もう失敗しない!絶対に知っておきたいKPIマネジメントの失敗例10選
2022.02.22
「KPIマネジメントを実践したいけれど失敗しないか不安」、「KPIマネジメントに失敗する人は何が原因なのかを知りたい」という人もいますよね。
ここでは、KPIマネジメントで知っておくべき用語や注目されている理由、KPIマネジメントの失敗例などを解説していきます。
KPIマネジメントで知っておくべき用語
KPIマネジメントで失敗しないためには、まずKPIマネジメントについて理解することが大切です。ここでは、知っておくべき用語について解説していきます。
- KPI
- KGI
- KSF(CSF)
それぞれの用語について、見ていきましょう。
KPI
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とは、企業で定めた目標を達成するためのプロセスを数値化して評価する指標です。KPIを設定することで、目標を達成するまでに必要なタスクが明確になり、業務に集中できるというメリットがあります。
KPIについてさらに詳しく知りたいという方は、「目標達成に重要なKPIとは|設定方法や注意点を分かりやすく解説」の記事をご参照ください。
KGI
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)は、企業や個人が定める最終目標を指します。KGIを達成するための中間目標がKPIとなるため、KGIまでの道筋にいくつものKPIが存在するという形です。
KPIについてさらに詳しく知りたいという方は、「KPIとKGIの違い。設定方法やポイント、具体例を解説」の記事をご参照ください。
KSF(CSF)
KSF(Key Factor for Success:重要成功要因)は、最終目標であるKGIを達成するために重要な要因です。同じ意味合いとして、CSF(Critical Success Factor)と呼ばれることもあります。達成度を測るための指標であるKPIとは異なり、KSFは達成するために必要な施策です。
KPIマネジメントが注目される背景
KPIマネジメントがなぜ企業に注目されているのか、ここではKPIマネジメントが注目される背景について解説していきます。注目されている理由として、下記の3つが挙げられます。
- 企業としての生産性を高める必要がある
- 経営環境の変化に対応する
- 成長企業がやっている
それぞれの理由について見ていきましょう。
企業としての生産性を高める必要がある
労働人口の減少やグローバル経済での競争力低下などが原因で、日本経済は長らく閉塞感に包まれています。労働人口の減少は、競争力の低下にもつながりかねません。
労働人口が減ったとしても、企業全体としての生産性が高まれば競争力は高められるのかもしれませんが、その生産性もグローバルで比べると日本企業は低いといわれています。その生産性を上げる活路として、KPIが注目されているのではないでしょうか。
グローバルで比べて、日本の製造業は強いといわれ続けてきました。その理由として、ブルーカラーの世界で、工場における工程管理や品質管理といった面でKPIの活用が進んでいること、「カイゼン」を徹底的に行っていることなどが挙げられるでしょう。
一方、ホワイトカラーの世界では、まだまだKPIの活用が進んでおらず、勘や経験に頼る部分がたくさん残っています。そういった点でKPIが注目されていると考えられるのです。
経営環境の変化に対応する
「企業経営を取り巻く環境の変化が激しく……」といったフレーズを目にしたことがある人も多いでしょう。そういった環境だからこそ、企業としても柔軟かつスピーディーに対応していく必要があります。しかし、スピードだけを重視するのでなく、的確に対応できなければいけません。
そういった場合に、「勘や経験」に頼っていると、的確にスピーディーな対応が難しくなる面が出てきます。
勘や経験に頼る経営から脱却するために、「ロジカルにデータや数字を活用して経営していこう」という企業が増えてきました。しかし、従来から利用されてきた会計データ(財務会計と管理会計)は、4月のデータが5月になってから出てくるといったようにリアルタイム性が低い上に分かりにくいという理由から、なかなか活用が進みませんでした。
一方、KPIであればリアルタイム性が高く、誰でも分かりやすいデータなので、的確かつスピーディーな経営を目指せるといった点でも注目されています。
成長企業がやっている
前述のような経営環境でも成長している企業の多くがKPIを活用しているということが、KPIが注目されている最大の理由だと考えられます。「成長企業の成功メソッドを取り入れて自社も事業拡大したい」という企業も多いでしょう。
KPIで企業価値がはかられる局面も増えてきており、企業価値の評価という点でもKPIは注目の的です。
さらに、上場審査においても予算管理の精度が大きな課題となっている中で、その精度を高めることと、事業計画の蓋然性を説明するということにおいて、KPIが必須になっています。
上場企業においても同様に、株主への説明責任を含むIRの一環として、または予算管理の精度向上の一環として、KPIが注目されてきているのも事実です。
このように、KPIマネジメントがますます注目される中で、より精度の高いKPIを行うためにはどうすれば良いのでしょうか。KPIを設定する手順について、次の見出しで紹介していきます。
KPIを設定する手順
KPIを設定する際には、まずKGIを決める必要があります。KGIを定めたら、KSFで成功要因を明確にしましょう。KGIを定めてKSFを分析していけば、KPIも見えてきます。KGIを達成するために有効なKPIを設定してみてください。
