KPI分析の効果的な方法は?分析のポイントやツールを紹介
2021.10.24
ビジネスにおける目標達成の手法として、近年注目を集めているのがKPI分析です。KPI分析の方法を知っていても、より効果的に行うためにはどうすれば良いのかと悩んでいる方も多いでしょう。
この記事はKPIの効果的な分析方法が知りたい人に向けて、KPI分析の方法や分析のポイント、おすすめのツールを紹介していきます。
KPI分析が必要な理由
そもそも、KPI分析はなぜ必要なのでしょうか。例えば、店舗や営業部署などで売上目標を設定した場合、何をもって目標を達成したのかは基準がないと分かりにくいです。そんなときに、KPIという指標を基準にすることで、その達成度合いを可視化できるというメリットがあります。
KPIが設定されていない場合、期限が近付くまで達成できるのかが分からない、達成が難しい場合はどの業務にどれくらい遅れがあるかの把握に時間がかかる、途中で業務の方向性が目標とズレていてもリカバリーできないなど、ビジネスを行っていく上での不安点が多くなってしまうでしょう。
目標の達成度合いや目的のために必要なタスクが明確になるというのが、KPI分析が必要とされる理由です。また、タスクが分かりやすくなれば業務に無駄がなくなり、スムーズにビジネスを進めやすいという魅力もあります。
そもそもKPIとは?
KPIは「Key Performance Indicator」の略語です。日本語では「重要業績評価指標」あるいは「重要達成度指標」などと呼ばれており、最近ではWebマーケティング活動をはじめ、営業や製造業、小売業などさまざまな場面で取り入れられています。
分かりやすくいうと、目標達成に至るまでの【プロセス=過程】を数値化して達成度を測ることです。
また、KPIと似た言葉でKGIというものがあります。「Key Goal Indicator」の略語であるKGIは、日本語では「重要目標達成指標」と訳され、企業、組織、事業などで設定した目標を達成しているかを計測するための指標です。売上高、利益率、成約件数など客観的に数値化できる指標が該当します。
KPIは「過程」を見る指標なのに対して、KGIが「結果」を見る指標と考えると良いでしょう。
KPIに関連する語句として、KSFという言葉もあります。「Key Success Factor」の略語で、日本語では「主要成功要因」、事業成功の必要条件を示す指標です。
「外的環境分析」の明確化で見極めた条件を「内的環境分析」と照らし合わせて、事業の成功を判断します。ただし、競争構造の変化でKSFの要素が変化する場合があるため、その都度絞り込みが必要です。
KPI分析のメリット
先ほども少しだけKPIのメリットについて触れましたが、ここからはKPIのメリットをまとめて解説していきます。KPIの主なメリットは以下の3つです。
- 目標達成までの道筋が明確になる
- 組織全体で進捗を共有できる
- 進捗が遅れている場合に対策を立てやすい
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
目標達成までの道筋が明確になる
KPI分析では、目標達成までの道筋が明確になります。例えば、製造業では「工場生産の効率化」といった目標が設定されるケースが多いですが、「効率化」だけでは具体性がなく、効率化するためにはどうすれば良いのかが浮かばないという可能性もあるでしょう。
KPI分析では、稼働率・不良率・事故発生件数など、数値化できるものを抽出して数値化します。数値によって具体化すれば、目標達成のためにどこを改善すれば良いのか、自分が何をすべきなのか、取り組んだ成果を明確に把握することが可能です。
組織全体で進捗を共有できる
KPI分析を組織に導入すれば、社員同士で目標や進捗度合いを共有できます。達成までに必要なプロセスが共通の認識になるため、全員が協力しながら同じ目標に向かって進められるでしょう。
組織や部署で共通の目標を掲げてお互いに進捗状況が確認できれば、コミュニケーションや連携が取りやすくなり、従業員の業務に対するモチベーションの向上も見込めます。
進捗が遅れている場合に対策を立てやすい
KPIを設定して、KPIの進捗度合いや達成度合いを社内で共有することで、予定よりも業務が遅れている場合に対策を立てやすいというメリットがあります。
進捗の遅れがすぐに分かれば、なぜ遅れたのか、どの業務が遅れているのか、遅れを取り戻すためにはどのようにリカバリーすれば良いのかもすぐに把握可能です。
原因がすぐに分かれば対策も立てやすく、KPI達成に向けて部署の垣根を超えて協力しながらタスクを進められるでしょう。
KPI分析の方法
KPI分析のメリットについて解説しましたが、KPI分析は具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。ここでは、KPI分析の方法について紹介していきます。KPI分析を行うために必要な工程は、主に以下の5ステップです。
