コホート分析がSaaS企業で注目されている理由や分析方法を解説

2022.04.08
コホート分析がSaaS企業で注目されている理由や分析方法を解説

「コホート分析という言葉は聞いたことがあるけれど、何を分析するためのものなのかは知らない」、「どうやって分析すれば良いのか分からない」という方もいるのではないでしょうか。

 

この記事では、近年SaaS企業の注目とともに重要視されているコホート分析とは何なのか、注目されている理由や分析方法を詳しく解説していきます。コホート分析について詳しく知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

コホート分析とは

コホート分析は、ユーザーの行動をグループ化して分析する手法です。特定期間のユーザーの行動を分析して数値化することで、ユーザーが離れてしまうタイミングでの効果的な施策の実行やユーザーを定着させるための施策の立案などに役立ちます。

 

例えば、サイト運営でコホート分析を活用した場合は、直近一ヶ月の間に自社サイトにどのくらいのユーザーが訪れたのか、そのうちの何割のユーザーが再訪したのかなどの数値が具体的に把握できるのです。

 

サイトやサービスの改善、マーケティングに役立つ指標として活用されており、現在はSaaS業界でも注目を集めています。

元は心理学で使われていた方法

現在はマーケティングなどで使用されているコホート分析ですが、元々は心理学で使われていた方法です。心理学としてのコホート分析は、同時期に生まれた人たちを同じグループとしてまとめ、行動や意識の変化を比較・分析していきます。

 

同時期に同じような体験をしている人たちは、時間が経っても似た価値観を持ち続ける傾向です。その価値観の変化を、時代、年齢、世代の違いの3つの要因ごとに分析して、将来的な行動パターンを予想します。行動を分析するという点においては、マーケティングにおけるコホート分析にも共通するといえるでしょう。

SaaS企業でコホート分析が注目されている理由

コホート分析はSaaS業界でも注目されていると前述しましたが、それはなぜでしょうか。ここでは、SaaS企業でコホート分析が注目されている理由について紹介していきます。主な理由は、下記の2つです。

  • ユーザーの維持率が分かる
  • ユーザーの行動への理解がLTV向上につながる

それぞれの理由について見ていきましょう。

ユーザーの維持率が分かる

SaaSは、今まで主流だった売り切り型のサービスとは異なり、サブスクリプション型の月額制サービスが一般的となっています。そのため、SaaSサービスはユーザーに継続的に利用してもらうことが大切なのです。

 

ユーザーに契約してもらう際の初期費用だけでは、顧客獲得にかかるコストやサービスの開発・運用にかかるコストは回収できません。ユーザーの動向に注目しながら、どうすれば長く利用してもらえるのか、解約されないためにはどのような施策が効果的なのかを判断する必要があります。

 

その際に役立つのがコホート分析です。コホート分析ではユーザーの維持率や定着率を数値で測れるので、ユーザーがどのくらいサービスを利用し続けてくれているかを元に施策を考えられます。

 

維持率が低い場合はチュートリアルを充実させる、カスタマーサクセスでユーザーの悩みを解決するなどの方法が考えられるでしょう。一方で、維持率が高い場合にはなぜ高いのかを把握して、解約率をさらに減少させるためのポイントを具体的に理解できるようにすると良いです。

ユーザーの行動への理解がLTV向上につながる

コホート分析でユーザーの行動を理解できれば、LTVの向上にもつながります。LTVは顧客生涯価値ともいい、一人あたりの顧客が契約を開始してから終了するまでに自社に対してどのくらいの利益をもたらしているかを判断するための指標です。サブスクリプション型のビジネスであるSaaSでは、LTVをどれだけ向上させられるかが重要になります。

 

コホート分析では、ユーザーの動向を細かく分析できます。例えば、契約からどのくらいの期間が経過してから解約をしている人が多いのか、解約をしている人に共通している条件は何かなどを詳しく分析することで、解約をされないためにはどのような施策を実行すれば良いのかを判断できるのです。

 

ユーザーの行動を理解し、顧客が不満に思っている点や使いこなせていない機能などを把握できれば、どこに重点をおいてサポートをすべきかが明確になり、チュートリアルやカスタマーサポートもよりユーザーの目線に立って行えるようになるでしょう。

