MQLとは?SQLとの違いや特徴、メリットを詳しく解説
2022.06.18
マーケティングや営業に携わる方であれば、MQLという言葉を耳にする機会も多いのではないでしょうか。しかし、いまいち意味を理解できていないという人もいるかと思います。
今回はそんなMQLについて、特徴やメリット、運用手順などを詳しく解説していきます。よく似た単語であるSQLとの違いなども説明していくので、MQLについて知りたい方はぜひご覧ください。
MQL(マーケティングクオリファイドリード)とは
MQLはMarketing Qualified Lead(マーケティングクオリファイドリード)の略です。日本語に直訳すると、マーケティングが選別した見込み顧客のことを指します。BtoBは、リード獲得、商談獲得、受注という営業プロセスで進むのが一般的ですが、このうちのリード獲得と商談獲得の間に発生する概念がMQLです。
リードに対して架電を行うインサイドセールスや営業を担当したことがある方であれば経験があると思うのですが、架電したところで全くアプローチしても製品が響かない、ターゲット外のリードが混ざっていることは珍しくありません。
リードはあくまで顧客側から資料請求やセミナー登録などのアクションを起こしてもらうものなので、企業側で不要なリードを拒否するのは難しく、中には自社製品のターゲットにはなり得ない方もリードとして登録されるケースがあるのです。
そういった際に、ターゲット外のリードに営業からアプローチをしていると、人的工数を無駄に使ってしまうことになります。そこで生きてくるのがMQLの概念です。MQLは営業にパスするリードを選別することを指します。
例えば、リードの業種・職種などの属性情報、どの経路で流入してきたか、といった情報を元に営業にパスする条件を設定し、条件を満たしたリードを「MQL」と定義して営業にパスします。これによってターゲット外のリードを減らし、営業が効率良くアプローチできるようになるのです。
SQLとの違い
MQLとよく似た言葉にSQLがありますが、SQLはSales Qualified Lead(セールスクオリファイドリード)の略です。日本語に直訳すると、営業が選別した見込み顧客のことを指します。MQLとしてマーケティングから連携を受けたリードをさらに営業が選別し、見込み度合いが高いと判断したリードをSQLと呼びます。
MQLもSQLも、定義は企業によってさまざまです。例えば、獲得したリードのうち、業種や職種などのリード情報を元にMQLとして選別し、架電した後に商談獲得できたリードをSQLと選別する企業もあれば、リード獲得後の行動をスコアリングし、一定のスコアに達したものをMQLと定義し、そこから架電して特定の情報を獲得できたリードをSQLと定義する企業もあります。
MQL/SQLに企業共通の定義があるわけではなく、受注確度・見込み度に基づきマーケティングと営業がアプローチ対象として選別したものをMQL/SQLと呼ぶ、ということを理解しておきましょう。
そのため、自社内でMQL/SQLという概念を運用していく上では、どういう基準でリードをMQL/SQLと定義するかを決め、マーケティング・営業部門間で認識をすり合わせておくことが重要です。
MQLの特徴
MQLについて紹介しましたが、ここからはMQLの特徴を解説していきます。
営業が効率的にできる
MQLを定義すると、営業を効率的に行うことができるようになります。MQLはリードの中からさらに見込み度合いが高いものをマーケティングが選別しているため、基本的にはリード全体にアプローチするよりもMQLのみにアプローチした方が商談化率や受注率は高くなります。
リードの中には全くターゲット外の顧客も含まれたり、ターゲットではあっても直近は情報収集程度で予算もおさえていない顧客も含まれています。
さまざまな情報を元にMQLとして定義され営業にパスされることで、営業は見込み度合いの高い顧客に絞って営業活動を実行することができ、結果的に営業効率を上げることができます。
フィードバックを得やすい
MQLという定義を設けることによって、営業とマーケティングの連携が進みます。定義自体は可変でいつでも見直せるため、その後の商談のパフォーマンスなどを見ながら、より商談獲得率や受注率を高めるために洗練させることが可能です。
そのため、MQLを定義してリードをその条件に沿って選別していけば、営業からその定義に関してフィードバックを得やすい環境を作れます。