このように、KPIの設定は決して低くはありません。しかし、成長企業がやっている具体的なKPI活用メソッドが、世の中に広く流通しているわけではありませんし、まだまだKPIマネジメントの専門家も少ないですし、歴史も浅くメソッドが体系化されているわけでもありません。
弊社では、創業来14年間、600社以上の経営支援に携わる中で培ったKPIマネジメントのノウハウがあります。このノウハウを世の中に広め、日本企業の生産性を高める支援をすることにより、日本経済の閉塞感を打ち破りたいと、強く思いながら活動しています。
KPIマネジメントを成功させるには、「経営と現場」「理想と現実」「理論と実務」「全体最適と部分最適」「長期と短期」といった相反するもののバランスを取っていくことが重要です。
相反するもののバランスといわれても抽象的で分からないという人もいますよね。次の見出しでKPIマネジメントの失敗パターンを紹介するので、KPIマネジメントの成功セオリーのヒントにしてみてください。
KPIマネジメントの失敗例10選
ここからは、KPIマネジメントの失敗例10選について紹介していきます。KPIマネジメントで失敗しないために、失敗例を参考にしてみてください。
MECEになっていない
これからKPIを活用しようというときに「みんなで話し合いながら案を出してKPIを選ぶ」という企業は少なくありません。ブレスト的にみんなで案を出しあって、その中から重要なものを議論しながら選ぶというプロセス自体は良いです。
しかし、この方法だと重要なKPIが漏れやすいという欠点があります。MECE(漏れなくダブりなく)に重要なKPIを洗い出すには、KPIツリーを使うと良いでしょう。
KPIツリーを使ってKPIを洗い出す流れは以下の通りです。
KPIツリーの作り方としては、因数分解をするイメージになります。まずは、因数分解について見ていきましょう。
例えば、20を因数分解すると、以下のようになります。
20 = 4 × 5
そして、これをさらに因数分解すると、
20 = 2 × 2 × 5
に分解できます。このように、「もうこれ以上分解できない」というところまで因数分解することを、「素因数分解」といいます。先ほど紹介した図に沿って説明すると、下記のように因数分解できるのです。
- 売上を因数分解すると「顧客単価×顧客数」になる。
- 顧客数をさらに因数分解すると「成約率×商談数」になる。
- 商談数をさらに因数分解すると「アポ率×テレアポ数」になる。
このように分解することで、「売上」を構成するKPIがMECEに洗い出せます。ちなみに、このKPIツリーの「売上」を「利益」にすれば、以下のようになります。
このように分解することで、「売上」を構成するKPIがMECEに洗い出せます。ちなみに、このKPIツリーの「売上」を「利益」にすれば、以下のようになります。
また、こういったKPIツリーの構造は、事業内容によって当然変わってきますので、事業ごとにKPIツリーを作ってみてください。
KPIツリーの詳しい作り方については、こちらの資料を参考にしてみてください。
KPIツリーの階層が浅い
KPIツリーを作っていても、因数分解がしっかりできていない、つまり、素因数分解までできていないと、「何をやるべきなのかがよく分からない」ということになりがちです。
例えば、以下の図のケースで考えてみましょう。
このようなKPIツリーだと、「商談数を増やすためには何をすべきなのか」がはっきりしないため、「どのようにして商談数を増やすのか」は各営業マン任せになりがちです。そうなると、結局、各営業マンのマンパワーに頼ることになってしまって、ビジネスとしての再現性が高まりません。
事業の立ち上げ時期ならまだしも、事業の拡大期になれば、「1人の100歩より100人の1歩」の考え方で、特定の人のマンパワーへの依存度を下げて、誰でも着実に1歩前進していけるような仕組みをつくっていかなけばなりません。
例えば、先ほどの図をさらに因数分解すると、次の図のようになったとします。
このように詳細なKPIを設定すれば、商談数を増やすためには「テレアポ数を増やす」、「アポ率(テレアポしてアポが実際に取れる率)を高める」必要があるということが明確になります。
もちろん、「テレアポ数」や「アポ率」をさらに因数分解することも可能です。このように、どんどん因数分解することで「何をやるべきか」がより明確になっていきます。
KPIツリーについて少し補足すると、左にいけばいくほど「結果」で、右にいけばいくほど「行動」です。
結果のKPIを「財務KPI」、行動のKPIを「行動KPI」と私たちは呼んでいますが、この行動KPIを明確にすればするほど、行うべきタスクが分かりやすくなります。
KPIマネジメントの失敗例の1つは、「KPI管理はしているが、それを見ても何をしたらいいのか分からない」という状態のまま、行動につながらないことです。実際の行動につながらなければ結果は良くなりません。
この行動KPIを日々マネジメントしていくことで行動につながり、結果として、財務KPIも良くなっていくでしょう。
違う見方をすると、KPIツリーの右にいけばいくほど「先行指標」となっています。つまり、時の流れは右から左に流れていくのです。先ほどの図でいえば、「テレアポをして商談をして成約して売上につながる」という流れになっています。
結果はなかなかコントロールできないので、コントロールすべきは時系列の早い先行指標です。先行指標が悪くなれば(テレアポ数が減れば)、そのうち商談数が減って、成約数も減って、売上も減っていく可能性が高くなります。
ですので、重点的にコントロールすべきは先行指標です。先行指標を明確にするためにもKPIツリーを因数分解してくことが大切になります。
