弁護士ドットコムの主要KPIは?運用のポイントと合わせて解説
2022.12.15
自社のKPIを設定する際は、自社のビジネスモデルや事業、規模に合わせて適切な指標を設定することが大切です。しかし、どんなKPIがあるのか詳しく知らない、自社に適したKPIが何なのか分からないという方もいますよね。
そういった場合は、似た事業を行っている会社や企業規模が似ている会社のKPIを参考にすると良いです。
この記事では、弁護士ドットコムの事業内容や業績推移などと合わせて、主に設定されているKPIを解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
弁護士ドットコムの会社概要
会社名 | 弁護士ドットコム株式会社(Bengo4.com,Inc.) |
所在地 | 本社 〒106-0032 東京都港区六本木四丁目1番4号 黒崎ビル |
代表取締役 社長 | 元榮 太一郎 |
設立 | 2005年7月4日 |
資本金 | 439百万円(2022年3月現在) |
弁護士ドットコムの事業内容
弁護士ドットコムでは、人と専門家をつなぐポータルサイトを多数運営しています。また、Webで完結できるクラウド契約サービスなども提供しているなど、ビジネスに役立つさまざまなサービスを行っている会社です。ここでは、弁護士ドットコムの代表的な事業内容を4つ紹介していきます。
- 弁護士ドットコム
- 税理士ドットコム
- BUSINESS LAWYERS
- クラウドサイン
順番に見ていきましょう。
弁護士ドットコム
弁護士ドットコム株式会社の事業の中でもっとも代表的といえるサービスが、一般ユーザーと弁護士をつなぐプラットフォーム「弁護士ドットコム」です。
一般ユーザーの法律トラブルなどの悩みを解決するためのもので、トラブル対処法や基本的な法律知識を解説する法律ガイド、弁護士への無料相談ができるみんなの法律相談、自分に合った弁護士が探せる弁護士検索などの機能があります。
その他、弁護士向けのサービスとしては、弁護士同士の交流や集客支援ツールの利用ができる弁護士マイページ、法律書籍のサブスクリプションサービスの弁護士ドットコムLIBRARY、オンラインセミナー、案件管理システムなどがあります。弁護士が仕事を進めていく上で役立つサービスが豊富に搭載されており、一般ユーザーだけでなく弁護士側からも使いやすいサービスとなっています。
税理士ドットコム
税理士ドットコムは弁護士ドットコムの税理士版で、一般ユーザーと税理士とつなぐためのプラットフォームです。一般ユーザーの税務に関する相談に税理士が答えてくれます。主なサービスは、無料税務Q&Aサービス、税理士紹介サービス、税理士検索、税務に関する情報配信などです。
「確定申告を依頼したい」「相続が発生したけど手続きが分からない」などの税金に関する悩みを気軽に相談できるパートナーができるといったメリットがあります。
BUSINESS LAWYERS
BUSINESS LAWYERSは、企業法務に関わる方に向けた企業法務ポータルサイトです。弁護士による最新実務に関する解説記事や会社法や人事労務などの実務に役立つ法律Q&Aまとめ、最新の法律関連ニュースやセミナーに関する情報の提供、企業法務の第一線で活躍する弁護士のプロフィール掲載などを行っています。
その他、企業のコンプライアンス研修の課題をオンライン動画でお手伝いするBUSINESS LAWYERS LIBRARYなどのサービスも提供しています。
クラウドサイン
クラウドサインは契約締結から契約書管理までをまとめて行えるクラウド型の電子契約サービスです。契約交渉が済んだ契約書をアップロードして相手方が承認するだけで契約を締結できます。書類の受信者はクラウドサインに登録する必要がないため、取引先がクラウドサインを導入していなくても使用可能です。
コストを削減できる、契約業務を効率化できるといったメリットがあり、官公庁や金融機関も利用するほどの安心のセキュリティとなっています。Microsoft Teams、Kintone、sansanなどとの連携も可能で、今企業で導入しているビジネスソリューションと合わせて利用できます。
弁護士ドットコムではその他にも、契約書管理を自動化する「クラウドサイン AI」、紙の契約書のスキャンやクラウドサイン上への書類情報の入力、データのインポートまでを全て代行する「クラウドサイン SCAN」、「対面申し込み」に特化したクラウド電子契約サービス「クラウドサイン NOW」、などのサービスがあります。
弁護士ドットコムの市場規模
「弁護士ドットコム」は日本最大級の法律相談ポータルサイトで、2022年7月時点で会員弁護士数が20,322人、相談数は1,164,588件となっています。法律トラブルの解決をサポートするコンテンツが多数用意されているため、一般ユーザーからも弁護士からも広く利用されているサービスです。
「税理士ドットコム」も同様に日本最大級の税務相談ポータルサイトで、利用実績No.1を誇っています。
また、クラウドサインは導入社数130万社以上、累計送信件数1000万件超の国内シェアNo1の電子契約サービスとなっており、有料導入企業件数、契約送信件数、市場認知度ともにNo.1です。弁護士ドットコムでは、それぞれ異なる分野で最大級のサービスを提供しています。
弁護士ドットコムの業績推移
2018年 3月期 | 2019年 3月期 | 2020年 3月期 | 2021年 3月期 | 2022年 3月期 | |
売上高(百万円) | 2,318 | 3,132 | 4,132 | 5,318 | 6,877 |
営業利益(百万円) | 503 | 510 | 392 | 172 | 1,139 |
当期純利益(百万円) | 323 | 333 | 260 | 64 | 702 |
弁護士ドットコムは、売上が順調に右肩上がりで向上しています。営業利益と当期純利益は2021年3月期に数値を落としたものの、2022年3月期には回復し、2020年3月期よりも大幅に数値を伸ばしていることがグラフから分かります。
