KPIとKGIの違い。設定方法やポイント、具体例を解説
マーケティングなどでKPIやKGIという言葉を聞く機会も多いと思いますが、実際にはどのような意味なのか、どういう違いがあるのかを理解できていない人もいるでしょう。
この記事では、KPIとKGIの違い、KGIの重要性、職種別のKPIとKGIの具体例などを紹介していきます。KPIとKGIの違いが分からない、KPIとKGIを業務にどのように生かしていけば良いのかを知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
KPIとKGIは何が違う?
事業目標を効率良く達成していくためには、目標はもちろん、達成する過程もしっかりと具体化する必要があります。目標の達成率というのは計測しにくいものではありますが、「KPI」「KGI」という計測指標を用いることで目標達成度の具体化が可能になるのです。
今回は、そんな目標達成までのプロセスの具体化に重要な役割を持つ、KPIやKGIについて詳しく解説していきます。
KPIとは
KPIとは、Key Performance Indicatorの頭文字の略で、日本語では「重要経営指標」や「重要業績評価指数」などと訳される言葉です。言葉通り、目標を達成するまでに必要なプロセスを具体化するための指標になります。
例えば、自社のオンラインサイトで商品を販売している会社が、ECサイトでの売上を20%UPさせるという目標を設定したとしましょう。ECサイトでの売上を上げる方法は、商品数を増やす、単価を上げるなどさまざまですが、今回は単純にECサイトへのアクセス数を増加させる方法でKPIを設定した例を紹介します。
まず、現在ECサイトにアクセスした顧客から、どれくらいの人が商品の購入までにつながっているのかを分析します。その分析結果を元にすれば、どれだけECサイトへのアクセス数を増やせば売上を20%UPさせられるのか、具体的な数字が見えてくるはずです。この、「ECサイトでの売り上げを20%UPさせるために来月のECサイトへのアクセス数を○○%増やそう」と決める指標がKPIになります。
KGIとは
KGIとは、Key Goal Indicatorの頭文字の略で、日本語では「重要目標達成指数」と訳されます。つまり、KPIが中間目標のようなものだとしたら、KGIは最終的に達成すべき目標を指す指標です。企業では売上などがKGIとして設定されることが多く、先ほどの例でいえば「ECサイトで売上を20%UPさせる」という部分がKGIに当たります。KGIを設定することでゴールが明確になって、進むべき道が分かりやすくなるのです。
KPIとKGIの違い
KPIとKGIの違いは、KGIは主に目標の結果を見る指標であり、KPIは目標達成までの過程を見る指標という点です。KGIの下にいくつものKPIがツリー型に連なっているイメージになります。KGI・KPIを設定する際には、まず最終目標であるKGIを設定してから、それにつながる目標としてKPIを設定するという形です。どちらも企業においては重要なものなので、覚えておきましょう。
OKRとの違い
現代では、働き方改革やコロナ禍の影響で、働き方や働く環境がどんどんと変化しています。その中で、インテルが考案してGoogleやFacebook、メルカリなどが導入している「OKR」という指標が注目されはじめました。
OKR(Objectives and Key Results)は業績評価制度という意味で、目標(Objectives)と主な成果(Key Results)によって、より高い目標を達成するための指標です。
OKRの目標(Objectives)は、非常に高いテーマを指定します。これらは四半期ごとに設定されることが多く、高い目標を社内に設定することによって従業員1人1人の自発的な挑戦を促す方針です。その結果として、従業員と会社全体の目標が明確になり、生産効率のUPや業務改善などが期待できます。
主な成果(Key Results)は、目標を達成するためにどのような成果を上げたのか、成果を上げるためにどのように取り組んだのかを図る指標です。非常に大きな目標を掲げるため、設定された目標を100%達成するのは難しいでしょう。
しかし、主な成果はそれまでに従業員がどのように取り組んだのかを図る指標なので、そのまま個人の業績評価や人事評価へつなげることが可能です。そのため、主な成果の設定は、組織やチームなどで個人個人の役割を明確にした上で適切に行う必要があります。適切に設定することによって、組織全体でのコミュニケーションの向上につながり、より社内を活発にするという効果も持ち合わせています。
