SaaS企業にとって大切なARPAとは|ARPUやARPPU との違いを解説
2022.01.10
近年では、SaaSビジネスが注目されており、さまざまなSaaS企業が独自のサービスを開発・提供しています。そんなSaaS企業にとって大切とされているのが、ARPAという指標です。
この記事では、ARPAとは何か、注目されている理由や計算方法などと合わせて解説していきます。ARPAを上げるための方法なども紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
SaaS業界の重要なKPIである「ARPA」とは
「ARPA」はSaaS業界で重要とされていますが、そもそもどのような意味なのでしょうか。ここでは、ARPAの意味やARPU/ARPPUとの違いを解説していきます。
ARPA
ARPAは、「Average Revenue Per User」を略した言葉で、1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標を指します。「ARPA」の指標を分析していけば、ビジネスの収益性の可視化が可能です。
サブスクリプションのように一定期間サービスを提供しているビジネスモデルでは、1つのアカウントに対してどれだけの売上が出せているのかを把握することで、収益性の確保が大きく変わってきます。収益の安定や課題を見つけるために、SaaS企業はARPAをしっかり確認しておきましょう。
ARPU
RPAと似たような言葉でARPUといわれる指標もあります。APRUは「Average Revenue Per User」を略した言葉で、1ユーザーあたりの平均売上金額を示す指標です。最近では、スマホゲームなどのゲーム事業が、企業の実績を評価する指標として用いているケースも多い傾向です。
ARPAとARPUの違い
ARPUはARPAと違って、1つのアカウントではなく、1ユーザーあたりの平均売上を示しているという点で異なります。
具体的にはどのような違いがあるのか、スマホを例に解説していきましょう。最近では1人で複数のスマホ端末を使用する人も多いですが、その場合はARPAとARPUの値が変わってきます。
例えば、1人で3台の端末を使用している人の場合、使っている人が1人なので、ARPAなら1と数えられます。しかし、3つの端末(3つのアカウント)で使用されていることから、ARPUでは3としてカウントされるのです。計算方法や数値が違えば導き出せる数値も変わってくるので、これらの値には注意しましょう。
ARPPU
ARPPUは「Average Revenue Per Paid User」を略した言葉で、課金ユーザーあたりの平均売上を示す指標をいいます「ARPPU」は課金したユーザーのみを対象としているので、確実な売上金額を出すことが可能です。
ARPAとARPPUの違い
ARPAとARPPUの大きな違いは、計算する対象です。ARPAは全てのユーザーを換算しますが、ARPPUは課金ユーザーのみが対象となります。アカウント数が100万のサービスの場合、ARPAはそのまま100万という数字に注目します。しかし、ARPPUはその中の課金ユーザーの数に注目しなければいけません。仮に50万人が課金ユーザーだった場合は、ARPPUは50万で換算します。
ARPAがKPIとして注目されている理由
売上を求める指標はさまざまですが、その中でも大きく注目されているのは「ARPA」です。BtoBのクラウド環境でソフトウェアを提供する場合、スマホやタブレットなど複数の端末で利用するユーザーが増加してきていることから、端末を基準にして売上計算を図る「ARPU」だと評価するのが難しいからです。
しかし、1アカウントの平均売上を表すARPAはより正確な数値を把握できるので、SaaS企業でKPIの指標として注目されています。
ARPAの計算方法
ARPAをしっかり計算するためには、計算式を確認して正確な数値を測ることが大切です。
APRAの計算方法は簡単で、「売上 ÷ アカウント数」で求められます。例えば、売上が6,000万円でアカウント数が5万なら「ARPA」は1,200円です。
ちなみに、ARPUは「売上 ÷ ユーザー数」、ARPPUは「売上 ÷ 課金ユーザー数」で求められます。それぞれの計算式を確認して数値を求めましょう。
ARPAを上げるための方法
