経営と現場のギャップを埋めるKPIとは?
2021.06.07
経営と現場のギャップ
日本の企業経営において、KPIが急速に広がりつつあります。
しかし、なかなかKPI運用が機能しなくて、課題感を持っている経営者の方がたくさんいらっしゃいます。
事業計画や予算といった事業目標を達成するためにKPIマネジメントを始めた会社が多いです。
事業目標を達成するためのKPIマネジメントとしては、
- KPIの設計(どういったKPIをマネジメントしていくべきか)
- KPIの運用設計(KPIデータをどこからどのようにどのタイミングで収集するのか)
- KPIマネジメントの定着(KPIデータをもとにどのように分析して行動に活かすのか)
- それらの継続的なアップデート(以上のことを常にブラッシュアップしづるける仕組み)
といったことが重要だと思います。
しかし、KPIを設定したものの、その後のPDCAがうまくいっていないことが多くみられます。
その原因はいろいろと考えられますが、今回は、
- 経営と現場のギャップ
について考えてみたいと思います。
そもそも、経営層が見たいKPIと、現場のオペレーションを回すためのKPIにギャップがあります。
経営層は「事業目標の達成度や進捗状況を知りたい」と思っているのに対して、現場は「日々自分たちがやっていることが業績にどうつながっているのかを知りたい」と思っていることが多いです。
また、経営層から「このKPIの数値を知りたい」とリクエストがあっても、日々、現場で追っているKPIそのものではなく、バラバラで管理している複数のKPIデータを集約して加工しないと、リクエストに答えられないケースが多く、そうなると、リクエストがあってから実際に報告されるまでにかなりの時間がかかってしまう(または、経営層の欲しいタイミングと比べると遅い)ということになりかねません。
最初は経営層と現場が合意して共通認識を持って始めたけれども、運用していくうちに認識が少しずつズレていってしまうことも多いでしょう。
そういった経営層と現場との”溝”が数多く発生しがちです。
KPIは本来、経営層と現場をつなぐ「コミュニケーションツール」「共通言語」になるべきものですし、そうなれるはずなのですが、現実はそうはなってはいないケースが多く見られます。
KPIの設計、KPIマネジメントの運用設計や仕組みも、継続的に改善し、進化させていかなければなりません。
一度作った仕組みを定着させるだけでなく、さまざまな変化に対応しつながら、バージョンアップし続けることは、思いのほか大変です。
慣れてしまえばそうでもないのですが、そこまでに諦めてしまうケースも少なくありません。
そうなると、KPIマネジメントという仕事は、本来は終わりのない仕事なのですが、一過性のプロジェクトで終わってしまう会社も多くあります。
現場を巻き込んだKPIマネジメント
冒頭でも書きましたが、事業計画や予算といった事業目標を達成するためにKPIマネジメントを始めた会社が多いと思います。
では、そもそも、その事業計画は定量的な数値目標を設定していますでしょうか?
または、その数値目標は、現場の方々にも理解できる内容になってしまっていないでしょうか?
KPIマネジメントを始めた拠り所となる目標が、しっかりと現場にもわかりやすいように定量化されていないケースが多いです。
つまり、定量的な数値目標を設定できていない組織は少なくありませし、できていたとしても現場には理解されていない組織も実は多く、ぼんやりとした目標のまま進んでしまうケースが多くみられます。
ですので、まずは、KPIマネジメントをする目的として、どういった事業目標を達成したいのかを、数値ではっきりとわかりやすく現場に示してあげることが重要です。
繰り返しになりますが、ただ数値目標を示すだけでなく、なぜその数値目標なのかの納得性が必要です。
目標を定量化するのはとてもエネルギーを要する仕事です。
管理部が旗振り役になっても、実務的に現場の抵抗が強くて、なかなかスムーズに進まないことも多いです。
それを突破するためには、経営層の強力な後押しが必須です。
そのプロセスにおいて、数字を使って突き詰めて考えることは、全社的にKPIマネジメントの重要性に気づいてもらえるだけでなく、全社的にKPIの目標達成に向けたシナリオやロードマップの共通認識にもつながります。
現場が“やらされ仕事”になってしまっては困るので、経営層と現場で、KPIの意味を共有し、全社的に理解してもらわなければなりません。
つまり、KPIマネジメントを成功させるには、現場を巻き込んで、現場の社員が、日々自分たちがやっていることとKPIとのつながりを意識できるかどうかが重要です。
2種類のKPIを使い分ける
経営層と現場のギャップが生まれやすい原因を、KPIの種類という視点から考えてみましょう。
KPIは「成果KPI(または結果KPI)」と「プロセスKPI(または行動KPI)」の2つに分けられます。
成果KPI(または結果KPI)の例としては次のようなKPIです。
- 売上
- 新規契約数
- 契約単価
- 成約率
- 解約数
- 解約率
ビジネス活動の結果である成果そのものですね。
一方のプロセスKPI(または行動KPI)は次のようなKPIです。
- 商談数
- 商談化率
- リード数
- テレアポ数
- ユニークユーザー数
- CVR
成果に至るまでのプロセスにある活動(行動)ですね。
