売上予測(売上フォーキャスト)が企業にとって重要な理由とは
2022.12.15
「売上予測」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。正確な定義を考えたことがなくても、この言葉自体を耳にしたことがある方は少なくないでしょう。
この「売上予測」はあらゆる企業にとって、成長に不可欠なとても重要なものです。本記事では、売上予測とはどういうものなのか、なぜ重要とされているのか、どうやって予測を立てるのかについて詳しく紹介していきます。
売上予測(売上フォーキャスト)とは
売上予測とは、文字通り企業の売上を予測するという意味で、未来の特定期間における企業の売上がいくらになると見込んでいるのかを表します。
ただし、「予測」という言葉のそもそもの意味は、何らかの根拠によって将来の出来事や状態を推し測ることなので、根拠がなければそれは予測ではありません。「来月の売上は多分今月を超えると思います」といった根拠も具体性もない状態では、売上予測とは呼べないので、売上予測をする際には注意してください。
売上目標との違い
売上予測に似た言葉で、「売上目標」という言葉もあります。これらは、どちらも未来の売上に言及したフレーズですが、その意味合いは異なります。
売上目標は達成すべきラインを定めたものなので、上述した「何らかの根拠によって」というニュアンスは含まれません。もちろん、達成確度や目標を課す対象となる社員の納得度を考えれば何らかの根拠から目標数値が決められていることが望ましいですが、100%必要な条件ではありません。特に、新規事業など参考となるデータが少ないシーンにおいては、論理的な根拠をもとに目標を立てるのは難しくなります。
また、売上予測は精度が高いほうが良いとされますが、売上目標においては必ずしもそうではなく、上振れれば上振れるほど評価されます。例えば、100万円の売上目標に対して実績が200万だった場合は、目標達成率200%を叩き出した相当優秀な営業部門(パーソン)と評価されるでしょう。しかし、売上予測100万の月に売上実績200万を出した場合(その実績自体はもちろん喜ばれるものの)、予測の精度が低いため売上予測としてはイマイチなものになります。
企業に売上予測が重要な理由
「売上予測」は、企業にとってとても重要なものです。その理由はいくつかありますが、基本的には、売上を立てるために必要十分なコストを見積もるという観点と、そのコストを自分達の売上だけで賄えるのか、外部資金が必要かを判断するという観点です。ここでは、企業に売上予測が重要な理由について、詳しく見ていきましょう。
生産量や在庫管理の指標になる
製造業など有形商材を扱う企業においては、販売計画や生産計画に基づいて生産数・在庫数を決めていきます。理由としては、生産や保管にもコストがかかるため、余剰生産はなるべく抑えたいからです。
その、販売計画や生産計画の基準となるのが売上予測です。正確な売上予測を立てられていれば、無駄のない販売・生産計画を作れるため、余剰生産が生まれません。余剰生産が生まれないほど企業の利益率が高くなるので、売上予測が重要といえます。
人員配置を決めるのにも役立つ
また、人員配置においても売上予測が重要です。ネットのみで販売しているソフトウェアなどの無形商材を除いて、基本的には製造・生産をするための人員や、製品を輸送する人員、販売をする人員など売上を伸ばすためには相応の人員が必要となります。
しかし、人員を増やす際には、いざ「増やそう」と意思決定しても翌日に増やせるものではなく、一定期間以上前から人員採用に動かなくてはなりません。そのため、将来の売上予測が経っていないと、あらかじめどの程度の人員を採用するように動けばいいのか正確に見積もることができないのです。
この売上予測が正確でないと、本当はもっと人員が必要だったのに、採用をしていなかったため機会損失から売上が落ちてしまうこともあれば、逆に過剰に人員を採用しすぎた結果仕事のない人員が生まれて利益率が落ちるということにもなりかねません。
宣伝・広告活動にかける予算設定の参考になる
売上を立てるためには宣伝・広告活動が必要です。こちらも生産や人員同様にコストが必要となるものなので、どの程度の費用を宣伝・広告活動に使うかは売上予測をベースに決める必要があります。