- KGIを設定する
- 現状と目標の差を把握する
- KSFを絞り込む
- KPIを検討して整合性を確認する
- PDCAサイクルで見直しながら改善する
1つずつ解説していくので、KPI分析の利用を考えている人は参考にしてみてください。
KGIを設定する
1つ目のステップとして、KGI(目標)の設定があります。KPIはあくまでもKGIを元にした中間地点で、進捗を管理するための指標であるため、KGIがなければ成立しません。
KGIは、経営理念や企業が掲げる将来のビジョンなどを元に設定します。高い目標を持つことが大切ですが、同時に達成可能な数値でなければいけません。具体的で分かりやすい数値で、あまりにも現実的に不可能な目標にしてしまわないようにしましょう。
現状と目標の差を把握する
KGIを設定したら、KGIと今の状況ではどれくらい差があるのかを把握しましょう。現状を理解しなければ、目標までに必要なプロセスも把握できません。
そこで把握した差を埋めるためには、どのようなプロセスが必要なのか、どれくらいの期間でどんなタスクを行う必要があるのか、などを検討していきましょう。
また、部署ごとやチームごと、個人が掲げる目標なども検討していくと、より具体的になって業務に取り掛かりやすくなるでしょう。
KSFを絞り込む
KGIを設定した後は、KSF(成功要因)を絞り込みます。つまり、KGIを達成するためにこういった施策を実施すれば良いという要素をピックアップする作業です。
例えば、「下半期の契約〇〇本達成」というKGIを設定した場合、小売店に対してアポを取ったり、Webメディアを開設して小売店向けの情報発信に取り組んだりなど、さまざまなアプローチが検討できます。
その中で、KGIを達成するための要因を洗い出して、どの方法が良いのかなどを検討して絞り込みます。
また、目標達成のためにマイナスになってしまう要素をあげることも重要です。マイナスの要因を改善するための方法なども検討してみてください。
KPIを検討して整合性を確認する
KSFを絞り込んだらKPIを検討していきましょう。KPIはKSFよりも具体的な指標を設定する必要があります。従業員全員の目標となるため、現場や部署にも確認しながら設定してください。
KPIを設定したら、しっかりとKGIと結びついているかも確認しましょう。KGIに結びついていないKPIを設定してしまうと、KPIに合わせて進めていってもKGIが達成できない可能性が高いです。KPIを設定したら、必ず KGIとの整合性を確認するようにしてください。
PDCAサイクルで見直しながら改善する
KPIマネジメントを運用する際には、PDCAサイクルで見直す必要があります。PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という意味です。
KPIを設定したものの達成できる現実的な数値ではなかったなど、実際に取り組んでから発覚する問題もあります。PDCAサイクルを元に、見直しや改善などを随時行っていきましょう。
KPI分析をする際のポイント
KPI分析の方法を理解したところで、KPI分析をする際のポイントについて解説していきます。KPI分析をする際のポイントは、以下の6つです。
- KPIの達成度を視覚化
- 優先順位を明確にする
- KPIはチームメンバーに常に共有
- KPIの設計は誰でも理解できるようにする
- KPI分析は繰り返し行って精度を高める
- 社内環境を整えて最新のデータをそろえる
それぞれの項目ごとに解説していくので、見ていきましょう。
KPIの達成度を視覚化
KPIの達成度を日々確認すると、目標に向けた施策の成果を実感できます。KPIの目標達成率は、[KPIの実績値] ÷ [KPIの目標値] で計算が可能です。
KPIの達成度を視覚化して会社内で共有すれば、「今自分たちがどれだけ頑張ったのか」、「あとどれくらいで達成できるのか」が分かりやすくなって、社員のやる気にもつながるでしょう。
生産性や業務効率をあげるためには、KPIの達成度の視覚化が重要です。
優先順位を明確にする
KPI分析ではタスクが明確になり、目的を達成するまでのプロセスも具体的になります。そこから、タスクの優先度を決めていくことも大切です。
タスクの優先度が社員で共有されれば、どこから手をつければ良いのか分からず個人の判断で業務を進めてしまうといった心配がありません。
タスクの優先順位を明確にして、社員同士で共通の認識で進められるようにしましょう。
KPIはチームメンバーに常に共有
KPI達成のためには、チームメンバー全員が目標に向けて前向きに取り組める体制を作ることが大切です。そのため、KPIの分析についても、一部の人だけでなくチーム全体に共有していかなければいけません。
