スタートアップ企業に必要なランウェイとは|重要な理由や計算方法をご紹介
2022.12.15
スタートアップ企業では、ランウェイを把握しているかしていないかで、企業戦略に大きく影響が出ます。
この記事では、企業におけるランウェイとは何か、スタートアップ企業にランウェイが重要な理由、ランウェイの計算方法などを解説していきます。ランウェイについて知りたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
企業における「ランウェイ」とは
ベンチャーやスタートアップ企業でよく耳にするランウェイ。ランウェイはビジネス用語で、会社の資金がなくなるまでの猶予期間を表す言葉です。ランウェイを把握していれば、企業戦略の見直しや経営方針の転換に役立つでしょう。
ここでは、ランウェイの意味やランウェイとともに用いられるバーンレートについて解説していきます。
ランウェイの意味
ランウェイは会社の資金がなくなるまでの猶予期間で、簡単にいうと会社が倒産するまでの期間です。多くの企業では、ランウェイを計算することで資金の猶予を把握して、企業戦略の見直しや経営方針の転換を行っています。
特に、生存率が低い起業1年未満のベンチャーやスタートアップ企業では、ランウェイの把握が重要です。ランウェイを把握して資金の猶予に合わせた適切な戦略を立案できれば、コストの無駄を軽減して、企業生存率アップにつなげられるでしょう。
ランウェイとともに用いられるバーンレートとは
ランウェイとともに用いられるビジネス用語として、バーンレートという言葉があります。バーンレートは、企業が1ヶ月の間に費やすコストを示す指標です。スタートアップ企業やベンチャー企業は売上が少ないですが、固定費や人件費などのコストはかかってしまいます。バーンレートでは、そういった経営に必要なコストを計算して把握することが可能です。
また、バーンレートはランウェイを計算する際に用いられます。そのため、ランウェイを把握するためにはバーンレートの算出方法も知っておいた方が良いでしょう。
グロスバーンレート
グロスバーンレートは、企業が1ヶ月に使った現金の合計を指します。グロスは英語の「gross」と同じ意味で、簡単にいうと「総コスト」のことです。
ネットバーンレート
ネットバーンレートは、グロスバーンレートから収入を引いた額のことです。バーンレートは一般的に、企業の資金余力を把握するために計算するため、バーンレートという言葉だけで表す場合には、ネットバーンレートを指しているケースがほとんどです。
スタートアップ企業にランウェイが重要な理由
スタートアップ企業にとってランウェイは重要とされていますが、なぜ重要なのでしょうか。ここでは、スタートアップ企業にランウェイが重要な理由を2つ解説していきます。
- 資金状況の把握や経営戦略の見直しに役立つ
- 投資家からの信頼を得やすい
ランウェイを把握しておくことで、どのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
資金状況の把握や経営戦略の見直しに役立つ
ランウェイを計算すれば、会社の資金状況を把握することが可能です。その際に、資金状況が思わしくなければ、経営戦略を見直すきっかけになるでしょう。
ランウェイは最低でも12ヶ月、理想をいえば18ヶ月の確保が望まれます。スタートアップ企業に限らず、ランウェイが12ヶ月未満になってしまった場合は経営戦略を見直すべきでしょう。リスクのともなう経営戦略の大きな見直しは、ランウェイをより短くしてしまうリスクもありますが、成功すればその後の企業成長を期待できます。
投資家からの信頼を得やすい
ランウェイが確保されている企業は投資家からの信用を得やすいため、事業拡大における資金調達もスムーズに行いやすくなります。逆に、ランウェイが12ヶ月未満の状態では、投資家から「もうすぐ倒産するのでは」と判断されてしまう可能性も高いです。
ランウェイを算出して、期間に余裕がない場合は、原因を究明して改善に努めましょう。経営が厳しい状態からどのような戦略を立てて改善に導いたのかをデータで具体的に提示できれば、投資家からの信頼も厚くなるでしょう。
ランウェイはどうやって算出すればいい?
