スタートアップ企業の資金調達方法は?フェーズごとに詳しく解説
2022.12.08
会社を経営するにあたって資金をどのように調達するかというのは、経営者にとって頭を悩ませる課題です。中でもスタートアップ企業は、「起業したばかりで実績がなくても出資をしてくれる相手がいるのか」と不安に思ってしまう場合もあるでしょう。
しかし、スタートアップ企業が収益が不安定な時期を乗り越えて、経営を軌道に乗せるためには資金調達が必要不可欠です。
この記事では、そんなスタートアップ企業の資金調達方法について、状況に合わせた最適な方法を提案しながら解説していきます。
スタートアップ企業はどこまでを指す?
最近よく聞くようになった「スタートアップ企業」。言葉の通り開始したばかりの企業のことだろうと何となく想像ができるだけに、厳密な意味を1から調べる人は意外と少ないでしょう。
では、スタートアップ企業は具体的に、どのような企業のことを指すのでしょうか。
スタートアップ企業
「スタートアップ(start-up)」は、「行動の開始」や「起こす」という意味です。ビジネスシーンにおいては、誰も足を踏み入れていない新たな事業を展開し、大きく成長をすることを意味します。
そのため、スタートアップ企業を「開始したばかりの企業」と解釈するのは厳密にいうと間違いです。
ベンチャー企業との違い
スタートアップ企業と似た言葉として「ベンチャー企業」がありますが、ベンチャー企業は明確な基準や定義が決められているわけではありません。一般的には、独自の発想で新たな事業を展開する企業が該当します。会社の規模としては小規模から中規模の場合が多く、ベンチャーキャピタルから投資を受けた企業を総称してベンチャー企業と呼ばれるケースもあります。
スタートアップ企業は、ベンチャー企業の中でも特に目新しいビジネスに挑戦している企業です。ベンチャー企業よりも規模や資金調達の形態はさまざまで、法人格を持たないスタートアップ企業もあります。
スタートアップ企業のフェーズ
スタートアップ企業の資金調達方法について、フェーズごとに最適な方法を紹介していきますが、そもそも「フェーズ」とは何かご存知でしょうか。
ビジネスシーンにおいてのフェーズは、プロジェクトの進捗状況をいくつかの段階に区切った際に、その各段階の呼称として使われる言葉です。
スタートアップ起業においてのフェーズであれば、起業直後から軌道に乗るまでの成長過程に存在する各段階のことを指します。具体的なスタートアップ企業のフェーズは、大きく分けて以下の4つです。
- シード
- アーリー
- ミドル・グロース
- レイター
それぞれフェーズごとに解説していきます。
シード
まず最初の段階はシードといい、英語でいう「seed」、つまりは種のことです。実際に製品の販売やサービスの提供はまだ行っておらず、企画や開発が中心となっています。
製品やサービスが提供されていない準備段階のため、本格的に資金が必要となってくるわけではありませんが、設立や市場調査、企画、開発といった資金が必要となる場面も存在します。
あくまで準備期間で企業としての実績がないため、外部から資金を得る手段が限られてくる段階です。
アーリー
シードの次の段階がアーリーです。起業直後の所謂スタートアップ期になります。
事業を開始したばかりでは収益が安定せず、赤字経営になることも珍しくありません。できるだけ早く市場での製品やサービスの需要を高めるために施策を講じる必要があるため、設備投資、人件費、権利使用料、販売費などのさまざまなコストがかかってくる時期です。
実績が不安定な中でも必要なコストは増えてくるため、アーリー期は資金調達の重要性が一気に高まる段階でもあります。
ミドル・グロース
ミドル期・グロース期は、製品やサービスの認知度が高まり、これまでの潜在的な状況から、売上や経営が好転する時期になります。
この段階においては、より加速的に事業を良い方向に進めていくため、新たな顧客の獲得に力を入れることが大切です。営業費や広告宣伝費、人材確保にかかる費用など、必要となる資金の額も大きくなってくるため、引き続き資金調達が重要な段階となります。しかし、市場に浸透してきている分、難易度は比較的下がる傾向です。
レイター
黒字経営が安定し、完全にビジネスが軌道に乗った段階をレイターといいます。M&AやIPOについても視野を向け始める時期です。
収益力が上がっているので、企業によっては資金調達を必要としない場合もありますが、海外進出や新たな事業を考えている、やはり資金調達が必要になります。資金調達の際には、黒字経営が有利な条件として働くため、まさに企業にとって追い風状態であるといえるでしょう。
スタートアップ企業の資金調達方法
前述した通り、スタートアップ企業には大きく4つのフェーズが存在しており、それぞれの状況に合わせて最適な資金調達方法は変わってきます。資金調達の方法は数あれど、企業の経営状況によってはそもそも選択肢に加えることができない、という可能性もあるのです。
そこで、資金調達方法についてそれぞれの特徴を紹介しながら、どのフェーズでどの方法が適しているのかを解説していきます。
融資
資金調達方法の1つが、主に金融機関から融資を受けることです。基本的に融資には返済義務があり、かつ審査が厳しい金融機関が多いため、シード期には難しい資金調達方法になります。
