スタートアップ企業にKPIが重要な理由|KPI設定の事例や設定方法も紹介
2022.12.15
企業の目標設定の方法としてKPIが注目されていますが、KPIはスタートアップ企業こそ行うべきといわれています。では、なぜスタートアップ企業にKPIが重要なのでしょうか。
ここでは、スタートアップ企業にKPIを行うべき理由、KPIを設定する流れ、スタートアップ企業のKPI設定のポイントなどを解説していきます。
スタートアップ企業のKPIの事例なども合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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スタートアップ企業こそ「KPI管理」が重要
KPIを設定すれば、ゴールまでの目標達成のプロセスが可視化され、より多面的な視野でビジネスを捉えられます。そのため、より企業としての成長が求められるスタートアップ企業にこそ、KPIが重要です。
ここでは、そもそもKPIとは何なのか、KGIとは何かを解説していきます。
KPIとは
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。簡単にいうと「業績達成(Performance)のカギ(Key)となる指針(Indicator)」という意味で、最終的な企業のゴールに向けて、どのようなプロセスが必要なのかを明確にするための指標です。
KGIとは
KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、「重要目標達成指標」という意味になります。「ゴール目標(Goal)のカギ(Key)となる指針(Indicator)」で、最終的なゴール目標がどの程度達成されたのかを数値で可視化したものです。KGIが企業の最終目標だとすれば、KPIはそこに至るまでの中間地点となります。
スタートアップ企業がKPIを行うべき理由
スタートアップ企業がビジネスを展開する上で直面する大きな課題は、「どうやって目標達成力を高めて企業の成長につなげていくか」です。その課題を解決する一つの手法として挙げられているのがKPIとなります。
KPIでゴールまでの目標達成のプロセスを「見える化」すれば、以下のようなメリットが得られます。
- 社員間で目標を共有できる
- 企業を大きくしていくためのプロセスが明確になる
- タスクに優先順位がつけられる
- 少ない労力で無駄なく最大級の効果が得られる
ここでは、それぞれのメリットについて具体的に見ていきましょう。
社員間で目標を共有できる
ビジネスを成功させるためには、社員間で同じ目標を共有して、同じ方向へ向かっていくことが重要です。
KGIで企業の目標を定めて共有し、現状から最終目標までのギャップを理解した上で、最終目標に至るまでのKPIを設定すれば、企業全体で「何を、いつまでに、どれくらいすべきか」の目標達成値とアプローチ方法が明確になります。
同じ目標を共有して行っていけば、スケジュールに遅れが生じた際なども部署やチームを超えて協力してフォローができるでしょう。
企業を大きくしていくためのプロセスが明確になる
スタートアップ企業がKPIを行うべき理由として、企業を成長させていくためのプロセスが明確になるというのが大きいでしょう。
最終ゴールを見据えてフローを決定していけば、ゴールまでにどのようなアクションをとれば良いのかが明確になります。順序立ててKPIをこなしていけばKGIにたどり着けるので、企業を大きくするためのプロセスを段階を踏んで的確にこなしていけるというのが、KPIのメリットです。
タスクに優先順位がつけられる
KPIを設定すれば、目標達成までのプロセスを可視化できて、ゴールに向けてのタスクの優先順位も分かりやすくなります。それにより、社員は行うべきタスクを把握できるので業務に集中しやすく、無駄なタスクを行ってしまう心配もなくなるでしょう。
いくらゴールを設定しても、実行するタスクの優先順位が曖昧だったり無駄なタスクを取り込んでいたら、高い成果は望めません。重要な業務に集中して取り組めれば、企業全体の生産性の向上にもつながります。
少ない労力で無駄なく最大限の効果を得られる
KPIでタスクの優先度が可視化されれば、「どのタスクにどれだけの人材や労力を注ぐべきか」が明らかになります。そのため、人材や労力の無駄がなくなり、少ない労力で最大限の効果を得られるようになるでしょう。
さらに、人材の適材適所なども見えてくるため、個人のパフォーマンスを高めながらより効率的に業務を進めることも可能です。
KPIを設定する流れは?
