リテンション率(顧客定着率)とは、メリットや計算方法を解説
2022.01.12
SaaS事業のKPIとしても重要とされるリテンション率。しかし、そもそもリテンション率とは何か分からないという人もいるでしょう。
この記事では、リテンション・リテンション率とは何かについて解説していきます。リテンション率の計算方法、リテンション率を上げる方法なども紹介していくので、ぜひ記事を参考にしてみてください。
リテンションとはそもそもどういう意味?
リテンション(retention)は、日本語で「保有」や「維持」を意味します。最近では人事領域やマーケティング領域でこの言葉を耳にすることが多いですが、ビジネスにおけるリテンションとはどういった意味なのでしょうか。ここでは、リテンション率とあわせて詳しく解説していきます。
リテンションとは
リテンションは複数のビジネス領域で使われますが、マーケティング領域などで用いられる場合は「既存顧客の維持」という意味になります。
つまり、リテンションマーケティングは、サービスや商品を利用・購入してくれた顧客に対して、その後も継続して利用・購入を続けてもらうために行うマーケティング活動のことです。既存顧客の維持には顧客管理や顧客関係管理を行う必要もあるため、ITツールの活用が必須といえます。
リテンション率とは
リテンション率は、ある期間内に同じサービスや商品を再利用・購入した顧客の割合を示すもので、「定着率」、「継続率」とも呼ばれるカスタマーサクセスの指標です。リテンションレートと表記されることもあります。
リテンション率を計算することで、定めた期間の中でどの程度顧客が定着したかを把握することが可能です。顧客定着率が良ければ現状を継続し、悪ければ何かしらの対策を考える必要があるなどの判断材料になるため、重要な指標とされています。
リテンション率を向上させることで得られるメリット
リテンション率について解説しましたが、リテンション率の向上によって企業はどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、リテンション率を向上させることで得られる主なメリットを2つ解説していきます。
- 広告にかかるコストを下げられる
- 顧客ロイヤリティ向上につながる
それぞれ詳しく解説していくので、見ていきましょう。
広告にかかるコストを下げられる
商品やサービスを購入・利用してもらうためには、ある程度の宣伝広告費がかかります。特に、新規顧客獲得のためにかかるコストは非常に高く、既存顧客を維持するコストの5倍かかるとされています。
そのため、リテンション率を高めて顧客に継続して商品やサービスを利用してもらえれば、広告にかかるコストを大幅に削減することが可能です。
また、リテンション率を向上させれば、こちらからアクションを起こす必要なく、既存顧客が新規顧客を勝手に連れてきてくれるケースもあります。
例えば、ある1人の顧客が商品やサービスを気に入ってくれた場合、それを顧客自ら周りにおすすめしてくれたら、新たな顧客が自然に増えていくでしょう。さらにそれを繰り返すことで、企業が宣伝広告を行わなくても、顧客のクチコミだけで商品やサービスの利用者がどんどん増えていきます。
最近ではSNSの普及もあるため、そういった動きが特に加速しているようです。
顧客のロイヤリティ向上につながる
顧客ロイヤリティとは、ある商品やサービスに対して顧客が感じる「愛着」や「信頼」を意味する言葉です。
リテンション率を向上させるには、顧客が満足するサービス・商品を提供するために、顧客の意見や要望に耳を傾け、サービス・商品の品質改善に努める必要があります。これを行うことで、顧客のロイヤリティの向上にもつながるのです。
リテンション率の計算方法
リテンション率を向上させるメリットについて理解したところで、リテンション率の計算方法について見ていきましょう。
リテンション率の計算方法は以下の通りです。
継続カスタマー ÷ 新規カスタマー
例とともに、より具体的に見ていきましょう。例えば、新規カスタマー数が200人、継続カスタマー数が150人だった場合のリテンション率は下記のようになります。
リテンション率 = 150 ÷ 200 = 0.75(75%)