ARPAの計算方法について理解したところで、ARPAを上げるための方法について解説していきます。ARPAを上げるための方法は、主に以下の3つです。
- 購入頻度をアップさせる
- アップセル・クロスセルの実現
- 顧客ロイヤリティの向上
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
購入頻度をアップさせる
「ARPA」の数値を高めるためには、購入頻度をアップさせることが大事です。購入頻度を向上させる方法としては、顧客に再購入をうながすサービスの提供などが挙げられるでしょう。
顧客に再購入をうながすサービスといってもその方法はさまざまですが、例としては提供しているサービスに特典をつけるなどです。
また、サービスや商品のアピールのためにイベントを開催するなども有効といえるでしょう。企業が提供しているサービスの魅力が分かるようにアプローチすることで、興味や関心のある顧客の購入意欲の向上につながり、再購入の頻度が上がる可能性があります。
アプローチは1回のみでは見落とされてしまう可能性もあるため、複数回行うのが効果的です。購入頻度のアプローチ方法は、ユーザーにとって魅力的なものにしましょう。
アップセル・クロスセルの実現
アップセルとは、すでに購入しているものよりも高いランクの消費やサービスの購入をうながすことです。アップセルによって1人あたりの購入単価が上がれば、平均売上を伸ばすことができます。顧客に対して、すでに契約しているプランよりも高いプランの利点を詳しく紹介して乗り換えてもらうなどの方法があるでしょう。
一方でクロスセルは、購入しようとしている商品やサービスに加えて、さらに関連商品や関連サービスの購入をうながすことです。関連商品やサービスを購入してもらうことによって売上の向上を目指します。クロスセルの場合は、顧客が利用しているサービスをより便利なものにする有料オプションをお知らせして追加購入してもらうなどの方法が挙げられます。
顧客ロイヤリティの向上
顧客ロイヤリティとは、商品やサービスに対する顧客の愛着です。顧客が商品やサービスに愛着を持つほど、購入頻度や単価が高くなると考えられています。顧客ロイヤリティを高めるためには、購入後のサポートを充実させたり、口コミなどを確認してサービスや商品の課題を改善させたりするといった方法が有効でしょう。
顧客の期待以上の価値を提供することにより愛着を生まれやすくさせることができるので、ARPA向上のために、顧客ロイヤリティの向上も目指してみてください。
顧客ロイヤリティの指標「NPS」
顧客ロイヤリティを評価するための指標として、「NPS」が使用されます。これは「ネットプロモータースコア」と呼ばれるもので、顧客が商品やサービスに対して抱えている愛着を知るための指標です。
「NPS」の指標を算出するためには、顧客にアンケートをとって0〜10の段階で評価してもらいます。例えば、「この企業のサービスや商品を誰かにおすすめしたいですか?」といった内容で質問したとします。その質問に対して、0(まったく思わない)〜10(非常にそう思う)で答えてもらうことで、NPSが測れるのです
0〜6点が「批判者」7、8点は「中立者」9、10点は「推奨者」というように分類して、「推奨者の割合 − 批判者の割合」で計算することで算出できます。
例えば「推奨者」が20人で「批判者」が40人だった場合、計算式は「20 − 40 = −20」です。このように、明確な数値で測りながらNPSを計測して、顧客ロイヤリティの向上を目指していくと、ARPAの向上にもつながります。
ARPAをKPIとして設定するときのポイント
ARPAをKPIとして設定するなら「NPS」の向上、つまり、顧客のロイヤリティ向上を目指すことが大事です。顧客ロイヤリティを向上させるためには、顧客との良い関係性を構築して維持する必要があります。
顧客との関係性を構築・維持する方法としては、メールなどを活用したコミュニケーションなどが有効です。顧客に対して丁寧に対応していけば、顧客ロイヤリティにも良い影響が得られるでしょう。顧客にサービスを紹介する、顧客からの質問に対する返信スピードの向上、承認プロセスの簡略化など、細かい内容でも良いので、まずはできることから始めてみましょう。
しかし、1人ができる業務には限りがあります。KPIの設定や管理、こういった施策の実行など、全てをこなしていこうとすると、通常の業務に支障が出てしまうでしょう。通常の業務に影響が出ないようにKPIの設定や管理を行うには、ツールを活用して効率的に作業を進めるのがおすすめです。KPIの設定におすすめのツールについては、次の見出しで見ていきましょう。
