- 自社の課題が明確になる
- 社員全員で方向性を共有できる
- 信頼を得られる
IPOとは|企業がIPOを目指すメリットデメリットを詳しく解説
2022.12.01
企業が新しく株を売り出し、不特定多数の投資家が株取引をできるようにするIPO(新規公開株・新規上場株式)は、企業が知名度を上げたり、資金調達をする手段として広く知られています。
今回の記事では、IPOの概要や目的、企業がIPOを行うメリットやデメリット、準備のプロセスなどを解説していきます。さらに、IPOが失敗してしまう原因や成功させるためのポイントについても詳しく紹介するので、見ていきましょう。
特に、企業がIPOを目指すメリットとデメリットについてはさまざまな角度から解説しているので、これからIPOをしようと検討している企業の担当者の方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
IPOとは
IPOとは、英語のInitial Public Offeringの頭文字を取った略語で、日本語では「新規公開株」、「新規上場株式」といった言葉に訳されます。簡単に説明すると、株を投資家に売り出し、証券取引所に上場して株取引が誰にでもできるようにすることです。ビジネスでは単に「IPO」と表記されることが多い傾向にあります。
IPOの目的
企業がIPOを行う目的は、それまで公開していなかった株を公開することで、多くの資金調達をするためです。未上場だった企業が証券取引所に上場すれば、より多くの投資家にその存在を知ってもらえます。
また、資金調達による企業成長だけでなく、上場して企業の知名度が上がれば、優秀な人材を確保することにもつながるでしょう。
IPOには事前の準備が必要ですが、IPO後にも社内で企業戦略をじっくりと話し合う必要があります。その結果、IPOによって企業のパフォーマンスが大きく変わることもあります。
有力企業の新規上場も増えてきている
ここまで、IPOの概念および目的を紹介しました。続いてここからは、企業がIPOを行うメリットを下記の4つの観点から解説していきます。
企業がIPOを行うメリット
経営計画は、会社の経営における具体的な道すじを示すものです。経営計画をしっかりと作成している会社とそうでない会社とでは、企業経営に大きな差が出ます。ここからは、経営計画を作成するメリットを、下記の3つの観点から詳しく解説します。
- 資金調達力の向上
- 信頼の獲得
- 人材確保で優位
- 株価の売買
それぞれ見ていきましょう。
資金調達力の向上
IPOを行うことによる大きなメリットは、それまでと比べてより多くの投資家の目に留まり、資金調達がしやすくなるという点です。上場すれば、金融市場からあらゆる形で資金調達ができます。例えば、時価発行増資・新株予約権付社債の発行などが可能です。
企業の資金調達の方法には、銀行からの借入や知り合いからの融資などがあります。しかし、それでは不十分なことも多いため、広く一般の投資家に株を買ってもらえるIPOは企業にとって魅力的といえるでしょう。
信頼の獲得
IPOには経営状態が優れていることが求められます。そのため、上場しているという事実によって、その企業が優良な企業であると示せるのです。「上場企業」というブランドや良いイメージが付けば顧客や投資家、取引企業などからの信頼が獲得でき、これまでよりもさらに多くの企業が取引先となってくれる可能性があります。
人材確保で優位
IPOを行えば市場での知名度も上がり、資金調達の面だけではなく、人材確保の面でも優位に立てます。優秀な人材の確保は企業の成長の要です。
近年の就職活動は「売り手市場」といわれ、学生側が企業を選べる立場になっています。その中で、上場企業という名称は学生にとっても魅力的でしょう。企業が上場していることで、学生や転職希望者が「就職したい」と思えるような、信頼できる企業であると示せるのです。
株価の売買
IPOにより、不特定多数の人が株価を売買できるようになります。これは、創業者・経営者が持ち株を売り出して、投下資本の一部を回収し利益を得ることも可能なのです。また、メリットが得られるのは創業者や経営者だけではありません。ストック・オプション制度などを利用すれば、社員にも利益を還元できます。
