減ってしまったりすることになりかねません。
そうなると、結局、毎月目の前の売上獲得(結果のKPI)ばかりに目がいってしまって、目の前の売上を追いかけるばかりになってしまうということにもなりかねません。
一方、「継続的に売上目標を達成できる社員」は、目先の売上獲得はもちろん目指しているものの、来月や再来月に向けて、しっかりと商談数やテレアポ数といった行動のKPIにもフォーカスしながら行動しているのではないでしょうか。
毎月、場当たり的に結果ばかりを追い求めずに、先を見ながら行動することが大切ですね。
KPIで毎週のPDCAを回す
毎週、営業会議を開いている会社が多いと思います。
そこではどんなことが話し合われているでしょうか?
- その日までの当月売上実績の報告を受けているだけ
という会社もあるかもしれません。
または、
- その日までの当月売上実績と、その日時点における当月月末の売上着地見込を出して、振り返りと今後のアクションプランをすり合わせている。
という会社もあるかもしれません。
そこで、KPIを、この毎週の営業会議にぜひ取り入れてみていただければと思います。
やり方の概要は次のとおりです。
その日までの当月実績と、その日時点における当月月末の着地見込を出す。
この時、先ほどのように「売上」だけではなく、すべてのKPI(先ほどのKPIツリーで言えば、テレアポ数、アポ率、商談数、成約率、成約数、成約単価、売上)に関して、「その日までの当月実績」と「その日時点における当月月末の着地見込」を出します。
当月月末の着地見込について確認する。
その日までの当月実績と着地見込に不整合がないかを確認します。
たとえば、15日時点のテレアポ数の実績が100件で、当月のテレアポ数の目標が300件だとして、着地見込が300件で出てきたとしましょう。
15日間で100件だったものが、残り15日間で200件を達成できるという見込みですよね。これだけ聞くと違和感がありますよね?
そこで、どうやってその200件を達成するのかを確認しましょう。
その方法が可能そうであればそのままでいいですが、可能そうでなければ着地見込を見直しましょう。
着地見込と目標の差分を確認してリカバリー施策を決める。
KPIごとに着地見込とその月の目標値の差分を出します。
たとえば、15日時点でのテレアポ数の実績が100件で、当月のテレアポ数の着地見込が240件、当月のテレアポ数の目標が300件だったとします。
着地見込と目標との差分は60件ですね。
この60件を残り15日間でどのようにリカバリーするのかを話し合って決めます。
このように、毎週、KPIごとに、実績・着地見込を出して、着地見込の精度を確認し、目標との差分を明確にして、未達成になりそうなのであればリカバリー施策を話し合って決めましょう。
ポイントは、着地見込の精度(ヨミの精度)です。
この精度が低ければ、目標との差分を出しても意味が薄れてしまいます。
以上のルーティンは、各営業メンバーごとにやってもらうことになりますが、着地見込の精度がただの数字遊びになってしまっては効果が上がりません。
着地見込の精度を上げていくことで効果を圧倒的に上げていくことができます。
その精度を上げていく1つの方法としてぜひ「振り返り」をしてみてください。
多くの会社が、大なり小なり、先ほどのような着地見込をしながら週次の会議をしているとは思いますが、やりっぱなしになってしまっているケースが多いです。
たとえば、5月24日の週次会議で、Aさんのテレアポ数の着地見込が240件だったとします。
残りあと1週間くらいなのでそのヨミの精度は相当高いことが期待できます。
しかし、この240件というヨミの精度が高かったのかどうかが、6月に入ってから振り返りをしていないというケースが多いです。
そこで、6月に入ってから、5月24日時点の着地見込240件と、実際の5月末の実績を見比べてみましょう。
5月末の実績が240件、またはそれに近しい数値ならいいですが、たとえば、実績が220件となっていて、着地見込との差分が20件も出てしまっているとしましょう。
その場合、
- なぜそうなってしまったのか
- 翌月以降どう改善すれば着地見込の精度をあげることができるのか
といったことをしっかりと振り返りしていくことで、徐々に精度は上がってくるでしょう。
やりっぱなしにならないことが大切ですね。
なかなかチーム目標が達成できない
「営業メンバーの個人個人の売上目標は結構達成しているけど、チームとしての売上目標がなかなか達成できない」
このような悩みを抱える営業マネージャーの方は意外と多いです。
個人個人の営業マネジメントの次はチームマネジメントについても、ぜひKPIを活用してください。
営業メンバー10人中7人が売上目標達成していても、3人が未達成で、結果としてチーム全体が売上目標未達成なら、営業マネージャーとしての責務は果たせないですよね。
そこで、まずは営業メンバー個人個人のKPIの状況を集計して、チーム全体の状況を把握しないといけません。
次に、チーム目標に対しての差分を明確にしましょう。
こうすることで、KPIごとの差分が一目瞭然になります。
そして、目標に対して見込みの差分のあるKPIについて、その差分をどうやって埋めるか、誰に追加で頑張ってもらうか、スキルや余裕状況を見て考えて指示します。
この例でいえば、
- 売上の未達成見込は4,000千円である。
- 成約単価は問題なさそうなので、成約数をあと4件リカバリーする必要がある。
- そのためには成約率のあげるか、商談数を増やす必要がある。
- 成約率をあげるためには、先月の商談に対して、再度フォローさせよう。
