KPIマネジメントで失敗しないためには?KPIの設定方法を詳しく解説
2022/10/28
ビジネス環境や個人の働き方が多様化している中で、「企業が生き残るためにはどうやって目標達成力を高めて実績につなげていくか」が、企業戦略の課題とされています。
そこで注目されているのが、目標達成力を高めるのに最適な手法である「KPIマネジメント」です。
しかし、KPIマネジメントを導入しているものの、効果的に運用できていない企業も多く見られます。今回は、KPIマネジメントとは何か、KPIの設定方法、KPIマネジメントのコツなどを深く掘り下げて解説していくので、ぜひご覧ください。
KPIマネジメントとは
KPIマネジメントとは、どこがゴールなのか、どこが成功の指標なのか、成功するためにはどんなタスクをこなすのかといった、目標達成への1つひとつのプロセスを管理する手法で、組織をマネジメントする鍵となります。
正しくKPIを設定すれば、ゴールまでの目標達成のプロセスが可視化され、より多面的な視野でビジネスを捉えることが可能です。KPIマネジメントは、組織を最適化するのに有効的な手法といえます。
絶対押さえたい!KPIマネジメントに関する用語
KPIマネジメントを実行する上で、まず抑えておくべき用語があります。KPIマネジメントを導入する際には、以下の基本用語を4つ理解しておきましょう。
- KPI
- KGI
- KSF(CSF)
- PDCA
それぞれの用語の意味を詳しく解説していきます。
KPI
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、「業績達成(Performance)の鍵(Key)となる指針(Indicator)」です。設定した目標達成のためのプロセスを数値で可視化しています。
経営戦略用語としては「重要業績評価指標」と訳され、目標の達成度を評価するための重要な指標です。
KGI
KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、「ゴール目標(Goal)の鍵(Key)となる指針(Indicator)」です。最終的なゴール目標がどの程度達成されたのかを数値で可視化します。
KPIが中間目標だとするなら、KGIは最終目標と考えると分かりやすいです。経営戦略用語は「重要目標達成指標」と訳され、具体的にいうと売上高や利益率になります。
KGIの最終的なゴールの達成に向けて、成功に導く重要な鍵となるのが次に紹介するKFS(CSF)です。
KSF(CSF)
KFSとは「Key Factor for Success」の略で、「成功(Success)の鍵(Key)となる要因(Factor)」を意味し、KGIを成功に導く「重要成功要因」となります。
ゴールまでのプロセスが明確になっていると、重要度や優先度が可視化されて具体的な行動がとりやすい、無駄をなくしてより効率的な業務が遂行できるといったメリットが得られるでしょう。
KFSの類語として、CSF「Critical Success Factor」という用語もあります。「重要(Critical)な成功(Success)の要因(Factor)」で、CFSもKFSと同様に「重要成功要因」という意味です。
PDCA
PDCAとは、「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(検証)」、「Action(改善)」の4つのプロセスからなるサイクルで、一般的には業務の改善手法として幅広く活用されています。
実際にKPIを実行していく上では、KPIを設定してタスクをこなしていきながら柔軟に改善していかなければいけません。PDCAのサイクルに沿って実行していくことで、よりKPIの精度を高められます。
KPIマネジメントが注目されている理由
ビジネス形態の多様化が進む中で、KPIマネジメントが注目されている1番の理由は、目標達成度が数値で可視化できるという点です。
目標達成度やゴールまでのプロセスを可視化することによって、以下のようなメリットがえられます。
- 複雑化したビジネスに対応できる
- 生産性の向上が見込める
- 人的財産を生かせる
これらの3つのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
複雑化したビジネスに対応できる
KPIを設定する1つ目のメリットは、達成目標が可視化できることで複雑化したビジネスにも対応できるという点です。
KPI設定によって目標やタスク、達成度などを「数値で見える化」すれば、現状と達成すべき目標値にどれくらい差があるのか、目標達成までに必要な業務プロセスは何かが具体的になって、業務の無駄を省けます。
複雑化したビジネスの中でも、しっかりとやるべきタスクを1つひとつ段階を踏んで達成していけるので、効率的に業務を進められるでしょう。
生産性の向上が見込める
KPIを設定する2つ目のメリットは、目標が明確になって生産性の向上が見込めるという点です。
ただ仕事をこなしていくのではなく、目標に向かって企業全体で協力しながら業務を進めていくことで、社員のモチベーションの向上が見込めます。
また、目標達成までに必要な業務や個人のタスクが可視化されれば、社員1人ひとりが自分の業務に集中できて、無駄がありません。業務の重要な点に集中して取り組めば、生産性の向上につながります。
人的財産を生かせる
KPIを設定する3つ目のメリットは、個人の行うべきタスクや業務が明確になることで、人材評価を行いやすくなります。