KPI管理を通して、メンバーが自分の関わるビジネスの全体の状況や今後のロードマップをしっかりと理解すれば、当事者意識が高くなります。
達成率が悪いKPIについては、何が原因なのかを明確にして、何をどうすれば達成できるのかというという具体的にアクションプランまで落とし込んでいけば、達成率を向上させることも可能です。
それぞれの部署やチームごとのタスクや課題、問題点などが明確に伝わるように、常に共有するように意識しましょう。
KPIの設計は誰でも理解できるようにする
KPIの設計は社員全員に伝わらなければ意味がありません。社員全員がKPIを共有して同じ方向を向けるように、誰にでも分かるようなKPIを設定しましょう。
また、KPIは個人の解釈によるズレがあってはいけません。具体的かつ分かりやすい数値やデータで、全員が同じ認識を持てるように設定してください。
KPI分析は繰り返し行って精度を高める
前述の通り、KPIはPDCAのサイクルで見直す必要があります。KPIを設定しても、実際に業務を進めていく過程で修正が必要という場合は少なくありません。
また、KPIが達成できなかった場合には、何が原因で達成できなかったのかを把握できれば改善も可能です。
ビジネスにおいて、KGIには高い目標を掲げるのが一般的です。そのため、PDCAサイクルで少しずつ改善や修正を行いながら最終目標に近付けていくと、より効果的にKPIを進められるでしょう。
社内環境を整えて最新のデータをそろえる
KPI分析の精度を高めるためには、システムやツールを導入するとスムーズです。ツールを使えば、KPIの設定や更新作業、進捗確認などが簡単に行えるようになります。
管理者にとっても、一元管理によって全体を把握しやすくなるというメリットがあり、KPIに問題が起きた際も迅速に対応可能です。
また、KPI分析を行う際には最新のデータをそろえるようにしてください。データが古いと目標と現状の差を把握できませんし、古いデータでは社員も参考にしにくくKPIが浸透していきません。
KPI分析に役立つツール3選
KPI分析にはツールの利用をおすすめしましたが、どのツールを利用すれば良いのかと悩んでしまう人もいるでしょう。ここでは、KPI分析に役立つツールを3つ紹介していきます。
- スプレッドシート
- Tableau
- Scale Cloud
それぞれのツールについて解説していくので、ぜひご覧ください。
スプレッドシート
Googleスプレッドシートは、スプレッドシートの作成や表示形式の設定ができるだけでなく、他のユーザーと同時に共同作業できるオンライン無料アプリです。
インターネット環境があればどこでも使えて、Googleのアカウントを持っていれば誰でも利用できます。また、複数人で同時に作業ができるため、作業の効率化も可能です。
データ紛失のリスクがない、他のGoogleアプリと連携ができるといった部分も大きなメリットになるでしょう。
Tableau
Tableauは、専門的な知識を持たない人でも簡単に扱えるBI(Business Intelligence:ビジネスインテリジェンス)ツールです。
従来のBIツールのように、分析対象や分析の視点をあらかじめ決める必要がなく、ユーザーが必要なときに分析できます。連携性が高い、データの可視化がしやすい、リアルタイム更新が可能といった点がメリットです。
Scale Cloud
Scale Cloudは、ビジネスにおけるKPIをサポートしてくれるKPIマネジメントツールです。バラバラに管理されているKPIデータなどを自動で集約して、一元管理ができます。
事業全体をKPIツリーで可視化できるため、優先的に改善すべき部分、問題がある部分とリカバリー方法などが分かりやすく、組織全体で共有可能です。
高度なスキルは必要なく、誰でも簡単に直感的に操作ができます。全体の業績目標から各部門へと数値を落とし込めるので、部門ごとの連携についてもよりスムーズに行えるようになるでしょう。
まとめ
ビジネスの成功に欠かせない手法となりつつあるKPIですが、まだ活用できていない企業も数多くあります。KPIを設定すれば従業員のモチベーション向上や組織力強化、生産性上昇といった効果が期待できるため、自社の業績向上にもつながるでしょう。
KPIは、以下の5つのステップで分析を行います。
- KGIを設定する
- 現状と目標の差を把握する
- KSFを絞り込む
- KPIを検討して整合性を確認する
- PDCAサイクルで見直しながら改善する
KPI分析はツールを活用すると、より高い精度で効率的に行います。KPIツールの利用を考えている方は、スプレッドシート、Tableau、Scale Cloudの利用を検討してみてください。KPIの分析だけでなく作り方もセットで考えたいという方は、下記資料をぜひ参考にしてみてください
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。