売上予測が曖昧なまま宣伝広告費を決めてしまうと、費用対効果が低くなる可能性が高まります。正確な売上予測をもとに、その売上を獲得するために必要な適切な宣伝広告費を見積もることによって、適切な利益率を保った売上を確保できるようになります。
資金調達が必要か否かの判断ができる
売上予測を立てると、先々の企業のキャッシュフロー(お金の流れ)が明確になります。
「この売上、このコストだと今のままでは資金がショートしてしまう」と判断できれば、早めに資金調達に動くことが可能です。この予測が曖昧で、「まあ何とかなるか」くらいにしか考えていないと、いざ資金が底をつく直前まで気付けないということになってしまうでしょう。
売上予測を算出するために必要なデータ
このように、正確性が非常に重要な売上予測ですが、その正確性を上げるために必要なデータには何があるのでしょうか。
未来の予測の正確性を高めるためには、過去の実績が重要なデータとなります。ですので、過去のデータが少ない新規事業などにおいては、正確な売上予測を立てるのがかなり難しくなるでしょう。
その場合は、一旦正確性は諦めて大雑把な売上予測を立てるか、他社や市況から売上予測を立てましょう。他社や市況から売上を予測したとしても、正確性は落ちますので注意してください。
過去の実績データがある場合は、まず以下のデータから集めます。
- 売上
- かけたコスト(広告宣伝費・輸送費・人件費など)
この2つが最重要指標となるでしょう。この指標を期間ごと(年・四半期・月・週・日)や商品ごとに見てください。
次に、売上を立てるまでの営業・販売プロセスを分解します。例えば、BtoB(対企業向け)製品を扱っているのであれば、見込み顧客にアプローチ→商談→契約という流れが一般的ですが、その場合は主に下記の7つが売上を構成する指標となるでしょう。
- アプローチ数
- 商談化率
- 商談数
- 受注率
- 受注単価
- 受注までのリードタイム(期間)
- 受注数
「売上」という大きな塊しか捉えられていない状態より、その構成要素すべてが現状どういう数値になっていて、何をすればどの数値が動くのかを識別できる状態になっているほうが、売上予測は正確になります。
売上予測を立てる方法
では、実際に売上予測を算出するために必要なデータを集めた上で、どのように売上予測を立てるのかを紹介していきます。
売上データから売上予測レポートを作る
まず1つ目は、過去の売上実績の推移をもとに予測を作る方法です。
1月の売上:100万円
2月の売上:120万円
3月の売上:140万円
となっていたら、次の4月の売上はおそらく160万円と予測できます。+◯万円というケースもあれば、×◯%というケースもあるでしょう。ただし、この予測の仕方にはいくつか注意が必要です。
まず、なぜ一定の割合で成長できているかを明確にしなければいけません。例えば、この売上の推移が「人を増やしたら増やした分だけ売上も伸びている」という状態なのであれば、同様に人を増やし続けることで同じペースで売上を伸ばせる可能性が高いでしょう。
一方、一時的なキャンペーンで伸びていた、意図的でないメディア露出などで伸びていた、などのコントロールできない瞬発的な要因で伸びている場合においては、これがこのまま維持すると予測するのは危険です。そのため、成長している要因をつかんでおく必要があります。
次に、季節変動にも注視しましょう。一定のペースで成長できていても、特定の月に売上が落ちてしまうケースもあるでしょう。繁忙期閑散期などを事前に調査して、それも売上予測に反映することで、より精緻な予測を立てられます。
営業パイプラインから売上予測レポートを作る
もう1つが、営業・販売プロセスに分解した数値から予測を立てる方法です。この一連の営業プロセスのことを「営業パイプライン」と呼びます。先ほど「売上予測を算出するために必要なデータ」で紹介した以下の7つの数値が明確になっている場合を例に紹介します。
- アプローチ数
- 商談化率
- 商談数
- 受注率
- 受注単価
- 受注までのリードタイム(期間)
- 受注数
販売人員のスキルや季節変動などの外的要因があまりないのであれば、商談化率や受注率は一定になることが多いでしょう。そのため、1番手前のアプローチ数が分かれば、同じ割合で受注すると考えて受注数や売上を予測できます。