ここまで、ランウェイの意味や重要とされる理由を説明してきました。では、ランウェイはどのように算出すれば良いのでしょうか。実際にランウェイを算出するための計算方法を解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
ランウェイの計算方法
ランウェイの計算方法は「残りの資金÷バーンレート」です。例えば、残りの資金が600万円、バーンレートが200万円だったとします。その場合、この会社のランウェイは「600万円÷200万円=3ヶ月」です。
つまり、あと3ヶ月で資金が尽きてしまうということになるので、何かしらの経営戦略を考える必要があるでしょう。このように、バーンレートを活用すれば、ランウェイを計算できます。ランウェイの計算方法は後ほど紹介するので、そちらも参考にしてみてください。
ランウェイの一般的な目安
前述の通り、ランウェイは最低でも1年間を目安に確保しましょう。一般的な企業は18ヶ月のランウェイ確保を理想としていますが、起業したてのスタートアップ企業には難しいはずです。最初は12ヶ月の確保を最低ラインとして、業績や事業拡大にともなって徐々にランウェイを長くしていくと良いです。
バーンレートの計算方法
バーンレートは月ごとに表示するのが一般的なので、計算する際には「1ヶ月でかかった総経費-1ヶ月の総収入」となります。月の総支出が3000万円で総収入が1500万円だった場合には、「3000万円-1500万円=1500万円」で、バーンレートは1500万円です。
総収入が総支出を上回っている企業は、バーンレートがマイナスの値になります。つまり赤字ということなので、売上アップを目指すかコストの削減を検討するかといった施策を練った方が良いでしょう。
ランウェイを計算する際には、まずバーンレートから計算するようにしてください。
ランウェイが短くなってきたら?
ランウェイが短くなってきたら、企業戦略の見直しや経営方針の転換を行いましょう。企業戦略の見直しや経営方針の転換が必要となるランウェイの目安は12ヶ月ですが、12ヶ月を切ってから行動に移すと、実行のときにはすでに問題解決が難しい状況になっている可能性があります。
少しでもランウェイが短くなってきた、以前と同じランウェイが確保できていないと気付いた時点ですぐに行動することを心がけてください。では、具体的にランウェイを確保するためにどのような方法を取れば良いのでしょうか。ここでは、2つの方法を紹介していきます。
費用を見直してコストカット
ランウェイが短くなってきたら、費用を確保するためにコストカットをしましょう。必要以上にお金がかかってしまっているところはないか、少しでも削減できるところがないか、費用を見直してみてください。
まずは、無駄に使ってしまっている消耗品はないか、購入しなくても仕事に影響しないものはないかなどをチェックしましょう。家賃や水道光熱費などの固定費の削減は難しいですが、企業全体に呼びかければ多少軽減できるはずです。
人件費を削減すると社員のモチベーションの低下にもつながってしまうため、あまりおすすめできません。人件費をカットしたいのなら、慎重に判断して社員から不満が生まれないようにする必要があります。
資金調達でキャッシュを増やす
ランウェイが短くなった場合には、資金調達を行ってキャッシュを増やすのも方法の一つです。しかし、ランウェイに余裕がない企業が資金調達を行うのは難しいので、融資などを受けるのなら、できるだけ早めに行動した方が良いでしょう。
スタートアップ企業が銀行などで融資を受けるのは難しいですが、日本政策金融公庫などでは比較的融資を受けやすいです。会社の業績などを考慮して、さまざまな資金調達方法の中から自社に合った方法を選びましょう。
スタートアップ企業がランウェイを確保するには予実管理が重要
スタートアップ企業がランウェイを確保するには、予実管理が重要とされています。予実管理は予算と実績を管理することで、経営を継続させるためには欠かせない業務です。
予実管理を行っていれば、経営活動の問題を早期に発見しやすく、問題が深刻になる前に把握することで改善策も立てやすくなります。ランウェイが短くなる前に早期に問題が発見できれば、安定したランウェイを確保できるでしょう。
予実管理のポイント
ランウェイの確保には予実管理が重要ですが、予実管理を行う際にはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここでは、予実管理のポイントを5つ解説していきます。