人材は組織の財産です。個人のパフォーマンスを公平に評価することは、社員のモチベーションを上げるだけでなく、組織力の向上にも大きく貢献します。
また、人材の適材適所も見えてくるので、個人個人の能力に適した環境に配置すれば、より高いパフォーマンスを見込めるでしょう。
KPIの設定方法
KPIを設定する上では、「何の目的ためにKPIを設定するか」が重要です。目的があいまいだと的外れな目標を設定してしまい、期待する効果が望めません。
ここでは、より効果的なKPIマネジメントを実行するために、KPIの設定の方法について紹介していきます。
KGIを設定して最終目標を明確に
まず初めに設定すべきは、最終目標達成指標(KGI)です。最終的なゴールが明確になれば、ゴールに到達するまでのプロセスがより具体的に設定できます。
KGIは具体的な数値で設定するようにしましょう。「顧客満足度を上げる」、「生産性を向上する」といったあいまいな目標設定では、達成の条件や達成に至るまでのプロセスが分かりません。誰が見ても明確な目標を設定してください。
現状からKGIに向かうための戦略を考える
次は、KGIに向かうための戦略立てです。まずは、市場分析、自社分析、競合他社分析などを行って、現状を正確に把握することが必要があります。
市場をしっかり把握すれば、どの方向にゴールを設定すべきかが見えてきて、有効な戦略立案が可能です。
KFS(CSF)で成功要因を設定する
先にも述べたように、KSFはビジネスを成功へ導く鍵となる成功要因です。スタートからゴールまでの各プロセスで適切なKFSを設定することで、目標達成に向けてやるべき要因、不要な要因が明らかになり、ゴールまでの道しるべがより明確化されます。
KPIを設定して道筋を定める
KFSを設定したら、KGIの達成へ向けて各プロセスに合った適切なレベルのKPIを設定します。KPIはKGI同様に、具体的な数値で設定する必要があり、期間なども明確にしておかなければいけません。
また、各プロセスのKPIをそれぞれ達成したら最終ゴールであるKGIに到達できるようにしなければいけないため、必ずKPIとKGIは連動するようにしましょう。
定期的に進捗状況をチェックする
KPIを正しく運用するためのポイントは、達成目標に向けて「いつ」「誰が」「何を」「何のために」「どのように」実行するのかを明確にして、定期的に振り返ってチェックを行い、進捗状況を確認・改善していくことです。
ゴールまでの実行プロセスをPDCAサイクルで繰り返し運用することで、KPIの精度が上がります。それにより、目標やタスクの明確化、タスクの課題の発見と解決が迅速に行えるようになって、無駄なくタスクに集中できるでしょう。
KPIマネジメントの3つのコツ
KPIマネジメントを導入している企業は数多くありますが、順調に業績を伸ばしている企業となかなか業績につながらない企業の2つに分かれてしまっています。この結果の違いはどこにあるのでしょうか。
ここでは、成功するKPIマネジメントのコツを3つ紹介します。
- KPIの優先順位をつける
- リードの流入チャネルを最適化する
- 課題と改善策を明確にする
それぞれのポイントを深掘りしていくので、参考にしてください。
KPIの優先順位をつける
各KPIの影響度(重要度)は、「数字で遊んでみる」ことで分かります。
例えば、KPI設定値を「これくらいの指標ならできる」という範囲でいくつかシミュレーションしてみると、組織や目標に対してのKPIのインパクト度や影響度が見えてきます。
この影響度数が組織全体を最適化する鍵です。「どのKPIが今の状況で特に重要なのか(弊社はこのKPIを「Scale Driver」と呼んでいます)」が明確になり、限られた経営資源を何に投下すべきかを最適な視点で、合理的に判断できます。
もちろん統計的分析を用いれば、各KPIのパラメーターを変動させた場合のPLや収支に及ぼす影響度を統計的分析によって定量的に可視化してくれるので、「遊んで」みなくても、各KPIの影響度を自動的に解析することが可能です。
リードの流入チャネルを最適化する
2つ目のコツは、質の高いリード(有望な見込み顧客)を設定して、流入チャネル(顧客を獲得できる経路)を施策し、獲得手法を最適化(適切にKPIを設計)することです。
KPIを適切に設定すれば、それぞれの見込み客をどのように獲得して、どんなプロセスで売上につなげていくのかを可視化できます。
見込み客の獲得をチャネルごとに可視化できれば、以下のような項目が定量的に把握できるでしょう。
- どの流入チャネルからの見込み客が受注率が高いか
- どのチャネルからの受注単価が高いのか
- どのチャネルからの顧客獲得コストが低いのか
従って、どの流入チャネルに重点的に投資すべきかが、論理的に判断できます。
課題と改善策を明確にする
3つめのコツは、課題と改善策を明確にするために業務プロセスを細分化することです。
業務プロセスを細分化すれば、目標達成プロセスの全体を可視化できるため、無駄を省いたタスク管理ができます。
- 課題を特定しやすくなる
- 課題が特定されるので、改善策が明確になり取り組みやすくなる
- 無駄のない効率的な課題解決への行動につなげられる
- 社員のモチベーションをアップでき、組織力が強化できる
このように、地道にKPIの改善目標を常に積み重ねていけば、結果的に業績に大きな差を生み出せるでしょう。
KPIマネジメントで目標達成までのプロセスが可視化!