KPIやKGIが部署ごとやプロジェクトごとに設定されることが多いのに対して、OKRは社内全体など部署間を超えた大きな枠組みで行われることが多い傾向です。
また、昨今は社内がダイバーシティ化し、価値観や宗教観をはじめとして多種多様な人と働くのが一般的になってきた企業もあります。そうした企業では、今までの日本企業的な人事評価や業績評価は公平にならないことがあることから、評価制度を見直そうとしてOKRを導入する企業が増加中なのです。
KPI・KGIに欠かせないKFS・CSFとは
KPI・KGIを設定する上では、KFS・CSFも重要です。KFS(Key Factor for Success)は日本語で「重要成功要因」という意味で、簡単にいうとKPIで特に目標達成につながる成功要因とされています。CSF(Critical Success Factor)は日本語で「主要成功要因」と訳され、ほぼKFSと同じ意味です。
KGIを達成するためにはKPIの適切な設定が大変重要ですが、KFS・CSFをしっかりと分析しないと、KGIに有効なKPIの設定が難しくなります。
効果的なKFS・CSFを見つけ出すためには、自社の商品やサービスの特徴や強み、弱みなどの特徴を分析をしてから、商品の市場も合わせて分析することが大切です。自社の特徴をしっかりと分析して競合他社との差別化ができる部分を洗い出せば、さらに効果的なKFS・CFSを見つけられるでしょう。
加えて、自社のビジネスフローも見直すと良いです。部署や部門ごとにビジネスフローを洗い出して再確認すれば、コストダウンやできる部分や商品・サービスに対して新たな付加価値をつけられる部分を見つけられる可能性もあります。
そうした、付加価値を高められる部分やコストダウン可能な部分をKFS・CSFとして設定してみてください。
KGIを設定するメリット
効率良く目標を達成していくためにはKGIの設定が重要とされていますが、KGIの設定によってどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、KGIを設定するメリットを4つ紹介します。
- 目標が明確になって方向性が共有できる
- 具体的な指標ができることでモチベーションが上がる
- タスクが視覚化できて優先順位をつけやすくなる
- 人事評価の基準ができる
それぞれのメリットについて詳しく解説していくので、ぜひご覧ください。
目標が明確になって方向性が共有できる
組織やチームで仕事をしていく上で明確な目標や指針がないと、どうしてもプロジェクトがうまくいかず、暗礁に乗り上げてしまう可能性もあるでしょう。
プロジェクトとしてKGIをしっかりと設定し、それに付随するKPIを適切に設定すればチームとしての目標が明確になり、方向性のブレを防げます。特に、従業員に会社やプロジェクトとしての明確な指針を示さないと、会社に対して不信感が出てしまうリスクがあるので、そういった不信感を抱かせないためにも、KGIの設定が重要です。
具体的な指標ができることでモチベーションが上がる
KGIの設定は、従業員のモチベーションアップにもつながります。明確な目標がないと、従業員は業務に対してやりがいや達成感を感じるのが難しくなり、自分は適切に評価されるのかといった不安や不満を抱いてしまうでしょう。
しかし、プロジェクトやチームの中に共通の目標ができれば、その目標に対して従業員1人1人がやらなければならないことが具体的になります。チームやプロジェクト全体の士気も上がり、プロジェクトも順調に進みやすいです。
従業員のモチベーションの維持、チームや一緒に働くメンバーの士気の向上は、プロジェクト成功には必要不可欠な条件なので、明確で適切なKGIを設定するようにしてください。
明確なKGIを設定するためには、顧客単価やWEBサイトのアクセス数など、具体的な数値にする必要があります。現実的に実現可能で、誰が見ても理解できるような簡潔なKGIを設定すると良いでしょう。
タスクが視覚化できて優先順位をつけやすくなる
KGIを設定すると、達成するまでのタスクの量や順序を整理できて、タスクの優先順位を付けやすくなります。従業員が目標を達成するために何から手をつければ良いのかなどと迷う心配もなくなり、優先順位の高いタスクから効率的に達成していくことが可能です。また、タスクの量や順序が明確に決まると、プロジェクトの進捗状況の管理も行いやすくなります。
KGIを設定しない場合、目標に対してどれくらいのタスクがあるのかを共有できず、優先順位を個人個人が決めるようになってしまいます。個々の目標がバラバラのままタスクを進めていくと、プロジェクトが円滑に進まないという事態になりかねないので、KGIを設定するようにしてください。