こちらの手法のほうが、売上という数字をより細かく見ていることから、正確な予測を立てやすいです。一方で、見る指標が多くなりますし、アプローチ数を増やしたときに本当に商談化率や受注率が一定なのか、その他の指標を変動させる要因はあるのか、など予測のために考えるべきことが増えるため、難易度も高くなります。
売上予測の精度を高めるポイント
売上予測を立てる方法について理解したところで、さらにその精度を高めるポイントについて説明します。
常に数ヶ月先まで予測をしておく
まず1つ目は、常に数ヶ月先まで予測をしておくことです。最初から100%正確な売上予測を立てるのはほぼ不可能だと割り切ったほうが良いため、売上予測は基本的にロジックを見直していきながらトライアンドエラーする必要があります。
その際、目先の売上予測しか立てていないと、ロジックをアップデートしたことによる効果を検証できません。1ヶ月先の予測をして、1ヶ月後にロジックをアップデートして、また次の月の予測をしても、前のロジックによる2ヶ月目の予測がないので正確になったかどうかが測れないのです。
ツールを導入して人為的なミスを防ぐ
次に、なるべく人為的な作業をなくして機械化・自動化するのがおすすめです。この売上予測は精度が求められますし、高頻度でアップデートして常に先々まで見通す必要があるものなので、人間が毎回書き換えて計算してと行っていると高頻度でミスが起こります。
ちょっとしたミスで営業予測が狂うと、上述の通りさまざまな計画が狂っていくため、極力慎重を期すためにも、ツールを導入しておきましょう。
売上予測におすすめのツール
売上予測を立てるためにはどのようなツールが良いのでしょうか。ここでは、おすすめのツールを紹介します。
SFA
1つがSFA(Sales Force Automation)です。日本語では営業支援ツールと呼ばれます。SFAツールにもさまざまな種類があり、各製品によって当然機能は異なりますが、大抵「スケジュール管理」「日報」「商談記録」「追客管理」「目標管理」「データ分析」などの機能がついています。
要は、営業の行動や成果について記録をし、その実績と目標の乖離を確認したり詳細を分析できるようになるツールです。
売上予測にはさまざまなデータが必要だと説明しましたが、営業・販売人員が増えるほど、正確にデータを記録しておくこと自体が難しくなります。SFAツールを導入し、現場の人員に入力を徹底してもらえば、より正確なデータを保管して正確な営業予測を立てられるようになるでしょう。
Excel(スプレッドシート)
ツールを新たに導入するのは大変などという場合には、Excel(スプレッドシート)もおすすめです。SFAツールのような機能がついているわけではありませんが、普段から使い慣れている社員も多いことから導入しやすいという理由で、売上予測に使用している企業も少なくありません。
また、SFAツールと組み合わせて使うケースもあります。SFAツールでレポートを作れば一定の分析はできますが、さらに細かく独自の粒度・切り口でデータを分析したいというシーンもでてくるでしょう。そういったときには、Excel(スプレッドシート)が役に立ちます。
まとめ
この記事では、売上予測の基本から作り方、精度の上げ方などを紹介しました。これまで書いた通り、営業予測は企業活動にとって非常に重要なものですが、正確な売上予測を立てるのは簡単なことではありません。
とはいえ、売上予測の正確性が企業の成長の土台になりますし、優秀な経営者・ビジネスパーソンを目指すすべての方にとって、売上予測を正確に立てることは避けて通れません。
この機会にぜひ正確な売上予測を立てることにチャレンジしてみてください。売上予測に必要なデータを揃えるのに役立つツールを利用したいという方は、KPIマネジメントツールの「Scale Cloud」をご利用ください。
Scale Cloudは事業全体の数値をすべて可視化し、その企業にとって最も優先すべき指標が何かを明らかにしてくれるため、複雑な営業予測に取り組む上で役に立つでしょう。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。