先ほどの図はKPIツリーの階層が3階層ですが、可能であれば10階層くらいまで因数分解してみると良いでしょう。
KPIツリーの作り方が最適ではない
KPIツリーは作り方によって「見える世界」が大きく異なります。
例えば、次のKPIツリーを見てください。
商談数を、
- テレアポから獲得した商談数
- Webから獲得した商談数
に因数分解しています。
そうすると、それより上位階層の「商談数」「成約率」「顧客数」「顧客単価」の全てが、「テレアポから獲得したもの」と「Webから獲得したもの」の合計になってしまいます。そのため、もし成約率が下がった場合、テレアポからの成約率が下がっているのか、Webからの成約率が下がっているのかが分かりません。
これを次のKPIツリーのように作り変えたとします。
先ほどのKPIツリーとは違って、顧客数を「テレアポから獲得した顧客数」と「Webから獲得した顧客数」に分けるだけでなく、それぞれで「成約率」と「商談数」に因数分解しています。
こうすれば、テレアポからの成約率が下がっているのか、Webからの成約率が下がっているのかが一目瞭然です。
- テレアポからの成約率が下がっているのか
- テレアポからの商談数が減っているのか
- Webからの成約率が下がっているのか
- Webからの商談数が減っているのか
仮に、顧客数が下がったとしても、どのKPIが原因なのかがはっきりするので、改善を行うべきところが分かりやすくなります。
KPIを細かく設定することで改善を行いやすくなる一方で、必要なデータが増えるというデメリットもあるので、注意しましょう。 「テレアポから獲得したものなのか」、「Webから獲得したものなのか」で、それぞれに分けてデータを取らなければいけません。
同じように、「売上」を次のように分けることもできます。
①売上をエンタープライズ売上とSMB売上に分ける
②売上を新規売上とアップセル売上・クロスセル売上に分ける
③売上を商品・サービス別に分ける
④顧客数を新規顧客とリピート顧客に分ける
売上だけでなく、顧客数も下記のように分けることも可能です。
どのように分解していくのが自社にとってベストなのか、メリットとデメリットのバランスを確認しながら、最適なKPIツリー設計を目指しましょう。
たくさんのKPIのなかで優劣をつけられていない
KPIが少なすぎてはいけませんが、逆に「たくさんのKPIを追いかけすぎて運用が大変」という失敗もあります。これは2つのパターンに区別することが可能です。
- KPIツリーを作っているパターン
- KPIツリーを作っていないパターン
それぞれのパターンについて、紹介していきます。
KPIツリーを作っているパターン
まず、1つ目の「KPIツリーを作っているパターン」から解説していきましょう。KPIツリーを細分化して作れば作るほど、当然、KPIの数が増えていきます。次のKPIツリーであればKPIの数は4つです。
一方、次のKPIツリーであればKPIの数は6つです。
当然、KPIの数が増えれば増えるほど、その数だけKPIのデータを取らないといけないのでデータ集約に時間と手間がかかります。また、もともと存在するデータなら取ってくるだけで良いですが、データがそもそもないのであれば、そのデータを取れるように業務フローを見直さなければいけません。
つまり、その分さらに運用コストが重くなるということです。最悪の場合、運用が大変すぎて、KPIマネジメントが形骸化してしまったり、運用されなくなったりします。
KPIツリーを作っていないパターン
次に、「KPIツリーを作っていないパターン」を考えてみましょう。KPIツリーを作ってはいないけれども、たくさんのKPIを洗い出して管理しているという状態です。このパターンでも、前者と同じように運用コストが重くなるという問題が発生します。
さらに、このパターンでは「KPIの数が多すぎて、どれを見たら良いのか分からない」という問題も発生してしまうのです。
次の図に沿って説明します。
このようにKPIツリーを作っていれば、たくさんKPIがあっても、どのKPIに問題があるのかを特定しやすくなります。例えば、以下のような例が考えられるでしょう。
仮に顧客数が減っている場合は、下記の2つが原因として考えられます。
- 成約率が下がっている
- 商談数が減っている
また、商談数が減っているのであれば、以下の2つが原因となるでしょう。
- アポ率が下がっているのか
- 商談数が減っているのか
KPIツリーを作っていない、つまり、運用しているKPI同士の関係性がはっきりしていないと、特定のKPIが悪い場合に原因の特定が難しくなります。こういった失敗をしないためには、KPIツリーの作成が必須です。その上で、以下のようなポイントに注意すると良いでしょう。
- クラウドシステムを活用して、たくさんのKPIデータを自動(半自動)取得することで、データ集約の時間と手間を省く
- たくさんのKPIの中から、その中でも特に重要なKPI(Scale Driver)を選んで、それらを中心に運用する
①は、社内にエンジニアがいれば、スプレッドシートを使ってKPIデータを自動(半自動)で取得するプログラムを組むことができるでしょう。しかし、それは本業に影響が出てしまう可能性もあるので、あまりおすすめできません。
②については、ちょっとアナログにはなりますが、「数字遊び」をすることでScale Driverを発見できます。
このKPIツリーであれば、6つのKPIの数値をいろいろ変動させてみて、KGIである売上にどれくらいインパクトがあるかを見るということです。
具体例を見ていきましょう。
(ア)アポ率を頑張ってあげたとすると、あと1%くらい上がる可能性がある。
(イ)テレアポ数は、今の人員であれば、あと1,000社は増やせそう。