KPIを設定すべき理由について解説しましたが、ここからはKPIの設定はどのように行っていけば良いのかを説明していきます。
KPIを設定する流れは、主に以下の3ステップです。
- 明確なゴールをどう設定するか
- ゴールまでのプロセスはどう定める
- ゴールまでの各プロセスをどう指標し効率化を図るか
KPIを効果的に設定するために、それぞれのステップを掘り下げて見てみましょう。
KGIでゴールを明確にする
KPIを設定する最初のステップで必要な点は、「最終目標の達成指標(KGI)はどこか」を明確にすることです。最終ゴールが明確になれば、ゴールに到達するまでのプロセスもより具体的に設定しやすくなります。
KPIを設定してKGIまでのルートを定める
KGIまでのルートを定める上では、現状を正確に分析するのが重要です。自社商品やサービスの特徴、競合他社との違いなどを分析して自社の現状を把握できれば、最終目標との差が明確になり、そこに至るまでに必要なタスクやプロセスも具体的になります。
タスクを優先度や重要度に合わせて振り分けて、KGIまでのフローに組み込んでいければ、KPIの設定も容易です。
KPIツリーを作成してタスクを可視化する
KPIを設定する際には、KPIツリーを作成すると必要なタスクが可視化できて、社員同士で把握しやすくなります。
KPIツリーとは、目標達成ゴール(KGI)への具体的な行動指標(KPI)を細分化し、成果を数値で見える化したロジックツリーのことです。KPIツリーによってタスクの可視化ができれば、タスクの優先度、重要度、進捗度合いが明確になります。
また、社内でKPIツリーを共有すれば、社員の目的意識を持ったパフォーマンス向上へとつながるでしょう。さらに、タスクに遅れが生じた際には、他のタスクに余裕があるチームからのサポートしてもらうなど、社内全体でKPI達成のために協力して解決につなげられます。
KPIツリーの作成にはツールの活用がおすすめ
KPIツリーの作成には、ツールの活用がおすすめです。KPIツリーはホワイトボードに記載するなどのアナログな方法も可能ですが、あまり効率的とはいえません。
KPIツリーの作成にツールを活用すれば、テンプレートなどを活用しながら簡単に入力ができますし、データの一元管理ができるツールが多いので社内での共有も簡単です。
データやタスクに応じた色分けなどを行えば、さらに可視化しやすくなって一目で分かりやすいデザインにできるでしょう。
スタートアップ企業のKPIの事例
ここでは、新興ITベンダーでめざましい急成長を続けている「株式会社SHIFT」のKPIの成功事例を見ていきましょう。
株式会社SHIFTは、第三者ソフトウェアテスト事業を主軸に運営しているスタートアップ企業で、2025年に売上高1,000億円を目指す「SHIFT1000」を目標として掲げています。SHIFTのKPIマネジメントの注目すべきところは、高い目標を因数分解して行動レベルまで落とし込み、日々行動レベルの進捗まで確認している点です。
基本的な方法は先ほど紹介したKPI作成の流れに沿っているのですが、株式会社SHIFTではそのプロセスを他社よりも詳細に行っています。
1. KGIの設定→事業KPIの設定→行動KPIの設定など、細かく因数分解していく
2. 日々の活動にまでKPIを落とし込む
3. デイリーまたはウィークリーで進捗をモニタリングする
4. モニタリング結果を、高速でPDCAを回していく
この流れでKPIを設定し、達成していくことで、KGIにたどり着くというシステムです。デイリー、もしくはウィークリーで進捗管理を行っているので、タスクの遅れなどもすぐに把握できるのがメリットです。
株式会社SHIFTの成功事例の詳細はこちら→急成長を続ける「SHIFT」のKPI
スタートアップ企業が目指すべきKPI指標は?
