粗利率とは|計算方法や注意点、粗利を増やす方法などをまとめて解説
2022.12.15
サービスや商品を販売する上で、粗利や粗利率の把握は欠かせません。これらを把握しておくことで、経営状態や財政状況の確認をしやすくなります。しかし、会社の利益は粗利も含めた5種類があるため、それらとの違いを把握していないと、正確な計算ができません。
この記事では、粗利・粗利率とは何か、粗利率の計算方法、計算するときの注意点などを解説していきます。粗利を増やす方法なども解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
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粗利・粗利率とは
会社の経営状態や財政状況を把握するためには、利益の種類とそれぞれの意味を把握しておく必要があります。利益には5つの種類がありますが、その中の粗利はどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
粗利は5つの利益の1つ
企業の利益には5つの種類があり、粗利、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益に分かれています。
5つの利益のうちの1つである粗利は、売上から売上原価もしくは製造原価を差し引いた後に残る利益のことです。粗利は正式な会計用語で「売上総利益」と表記されることもあるため、決算報告書を見て粗利を知りたい場合は、売上総利益の項目を確認しましょう。
粗利率は粗利の割合
粗利率は売上に対する粗利の割合を示したもので、「売上総利益率」や「粗利率」と呼ばれるケースもあります。
粗利率は売上原価と反比例しており、計算数値が高いほど優れた収益性があると判断することが可能です。しかし、この数値のみで経営状況や財政状況の良し悪しを判断するべきではありません。業種や職種、前年度の売上によっても判断基準が異なるため、判断材料を揃えてから経営状況や財政状況の評価をするようにしましょう。
粗利が重要とされる背景
粗利が重要とされる理由として、下記の2つの点が判断できることが挙げられます。
- 会社の純利益
- 商品やサービスの付加価値
「粗利が低い = 会社の純利益が少ない」ということになります。粗利が極端に低い場合は商品などの原価が高すぎる可能性があるなど、自社の問題点を見つけるきっかけになるのです。問題点が見つかれば、仕入れ先を見直すなどの具体的な対策方法も検討できます。
また、「粗利が高い = 商品やサービスの付加価値が高く優れた収益性がある」と判断することも可能です。原価に対してどのくらい粗利を上げられるかは、商品の付加価値によって異なるため、粗利が高いのはそれだけ高い付加価値を与えられているということになります。
粗利は、企業が顧客に対して提供する商品やサービスの価値が数値として明確に分かることなどから、企業のKPIなどの指標に設定されやすいです。
粗利率の計算方法
粗利の重要性について解説しましたが、そもそも粗利はどのように計算をすれば導き出せるのでしょうか。ここでは、粗利や粗利率の計算方法について解説していきます。
粗利の計算方法は「売上高 – 売上原価」です。
例えば、3,000円で入荷した洋服を5,000円で販売したとします。この場合の粗利は、売上高が5,000円、売上原価が3,000円となるので、計算式は「5,000 – 3,000 = 2,000」です。すなわち、粗利は2,000円となります。
粗利を計算すれば、収益の目安を把握しやすくなります。売上目標などを定めている場合は、あとどのくらい商品・サービスを提供すれば目標に達成するかなどの、大まかな数字の判断ができるでしょう。
ここからは、粗利率の計算方法について解説していきます。
一般的な粗利率の算出方法
粗利が計算できたら、続けて粗利率も算出しましょう。粗利率は売上に対する粗利の割合なので、計算方法は以下のようになります。
粗利率 = 粗利 ÷ 売上高
先ほどの具体例を用いて考えると、売上高が5,000円、粗利が2,000円となるので、計算式は「2,000 ÷ 5,000 = 0.4」、すなわち粗利率は40%です。
このように、粗利・粗利率は必要となる数字が分かれば簡単に計算できます。さらに、伸び率や粗利を増やす方法などの深い知見を持っていれば、経費の使い方の見直し、財政状況の判断を行うことが可能です。
粗利益伸び率
年度ごと、または月ごとに会社の儲けが増加しているか判断する数値を「粗利益伸び率」といいます。粗利益伸び率の計算方法は下記の通りです。
粗利益伸び率 = {今年度粗利(今月粗利)- 前年度粗利(前月粗利)}÷ 前年度粗利(前月粗利)
では、具体的な例を見ていきましょう。今月の粗利が1,000万円、前月の粗利が2,000万円だった場合、上記の式に当てはめて計算すると下記のようになります。
