直感的な経営を強力に補完するKPI活用
2021.01.28
感覚的な意思決定に依存した経営からの脱却
日本には190万社の会社があります。
経営環境の変化が激しい中で、どの会社経営においても日々、意思決定に迫られていますが、その多くが感覚的な意思決定になっています。
多くの企業では、
- 「マーケティング部」や「営業部」などの部署ごとに、データ管理方法が異なる
- 事業部全体のデータを集計するのに時間がかかりすぎる
- 基盤となるフォーマットも部署ごとで異なる
といった課題が散見されます。
その結果、事業横断的に会社全体の状況を把握しづらくなり、感覚的な意思決定になりがちです。
そこで、部署ごとでバラバラに管理しているKPIデータや財務データを集約・統合する必要があります。
その際のポイントは、
- 売上や費用をKPIとロジックツリーで構造分解し、
- 利益に至る業務プロセスをKPIで可視化してフォーマット化します。
- そのフォーマットに基づいてデータを集約・統合し分析することで、
- 利益を上げるためにはどのKPIが重要なのか、
- いまどのKPIに問題があるのか、
- 他社と比べてどのKPIに競争優位性があってどのKPIが課題なのかを、
- すぐに把握できてスピーディーに対応できます。
こうすることで、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールのように高度なスキルも不要ですし、スプレッドシートのようにメンテナンスが煩雑になることもなくなります。
重要な点は、
- 部門を横断した業務プロセス全体の状況を、
- 一目で誰でもわかりやすく可視化することで、
- 全体最適な視点から、合理的に意思決定を行いやすくなる
という点です。
バラバラのKPI管理を統合する
みなさまの会社でもKPI管理をされていると思いますが、どのようにされていますか?
セールス部のKPI
- 成約率
- 商談件数
- アポイント率
- テレアポ数
- 契約数
- アップセル率
- リピート率
マーケティング部のKPI
- リード数
- CVR
- クリック数
- 検索エンジン流入数
- リスティング広告流入数
- ページビュー
人事部のKPI
- スカウトメール返信率
- 書類審査通過率
- 面接通過率
- 入社率
- 採用人数
管理部のKPI
- 売上高
- 営業利益
- 営業利益率
- キャッシュ・フロー
- ROIC
このように部署ごとにKPIを設定されているかと思います。
ここで質問です。
これらのKPIですが、相互の関係性は明確になっていますか?
明確になっていなければこのようになります。
たとえば、マーケで新規リード獲得数が未達成になりそうだ。しかし、部門間連携がうまく取れておらず、それをカバーするためにはインサイドセールスの方で家電数を何件増やせばいいのか、セールス部では何件くらいの商談供給量を見込んで準備しておけばいいのか、といったことがわかりません。
明確になっていればこのようなことが可能です。
たとえば、マーケで新規リード獲得数が未達成になりそうなので、インサイドセールスで架電数を増やして、フィールドセールスへの商談供給量を確保しよう、そうすることで、全社的な売上目標をみんなで達成しよう、といったように部門横断的に全社的な視点で課題解決ができるようになります。
その他、マーケティングでのいまのリード数の増加傾向からすれば、セールスでの商談数が増えていく見込みだけどいまの営業の生産性でまわせるのか?いや、まわせなさそうなので、早めに営業マンを採用をしていこう、といったようなこともできるようになりますし、
エンジニアの稼働率がこんなに下がっていっているまた新規採用するのか?であったり、
Webチャネルより代理店チャネルの方が顧客獲得単価が下がっていく傾向にあるので代理店へのフォローを強化しよう、といったように、組織の壁を超えて、組織横断的な意思決定やマネジメントができるようになります。
クロス・ファンクショナルな組織運営
クロス・ファンクショナル・チームというものを知っていますか?
有名なのは日産自動車の事例です。日産自動車は1990年代、深刻な業績不振に陥りました。そこで、当時日産自動車のCOO(最高執行責任者)だったカルロス・ゴーン氏が、再建計画として「日産リバイバルプラン」をつくりました。そして、この日産リバイバルプランの実行を担ったのがクロス・ファンクショナル・チームでした。いわゆるゴーン改革のポイントは、このクロス・ファンクショナル・チームの創設と活用にあったといわれています。
そもそも企業に対する顧客の要求はクロス・ファンクショナル、つまり、部門横断的なので、コストの問題にせよ、品質や納期の問題にせよ、一つの機能、一つの部門だけで解決できるものではない。そこで、全社的な経営課題を解決するために、事業部や役職に関わらず、時には社外からも人材を集めて構成される部門横断的なチームのことを、「クロス・ファンクショナル・チーム」といいます。
その成果はというとご覧の通りのV字回復を果たしたわけです。
ただ、このクロス・ファンクショナル・チームをつくらなくても、部門横断的に、全社的な視点を持って組織運営をすることはとても重要です。
- 部署ごとの重要なKPIを明確にして、
- それぞれの関係性を明確に定義して、
- 部門横断的に組織運営をしていく。
このように組織運営を「仕組み化」することで、厳しい経済環境においても、倒産することなく、着実に事業拡大していく一助になるのではないでしょうか?
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。