スタートアップ企業は、まだ企業としての方向性が定まっていないという場合も少なくありません。そのため、KPIの指標として設定すべき項目が分からないという企業もいるでしょう。
ここでは、スタートアップ企業が目指すべき指標やキーフレーズを紹介していきます。
- T2D3
- PMF
- ユニコーン
- バーンレート
KPIの導入を考えているスタートアップ企業は、まずは上記の4つの項目を検討してみてください。
T2D3
T2D3は、「Triple」が2回、「Double」が3回という意味です。3倍、3倍、2倍、2倍、2倍というように毎年売上が伸びていくと、良いスタートアップができているという指針になります。つまり、5年で72倍の売上を達成するのが理想的ということです。
T2D3は、主にSaaS事業を行っているスタートアップ企業を評価するための指標とされています。「起業してからの売上」ではなく、「サービスを開始してからの売上」を評価するものなので、KPIとして設定する際には注意しましょう。
PMF
PMFは「Product Market Fit」の略で、製品やサービス(プロダクト)が市場(マーケット)に適合(フィット)している状態を表します。PMFが重要視されるのはスタートアップ企業に限った話ではありませんが、新たな製品やサービスを提供するスタートアップ企業では、特に注目すべき項目です。
KPIとしてPMFを設定する場合は、アンケートなどによるユーザー調査や、顧客のロイヤリティをチェックするNPS(Net Promoter Score)などを活用して明確に定めましょう。具体的な数値で設定すればKPIの指標として分かりやすく、社員同士での目標の共有もしやすくなります。
ユニコーン
ユニコーン企業は、成長性が高いスタートアップ企業を指す言葉です。ユニコーン企業と呼ばれるためには、以下の3つの条件をクリアしている必要があります。
- 創業から10年以内
- 企業評価額が10億ドル以上
- 株式市場に上場していない未上場企業
かつては、Facebook社(現Meta)やTwitter社もユニコーン企業でした。日本では、株式会社メルカリなどもユニコーン企業でしたが、現在は上場しているためユニコーン企業を卒業しています。ユニコーン企業はアメリカや中国の企業が多く、日本はまだまだ少ないですが、だからこそスタートアップ企業の目標としてピッタリでしょう。
バーンレート
バーンレート(Burn Rate)は、企業が1ヶ月あたりに消費する金額を示す指標です。スタートアップ企業は資金が少なく、売上もなかなか得られません。そのため、バーンレートを管理して、「資金がなくなるまでの猶予」を把握しておくことが重要です。
資金がなくなるまでの猶予が明確になれば、いつ資金調達をすべきなのか、大幅なコスト削減を検討すべきなのか、といった判断をしやすくなります。
バーンレートの計算方法は簡単で、「今までにかかった総コスト÷期間(月)」で算出可能です。KPIでバーンレートを設定する際には、少しでも数値を減らせるように施策を検討しましょう。
KPIが達成できなかった場合は?
KPIを設定しても、思ったような成果が上がらないときは、実行過程のプロセスや実際の行動指標について、振り返り分析する必要があります。ここでは、KPIが達成できなかった場合の、根本的な原因の分析法とその原因に対する改善策を、深く掘り下げて見ていきましょう。
根本的な原因を分析する
KPIを達成できない場合には、「根本原因分析」を行ってみましょう。根本原因分析とは、ビジネスの世界で問題の解決や分析に使われるロジックツリーです。
KPIが達成できなかったのなら、「なぜ達成できなかったのか」をどんどん深掘りして、原因だけでなく真因を探っていきます。
達成できなかった理由として、「人員が足りなかった」、「時間が足りなかった」などが挙げられるのなら、「なぜ人員が足りないのか」、「なぜ時間が足りないのか」と疑問を重ねていくことで、「できなかった本当の理由」が浮かび上がるでしょう。
その原因を考慮しながら改善する
根本原因分析でKPIが達成できなかった本当の理由が分かったら、その原因を考慮しながら改善していきます。
例えば、KPIが達成できない理由が「時間がない」なら、「無駄な作業を行っていないか」、「削減できる業務タスクはないか」など、業務の見直しや改善を行いましょう。原因を客観的に判断できれば、その改善方法も客観的な目線で見つけやすくなります。
「Plan(計画)」、「Do(実行)」、「Check(評価)」、「Act(改善)」の4つからなるPDCAのサイクルを繰り返し行って、徐々に最適なKPIの設定と運用ができるようにしていきましょう。
KPIマネジメントツールならScale Cloud
Scale Cloudは、KPIマネジメントを誰でも簡単に運用できるKPIマネジメントツールです。ビジネスに必要な全ての要素を、数字で可視化できるように設計されています。
Scale Cloudはあらゆるデータの集約や統合が可能で、企業全体でKPIの共有がしやすいです。また、KPIツリーでの可視化も簡単なので、優先すべきKPIの把握がしやすく、予実のズレも瞬時に分かります。そのため、タスクが遅れている場合のリカバリーもスムーズに行いやすいでしょう。
まとめ
ビジネス環境が目まぐるしく変化している現代では、KPIは企業の成長に重要な役割を持っています。特にスタートアップ企業は、不確実性の高いビジネスにおいて限られた人員で事業展開を行うため、KPIを基軸として事業運営を行う利点は大きいです。
スタートアップ企業がKPIを設定する場合には、以下の指標を参考にして行いましょう
- T2D3
- PMF
- ユニコーン
- バーンレート
KPIツリーで行うべき業務やタスク内容を可視化すれば、企業が成長していくための道筋が分かりやすくなります。KPIツールを活用しながら、効率的なKPIの運用を行っていきましょう。
KPIツリーの作成なら、KPIマネジメントツールのScale Cloudがおすすめです。KPIツリーの作成が簡単なだけでなく、社内での共有もしやすいので、KPIの導入を考えている方は、ぜひご検討ください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。