(1,000万円 – 2,000万円)÷ 2,000万円= -0.5
すなわち、粗利益伸び率は-50%です。粗利益伸び率がプラスであれば儲けが増加、マイナスであれば儲けが減少しているため、今回の場合は前月と比較して儲けが減少していることが分かります。儲けが減少しているからといって、企業の成長が止まったわけではありません。営業利益や経常利益の伸び率なども確認しながら、会社の状況を正しく判断しましょう。
従業員1人当たりの粗利伸び率
従業員1人当たりの粗利伸び率を計算することで、企業の成長と従業員数の伸び率がバランスの良い状態かを判断できます。従業員1人当たりの粗利伸び率の計算方法は、下記の通りです。
1人当たりの粗利伸び率 = 今期の1人当たりの粗利 ÷ 前期の1人当たりの粗利
※1人当たりの粗利 = 粗利 ÷ 従業員数
売上は伸びているのに企業の成長率が良くない場合には、人件費をかけすぎている可能性があります。つまり、企業の成長と従業員伸び率のバランスがとれていないということなので、経営者は一度見直しをしたほうが良いでしょう。
業界別の平均粗利率
総務省が行った中小企業実態基本調査では、令和2年度の業界別の平均粗利率は下記のようになっています。
引用:中小企業実態基本調査
粗利率を計算するときの注意点
粗利率の計算方法を詳しく解説していきました。しかし、粗利率を計算する際には、2つの点に注意しなければいけません。
- 粗利は売上に対しての利益
- 業種によって粗利率は異なる
それぞれの注意点について解説していくので、見ていきましょう。
粗利は売上に対しての利益
粗利の計算では、商品やサービスを提供するまでにかかった宣伝広告費、人件費などの経費を含まず、実際の売上に対する原価のみを引く必要があります。例えば、10着の洋服を仕入れて、6着売れた場合の粗利計算は6着分で計算する、といった形です。具体的には下記のようになります。
原価1,000円の洋服を10着仕入れて、実際には売価2,000円で6着売れたときの粗利の計算
粗利:12,000円(2,000円 × 6着)- 6,000円(1,000円 × 6着)= 6,000円
間違った計算としてありがちなのが、売上から仕入れた10着分の原価を用いて計算することです。
粗利:12,000円(2,000円 × 6着)- 10,000円(1,000円 × 10着)= 2,000円
実際の粗利は6,000円にも関わらず、間違った計算方法では2,000円になってしまいます。こういったミスが起こらないように、粗利と粗利率に関してきちんと理解する必要があるのです。
業種によって粗利率は異なる
粗利計算では売上から売上原価を引きますが、業種によって売上原価が差しているものが異なります。具体的に説明すると、商品を仕入れてそのまま売る業種と、自分たちで商品の製造を行ってそのまま販売する業種では、原価の概念が異なるということです。
粗利・粗利率を計算する場合には、業種における原価の違いを理解した上で行ってください。業種別の粗利計算における原価をまとめると、下記のようになります。
- 小売業:原価 = 商品の仕入れ代金
- サービス業:原価 = 商品の製造・加工段階で発生した外注費
- 製造業:原価 = 販売した製品の製造費
身近な業種で考えると上記の通りです。他にも多数の業種が存在するため、業種ごとに原価が異なるという点を注意しておきましょう。
粗利を増やす方法
粗利の計算方法は「売上高 – 売上原価」なので、粗利を増やすには商品・サービス単価を上げて売上高を伸ばす、または売上原価を下げるといった方法がメジャーです。他にも、無駄な在庫を抱えていないか確認するなどの方法も効果的といえます。
ここでは粗利を増やす方法について、それぞれ詳しく解説していきます。
単価を上げる
提供するサービスや商品自体の単価を上げるのは、もっとも簡単に売上高を伸ばす方法です。単価を数%上げただけで売上自体は簡単に上がります。
しかし、単価が上がったことで顧客の購買意欲が下がり、サービス・商品の提供数が少なくなる可能性もあるので、注意が必要です。サービス・商品が売れなくなってしまっては、単価を上げた意味がなくなってしまいます。
また、単価を上げる際には、宣伝広告費などのこれまでかかっていなかった部分の出費を増やさないように注意してください。
単価を上げる際のポイント
単価を上げる際は、同時に付加価値をつけるのがおすすめです。具体的には、機能・サービスを強化する、ターゲットを絞る、複数のプランを用意するなどの方法が挙げられます。
単価だけ上げると顧客から不満が出てしまう可能性がありますが、単価アップと同時に機能・サービスを追加するなどのプラス要素があれば、不満は生まれにくくなります。
また、ターゲットを絞って一点集中型のサービスにすれば、そのサービスをピンポイントで求めている層を狙い撃ちできるため、単価が上がってもサービスを利用してもらえる可能性が高いです。