つまり、75%がサービスを継続したということが分かります。毎月リテンション率を算出して、リテンション率に変化がない、または向上した場合は問題ありません。リテンション率が減少した場合は離脱率が上がったということなので、何かしらの対策を考える必要があるでしょう。
良いリテンション率とは
良いリテンション率とは、業界やサービス内容、売り上げ規模、サービス開始からの期間によって異なります。新規事業のリテンション率であれば、顧客のほとんどが新規カスタマーと想定されるため、高いリテンション率を目指すべきです。
また、長い間サービスの提供を続けている場合のリテンション率は、大きな変動なく常に落ち着いた数値を目指す必要があります。ある程度数値が落ち着いてきたということは、それがサービスの実力を示す値となるでしょう。このように、良いリテンション率を具体的に表すことは難しく、状況によって変化するのです。
リテンション率を上げる方法
リテンション率を高くすることは大切ですが、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。ここでは、リテンション率を上げる方法を5つ解説していきます。
- 顧客に使いやすさをアピール
- 通知機能の設定
- 顧客満足度を向上
- 離脱しそうなユーザーにフォロー
- データを分析
5つの方法を状況によって柔軟に使い分けていけば、リテンション率の向上につなげられるでしょう。
顧客に使いやすさをアピール
サービスや商品の利用を開始したとき、使い勝手が悪いと、利用者は継続して使う気になりません。魅力的なサービスや商品だったとしても、最初の印象が悪いと継続してもらうことは難しいです。
そのため、利用を繰り返すことで使いやすさを感じてもらうのではなく、最初から使いやすいと感じてもらうことが重要といえます。
具体的な方法として、サービスの場合は初回利用時に使い方を簡単に説明するチュートリアルを導入する、商品の場合は読むのが面倒にならない程度の分かりやすい説明書を付けるなどの方法が挙げられます。
通知機能の設定
通知機能の設定は、アプリやウェブサービスのリテンション率向上に効果的です。定期的にユーザーのメリットになる内容を通知することで、ユーザーがサービスに再訪するきっかけになります。
あまりにも通知が多いと、逆にサービスの利用をやめてしまう原因になるので、通知の頻度には注意が必要です。適度な通知機能を設定することでユーザーをうまく誘導し、リテンション率を向上させましょう。
顧客満足度を向上
顧客満足度を向上させることも、リテンション率の向上に効果的です。具体的には、顧客から寄せられる意見や要望をもとにサービスや商品を改善していく、顧客からの問い合わせに対して丁寧に対応するなどの方法があります。
また、顧客満足度を向上させれば、既存顧客の定着だけでなく新規顧客の獲得につながる可能性も考えられるでしょう。
サービスや商品に対して満足度が高い顧客が周りにそのサービス・商品をおすすめしてくれた場合、おすすめされた相手が新たな顧客になる可能性が高いです。顧客満足度を向上させることによって、リテンション率向上以外の効果も期待できるでしょう。
離脱しそうなユーザーにフォロー
リテンション率を高めるためには、サービスの離脱率を下げることも有効な手段といえます。一定期間サービスを利用していないなどの離脱しそうなユーザーに対してフォローを行えば、離脱率の軽減につながります。
離脱したユーザーの数はチャーンレートで把握できるので、チャーンレートが高い場合には、サービスの離脱率軽減に向けた施策を実行しましょう。
チャーンレートについて詳しく知りたい方は、「SaaSの主要KPI【チャーンレート】とは?種類や目安を解説」をご参照ください。
データを分析
リテンション率を上げる場合、どの方法でもデータの分析が大切です。データを分析して顧客の利用状況や好みを把握できれば、離脱しそうなユーザーへのフォローや顧客満足度の向上に向けた施策を行いやすくなります。
また、リテンション率を上げるために行った施策によって、どのくらいの効果が得られたのかなどのデータも分析すると良いです。効果があれば良いですが、効果がなければ別の方法を考える必要があるでしょう。
リテンション率の向上施策を行う際の注意点
リテンション率向上のための施策を行う際には、顧客との距離感に注意する必要があります。