経営層が見たいのは主に成果KPI(結果KPI)で、現場が日々追っているのは主にプロセスKPI(行動KPI)なので、そもそもここにギャップがあります。
経営層は、事業目標の達成度や進捗状況が、業績としてどう表れてくるかを知りたいので、成果KPI(結果KPI)中心になります。
しかし、成果を生み出すには、それに至るプロセスが重要です。
そこで、成果KPIに至るビジネスプロセスをKPIで表したものがプロセスKPIです。
これは、成果の達成に向けての進捗状況を測るものが、現場で日々管理しているプロセスKPIです。
成果KPI(結果KPI)とプロセスKPI(行動KPI)という2種類のKPIがあること、そして、その2種類を明確に区別して、両者のつながりを体系的、有機的に可視化してマネジメントしていくこと。
これが、経営と現場のギャップをうめるためには必要です。
システム面の問題をクリアする
KPIマネジメントがうまく運用できない原因としては、システム的な問題もあるでしょう。
営業部、マーケティング部、開発部、管理部など、部門ごとに部分最適でシステムが構築されていることが多く、そうなると、バラバラで管理してしまっている各部門のシステム群から、必要なKPIデータを取り出して集約・集計するのに手間がかかってしまっているケースが多いです。
ですので、はじめに、会社全体で事業目標の進捗マネジメントに必要なKPIデータの粒度や更新頻度を決めて、それに基づいてデータ収集の仕組みが設計・構築しておくべきでしょう。
弊社ではこれまで数多く、KPIの設計・運用・定着の支援をしてきました。
しかし、KPIマネジメントの運用・定着を支える仕組みとして、システムをうまく活用できていない会社の方が多かったです。
KPIマネジメントにおけるKPIの目標・実績管理においては、必要なKPIデータを、各部門のシステム群から効率良くデータ収集し、統合的に管理、可視化できるシステム基盤が必要です。
しかし、それを実現できるリーズナブルで最適なシステムがなく、複雑なスクラッチシステムや、メンテナンスが煩雑なスプレッドシート・Excelに依存してしまっている会社がほとんどです。
ここで、少しだけ弊社のPRになってしまいますが、弊社のKPIマネジメントシステム「Scale Cloud」は、経営から現場まで、会社全体の状況を一気通貫で把握することができるので、経営層と現場が有機的につながったシステム基盤を提供できると考えています。
まずは、事業目標を達成するためのKGIと、それを達成するために必要なプロセスの中間目標であるKPIを決めます。
その際、KPIごとのデータソースとデータ取得方法や頻度も設定し、さらに、KPIごとの責任者、報告サイクルや報告方法などの運用設計も行います。
次に、KGIの数値目標を決め、KPIごとの計画と実績をマネジメントしていきます。
これによって、KGIと、そこに至るプロセスKPIが可視化され、KGIを達成するためには、その途中プロセスのどのKPIに課題があるのかが一目瞭然でわかるようになります。
また、プロセスKPIは目標を達成しているのに、KGIが未達成だった場合は、そもそものKPI設計に間違いがないかどうかなどを掘り下げて確認することができます。
日常的にKPIの達成・進捗状況を管理する機能だけでなく、毎月、KPIマネジメントそのものが妥当であったかをどうかを振り返ってチェックする機能も備えているので、KPIの設計運用・定着の継続的な改善・進化を意識したシステムになっています。
ちなみに、こうした管理をスプレッドシートやExcelで行うのはとても手間になりがちですし、特定の人しかさわれず属人化していきます。
たとえば、計画を、標準パターン・強気パターン・弱気パターンの3種類作ろうと思えば、シートが3つできてしまいますし、各パターンと実績を比較しようと思えば、各シートに実績値を入力する、または計算式を組んだりしてデータ比較できるようにしなければなりません。
また、実績との比較だけでなく、前年同期と比較したい場合も、前年ファイルから該当するシートを探し出し、そのデータを抜き出してきて当期のシートにコピーするなどした上で、比較の計算式を組んだりしなければなりません。
さらに、データの持ち方や見せ方、見たい数字が変わる度に、属人化した膨大な量のシートの改修作業が必要になってきます。
そういった煩雑なメンテナンス作業がScale Cloudの活用により劇的に効率化されますし、属人化を脱却した仕組みづくりが可能になります。
それだけではなく、集めたデータの自動分析や、異常値の自動アラート、ダッシュボードでのグラフによる可視化なども可能になるので、作業の効率化だけでなく、今まで人力ではなかなか得られなかったインサイトも得やすくなります。
しかし、ただシステムを提供するだけではなかなかKPIの設計・運用・定着はうまくいきません。
弊社では、経営と現場をKPIでつなぐKPIフレームワークがあり、KPIマネジメントのノウハウとシステムをワンストップで提供することができるので、KPIマネジメントの効果を最大限に発揮することができると考えています。
これからますます広がっていくKPIマネジメント。
経営と現場を有機的につなぎ、本当に有効なデータドリブン経営を推進し確立していくために、これを機にKPIの仕組みを見直してみてはいかがでしょうか。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。