という状況だとします。
- (ア)のようにアポ率が1%上がれば、テレアポ数が今のままだとすると商談数がどれくらい増えて、成約率が今のままだとすれば顧客数がどれくらい増えて、顧客単価が今のままだとすれば売上がどれだけ増えそうか、という数値
- (イ)のようにテレアポ数が1,000社増やせば、アポ率が今のままだとすると商談数がどれくらい増えて、成約率が今のままだとすれば顧客数がどれくらい増えて、顧客単価が今のままだとすれば売上がどれだけ増えそうか、という数値
の両者の数値を見比べて、数値の大きい方が売上に対するインパクトが大きいので、そのKPIをScale Driverに認定する、という要領です。
ちなみに、少しPRになってしまって恐縮ですが、①も②も、弊社のScale Cloudであれば解決できるので、お困りの方はご連絡ください。
部門ごと・事業ごとにバラバラで管理している
ビジネスの現場においては、営業・マーケティング・経営管理など、部署ごとにデータがバラバラになってしまっていて、部署ごとの部分最適な経営になってしまっているケースが多く見受けられます。
- 営業部は営業チームで、SFA(営業支援システム)やエクセルなどを使って営業のKPIを追っている。
- マーケティング部はマーケティング部で、MA(マーケティング支援システム)やGoogleAnalyticsやスプレッドシートなどを使ってマーケティングのKPIを追っている。
- 経営管理部は経営管理部で、財務会計システムや予算管理システムを使って会計データや予算データの管理を行っている。
次のKPIツリーで考えてみましょう。
今月の商談数の目標が100社で、その内訳として、テレアポからの商談が50社(担当は営業部)、Webからの商談が50社(担当はマーケティング部)だった場合で見ていきましょう。そして、Webからの商談の進捗が良くなくて、40社になりそうだったとします。
このとき、1つの解決策として、Webからの商談の未達成見込み10社を、テレアポからの商談を10社増やすことでカバーするという方法が挙げられます。つまり、マーケティング部の未達を営業部がリカバリーするということです。
しかし、部門ごとにバラバラにKPI管理をしていると、営業部は営業部で自部署の目標である50社だけを追っていて、マーケティング部はマーケティング部で未達の10社を何とかリカバリーしようと奮闘するでしょう。
その結果、頑張って疲弊した割には結局45社になってしまって目標未達成になってしまうのです。事業全体としても、今月の目標が未達成になってしまうでしょう。
こういった失敗は、部門横断的に全体で最適な目線でKPIマネジメントができていないことが原因です。
つまり、営業部は先ほどの図でいうと赤枠のKPI、マーケティング部は緑枠のKPIしか見てない(見えていない)のでしょう。
これは何も営業部とマーケティング部だけのことではなくて、以下のような場合でも起こりえます。
- 会社としてはA事業とB事業がある
- 事業拠点としてはC事業所とD事業所がある
- 営業部としてはEさんとFさんとGさんがいる
そもそも、企業に対する顧客の要求はクロス・ファンクショナル、つまり部門横断的なので、コストの問題でも品質や納期の問題でも、1つの機能や1つの部門だけで解決できるものではないはずです。
そこで、全社的な経営課題を解決するためには、事業部や役職に関わらず、ときには社外からも人材を集めてクロス・ファンクショナル(機能横断的)に事業運営していく必要があるでしょう。
そのためには、下記の3つのポイントが重要になります。
- 各部署のKPIを集めてKPIツリーとしてまとめる
- 各部署が自部署のKPIだけではなくKPIツリーを使って全体のKPIの状況を理解する
- 全体の目標を達成するために部門横断的にリカバリー策を考えて行動する
- マーケで新規リード獲得数が未達成になりそうなので、インサイドセールスで架電数を増やして、フィールドセールスへの商談供給量を確保しよう、そうすることで、全社的な売上目標をみんなで達成しよう。
- マーケティングでのいまのリード数の増加傾向からすれば、セールスでの商談数が増えていく見込みだけどいまの営業の生産性でまわせるのか?いや、まわせなさそうなので、早めに営業マンを採用をしていこう。
- エンジニアの稼働率がこんなに下がっているのにまた新規採用するのか?いや、一旦新規採用は止めておこう。
- Webチャネルより代理店チャネルの方が顧客獲得単価が下がっていく傾向にあるので代理店へのフォローを強化しよう。
といったように、組織の壁を超えて、組織横断的な意思決定やマネジメントができるようになります。
予算や財務と紐づいていない
多くの会社でKPIマネジメントをする主な目的は、「目標」を達成するためではないでしょうか。
チームの売上目標、事業部の予算、会社の事業計画といった「目標」を達成するためにKPIマネジメントをしているケースがほとんどでしょう。しかし、KPIマネジメントをしているケースの多くが、企業の目標としっかり結びついていません。
例えば、会社の予算で考えてみましょう。KPIマネジメントをしている会社の多くは、スプレッドシートやダッシュボード(グラフ)を使って管理しています。
一方で予算は、別のエクセルや、予算管理ソフト・会計ソフトなどを使って管理しています。このように、KPIと事業計画が別々に管理されていて一元管理されていません。
一元管理をするというのはどういうことなのか、以下のポイントを見ていきましょう。
- KPIを使って予算を立てる。
- KPIを使って予算実績比較を行う。
まずは①から見ていきます。
このKPIツリーのように、KPIごとに計画を立てることで、売上予算、費用予算、利益予算が出来上がるようにしましょう。