企業がIPOを行うデメリット
上記で、企業がIPOを行うことによって得られるさまざまなメリットを多角的に紹介しました。しかし一方で、IPOを行うデメリットも存在します。ここでは、企業がIPOを行うデメリットについて、下記の2つの観点から解説していきます。
- 準備時間・コストの確保
- 上場へのプレッシャー
1つずつ見ていきましょう。
準備時間・コストの確保
企業がIPOを行う場合、上場審査に通過する必要があります。そのため、社内体制の整備が必須となり、監査役員や監査人を置いたり、上場のためのプロジェクトチームや証券会社の審査対応チームを発足させたりといった手間がかかります。また、専門的な知識も必要となるので、外部専門家やファンドに協力してもらうことも珍しくありません。こういった準備には、一般的に3~5年ほどかかるといわれています。
また、上場の準備にかかるコストは膨大で、最低でも数千万円程度必要です。新たにIPO担当チームを発足させるとなると、その分の人件費も新しい負担になります。
さらに、年間の上場料や株式市場の維持費用など、準備段階だけでなく上場した後にもコストが生じるのです。その他、監査法人への報酬や適時開示や定期株主総会運営のコスト、証券会社の引き受け指導料もかかります。
IPOへの準備、IPO後の維持にかかる費用がIPOを行う前と比べて新しく増えるという点を考慮しておきましょう。
上場へのプレッシャー
上場をすると時間とコストがかかるだけでなく、経営層へのプレッシャーもかかります。上場をした後は、株主総会などで定期的に株主への経営状況の説明が必要です。説明責任をしっかりと果たせなければ、投資家からの信頼を失って、資金調達に大きな影響が出てしまうでしょう。
また、株主の意見を聞く必要も出てきます。さらに、株主は短期的な結果を求める傾向にあるため、経営戦略を短いスパンで考えなければなりません。上場したことによって、常に業績を出し続けなければならないという大きなプレッシャーを感じるという経営層も少なくないようです。
IPO準備のプロセス
ここからは、経営計画の種類について紹介します。経営計画と一言でいっても、大きく分けて3つの種類があるので、それぞれ詳しく見ていきましょう。
ここまで、企業がIPOを行うメリットとデメリットの双方を解説しました。続いて、IPOの準備の具体的なプロセスを紹介していきます。
- 上場直前々期
- 上場直前期
- 上場直前期
- 申請・上場期
- IPO完了
IPOは準備から完了まで3年以上、時には5年ほどかかることもある長期的なプロジェクトです。細かにスケジュールを立て、すべきことを着実にこなしていきましょう。
上場直前々期
まず、将来的にIPOを行いたいと決めたら、その時点でコンサルタントや主幹事証券会社、監査法人または複数の公認会計士を選んでください。会計監査を受けるためには、監査法人または複数の公認会計士の選定が必須です。上場前に課題を把握する必要があるので、コンサルティングを受けておくと良いでしょう。
次に、社長直轄のIPO担当チームなどの管理体制を整えます。必要なデータの収集、IPOに向けた事業計画の作成など、業務は多岐に渡るため、あまりに少数のチームだと負担が増えてしまいます。ある程度の人員を確保しましょう。
さらに、監査法人などによる「ショートレビュー」を受けます。これは、IPOの準備段階で課題を洗い出すものです。レビューで改善が必要と分かった事項は優先度の高いものから順次改善していき、適宜、監査法人などによるフォローアップを受けます。
上場直前期
上場直前期では、上場企業と同じような管理体制の運用が行われている必要があります。期初に監査法人から「新規監査受託のための調査」(予備調査)を受けた際に、ショートレビューで指摘された事項がしっかりと改善されていなければいけません。
また、主幹事証券会社を決定し、上場と新株発行のための取引所審査に通過するための指導を受けます。指導の元で、上場申請書類の作成を開始しましょう。上場申請書類はボリュームの多いものもあるため、後回しにせず、早めに作成に取りかかるようにしてください。
その他、各種規程の整備や社内システムの構築、資本政策、内部統制、事業計画などの上場申請に必要な体制の策定を本格化していくことも求められます。