- 商談数を増やすためには、アポ率は調子が良さそうなので、圧倒的に足りてないテレアポ数をリカバリーする必要がある。
- 足らない230件については、Aさん、Bさん、Cさんの状況を見て、残り日数を加味して割り振りしながらチーム全体としての達成を目指そう。
というような流れです。
ここではリードタイムを一旦無視して単純化してお話ししましたが、実務的には、ここにリードタイムが入ってくるのでもう少し複雑にはなります。
ただし、要領はこれまで書いてきたとおりなのでぜひ参考にしながら実践してみてください。
自立自走型の組織へ
以上のようにKPIを営業マネジメントに活用することで次のような効果が期待できます。
- 他の営業メンバーのKPIと見比べることによって、または、KPIごとの会社としての標準値と見比べることによって、営業メンバー個人個人が、自分のどこに課題があるのかを自ら見つけることができる。
- 営業チーム内で、KPIごとに、最高値、最低値、標準値、中央値、最頻値がわかることで、自分の状況が客観的にロジカルに理解できる。
- 課題があるKPIについては、そのKPIについて優良な実績を出している他のメンバーに聞いたり、チームとしてのノウハウ集を学ぶことによって、自ら課題をクリアしやすくなる。
- 着地見込がしっかりできるようになってKPIの中でも優先順位が決めれるようになる。
- 来月、再来月のために、今月何をやるべきかをリードタイムを考えながら行動できる。
- 営業メンバー個人個人も、チーム全体も、目標達成していく仕組みができる。
つまり、自分で課題を見つけて自分で解決できる自立自走型のチームに近づくでしょう。
とはいえ、いきなり最初からそうなるかというとそうでもないです。
まずは、営業マネージャーが、各メンバーと1on1で面談しながら、または、チーム会議で指導してあげながら、各メンバーにやり方を教えてあげる必要があるでしょう。
注意点としては、面談や会議で話した内容をしっかりと記録しておいて、その次の面談や会議で、しっかり前回の振り返りのフォローをしながら、言いっぱなしにならないように、着実に前進していくことです。
そうすることで、そのうち、行動を細かく管理しなくても自ら動く社員が増えるはずです。
そして、可能なら、KPIツリーで出てきたKPIの中で、重要なKPIを、人事評価の中の定量評価に組み込むといいでしょう。
そうすれば、評価される社員側も、
- KPIツリーで全体像が把握できるので、その中でなぜそのKPIで評価されるのかが理解しやすくなり、納得感も高まる。
- 自分自身の評価(定量部分)がどれくらいなのかを自らいつでも把握できる。
といった安心感があります。
チームとしての目標達成と個人の評価が紐づいて、よりチームとしての目標達成力が高まることでしょう。
KPIツリーの例とポイント
最後に、KPIツリーの例をいくつかと、それぞれのポイントについて書いていきます。
売り切りモデル
テレアポ
テレアポから商談につなげて成約に持っていくケースのKPIツリー例です。
飛び込み訪問
飛び込み訪問から商談につなげて成約に持っていくケースのKPIツリー例です。
Web
Webサイトへの問い合わせを商談につなげて成約に持っていくケースのKPIツリー例です。
Webページへのアクセスから商談までのプロセスをさらに細分化してみると次のようなKPIツリー例になります。
Webへのアクセスから問い合わせがあって、その問い合わせに対して架電をして商談のアポをとっていくという流れです。
複合パターン
見込み客の獲得チャネルが、テレアポとWebの2つがある場合のKPIツリー例です。
さらに、商談数と成約率を、テレアポチャネルとWebチャネルの2つに分けてマネジメントしたい場合の KPIツリー例が次です。
リピートモデル
既存顧客のリピートによる契約があるケースのKPIツリー例です。
既存顧客へ電話やメールなどでアプローチして、商談化につなげ、商談をして成約に持っていくという流れを想定しています。
なお、新規成約数の商談数以降のKPIツリーについては、先ほどまでの売り切りモデルの各パターンを参考に、その先を作ってみてください。
アップセル・クロスセルモデル
既存顧客へのアップセルやクロスセルがあるケースのKPIツリー例です。
既存顧客へ電話やメールなどでアプローチして、商談化につなげ、商談をして成約に持っていくという流れを想定しています。
先ほどのリピートモデルとの違いは、リピートモデルが、新規契約とリピート契約で成約単価が変わらないことを想定していて、アップセル・クロスセルモデルは、新規契約とアップセル・クロスセル契約で成約単価が異なることを想定しているので、新規契約とアップセル・クロスセル契約のそれぞれの成約単価がわかるようにしています。
なお、新規売上の成約数以降のKPIツリーについては、先ほどまでの売り切りモデルの各パターンを参考に、その先を作ってみてください。
代理店モデル
代理店を通して成約を獲得していくケースのKPIツリー例です。
代理店数を増やしていくために、商談をつくって代理店契約につなげて新規代理店を獲得し、一方、既存の代理店との関係性も維持しながら、両社(新規代理店と既存代理店)のサポートをしつつ、1代理店あたりの成約を増やしていくということを想定しています。
なお、新規代理店数の商談数以降のKPIツリーについては、先ほどまでの売り切りモデルの各パターンを参考に、その先を作ってみてください。
以上、テレワークでも活かせる営業マネジメントのKPIでした。
https://scalecloud.jp/blog/telework/
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。