中には起業直後でも融資をしてくれる機関もあるので、絶対にできないわけではありませんが、基本的には経営が安定してきたミドル・グロース期やレイター期におすすめの資金調達方法です。
ここでは、融資の代表例として、日本政策金融公庫と銀行を紹介します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が100%出資をしている金融機関です。そのうち、新創業融資制度を活用した場合には、低金利、担保・保証の必要がない、他の金融機関の審査に通りやすくなるなどのメリットがあります。
他の融資と比較すると、実績の有無に関わらず審査が通りやすいので、シード期でも受けられる融資方法としておすすめです。
銀行
ミドル・グロース、レイターであれば、銀行からの融資も候補に入ります。設立事業年度やその翌事業年度では保証付融資しか受けられない可能性はありますが、それより後期の社会的な認知度が上がった期間であれば、規模の大きい資金を調達することが可能です。
ある程度事業が軌道に乗り、新しい事業を始めたいときや海外進出を考えているときには、ぜひ活用してみましょう。
出資
出資を受けるというのも、スタートアップ企業の資金調達の方法として一般的です。実績がそこまで安定していなくても利用できる、返済義務がない場合が多いことが魅力になります。
ここでは、特にメジャーな「エンジェル投資家」と「ベンチャーキャピタル」からの出資について説明します。
エンジェル投資家
「エンジェル投資家」は、スタートアップ企業やベンチャー企業に投資する個人の投資家です。エンジェル投資家から出資を受ける場合には、以下のようなメリットがあります。
- 事業開始直後でも投資してくれる可能性が高い
- 返済義務なしの場合がほとんど
- 必要な場合は経営のアドバイスもしてくれる
一方でデメリットとしては、個人からの出資なのでそこまで規模の大きな資金は期待できない場合もあるという点です。また、経営に介入されすぎると自由な意思決定が阻害されるといったリスクもあるので、注意してください。
シード期でも投資してくれる投資家も中に入るようですが、より企業側が有利な条件で投資を受けるのであればアーリー期が向いているでしょう。
ベンチャーキャピタル
「ベンチャーキャピタル」から出資を受けるのも手段の1つとしておすすめできます。ベンチャーキャピタルはエンジェル投資家と同じく、ベンチャー企業やスタートアップ企業に投資してくれる組織です。そのため、活用すべきはエンジェル投資家と同様、シード期又はアーリー期の企業になります。
原則として返済義務がなく、取引先や提携先を紹介してくれる場合もあるというのがメリットです。ただし、デメリットとして経営に介入されすぎたり、持ち株を回収されるといったリスクもあるので注意しましょう。
助成金・補助金
国・地方公共団体が実施するいくつかの制度に基づき、助成金や補助金の支給を受けることも資金調達方法の1つになります。
助成金・補助金の中には、シード期やアーリー期に特化したものもあるので、ぜひ活用してみてください。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、国が実施する補助金制度です。小規模事業者を中心に、販売開拓にかかる費用を補助してもらえます。補助金額の上限は50万円で、補助率は2/3以内です。販路開拓を目指している企業向けの補助金なので、アーリー期やミドル期におすすめの補助金といえるでしょう。
現在では、新型コロナウイルスに対応するためのビジネスモデルに変化するための補助金として、「低感染リスク型ビジネス枠」といった支援なども行っています。
地域中小企業応援ファンド
地域中小企業応援ファンドは、シード期やアーリー期にさしかかるスタートアップ企業を応援する制度です。地域に密着・貢献している中小企業をターゲットに助成金が支給されます。
ファンドを設置している地域によって資金額などの条件が変わるため、詳しく知りたい方は各地域のファンドを確認してみてください。基本的に起業直後でも申請ができますし、開発費や開拓費など幅広い費用に対応してくれるため、利用しやすい制度となっています。
地域創造的起業補助金
地域創造的企業補助金は、経済産業省が実施する補助金制度です。起業の際に必要な資金を一部負担してもらえて、経営に関してのアドバイスも「認定特定創業支援業」を通して受けられます。
補助率は、補助対象と認められる経費の1/2以内です。外部資金調達がない場合の補助金額は50万円〜100万円、外部資金調達がある場合は50万円〜200万円となっています。
起業にかかる費用負担を行ってくれる制度なので、シード期の企業におすすめの資金調達方法です。
ファクタリング
ファクタリングとは、売掛金や受取手形などの債権を譲渡することで現金を取得するサービスです。未回収の債権を担保なしで現金に変えられるため、企業の取引によく利用されます。資金を得るまでの手続きが少なく、最短で即日には現金が取得できるという点も魅力です。
ただし、債権の額を超える資金調達はできないので、ミドル期やレーター期でなければ十分な資金の確保は難しいでしょう。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の個人や企業から寄付を募るシステムです。