KPIマネジメントの設定によって目標達成を数値化して、達成へのプロセスを適切に管理すれば全体構造を可視化できます。
全体構造の可視化ができれば、「目標達成するためにKPIをどのように設定すべきか」が、ゴールを起点に逆算で分かるでしょう。
それにより、「現在どこに問題があるのか」が一目瞭然になり、「どのように対処すべきか」の意思決定も迅速になり、全体最適な視点で判断できるようになります。
KPIマネジメントの失敗例
ビジネスにKPIマネジメントを取り入れる際の重要なポイントは、組織を活性化できる多角的な視野と、時代やビジネス環境にマッチした戦略的な視点です。
KPIマネジメントを失敗しないために、次の2点を抑えておきましょう。
- 社員のモチベーションの低下
- KPIがビジネスの環境変化に対応できていない
各失敗例を紹介していくので、KPIマネジメントで失敗しないために、ぜひ参考にしてください。
社員のモチベーションの低下
目標を達成するためのKPI設定は、社員全員が分かるようにシンプルでなければなりません。複雑に設定しすぎたり、具体的な数値や期限がないあいまいな設定にしたりすると、社員間に目標達成の認識のズレが生まれて、うまくいかなくなって社員のモチベーションを下げてしまいます。
また、実現するのが難しいKPIを設定してしまうと、社員がKPIを達成するのを諦めてしまう可能性があります。これは、KGIに無理がある場合に起こることが多い事例です。KGIを高く設定するのは重要ですが、あまりにも高く設定しすぎると社員から不満が生まれてモチベーションが低下してしまう可能性があるため、現場との兼ね合いも考えて最適なKGI・KPI設定を行いましょう。
KPIの達成がどうしても難しい場合には、周囲の協力を得られるようにする、KGIをもう一度検討するなど、再考しましょう。
KPIがビジネスの環境変化に対応できていない
せっかくKPIを設定しても、ビジネスの環境変化に対応できていないという失敗例がよくあります。
KPIは事前に設定するものですが、業務を行っていく中で修正などを行っていくべきです。実際に業務をこなしていくと、期限に間に合わせるのが難しくなった、外的要因で予定がズレたなどのイレギュラーも起こります。
その際は無理に当初のKPIを遂行するのではなく、必要に応じてKPIを変更して柔軟に対応しましょう。
KPIマネジメントを行う際のポイント
ここでは、効率的にKPIマネジメントを行うためのコツを紹介します。これまでの設定手順や管理するポイント、注意すべきポイントとあわせて理解を深めることで、一層効率的なマネジメント手法にできるでしょう。KPIマネジメントを行う際は、以下のポイントに注意してください。
KPIは単純な設計に
KPIの設計をする際に大事なのは、誰が見ても理解できる単純化した目標設定にすることです。
KPIは社内で共有して企業全体で協力して行うものなので、誰でも理解できるようにする必要があります。複雑な設定にして組織に理解されていないと、目標達成が正しく進んでいるのかが判断できない、KPIの効果が測定できないなどの問題が起こり、問題を改善するのも難しくなってしまうでしょう。
シンプルで運用しやすく、誰でも理解できるKPIを設定するように意識してください。
評価方法は明確にして社員全員が理解できるように
KPIの進捗状況に応じて、それぞれの成果を公正かつ明確に評価できれば、社員のモチベーションアップにつながります。
評価方法を明確にするポイントは、社員全員が理解できるよう評価基準と評価ポイントを可視化することです。
評価基準の可視化により、社員1人ひとりのポジショニングが明確になり、ステップアップするための目標値も明確に見えてきます。
まとめ
ビジネス環境が目まぐるしく変化している昨今、KPIマネジメントは組織のさまざまな問題を多面的な視点から解決策を導きだす手法として、今後の企業の成長に重要な役割を持っています。
成功するKPIマネジメントを行うためのポイントは、以下の5つです。
- KPIを設定するときは広い視点で、周囲の影響度を考え多角的に検討する
- KPIは具体的な数値で誰でも理解できるように設定して実行性を高める
- 目標達成に必要なプロセスを明確にし、KPIがなぜ必要かを徹底分析する
- 組織間のKPIの認識を同じ方向を向いて業務に取り組む
- KPIは状況や環境に応じて随時、柔軟に変更する
KPI設定では、要点をしっかり抑えて事前のリサーチを徹底し、原則に従って運用をしっかり進めるようにしましょう。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。