リピーター獲得が期待できる
MQLは通常のリードよりも見込み度合いが高いため、企業や製品のファンとなり、リピーターとなってくれる確率が高くなります。MQLを定義し、そのMQLを増やすために獲得や育成の取り組みを強化すれば、結果的にリピーターの増加につながる可能性もあるのです。
MQLのメリット
MQLについて詳しく理解したところで、次はMQLを運用するメリットについて見ていきましょう。
営業部門の負担を軽減できる
上述の内容と重なりますが、MQLの運用によって営業効率が上がります。基本的に、リードの量と質はトレードオフの関係性です。リード数を増やそうとしてさまざまな施策を打つと、数は増える一方でリードの質は落ちてくる傾向にあります。
自社製品がピッタリハマる属性を持ち、なおかつ導入意欲も高いコアターゲット層は数が限られてくるでしょう。そのため、リード数を増やすうちに多少属性がターゲットからズレる層や、今はまだ導入意欲はなく情報収集をしている程度という層へのアプローチが増えていくのです。
インバウンドマーケティングを始めた直後は、ホットなリードを獲得して効率の良い営業を実施できるのですが、顕在層の刈り取りが一段落し、準顕在層から潜在層に施策の対象を広げていくとリードの質が落ちて営業難易度が上がっていきます。
準顕在層や潜在層に手を広げた結果営業難易度が上がるというのは、企業成長には必要不可欠なフェーズではあるため、それ自体が悪いことではありません。しかし、手を広げた結果、もともとコアターゲットとしていたホットな層へのアプローチリソースが減ってしまうという事態は避けたいものです。
それを避けるための手段が、リードを一定の条件で絞り込むMQLという概念です。MQLの条件は、上述の通り企業によって異なります。リードの中から業種・職種・役職など属性条件でMQLとして定義する方法もあれば、リード獲得後のWeb上での行動やセミナー視聴有無など行動をベースに定義する方法もあるでしょう。
いずれにせよ、リード全体の中でも見込みが高くなる条件を達成したものがMQLとして定義されるため、準顕在層や潜在層がリード内に増えてきたとしても、その中で商談化率や受注率が高くなるであろうMQLがどのリードかを明確にし続けることが可能なのです。
マーケティングと営業の連携力が高まる
MQLを定義する上では、下記の2つの要件をクリアしている必要があります。
- 商談化率・受注率と相関のある定義となっている
- 何らかの施策によって獲得・育成が可能な定義となっている
1の商談化率と受注率との相関については、これが相関しなければMQLとして定義する意味がなくなってしまいます。MQLはマーケティングから営業にパスされるリードなので、商談化率・受注率が高いリードでなければ、わざわざ選別せずに全件パスすることと同じです。
過去の商談データや受注データを確認しながら、何が商談化・受注と相関のある条件だったかを深掘りしていくと良いでしょう。
2の条件が必要な理由は、定義してもMQL数を増やす施策が存在しなければ全く意味がないからです。例えば「資料請求を10回したリードをMQLとみなす」と定義したとしても、現実的にそんな行動を取るユーザーはいないため、MQLの定義として意味をなさなくなるでしょう。
このように、MQLの定義には1と2の要件が必要ということが分かります。そして、この1の条件については営業が、2の条件についてマーケティングが情報を持っており、この2つの要件をクリアする定義を作るには、営業とマーケティングがお互いの肌感や持っているデータを突き合わせながら定義をしていくことが必要なのです。
さらに、定義がされた後も一度定義したらそれで終わりというわけではなく、その後の商談化・受注のパフォーマンスを見ながら、常に定義をアップデートしていく必要があります。常に営業とマーケティングが連携して、リード獲得から受注までの情報を共有しあう関係性が重要になるのです。
MQLを定め運用していけば、結果的に営業・マーケティングの連携力が高まる傾向にあります。逆にいうと、営業・マーケティングの連携なくして適切なMQLの定義は不可能だということでもあります。
MQLの運用手順
では、実際のMQLの運用手順を見ていきましょう。MQLの定義を明確にしたら、下記の流れで運用していきます。
- 見込み客を獲得する
- 見込み客を育成する
- 見込み客を絞り込む