売上高の四半期推移から見ると、特にクラウドサインの業績が大幅に伸びていることが分かります。今後もクラウドサインの利用者が増えていけば、より高い売上が期待できるでしょう。
今後の展開
弁護士ドットコムの今後の展開としては、「弁護士ドットコム」では集客サービスだけでなく、学習支援サービスや業務支援サービスの提供も進めていき、弁護士向けサービスのプラットフォームとしての地位をより強固にするとしています。
また、クラウドサインでは引き続き大企業を中心に獲得することを目指しており、業界No.1プレイヤーとしてのポジションをより強固にしていく方針です。また、クラウドサインでは契約の作成からレビュー・締結・管理まで一元管理できるサービスとして地位を確立してきましたが、今後はさらに契約管理、レビューサービスを展開していく予定とされています。
弁護士ドットコムのKPI運用のポイント
弁護士ドットコムでは、ディレクター、エンジニア、デザイナーなどのプロダクトに関わる人すべてにKPIを浸透させていくことが大切としています。KPIを社内に共有することで、全員が共通の目標に向かって業務を遂行できます。
また、共有をする際には、なぜそのKPIを設定するのか、そのKPIの数値が上がる(下がる)ことで事業にどのような影響があるのかまでしっかりと共有することが大切です。それによって、誰もがKPIの重要性を理解して、数値からデータの分析ができるようになります。
そのため、弁護士ドットコムではダッシュボードの作成や分析手法の共有を進めており、会社全体がプロダクトのKPIを意識できる環境作りを目指しているようです。
弁護士ドットコムで公開されているKPI
ここからは、弁護士ドットコムで公開されているKPIを一部抜粋して紹介していきます。弁護士ドットコムでは決算説明資料でさまざまなKPIの数値が公開されているため、今回はその中から紹介していきます。
- 月間サイト訪問者数
- 有料会員数
順番に見ていきましょう。
月間サイト訪問者数
弁護士ドットコムの訪問者数の推移は、2019年までは順調に右肩上がりを続けていましたが、2020年に数値が下がってしまっています。しかし、今は回復傾向にあり、数値を伸ばしている状況です。今後もこの推移を維持できれば、また2019年の数値まで戻して行けるだけでなく、さらなる成長も期待できるでしょう。
有料会員数
弁護士ドットコムの有料会員数は2020年から2021年前期にかけて減少していたものの、2021年後期から2022年にかけて数値は回復しています。グラフでは2019年の192,243人が最高の数値となっており、現在は181,188人なので、このままの推移でいけば最高値を超えることも難しくないでしょう。
弁護士ドットコムの主なKPI
ここからは、弁護士ドットコムが主に設定しているKPIについて解説していきます。KPI設定に悩んでいる方なども、ぜひ参考にしてみてください。
- MRR
- チャーンレート
- ユニットエコノミクス
順番に見ていきましょう。
MRR
弁護士ドットコムでは、月間経常収益を表すMRRは公開されていません。年間の経常収益を表すARRが公開されているので、今回はそちらのグラフを見ていきましょう。2021年には数値の減少を見せていたものの、2022年には大幅な向上を見せています。2018年から見てみると過去最高水準となっているのが、グラフから読み取れるでしょう。
MRRについて詳しく知りたい方は、「SaaSの主要KPI【MRR】とは?概要や計算方法を分かりやすく解説」の記事をご参照ください。
チャーンレート
弁護士ドットコムではチャーンレート(解約率・顧客離脱率)の数値を公開していません。しかし、有料会員数の数値が一定の水準を保っていることを考えると、低い水準で維持していると判断できるでしょう。解約率が高いと、新規顧客を獲得できても全体の数値は向上しません。そのため、今後さらなる成長を遂げるには、解約率の数値の維持が重要になります。
チャーンレートについては、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」の記事からご覧いただけます。
ユニットエコノミクス
弁護士ドットコムはユニットエコノミクス(生涯価値、顧客生涯価値)の数値も公開していません。ユニットエコノミクスはLTV(顧客生涯価値)÷ CAC(顧客獲得単価)で計算できます。LTVは顧客の平均単価 ÷ チェーンレート(解約率)、CACは顧客獲得コスト ÷ 新規獲得顧客数で算出可能です。
弁護士ドットコムではこれらの数値も公開されていないため、詳しい数値は計算できませんが、解約率が低い状態で維持できていることや順調に有料会員数が増加していることを考えると、ユニットエコノミクスも高い数値が期待できるのではないでしょうか。
ユニットエコノミクスについては、「SaaSの主要KPIと【ユニットエコノミクス】とは?計算方法や目安を紹介」の記事で解説しています。
まとめ
弁護士ドットコムは人と専門家をつなぐポータルサイトを多数運営している企業です。主な事業としては、弁護士ドットコム、税理士ドットコム、BUSINESS LAWYERS、クラウドサインなどが挙げられます。
経常利益や当期純利益は2021年に数値を落としたものの2022年には大幅に数値が向上していますし、売上高は順調に向上し続けているため、今後の成長も期待できるでしょう。
そんな弁護士ドットコムでは、主なKPIとして、MRR、チャーンレート、ユニットエコノミクスなどを設定しています。
さらに、KPI運用のポイントとして、下記の3つが挙げられています。
- プロダクトに関わる人すべてにKPIを浸透させる
- 共有をする際には、KPIを設定する理由も合わせて共有する
- 誰もがKPIのデータの分析ができるようにする
KPIの運用に悩んでいる方は、これらのポイントを参考にしてみてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。