- テレアポ数の目標は1,000で、そのアポ率は1%を目標にしよう。
- そうすると商談数は10になるはずなので、成約率の目標を20%とすれば、顧客数は2になる。
- 顧客数が2で、顧客単価の目標を10にすれば、売上予算は20になる。
という具合です。
その上で、この「売上20」が本来目標とする予算に足りないのであれば、各KPIの目標値を再度見直しながら、売上20を達成できるような各KPIの目標値を決定します。もちろん逆でもOKです。
利益予算が決まってて、その内訳として売上予算と費用予算が決まってる。そして、それを達成するために必要な各KPIの目標値を、左から右に向かって順番に決めていくイメージです。
- 売上予算が20で、顧客単価は一旦今のまま据え置きしたとして10とすると、売上予算を達成するには顧客数は2必要になる。
- 顧客数2を獲得するためには、いまの成約率のアベレージが20%なので、商談数を10つくる必要がある。
- 商談数を10つくるためには、テレアポ数1,000とアポ率1%を目指そう。
いずれの方法でも大丈夫ですが、要は、各KPIの目標値と予算を結びつけることが重要となるのです。これができていれば②は簡単といえます。
仮に次のような結果になったとしましょう。
赤字が計画で、緑字が実績です。
利益の未達成が2となっている原因として、顧客数の実績は計画を上回っていますが、顧客単価の実績が大きく計画を下回っていることが挙げられます。
このように予算の未達成原因がはっきりと分かれば、改善策も具体的に考えやすくなります。
- 顧客単価がなぜこれほどまでに下がってしまったのか
- どのようにして顧客単価をあげていくのか
あるKPIの結果が良かったとしても油断しないようにしましょう。この顧客数をさらに深掘りしていくと、成約率の実績は計画通りですが、商談数の実績が大きく計画を上回っています。
さらに、商談数が良かった原因は、テレアポ数の実績が計画の2倍も達成していることです。一方、アポ率の実績は計画の50%しか達成していないということが分かります。
このようにあるKPIの結果が良かったとしても、さらに深掘りすれば(KPIツリーを右へ右へとたどっていけば)、良かったKPIと悪かったKPIがあって、良かったKPIが悪かったKPIを上回っているからこそいい結果につながった、といえるでしょう。
つまり、顧客数の実績が良かったからといってそれで終わらないことが大切です。KPIツリーに出てくるすべてのKPIについて、計画に対して実績がどうだったのかという分析をしていきましょう。
ここまで、予算とKPIの関係について書いてきましたが、次に財務とKPIの関係について解説します。
財務の定義はさまざまなので、ここでは「キャッシュ・フロー」としましょう。つまり、PLの予算だけではなく、CF(キャッシュ・フロー)までKPIと結びつけていきましょうということです。
次のKPIツリーを見てください。
先ほどのKPIツリーとほとんど同じなのですが、利益5がCF20に変わっています。
売上20が全て一括で当月入金される(そのような契約になっている)のに対して、費用15は当月末締め翌月末払い(そのような支払条件になっている)なので当月には支払いが発生しないため、
CF 20 = 売上入金 20 − 費用支払 0
となっています。
このように、PLの利益と実際のCFとの差を「資金のKPI」と呼んでます。資金のKPIについては、下記の記事に詳しく書いているのでぜひご覧になってください。
PLがどれだけ良かったとしてもCFが悪ければ会社は倒産します。そういう意味でも、この資金のKPIである「CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」はとても重要ですね。
予算実績比較で予算の達成・未達成をKPIを使って分析したように、CFが良くないならば、CCCがどうなっているのかを分析してみましょう。KPIと予算、さらにはCFまで結びつけて一元管理してみてください。
結果の分析ばかりで予測に活用できていない
KPIマネジメントでは、前月・前週のKPI実績の分析や振り返りが重要です。では、そういった「結果の分析」は何のためにしているのでしょうか。
過去を分析すること自体が目的になってしまっているケースもあるかもしれませんが、そうではなくて、「これから何をすべきなのか」を意思決定するために過去を分析しているのです。つまり、未来に向けた意思決定をするために過去を分析しているといえます。
未来に向けた意思決定をするためには、「今のままだったらどうなるのか」を知ることがとても大切です。KPIを使って過去を分析してその結果を報告するだけではなく、KPIを使って未来を予測して経営の意思決定に役立てることを考えてみましょう。
次のKPIツリーを見てください。
- テレアポしてから商談に至るまでの平均的なリードタイムが1ヶ月
- 商談してから成約に至るまでの平均的なリードタイムが1ヶ月
だったとします。さらに4月のテレアポ数が以下の数値だったとしましょう。
- 4月のテレアポ数が計画2,000に対して達成率75%の実績1,500
そうすると、テレアポから商談までのリードタイムが1ヶ月なので、5月の商談数は、アポ率が1%のままだとすると15(=1,500×1%)になりそうです。
そして、5月の商談数が15になってしまったとすると、商談から成約までのリードタイムが1ヶ月なので、6月の顧客数(成約数)は、成約率が20%のままだとすると3(=15×20%)になるでしょう。
その結果、6月の売上は計画40に対して30になってしまう可能性が高い、といったことが予測できます。