- 適正な予算を設定する
- 定期的にチェックする
- 問題が発生した場合は必ず原因を究明する
- 細かい数字を気にしすぎない
- 情報を素早く集計できる環境を整備する
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
適正な予算を設定する
適正な予算を設定することは、予実管理において非常に重要です。低い予算設定は目標を容易に達成できますが、それでは企業の成長は見込めません。逆に高すぎる予算設定は、社員が必要以上に無理をしないと達成できなくなるので、社員のモチベーションが低下してしまう可能性があります。
予算を設定する際には、「努力は必要だが、達成不可能ではない」程度に設定するようにしましょう。
過去のデータを参考にすると適切な数値での予算設定を行いやすくなります。また、その際には事業拡大における期待を込めて少し予算を高くするといった柔軟な対応をすると、今の企業戦略や経営方針に合わせた数値を設定できるでしょう。
定期的にチェックする
予算を設定したら、達成ができそうか定期的にチェックすることが大切です。決算の時期になって、「実は全く達成できていませんでした」では、予実管理を行う意味がありません。予実管理は1ヶ月ごとに実施するのが望ましいです。
経営陣は予実管理を経理担当に任せがちな傾向なので、全体で共有できる環境を整え、会社全体が予実管理に関心を持てるようにすると良いでしょう。
問題が発生した場合は必ず原因を究明する
問題が発生した際には、なぜそれが起きたのか、原因究明を必ず行いましょう。原因究明する上でもっとも重要なのは、原因の本質をとらえることです。表面的な原因究明では根本的な理由を把握できていないので、再発する可能性も考えられます。問題が起きた際には徹底的に調査し、問題の真因を把握できるように努めましょう。
細かい数字を気にしすぎない
正確に予実管理を行うのも大切ですが、細かい数字を気にしすぎるのもよくありません。予実管理においてもっとも重要なのは、予算の構成要素や優先順位を見極めることです。
例えば、数パーセントの予算差と数十パーセントの予算差では、後者を優先的に改善するべきでしょう。原因究明は大切ですが、優先順位をつけて対応する必要があります。「細かい数字を気にして大きな差に気付けなかった」といった問題が発生しないように、注意してください。
情報を素早く集計できる環境を整備する
予実管理は最新の情報を参考にしなければ、最大限の効果が得られません。進捗を確認するのが1週間遅れでは、問題の発見も遅れてしまうでしょう。そのため、企業では情報を素早く集計できる環境を整備する必要があります。
予実管理に役立つビジネスツールを導入するなど、効率的に素早く情報集計できる環境を整えましょう。
予実管理にはScale Cloud
Scale Cloudでは必要な情報をリアルタイムで収集・更新できるため、部署間での情報共有も簡単です。今バラバラに管理されているデータを自動で集約して統合するので、わざわざデータを入力し直す手間も必要ありません。
予実のズレも瞬時に把握できて、大きな問題につながる前にリカバリーすることが可能です。問題を早期に解決できれば、ランウェイの確保もしやすくなるでしょう。ランウェイの確保が特に重要となるスタートアップ企業やベンチャー企業は、ぜひScale Cloudの導入を検討してみてください。
まとめ
企業におけるランウェイは、会社の資金がなくなるまでの猶予期間を指しており、簡単にいうと会社が倒産するまでの期間です。企業が1ヶ月の間に費やすコストを示すバーンレートとともに、スタートアップ企業で使われることが多いビジネス用語です。
ランウェイを計算して管理していれば企業の資金状況を把握しやすく、手遅れになる前に経営戦略を見直しなどを行えます。安定したランウェイの確保には、予実管理が重要です。予実管理を行っていれば、ランウェイが短くなる前に経営における問題を発見しやすいため、スタートアップ企業にとっては特に重要な業務といえます。
予実管理は扱うデータが多く大変というイメージを持っている方が多いですが、ツールを使えば簡単に行うことが可能です。Scale Cloudでは、データの自動集約、リアルタイムでの更新、社内での共有が全て一つのツールでできるので、ぜひ導入を検討してみてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。