人事評価の基準ができる
適切なKGIを設定すると、プロジェクト内で従業員ごとに担当する役割やタスクが明確に割り当てられるため、人事評価を行いやすくなります。
プロジェクト全体としての評価だけではなく、個人に割り当てられたタスクや業務の進捗度、取り組んだ内容に対してより細かいフィードバックが可能です。仕事内容や達成度に応じて正当に評価がされるとなれば、従業員も目の前のタスクに集中して取り組むようになり、円滑にプロジェクトを進められるでしょう。
人材育成から見るKGIの重要性
KGIの適格な設定は、人事評価やプロジェクトを成功させることだけではなく、人材育成においても効果的です。ここでは、人材育成の角度からKGIの設定のメリットや重要性について解説していきます。
- 採用活動
- 人材育成
- 新人研修
- 組織開発
以上の4つの観点から解説していくので、見ていきましょう。
採用活動
以前までは、新卒採用でKGIやKPIを設定する企業は多くありませんでした。しかし、少子高齢化によって労働人口が減少し、人材の確保が難しくなってきていることから、採用活動を行う際にもKGIやKPIの設定を重要視する企業が増えてきています。
年度ごとに最終的な採用人数をKGIとして設定し、その人数を採用するために行うべきアクションをKPIとして定めて、しっかりと管理していくことが大切です。
KGIを設定せずにただ闇雲に採用活動を行ったとしても、優秀な人材が集まらず、最悪の場合には1名も採用できないといった事例も起こりえます。今後の採用活動では、自社にはどういった人材が必要で今年度は何名採用したいのか、しっかりと設定して管理していかなければいけなくなるでしょう。
人材育成
企業のデジタルトランスフォーメーションなどの効果によって、人材に対する投資の効果も見える化ができるようになってきています。
そのため、人材を育成する際にもしっかりとしたKGIを設定して人材育成を行えば、今持っているスキルや教育による成長度などを管理した上で、効率的な人材育成が可能です。その結果、会社の利益の向上やより良い労働環境の構築が期待できるでしょう。
さまざまな企業が人材育成におけるKGI設定を行い、その効果が明確になれば、今後さらに人材育成におけるKGIやKPIの設定の重要性が見直されることが予想できます。
新人研修
新人研修に関しても明確なKGIの設定は重要で、新人にとっても新人研修を行う企業にとってもメリットがあります。
新人の場合には、形式的な新人研修を受けるのではなく、目標を確認した上で新人研修へと取り組むことで、企業が何を目的として何を目指しているのか、そのために行うべき業務は何かなどを把握しやすくなり、研修に身が入りやすくなるでしょう。
一方で、新人研修を行う企業側としては、その年に設定していたKGIを振り返りながら、新人の成長具合などを確認して新人研修の内容を精査していけば、毎年新人研修をレベルアップできます。
新人研修は、ビジネスの基本となる内容をしっかりと学習するために重要なので、明確なKGIを設定して、より良い新人研修を行えるように整えてください。
組織開発
KGIを設定すれば、チームやプロジェクトとしての一体感を出せるため、組織開発においても役立つでしょう。
開発する製品によっては部署をまたぐものもあり、他部署との進捗状況の管理や従業員の意識共有がより難しくなってきます。こういったときに、KGIをしっかりと設定しておけばチームとしてのゴールが決まって、他部署同士でも同じ温度感で業務を進められます。
また、向かうべき方向性や優先度の高いタスクが明確になるため、効率良く目標達成ができるでしょう。
【職種別】KPI・KGIの設定方法・具体例
ここまで、KPIやKGIの重要性などについて解説してきましたが、ここでは職種別にKPI・KGIの設定方法や具体例を紹介します。紹介する職種は以下の3つです。
- 営業
- マーケティング
- システム開発
KPIやKGIを設定したいけどどうすれば良いのか分からないという方は、ぜひ参考にしてください。
営業
営業職の具体的なKGIには、売上高や成約率などが挙げられます。営業職は他の職種と比較して結果が数字で出やすいので、KGIを設定しやすいです。
自社の情報をしっかりと分析して、分析した内容を元にして個人個人がKGI・KPIを設定し、合わせてKSFやCSFも設定すればチームや部署がまとまりやすくなるでしょう。