SaaS企業のコホート分析で重要なコホートの種類

SaaS企業でコホート分析を行う際には、大きく分けて2つのグループ(コホート)が重要とされています。それぞれのコホートが分析をする際にどのように役に立つのか、詳しく見ていきましょう。

  • 行動コホート
  • 獲得コホート

上記の2つのコホートについて、解説していきます。

行動コホート

行動コホートは、ユーザーがサービスを利用して実行する特定のアクションに応じてグループ分けをして分析します。例えば、特定の期間にログインしている、サービスの利用を開始してから◯日以内に特定の機能を使っているなどです。

 

どのくらいの期間でどのような動作をしている人をグループ化するのかを定めて分析することで、ユーザーがサービスを活用できているのか、どのように利用しているのかなどを把握できます。

 

ユーザーがよく活用しているサービス内容、便利なのにあまり使用されていない機能などを分析できれば、チュートリアルの作成やサービスの改善、カスタマーサクセスなどを行う際にも役立つでしょう。

獲得コホート

SaaS企業がコホート分析をするときにもう一つ注目すべきなのが、獲得コホートです。獲得コホートは、ユーザーがいつ契約をしたのかでグループ分けをします。

 

例えば、初月無料キャンペーンを行っていた際に契約をしたユーザーは何人なのか、そのうちの何割が解約をしたのか、などを分析すると、顧客へのアピール方法や施策を考える際の参考になるでしょう。

 

質の良いユーザーを引き入れるために効果的な施策は何か、無料キャンペーンで引き入れた顧客に長く利用してもらうにはどうすれば良いのかなどを判断する場合には、獲得コホートを分析してみてください。

Googleアナリティクスでコホート分析を行う方法

SaaS企業のコホート分析で重要とされるコホートの種類について解説しましたが、ここからは実際にそれらを生かすためのコホート分析の方法を紹介していきます。WEBサービスにおけるコホート分析には、Googleアナリティクスを活用するのが便利です。

 

Googleアナリティクスでコホート分析を行う場合には、下記の4つを設定していきます。

  • コホートの種類
  • 指標
  • コホートのサイズ
  • 期間

それぞれ詳しく見ていきましょう。

コホートの種類

コホートの種類では、ユーザーを獲得した日付を選択します。それによって、特定の期間に獲得したユーザーを一つのグループ(コホート)として分析できるのです。平日と休日のサービス利用率の違いや、キャンペーンを実施した際のユーザーの行動の違いなど、日付や期間ごとの変化を確認できます。

コホートのサイズ

コホートのサイズは、ユーザーの維持率・継続率をどのくらいの期間を対象に分析するかを「日別」「週別」「月別」で大まかに選択します。さらに細かい条件で選択したいという場合には、後述の「期間」で条件を設定できるので、ここではまず大体の期間を選びましょう。

指標

ここでは、コホート分析で計測する指標を設定します。「ユーザー」「合計」「定着率」から、自分の計測したい指標を選択しましょう。それぞれの指標では、下記のような内容が確認できます。

 

【ユーザー】

  • ユーザーあたりのセッション数
  • ユーザーあたりのセッション時間
  • ユーザーあたりのページビュー
  • ユーザーあたりの収益

【合計】

  • セッション数
  • セッション時間
  • ページビュー数
  • ユーザー数
  • 収益

【定着率】

  • ユーザー維持率

 

分析したい内容に合わせて、一番適した指標を選択してください。

期間

期間ではコホートのサイズで設定した、「日別」「週別」「月別」の内容に応じて、計測する期間を設定します。それぞれ、下記のように細かく期間を設定できるので、より具体的に期間ごとの分析を行うことが可能です。

 

【日別】

  • 過去7日
  • 過去14日
  • 過去21日
  • 過去30日

【週別】

  • 先週
  • 過去3週
  • 過去6週
  • 過去9週
  • 過去12週

【月別】

  • 先月
  • 過去2か月
  • 過去3か月

 

期間ごとに分析すれば、より詳細にユーザーの動向が把握できるので、定期的に期間を設定して分析を行ってみてください。

コホート分析の結果を活用するには?