このようにKPIツリーとリードタイムというKPIを組み合わせれば、「今のままだったらどうなるのか」というシミュレーションが簡単にできるのです。とてもシンプルな例でお話ししましたが、KPIツリーとリードタイムのKPIの粒度をもっと細かくしていけば、さらにシミュレーションの精度が上がっていくでしょう。
このようにシミュレーションできれば、「6月の売上が、計画40に対して30になってしまう可能性が高い」ので、その対応として以下のような施策が考えられます。
- 5月の商談数を増やすために、5月のテレアポ数を増やしたりアポ率を高めたりしても、(アポから成約までのリードタイムが合計2ヶ月なので)7月の売上にはプラスになるが、6月の売上に対しては効果が薄い。
- 5月の商談数を増やすことではなく、すでにつくった5月の商談に対する成約率を高める必要がある。
では、成約率を何%まであげる必要があるのでしょうか。これも簡単に逆算で算出できます。
- 計画の売上40を達成するためには、顧客単価が10のままだとすると、顧客数(成約数)を今のシミュレーションの3から4にする必要がある。
- 商談数が15しかないので、顧客数4を達成するためには、成約率は27%(=4÷15)を上回る必要がある。
その上で、「成約率を20%から27%にするにはどうしたらいいか」という具体的施策をチームで話し合って、アクションしていくという流れです。
また、顧客単価を高める施策も考えられるでしょう。
- 5月の商談数が15で、成約率が20%のままだとすると、6月の顧客数は3になる可能性が高い。
- 計画の売上40を達成するためには、顧客数が3だとすると、顧客単価を14(=40÷3)以上にする必要がある。
その上で、「顧客単価を10から14にするにはどうしたらいいか」という具体的施策をチームで話し合ってアクションしていくという流れになります。
このように、KPIを活用して、
- 今のままだったらどうなりそうかを予測する
- その予測と計画との差分(特に足りないところ)をはっきりさせる
- その差分をどのようにして解決するかを考えてアクションする
という仕組みを組織のマネジメントにおいて定着させてみてはどうでしょうか。
週次で追えていない
KPIマネジメントをしている会社で、「月単位ではやっているけど週単位ではやっていない」という会社は少ないかもしれません。組織的なマネジメントを実現するためには、組織全体で「数字(データや指標など)」を活用する必要があります。
会社経営で活用される数字は、主に会計情報をはじめとした財務情報と、KPI情報をはじめとした非財務情報に大きく区分できます。
ここで、まず両者の長所と短所について整理してみましょう。なお、以下では財務情報の主たる情報である損益計算書(以下、「PL」という)と非財務情報であるKPIを比べながら整理してみます。
①プロセスマネジメントができる
PLは、1月の結果が出てくるのが2月になるため、その情報を把握する時点では、もう結果が出てしまっている結果論になってしまいます。もちろん、1月の月中の進捗管理といったプロセスマネジメントには使えません。
一方のKPIは、多くのものが日次または週次で数値が出てくるので、1月の結果が出る前に、結果に至る月中のプロセスマネジメントにも使えます。
②情報の粒度が細かい
例えば、PLの情報の中の売上高という勘定科目を見ても、顧客数や顧客単価、さらには成約率や商談数といった詳細な情報は把握できません。つまり、PLの情報は粒度が粗く、それだけでは詳細が分かりにくいのです。
言い方を変えれば、「売上実績が予算に対して90%だった」としても、PL情報だけではその原因が分かりにくいので対策を立てることができません。また、「営業利益率が今5%なのでもっとあげよう」といっても、何をすればいいのか不明瞭なため、結果として行動につながりにくいです。
一方のKPIは、情報の粒度が細かく、ビジネスの状況が詳細に把握できます。
「売上実績が予算に対して90%だった」というときでも、顧客数が足りなかったのか、それとも顧客単価が低かったのかといったように原因がすぐに分かるので、対策も立てやすいです。
さらに、顧客数が足りなかった原因も、商談数が足りなかったのか、成約率が低かったのかといったように、どんどん詳細にブレイクダウンして深堀りできるので、何をすればいいのかが明確になります。
③事業全体が見えづらい
PLは情報の粒度が粗いものの、事業全体の状況が一覧できます。
一方のKPIは、営業部は営業のKPI、マーケティング部はマーケティングのKPIといったように、部門ごとにバラバラに管理していてサイロ化しているので、事業全体を俯瞰してみようと思えば、各部門のKPIを集約して一覧できるようにしないといけない。
④信用情報になりにくい
デット・ファイナンスの与信判断に利用されるのは、PLをはじめとした財務情報です。いくらKPIが良くても、財務情報が悪ければファイナンスは難しいでしょう。つまり、デット・ファイナンスにおいてKPIは信用情報になりにくいのです。
ただし、エクイティ・ファイナンスにおいてはそうとも言い切れず、PLが悪くてもKPIが良ければファイナンスできる可能性が高くなります。このように、両者には一長一短がありますが、財務情報(PL)では月中の進捗管理ができず、また、その情報を読み取れる現場の社員がほとんどいません。
一方のKPIは、月中の進捗管理ができて(=週次でマネジメントができる)、その情報を誰でも読み取ることができ、進捗が悪い原因が分かりやすいので、具体的な行動につなげやすいのです。
つまり、せっかくKPIマネジメントをやるからには、週単位でやるからこそ、そのメリットがしっかりと享受できて、月次の目標達成に向けて効果がある、ということになります。逆にいうと、PLベースでのマネジメントでは、週単位でやることは実質的にかなりハードルが高い(毎週、週次決算しないといけない)です。