KPIを管理するならツールの活用がおすすめ
KPIを効率的に管理するなら、ツールの利用がおすすめです。しかし、KPIを管理するツールにはさまざまな種類があります。ここではKPIを管理するのにおすすめのツールを3つ紹介していくので、見ていきましょう。
- Excel・スプレッドシート
- BIツール
- SFA/CRM
それぞれのツールの特徴を解説していきます。
Excel・スプレッドシート
KPIの管理に利用されるツールの1つ目は、Excelやスプレッドシートです。Excelやスプレッドシートはビジネスで使用されることが多いツールで、機能も複雑ではないのでKPIの管理にも導入しやすいというメリットがあります。
ExcelやスプレッドシートでKPI管理を行う際は、進捗率の計算や数式を用いた計算を短時間で行うことが可能です。しかし、データをまとめるのに時間がかかってしまうなどのデメリットもあるので、デメリットも考慮した上で選ぶようにしましょう。
BIツール
BIツールは、KPIに関するデータなどを入力することで結果を可視化できて、分析しやすくなるという効果が期待できます。
また、BIツールによっては進歩状況をリアルタイムで確認できるだけでなく、Excelなどのデータとの連携も行えるので、さまざまなデータを一元化して管理することが可能です。他の指標と合わせて管理できるため、KPIの詳細をしっかり確認しながら業務を進められるでしょう。
SFA/CRM
「SFM」は営業支援ツール、「CRM」は顧客関係管理ツールのことです。マーケティングに活用されるツールですが、KPIの管理にも利用できます。
「SFM」を利用すれば、顧客情報や営業の案件担当、また行動管理の分析が可能です。「CRM」はリスト化した顧客へのメール配信機能や問い合わせの管理を行えます。すでにSFA/CRMツールを導入しているマーケティング業界や営業業界の方は、そのままKPIの管理にも導入すると使いやすいでしょう。
KPIマネジメントツールならScale Cloud
KPIマネジメントツールをお探しの方は、ぜひScale Cloudをご検討ください。ここでは、Scale Cloudの特徴について解説していきます。
データの集約・統合が簡単
Scale Cloudは、バラバラに管理されているKPIデータや財務データを自動で集約して、事業に必要な情報を一元管理できます。さらに、情報がリアルタイムで更新されるので部署を超えた共有もしやすく、常に最新のデータを参考にしながらKPIを管理することが可能です。
KPIツリーで可視化できる
Scale Cloudでは、事業全体をKPIツリーで可視化できます。各部署のメンバーのKPIが業績目標とどのようにつながっているのか、どの部署にKPIの問題があるのか、フォローできる部署はどこかなどを瞬時に把握できるでしょう。KPIの遅れなどをすぐに把握できれば、原因の把握やリカバリーもしやすく、大きな問題になる前に対処できます。
直感操作で企業に導入しやすい
複雑な操作がないため、BIツールのように高度なスキルが求められないというのも、Scale Cloudの特徴です。ITの専門知識がなくても誰もが簡単に利用できます。
また、Excelやスプレッドシートのようにメンテナンスによる悩みがないので、いつでも利用可能です。業務を滞りなく行えるという点も大きなメリットといえるでしょう。
まとめ
SaaS企業にとって重要なKPIとされるARPAは、1アカウントあたりの平均売上金額を示す指標です。ソフトウェアを提供するSaaS企業では、複数の端末を利用するユーザーに対しても正確な数値を測れるARPAが注目されています。
ARPAは「売上 ÷ アカウント数」で計算ができるので、定期的に数値を確認しながらARPA向上のための対策を行っていくと良いでしょう。
ARPAをKPIとして設定・管理したいという方は、ぜひScale Cloudをご検討ください。通常の業務に加えてKPIの管理を行うのは大変ですが、Scale Cloudならデータの集約や統合・共有も簡単で、スムーズに業務を進められます。
Scale Cloudに関する詳しい情報を知りたいという方は、以下から資料をご参照ください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。