具体的な数値が出やすい営業職では、KPIも具体的に設定すべきです。期間と改善率を具体的な数値で設定することで、より進むべき方向性が具体的になるので、「◯カ月以内に見込み客への成約率を◯%上げる」といったような誰が見ても分かりやすい指標にすると良いです。
マーケティング
マーケティング職でKGIとして設定しやすいのは、サイト経由の売上やCV数などが挙げられます。マーケティング職も営業職と同様に結果が数字として表現しやすいため、KGIも設定しやすいです。
しかし、マーケティング職の場合は個人個人に対してKGIを設定するのが難しいです。部署や部門、チームで一体となって同じKGIを設定するようにすれば、チームの士気が上がってモチベーションの維持もできるでしょう。
システム開発
システム開発の場合は、開発すること事態がKGIになります。そして、システムを高品質にスケジュール通りに客先にしっかり納品するためには、KPIの設定が重要です。システム開発のKPIは、進捗率や生産性などが設定されるケースが多く、期間は納期から逆算して設定されます。
KPIやKGIをしっかりと設定すれば、作業の進捗確認やタスクの優先度の可視化が可能です。システム開発はスケジュール通りに進まなかったり、トラブルが発生してしまったりすることも少なくありません。
しかし、KGI・KPIをしっかりと決めておけば、スケジュール管理やタスク整理をしやすくなり、被害を最小限に抑えられます。大人数のプロジェクトになればなるほど、スケジュール調整やタスクの管理は大変です。大人数でのプロジェクトの場合には、特にKGIやKPIの設定を行うようにしましょう。
KPI・KGIを設定する際の注意点
KGIは最終的に達成すべき目標、KPIはそのKGIに辿りつくための中間目標なので、KPIを設定する際には必ずKGIにつながるようにしなければいけません。KGIにつながるKPIになっていないと、KPIを順調に遂行していったとしても、肝心のKGIが達成できない可能性があります。
KGIに関係のないKPIに注力していても時間や手間が無駄になってしまいますし、努力してもKGIが達成できなかったとなると従業員のモチベーションが低下してしまいかねません。そのため、KPI・KGIを設定する際には必ずKGIとの関係性を考慮するようにしましょう。
KPI・KGIの設定はツリー方式がおすすめ
KGIとKPIのつながりを考えながら設定するのであれば、KPIツリーを作成するのがおすすめです。KPIツリーとは、KGIをツリーの先頭に置いて、そこからKGIを達成するために必要なKPIをツリー上に分解したロジックツリーを指します。
KPIツリー化することによって、KGIとKPIのつながりが一目で分かるようになるだけでなく、KPIの漏れや重複が起こりにくくなるのです。KGI・KPIの管理を考えている方は、ぜひKPIツリーを作成してみてください。
KGIが今後重要になる業界は?
今後は、5GやAR・VRなどの新しい技術の発展によってますますIT業界は拡大し、影響力を高めていくでしょう。そうした際に、自社の製品やサービスについてしっかりとKGIやKPIを設定すれば、大人数のプロジェクトでも円滑に進められます。
また、IT企業は多くの人種や価値観を持った人々が集まるため、目標や目標を達成する過程をより分かりやすく指標にして示さなければいけません。
IT企業は目標の達成度などが目に見えにくいので、KPIで具体化することで従業員1人1人が熱量を持って業務に取り掛かりやすくなります。従業員が高いモチベーションで業務に取り組んでくれれば、より円滑にビジネスを進められるようになるでしょう。
まとめ
KPIは目標を達成するまでに必要なプロセスを具体化するための指標、KGIは最終的に達成すべき目標を指す指標を指します。KGIを設定することで以下の4つのメリットが得られるため、企業は積極的にKGIとKPIを設定すべきです。
- 目標が明確になって方向性が共有できる
- 具体的な指標ができることでモチベーションが上がる
- タスクが視覚化できて優先順位をつけやすくなる
- 人事評価の基準ができる
これからKGIやKPIを設定して業務を進めていきたいとお考えの方には、Scale Couldがおすすめです。事業全体の数値を部門に関わらずに可視化できて、優先すべきKPIが分かるため、チームプレーでビジネスを成長させられます。
実際のビジネスにはさまざまな潜在的な問題があり、KGIを決めることができてもKPIをしっかりと決めることは難しいです。「Scale Cloud」を利用して最適なKPIを設定し、ビジネスを成長させましょう。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。