さらに、プランを複数用意すれば、顧客が自分でプランを選べるようになります。自分で選んだプランであれば不満が生まれにくく、顧客にクロスセルやアップセルをしてもらうための施策なども検討すれば、さらなる粗利のアップが見込めるでしょう。
売上原価を下げる
原価を下げるのも、単価を上げるのと同様に粗利率を高めるためのメジャーな方法です。
しかし、原価を下げたことでこれまでと同じ品質のサービス・商品の提供ができなくなってしまうケースもあります。それによって顧客が離れていってしまっては、本末転倒です。
粗利を上げるためにどんな方法をとっても、それに付随した対策が必要になることを頭に入れておきましょう。
無駄な在庫を抱えていないかチェックする
良い在庫のストック方法をとることで粗利が増える場合もありますが、無駄な在庫を抱えていると粗利を減少させる原因になります。
商品保管方法が不適切で在庫を販売できなくなった、見通し不透明なまま過剰に在庫をストックしたことで在庫の消費期限が切れてしまった、在庫として眠ったまま季節やトレンドが過ぎてしまった、といったのケースでは、せっかく仕入れた在庫が無駄になってしまいます。
無駄な在庫を抱えていても販売できませんし、仮に店頭に出しても売れなければ売上が発生しません。売上につながらなければ、粗利が増加しない、または減少してしまいます。こういった事態にならないように、無駄な在庫を抱えていないか定期的にチェックして、場合によっては仕入れを見直したほうが良いでしょう。
粗利率が高いことで起こるメリット・デメリット
粗利率を高める方法について解説しましたが、必ずしも粗利率が高いほうが良いというわけではありません。メリットのほうが大きいように感じますが、実はデメリットも発生するのです。ここでは、粗利率が高いことで起こるメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
メリット
粗利率が高くなると営業利益アップにつながるというのが、大きなメリットです。下記で、粗利率が高くなることで営業利益にどのように影響するのか、具体的に2つの会社を例に挙げて見ていきましょう。
A社:売上高:1,000万円
粗利:400万円(粗利率40%)
販売費:300万円
営業利益:100万円
※販売費…販売に必要となる材料費
営業利益…粗利から販売費を差し引いたもの
B社:売上高:1,000万円
粗利:200万円(粗利率20%)
販売費:100万円
営業利益:100万円
どちらの会社も売上高が30%増加して1,300万円になったとします。このときの粗利と営業利益は下記の通りです。
A社:粗利 = 1,300万円 × 40% = 520万円
営業利益 = 520万円 – 300万円 = 220万円(+120%)
B社:粗利 = 1300万円 × 20% = 260万円
営業利益 = 260万円 – 100万円 = 160万円(+60%)
このように、売上高の増加率が同じでも、営業利益の差によって大きな違いが見られます。
デメリット
粗利率が高い企業は、売上減少によって大きな打撃を受けるという点がデメリットです。業種の違いで影響の大小は異なりますが、元々粗利率が高い企業は、売上が少し減少しただけで営業利益が赤字になる場合もあります。
粗利率が高いことによるデメリットも把握した上で、他の決算数値と合わせながら企業の経営体制や財政状況を見極めましょう。
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Scale Cloudでは、KPIデータや財務データを自動で集約・統合できるので、事業運営に必要な情報が分かりやすいです。情報を一括管理できて、データの分析に必要な情報が一カ所にまとめられているため、データの分析もしやすくなります。
また、部門を超えたデータの共有も簡単に行えて、社内全体で同じデータを元に業務を進めることが可能です。
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Scale Cloudでは、システム上に搭載されている分析アルゴリズムによって自動統計的な分析を行い、影響度が高いKPI・関係性が強いKPIがランキング形式で表示されます。それによって、問題点があるKPIを改善するためにはどのKPIに優先的に取り組むかを即座に判断できます。
まとめ
粗利は売上から売上原価もしくは製造原価を差し引いた後に残る利益で、粗利率は売上に対する粗利の割合です。
粗利率を把握することで、企業が顧客に対して提供する商品やサービスの価値が数値として分かるので、企業にとって粗利や粗利率の把握はとても重要といえます。
粗利率の他にも把握しておくべき重要なKPIはいくつもあります。網羅して確認したい方はぜひ下記資料を参考にしてください。
監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。