ではどのようにして週単位でKPIマネジメントをすれば良いのでしょうか。次の図をもとに考えてみましょう。
弊社のScale Cloudの画面の一部ですが、先ほどまでのKPIツリーが縦に並んでいます。ここでは、4月の第1週目の週次マネジメントを例にしています。
- まず、KPIごとに第1週目の実績データを集約します。
- 次に、KPIごとに4月末の着地見込を入力します。
- 着地見込と計画(参考までに前年実績)を比べて差分を明確にします。
- 未達成になりそうなKPIについて改善施策を考えて行動します。
シンプルにいうと、このようなサイクルを週単位で回していくイメージです。
チームマネジメントにおいても同様になります。例えば、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんがいる営業チームを考えてみましょう。
- まず、各人ごとに、KPIごとに第1週目の実績データを集約します。
- 次に、各人ごとに、KPIごとに4月末の着地見込を入力します。
- 各人ごとに、着地見込と計画(参考までに前年実績)を比べて差分を明確にします。
- 各人ごとに、未達成になりそうなKPIについて改善施策を考えて行動します。
一方、営業チームのリーダーは、チーム全体の数字も見なければいけません。
- チーム全体での実績データを確認します。
- チーム全体での着地見込データを確認します。
- チーム全体の着地見込と計画(参考までに前年実績)を比べて差分を明確にします。
- その差分(特に未達成になりそうなKPIと、どれくらい未達成になりそうかという数値)をどうやってうめるかをチーム全体の全体最適な目線で考えます。
- 必要に応じて、チームメンバー各人の目標値を見直して、再度、改善施策を考えなおします。
このように、週単位で組織・チームのPDCAをスピーディーに回していくことで、目標達成する仕組みを作り、習慣化していきましょう。
盲目的になってしまっている
近年、サブスクリプション型のサービスがどんどん増えています。その要因の1つとして、追っていくべきKPIがはっきりしているので予算実績管理がしやすく、事業の成長性が投資家サイドから見ても分かりやすいという点が挙げられます。
また、売上が積み上がっていくストック型ビジネスは、一度成約してしまえば解約するまでお金が継続的に入ってくるのも魅力的です。
例えば、スタートアップの世界では、「CACとLTVというKPIが推奨される形で成立する」ことが重要で、目安としては「LTV ÷ CAC」で計算されるユニットエコノミクスが3倍以上あれば良いとされています。
しかし、CACとLTVによってビジネスが成立しているかどうかを推し量る、という考え方はスタートアップの世界でこそメジャーですが、金融機関からするとそこまで重要ではない情報です。
もう少しファイナンス論的にいえば、資本コストの高い世界(エクイティ・ファイナンス)で注目されている指標のみを盲目的に信じてしまっていないか、ということです。
KPIマネジメントはまだまだここ数年で急に流行し始めたものですが、PLやBSといった財務諸表は何百年という歴史のあるもので、エクイティ・ファイナンスの世界に限らない世の中全般的にはまだまだ重要視されています。
サブスクリプション型のビジネスは、キャッシュインとキャッシュアウトのタイミングが読みやすいため、顧客の課題やニーズに合わせてサービスやプロダクトをカスタマイズして、アップセルとして販売していくことで早期に黒字転換を目指すことも可能です。
また、クロスセルで単価の高いものを販売し、一旦キャッシュ・フローをプラスにしていくという戦略も取れるでしょう。スタートアップの世界の中で重要視されている指標ばかりに注目して、盲目的に追いかけてしまうことは、ビジネスの本質からズレていく可能性があって危険です。
たとえば、ファイナンス的な目線で考えてみましょう。
スタートアップの世界でユニットエコノミクス(及びその前提としてのCACやLTV)が語られる場面では、「最初は赤字だけどその後は黒字になる」という典型的なJカーブを描くことを前提としすぎている感じがします。
ファイナンス目線で考えれば、基本的には負債コストよりも株主資本コストの方が高いことが多いため、必ずしもエクイティ・ファイナンスによる資金調達が絶対の正義だとはいえません。
早期に黒字を出してデット・ファイナンスによる資金調達で事業を伸ばし、どこかのタイミングでエクイティ・ファイナンスでの資金調達をして事業を一気に加速させる、というパターンもありえると思いますし、そういった選択肢を残しておく方が合理的ともいえます。
ここでは、ユニットエコノミクス、LTV、CACといったKPIを例に書きましたが、その他のKPIでも同様です。
例えば、SaaSビジネスでは一般的に、粗利率は70%程度になることが多いといわれているとします。それを、誰かから聞いた、またはネットで調べていたら出てきたとしましょう。
そこで、「SaaSビジネスを展開している当社の粗利率は、今のところ60%程度なので10%ほど改善しないといけない」と考えてしまうのは早計です。
先ほどの「粗利率70%」のロジック(なぜそれが一般的、または標準値と言えるのか)をしっかり理解した上で比べるのは良いとしても、このような「●●のKPIは○%くらいが標準値だよ」という内容を盲目的に信じるべきではないかもしれません。
仮に、原価の構成が以下の通りだったとします。
- カスタマーサポートまたはカスタマーサクセスなどの契約後のサポート人員の人件費
- サーバー代を含むシステム維持費用