順番に詳しく見ていきましょう。
見込み客を獲得する(リードジェネレーション)
まずは、見込み顧客となるリードを獲得しなければ意味がありません。SEOやWeb広告・SNS運用などのデジタル施策や、セミナー・展示会・カンファレンスなどのオフライン施策を組み合わせ、自社製品の見込み顧客となるリードを獲得しましょう。
リードを獲得する際も、後の工程であるMQLを意識した施策を行うようにしてください。MQL数向上に全くつながらないリード獲得をしても意味がありません。全くターゲットに当てはまらない層を獲得したり、自社製品の営業につながらない文脈で獲得したり、という施策ではリソースが無駄になってしまいます。リードからのMQL転換率を施策別に把握して改善していくと良いでしょう。
見込み客を育成する(リードナーチャリング)
資料請求やお問合せを受けて獲得したリードなど、すでに比較検討をしているような意欲の高いリードであれば、そのままMQLとして扱い営業にパスしても良いでしょう。
一方で、ホワイトペーパーダウンロードやセミナー申し込みなど、ただの情報収集目的で獲得したリードもある場合は、リードの育成(=ナーチャリング)を行ったほうがその後の商談化・受注がスムーズになる可能性があります。
ナーチャリングでもっともよく使われる方法は、MA(マーケティングオートメーション)ツールを活用したメルマガ配信やスコアリングです。サービスの機能詳細や事例、料金表などの情報をメールで提供して、リードに対して情報発信し、徐々に興味を持ってもらうことでリードを育成していきます。
見込み客を絞り込む(リードクオリフィケーション)
営業人員の数や直近の工数状況にもよりますが、育成した結果、全てのリードをパスして営業側でアプローチする余裕がない場合は、さらにリードを絞り込むと良いでしょう。絞り込む条件は、定量的に商談化率・受注率が高くなる条件にしておくべきです。企業情報やリード個人の属性、予算などのBANT情報を参考に絞り込みをしていきます。
MQLの運用で起こりがちな失敗
最後に、MQL運用時に注意しておくべきポイントを営業・マーケティングそれぞれの観点から紹介します。
営業部門
まず営業部門観点では、MQLの定義に責任を持つ意識が重要です。すでに述べた通り、MQLは商談化率や受注率と相関のある条件である必要がありますが、マーケティング部門は実際に商談を行う部門ではないため、商談化や受注については営業のほうが圧倒的に情報や肌感を持っていることになります。
MQLとして選定されたリードの中に、商談化しづらい・営業しづらいリードが混ざっていたときに、「MQLがあまり機能してないから無視しよう」と見放して、営業個人の感覚でアプローチする顧客を決めていると、中長期的なPDCAとチームでの効率アップが妨げられてしまうでしょう。
MQLの定義が誤っていて、結果的にMQLがあまり機能していないと感じたら、営業自らがその定義をどうすべきかを考え、商談化しやすい・受注しやすいリードについて検討してみると良いでしょう。
マーケティング部門
目標の持ち方にもよりますが、マーケティング部門はMQL数の最大化に意識が向いてしまいがちです。そのため、MQLの定義も緩くしたくなる気持ちがありますし、MQLに当てはまるか微妙なときに「多少なら良いだろう」と許容してしまう傾向にあります。
しかし、マーケティング部門として本来最大化しないといけない指標は売上であり、そういう意味では営業と一蓮托生の存在でもあるのです。
例えば、部門のKPIがMQL数だったとしても、売上につながらないMQLを創出するのは何も意味がありません。常に後工程のパフォーマンスまで意識した改善活動を行っていくようにしましょう。
まとめ
MQLは営業が選別するSQLの前工程で、マーケティングが選別した見込み顧客という意味になります。マーケティングから営業に連携される段階のリードなので、マーケティングと営業で情報共有や定義の連携を密にしておく必要があるフェーズです。
営業・マーケティング双方の観点から売上につながる適切なMQL定義を行い、リードジェネレーション・リードナーチャリング・リードクオリフィケーションをうまく機能させていきましょう。
営業やマーケティングにおける指標について、さらに詳しく知りたい方は、下記の資料を参考にしてみてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。