上記の内容で設定して分析ができるようになりました。では、分析した結果は具体的にどのような場面で活用していけば良いのでしょうか。ここでは、コホート分析の結果を活用するための方法について紹介していきます。

  • ユーザーが離れていくタイミングで訴求
  • より具体的なKPIの設定
  • SEO対策に活用して施策を実行

それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。

ユーザーが離れていくタイミングで訴求

コホート分析では、ユーザーを獲得してからどのくらいの期間で解約をする人が多いのかを把握できます。そのため、ユーザーの減少するタイミングに合わせて効果的な施策を実行できるのです。

 

例えば、SaaSサービスで契約してから一週間で解約をするユーザーが多いのであれば、チュートリアルを伝わりやすいように改善する、初期設定をできるだけ簡潔にするなど、利用者がつまずいてしまわないための施策が求められます。

 

契約から一年ほどで解約するユーザーが多い場合は、そのタイミングに合わせてメールでユーザーにアプローチするなどの方法を実行すると良いでしょう。

 

このように、コホート分析を活用すれば、ユーザーが離れていきやすいタイミングでダイレクトにアピールすることが可能です。解約率を軽減するための効率的な施策を検討するには、コホート分析が必須といえるでしょう。

より具体的なKPIの設定

コホート分析は、ユーザーがサービスを契約してからどのくらいで再訪しているのか、サービスを使用する頻度は週に何回くらいかなど、足跡を追いかけるようにユーザーの動向を見ることが可能です。そのため、より具体的なKPIを設定するときにも役立ちます。

 

サービスでボトルネックになっているのはどの部分なのかが明確になれば、それを改善するための方法も立案しやすくなるでしょう。解約率の減少、新規顧客の増加、サービスの改善、カスタマーサクセスによるサポートなど、現状で一番必要とされるKPIが把握できれば、企業の最終目標であるKGIに辿り着くまでの道筋が具体的なタスクとして分かるようになります。

 

目標までの道筋が目に見えて分かるようになれば、無駄な業務に時間を割く必要がなくなり、社員のモチベーションアップにもつながるでしょう。

SEO対策に活用して施策を実行

コホート分析はSaaSビジネスやマーケティングに役立つのはもちろんのこと、SEO対策にも活用できます。SaaSビジネスを行っている企業でも、サービスを紹介しているサイトを上位表示させたいといった場合には、コホート分析を応用してSEO対策に利用してみると良いでしょう。

 

SEO対策で利用する場合には、サイトに訪問するユーザー数が減少するタイミングに合わせて、記事数を増やす、文字数が多い記事を公開する、内部リンクが多い記事をアップするなどの方法が有効です。

 

ユーザーのサイト内での行動を活性化させることで、記事そのものの評価がアップする効果が期待できます。SEO対策にお悩みの方も、ぜひコホート分析を活用してみてください。

まとめ

コホート分析はユーザーの行動をグループ化して分析する手法のことで、マーケティングやSEO対策に役立つ指標として活用されています。ユーザーの維持率が分かる、ユーザーの行動への理解がLTV向上につながるなどの理由から、現在はSaaS業界でも注目を集めています。

 

WEBサービスにおけるコホート分析は、Googleアナリティクスから行うことが可能です。コホートの種類、指標、コホートのサイズ、期間をそれぞれ設定して、分析をしていきます。

 

コホート分析で設定する際の指標について詳しく知りたい、コホート分析を活用してKPIを設定したいという方は、下記の資料もご参照ください。

 

監修者

広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長

プロフィール

京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。

公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。

成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。

講演実績

株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。

論文

『経営指標とKPI の融合による意思決定と行動の全体最適化』(人工知能学会 知識流通ネットワーク研究会)

特許

「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)

アクセラレーションプログラム

OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。

取材実績

日本経済新聞、日経産業新聞、フジサンケイビジネスアイ、週刊ダイヤモンド、Startup Times、KANSAI STARTUP NEWSなど。

著書

『飲食店経営成功バイブル 1店舗から多店舗展開 23の失敗事例から学ぶ「お金」の壁の乗り越え方』(合同フォレスト)

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