申請・上場期
いよいよ申請・上場をする年度になったら、IPO申請に必要な書類一式を完成させ、証券取引所に上場申請を行います。上場審査の前に、証券会社による引受審査も行われるので、頭に入れておきましょう。この時期には、上場直前期で完成した社内体制を継続して運用されている必要があります。
上場申請に必要な書類は、指摘を受けて何度か修正や再提出を繰り返し、最終版を提出するのが一般的です。通常、上場申請にかかる期間は2~3ヵ月といわれています。審査段階では、複数回の現地調査や社長ヒアリングなどが行われます。その際に、多くの質問がされるため、迅速に対応できるように対策しておきましょう。
IPO完了
証券取引所による上場審査に無事に通過し、上場承認がおりるとIPOが完了となります。株式の公募や売り出しを行うためには、有価証券届出書の作成が必要です。なお、監査法人などとの関係はここでも続き、監査契約を結んで申請期の監査を受けます。
IPOで失敗する原因
企業がIPOを行うためには、準備に膨大な時間と手間がかかります。無事に上場承認がおりれば問題ありませんが、中にはIPOに失敗してしまうケースもあるのです。ここからは、企業がIPOに失敗してしまう主な原因について見ていきましょう。
IPOで失敗する原因として、「会計の根拠資料がない」というものがあります。会計書類の根拠となる書類が揃っていないと、IPOの際の監査で大きな痛手です。会計処理とその根拠となる書類が確実に揃っているか事前に確認しておくようにしてください。口頭などで契約を交わしている場合には、契約相手と契約書を改めて作成しましょう。
他にも、社内の内部統制の不備があるとPO失敗の原因となります。内部統制とは、組織に関わるすべての従業員が守らなければならないルールなどのことです。内部統制の構築やその運用については、J-SOX(内部統制報告制度)が設けられており、自社の内部統制についてチェックし、それを報告した上で監査を受けます。
内部統制の不備は、不祥事が起きた時点で明らかになるケースが多いですが、そもそも構築した時点で不備がある場合は、内部監査の時点で発覚することが多いです。
IPOを成功させるポイント
最後に、企業がIPOを成功させるポイントを紹介します。先ほど解説した失敗の原因と合わせて、参考にしてみてください。
まずは、段階的に権限を分散させることが大切です。先述の通り、自社の内部統制がきちんとできているかどうかは、IPOの成功に大きく関わってきます。そのためには、経営の管理や監視を強化する必要がありますが、それを誰か1人や1つのチームだけで専横的に行うのではなく、権限を適切に分散化していくようにしましょう。
なお、内部統制にかかるJ-SOX対応に自信がない場合は、企業法務を専門とする弁護士に相談するのも良い方法です。
また、業務フローと意思決定フローを明確化するのもポイントです。IPOを行うと決めた時点、もしくはその前段階から、業務フローの効率化を図り、ヒューマンエラーを防止します。そして、業務フローを可視化し、それぞれの段階で「誰が」「どのような基準/材料を元に」意思決定をしているのかを明確にするのです。特に会計業務については、どのように処理され、書類に計上されているのか、丁寧に分析する必要があります。
まとめ
IPOは、株を投資家に売り出し、証券取引所に上場して株取引が誰にでもできるようにすることです。企業がIPOを行うのは、それまで公開していなかった株を公開して、より多くの資金を調達するのが目的となっています。
IPOは、準備に時間や手間、コストがかかる一方、成功すれば資金調達の有効な手段となる他、知名度の向上、信頼の獲得など、さまざまなメリットもあります。
ぜひ今回の記事を参考に、自社のIPO戦略を考えてみてください。IPOに必要な資料をまとめる際には、ビジネスツールの活用もおすすめです。IPOを検討中の方は、資料作成や社内共有、データの可視化などが簡単にできるScale Cloudをぜひ検討してみてください。
関連記事
No posts found!
監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。