審査がないので、資金調達にかかる時間が少ないというのがメリットになります。製品やサービスの魅力をしっかり伝えることで、「この企業を応援したい」という人が集まって寄付を行ってくれますが、その数に上限はないため、予定以上の金額を集められるケースもあるのがポイントです。
反対に、製品やサービスの魅力が伝わらなければ、目標とする額の資金が集まらない可能性も考えられます。
主に利用すべきはシード期ですが、事業についてのアピールポイントに自信があるかどうかが資金を得られるかどうかの鍵です。また、シード期以外でも、「新たに商品を作りたいけれど資金に余裕がない」といった場合などに利用可能です。
資金調達には予実管理が重要
フェーズごとに適している資金調達方法を挙げてきましたが、どのフェーズであっても、資金調達をするためには予実管理が必要です。
予実管理は資金調達において非常に大切な役割を果たしているため、ここでは予実管理の重要性について見ていきましょう。
予実管理とは
予実管理は名前からも分かるように、「予算」と「実績」を管理することです。
企業は事業を行うにあたって目標や予算を設定し、その目標や予算を考慮しながら事業を行っていきます。あらかじめ設定した予算内で目標が達成できているかなどを管理するのが予実管理です。目標と実際の業績を比較して達成度などを見ながら分析することで、企業の改善点なども見つけられます。
資金調達に予実管理が重要な理由
なぜ予実管理が資金調達において重要かというと、前述した金融機関や国・地方公共団体から資金を調達するにあたって、必ずといっていいほど「事業計画書」の提出が求められるからです。
事業計画書には、「その資金をどのように運用するのか」、「返済が必要な場合には本当に返済の見通しがあるのか」を根拠立てて書かなければなりません。その根拠を明確にするために、予実管理が役立ちます。
あらかじめ予算や目標を定めて、その目標に対して今現在どの段階にあるのか、今後必要な資金はどのくらいなのかを具体的にしていれば、資金調達も行いやすくなるでしょう。
予実管理はシステムを活用すると簡単
大規模な企業であればごく当たり前に行われる予実管理ですが、中小企業では事務負担がかかるからと敬遠されるケースが多い傾向です。そういった場合は、予実管理システムの使用をおすすめします。予実管理システムには、以下のようなメリットがあります。
直感的に操作しやすい
予実管理システムを利用することによって、予算と実績の管理を「可視化」及び「自動化」できます。データの集計に時間がかかっていては、予実管理そのものが億劫になってしまうかもしれませんが、自動で行ってくれればその心配もありません。
さらに、図やグラフを利用したデータ管理によって問題点を視覚的に捉えられます。自動化で簡単に操作ができて、可視化によって直感的に理解できる予実管理システムは、これから予実管理に力を入れたいという中小企業にもおすすめです。
データが一元管理できて共有が簡単
データの管理は1人、多くても数人の担当者に任されるケースも多い傾向です。しかし、データを確認したいときに、担当者にいちいち確認をとるのは面倒という人も少なくないでしょう。
そんなときには、予実管理システムを利用すればデータの一元管理や共有が簡単です。さまざまな媒体にデータが分かれてしまっていると確認するのも大変ですが、一括管理をすればそんな手間もありません。
さらに、社内全体で1つのツールにデータを集めて、そのデータをそれぞれが編集できれば、常に最新のデータに更新できます。近年ではリモートワークを行っている企業も増えていますが、リモート会議の際にも全員がリアルタイムのデータを確認できるので、会議が楽になるでしょう
予実管理システムならScale Cloud
予実管理システムを導入したいけれど、どのシステムが良いのか分からないという方は、ぜひScale Cloudをご検討ください。
進捗管理がしやすいので予実のズレを瞬時に発見できて、トラブルが起きた場合の原因も把握しやすいです。原因がすぐに分かれば改善方法も見つけやすいため、大きな失敗につながる前にリカバリーができるというメリットがあります。
また、マネジメントに特化していて、業績目標を達成するためのビジネスモデルや経営計画を明確に設計、運用できるのが特徴です。
スタートアップ企業では少しの失敗が大打撃になってしまう可能性もあるでしょう。Scale Cloudで明確な経営計画を立てられれば失敗のリスクが少なく、何か問題が起きた際にもすぐに問題点を見つけられれば、大きな失敗につながる前に軌道修正ができます。
まとめ
スタートアップ企業は、既存のビジネスの枠に囚われず、新たなアイデアで成長が期待される企業のことです。スタートアップ企業は軌道に乗るまでには多大な資金が必要で、資金調達に悩まされている経営者も多いでしょう。
スタートアップ企業の資金調達には、以下の方法がおすすめです。
- 融資
- 出資
- 助成金・補助金
- ファクタリング
- クラウドファンディング
しかし、これらの資金調達方法の多くは、事業計画書の提出が求められます。資金調達のための根拠立てた事業計画書の作成には予実管理が重要です。
予実管理はシステムを活用すれば簡単に行えます。Scale Cloudなら、予実のズレを早期に発見できるのでリカバリーがしやすいです。スタートアップ企業の予実管理には、ぜひScale Cloudをご検討ください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。