そこで、「粗利率を10%下げる必要がある」、または「そうしないと投資家から評価されない(エクイティ・ファイナンスによる資金調達が難しくなる)」と考えて、主なコストであるサポート人員の人員削減(または必要以上に抑えた)をしたとします。
サポート人員の人件費が多いことが前提に成り立つビジネスモデルであれば、労働集約的なビジネスモデルで事業拡大しにくいという面があって、投資家から評価されにくいのかもしれません。
しかし、そうすることでユーザーに対するサービスクオリティが落ちてしまっては、ビジネスの本質からすれば本末転倒になってしまうでしょう。
このように、KPIの標準値とされるものを盲目的に追い求めてしまうと、目的が主眼となってビジネスとしては本末転倒になってしまう可能性があります。
標準値とされるものをベンチマークとするのであれば、
- なぜその標準値が良いとされているのか(そのロジック)
- 自社に当てはめたときにいまその標準値をベンチマークとして追いかけるべきなのか
- 将来的にその標準値を目指すとして、どのようなスピードでそこを目指していくのか
といったことを慎重に見極めましょう。
詰めるけど責めない
KPIマネジメントを行う際には、チームとしてのルールを明確にしましょう。
- チーム全体の目標を達成するためには、未達成のKPIや進捗が悪いKPIについては明らかにした上でその原因を詰めて考え、その上で最善のアクションプランを考えて行動していく必要がある。
- 原因は詰めるものの、その担当者を責めるわけでは決してない。
ということを、ルールという形でしっかりと共通の認識してください。
また、チームメンバーが、KPIマネジメントに対してネガティブな感情(面倒くさい、また責められる、やっても意味がない、何でやる必要があるのかわからない等)を持ってしまうと、建設的な議論ができないどころか、
- そもそも正しいKPIデータを報告(入力)しない
- 報告(入力)期限を守らない
ということになりがちです。
そうなると、マネジメントできるものもできなくなってしまいます。これは、チームメンバーがそういったネガティブな感情を持っていなくても起こりかねません。それはつまり、「データの入力が正確ではない(または遅い)」という問題です。
これは、どんなシステムを使っていても起こる可能性がありますし、システムのUI(ユーザーインターフェース)がどれだけ優れていて扱いやすいものであったとしても起こりえます。
対策方法としては、「正しく期限までにデータを入力し、それをマネジメントにも活かす」のを組織としての常識として習慣化することです。しかし、習慣化するのは大変なことですし、時間がかかります。経営者自らがそこにコミットし、全員でその重要性や目的などの共通認識を持ち、1日でも早く取り掛かりましょう。
KPIを単なる数値ではなく、「意味や意図を持った数値」としてみんなで共通認識を持つことができれば、組織やチームを同じ方向に向かわせやすくなります。
KPIマネジメントを活用して、組織やチームのアクションをつないでいくためには、チーム全員が、1つ1つのKPIがどのようなメカニズム・関係性で連鎖していくのかを理解している必要があるでしょう。
これには、KPIツリーを作るのが最適です。
KPIツリーを作ることによって、
- 自分たちが関わっているビジネスの全体像がどのようになっていて、
- その中ではどういったKPIが重要になっていて、
- それぞれのKPIの関係性がどうなっているのか、
- その中で自分が日々追っているKPIはどういった位置付けにあるのか
を理解しやすくなります。
このKPIツリーでいえば、
- 利益は当然、売上から費用を引いて計算できる。
- 売上は、顧客単価と顧客数で成り立っているから、売上をあげようと思えばそのどちらかをあげる必要がある。
- 顧客単価をコントロールするのはいまのところ難しいので、顧客数をあげていく必要がある。
- 顧客数は、成約率と商談数で成り立っているから、顧客数を増やすには、そのどちらか(もしくはどちらも)をあげる必要がある。
- 商談数は、アポ率とテレアポ数で成り立っているから、商談数を増やすには、そのどちらか(もしくはどちらも)をあげる必要がある。
という具合に理解しやすくなります。さらに、理解しやすくなるだけでなく、全員が同じ認識を持ちやすくなるというのがとても重要です。このように、KPIのメカニズムや関係性を理解したら、今度は、「ストーリー」の共通認識を持ちましょう。
- 利益の目標は25。
- そのためには、売上は40獲得して、費用は15に抑える必要がある。
- 売上40を達成するためには、顧客単価はいまのところ10なので、顧客数を4にする必要がある。
- 顧客数4を達成するためには、一旦成約率を直近平均の20%とすれば、商談数を20作らないといけない。
- 商談数を20作るためには、当面、アポ率1%をあげるのも難しそうなので、まずはテレアポ数2,000を達成しよう。
というように、「KPIの上に数値でストーリーが乗っている」状態を作りましょう。ただ単に「KPIや数字が並んでいる」状態よりも、圧倒的に理解しやすくなります。チームで仕事をする上では、この「共通認識」が重要です。
まとめ
KPIマネジメントは、企業の生産性を高める必要がある、経営環境の変化に対応しなければいけないという、現代企業の悩みに対応するための方法として注目されています。
KPIマネジメントを行う際には、KPIツリーの作成が必須といえるでしょう。KPIを設定するだけでは、KPIを行うフローが見えにくいですし、失敗した場合の原因の把握をしにくいです。KPIツリーの作成方法を詳しく知りたいという方は、下記の資料をご参照ください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。