リテンション率が悪く焦っている場面や、新規顧客の獲得に必死な場面などでは、顧客に過剰接近してしまいがちです。しかし、顧客に過剰に接近すると、逆に顧客が離れる原因になってしまいます。
顧客との距離感で失敗する例としては、顧客に対して何度もメールや電話を行ってしまうなどが多いでしょう。ユーザーは、何度もメールや電話がくると鬱陶しさを感じて、解約を考えます。
「どのタイミングで接触するのが最適か」、「どういったコミュニケーションの取り方に好感を持つか」など、顧客目線で考えることが大切です。
SaaS企業がKPIを設定するときのポイント
リテンション率は顧客定着率を表すため、サービスを継続的に利用してもらう必要のあるSaaS企業にとって重要なKPIの指標とされています。そこで、リテンション率をKPIとして設定するときのために、SaaS企業がKPIを設定するときのポイントを2つ解説していきます。
- フェーズごとのKPI設定が重要
- ツールを活用すればKPIの設定や管理が簡単
2つのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
フェーズごとのKPI設定が重要
KPIは、企業としてのゴール(KGI)に辿り着くための指標となります。そのため、KPIが適切に設定できていないと、KGIを達成することができません。KPIを設定するときには、事業のフェーズやプロダクトに合わせて最適なKPIを設定する必要があります。
ここまで紹介してきたリテンションは、SaaS事業を続ける中で常にチェックしておくべき指標です。
しかし、スタートアップ期にはユニットエコノミクスやバーンレートが特に重要など、フェーズごとで注目すべき指標は異なります。フェーズに合わせた最適なKPIを活用することが企業の成長につながるため、冷静に現状を判断しましょう。
ツールを活用すればKPIの設定や管理が簡単
KPIの設定や管理は、ツールを活用することで簡単に行えます。KPIは社内で共有して社員同士の認識を共通のものにしなければいけません。また、社内のデータを部署を超えて共有できれば、それぞれの部署でリアルタイムの情報を参考にしながらKPIを進めていけます。
そのため、社内でスムーズなデータ共有ができる手段として、ツールの活用がおすすめなのです。
無料ツールではExcelやスプレットシートなどがメジャーですが、この2つは複雑な管理ができない、共有に時間がかかるといったデメリットがあります。事業や会社の規模がある程度大きい場合は、KPI管理ツールなどを利用してみると良いでしょう。
KPI管理をするならScale Cloud
KPIを効率的に管理するなら、Scale Cloudをご検討ください。Scale Cloudでは、SaaSで重視される主要KPIの管理やリテンション率まで、簡単に把握できます。また、今最も優先すべきKPIは何かを把握できるので、チームプレーでビジネスをグロースさせることが可能です。
あらゆるデータを集約・統合できる
バラバラに管理されていたKPIデータや財務データを自動で集約・統合し、事業運営に必要な情報をいつでも分かりやすく手元に一元管理してくれます。また、事業全体で優先すべき改善KPIを一目で把握できるため、業務を効率的に進めやすいです。
KPIツリーで可視化して必要なタスクを分かりやすく
各部署・メンバーごとの個々のKPIが事業全体の業績目標とどのようにつながっているかが分かるため、どの部署のどのKPIに問題があり、誰がどんな方法でリカバリーすれば良いのか瞬時に判断できます。また、簡単にフォーキャストできて、最善のアクションプランを組織全体で共通の認識にすることも可能です。
まとめ
リテンションは、マーケティング領域などで用いられる場合は「既存顧客の維持」という意味で使用されます。リテンション率は、ある期間内に同じサービスや商品を再利用・購入した顧客の割合を示す指標です。
リテンション率を向上させることで、広告にかかるコストを軽減できる、顧客のロイヤリティ向上につながるなどのメリットがあります。
リテンション率は、SaaS事業の中でも特に重要視されるKPIであるため、正確な情報を把握しておくことが重要です。リテンション率をKPIとして設定・管理する際には、ぜひ「Scale Cloud」をご活用してみましょう。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。