【スタートアップ企業必見】バーンレートとは?計算方法や注意点を解説
2021.12.16
バーンレートはスタートアップ企業にとって重要な指標です。しかし、「名前は聞いたことがあるものの、なんとなくでしか意味を理解できていない」という人もいるでしょう。
そんな方のために、この記事ではバーンレートとは何か、バーンレートの種類や活用例、注意点などを解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
バーンレートとは?
バーンレートとは資金燃焼率のことで、ベンチャーやスタートアップ企業でよく用いられる、企業が1ヶ月にどれだけコストを費やしているかを示す指標です。設立して間もない企業は売上がほとんどないのが一般的ですが、逆にコストがかかる場面は多くなります。そんなときに、バーンレートを把握しておけば、資金調達の目安になるなどのメリットにつながるでしょう。
また、企業の設立資金がなくなるまでの猶予期間を「ランウェイ」といい、それを計算する際にもバーンレートを用います。特に、経営陣や設立者にとってバーンレートの把握は非常に重要で、資金不足に陥る時期や事業を拡大する時期の予測にもつながります。
バーンレートの種類
バーンレートには、グロスバーンレート、ネットバーンレートの2種類があるので、それぞれをしっかり区別しておく必要があります。特徴や違いを解説していくので、詳しく見ていきましょう。
グロスバーンレート
英語で「Gross」は金額・数量の総計・総体という意味です。つまりグロスバーンレートとは総コストのことであり、簡単にいうと企業が1ヶ月に使った現金の合計を指します。
ネットバーンレート
英語で「Net」は純資産を意味し、純資産とは総資産から負債を引いた金額です。つまりネットバーンレートとは実質コストのことであり、グロスバーンレートから収入を引いた額を指します。
バーンレートは、企業の資金余力がどれくらいあるか見積もるために計算します。そのため、バーンレートという言葉を使う際には、ネットバーンレートのことを指している場合がほとんどです。
バーンレートの計算方法
バーンレートは月ごとに表示するのが一般的で、計算方法は「1ヶ月でかかった総経費-1ヶ月の総収入」です。
例えば、今月の総支出が3000万円、総収入が1500万円だったとします。この場合のバーンレートは「3000万円-1500万円=1500万円」という風に計算することが可能です。総収入が総支出を上回っている企業は、バーンレートがマイナスの値になるので覚えておきましょう。
では、次に他の角度からバーンレートを計算してみましょう。まず、2000万円の資金からスタートした企業が、半年で資金が200万円になってしまいました。この場合、1ヶ月あたりの消費額は「1800万円÷6ヶ月=300万円」となり、バーンレートは300万円です。このような計算でも算出できますが、できるだけ毎月算出しましょう。
バーンレートの活用例
企業設立時の資金がなくなるまでの猶予期間を「ランウェイ」と呼び、これを計算する際にもバーンレートを活用できます。ランウェイの計算方法は「残りの資金÷バーンレート」です。
例えば、残りの資金が600万円、バーンレートが200万円だったとします。するとこの会社のランウェイは「600万円÷200万円=3ヶ月」ということになるでしょう。つまり、あと3ヶ月で資金が尽きてしまうため、何かしらの経営戦略を考える必要があります。このように、バーンレートを活用してランウェイを計算すると、会社の経営状態を見直すきっかけにもなるため、スタートアップ企業には重要な指標とされるのです。
ランウェイの把握
ベンチャーやスタートアップ企業の経営者は、バーンレートとランウェイを適切な状態に維持することが、企業の生存率アップにつながります。常に1年のランウェイ確保をしておければある程度安心できますが、これはあくまで起業して間もない会社での話です。
起業して最初の1年を乗り越えた会社は、その後数年にわたって事業を継続するのが次の目標になるでしょう。その際にはランウェイが18ヶ月以上であることが理想的です。バーンレートとランウェイを把握しておけば企業の資金を常に把握できるので、早めの対処が可能となります。
ランウェイを把握すれば企業戦略の見直しができる
ベンチャーやスタートアップ企業に限らず、ランウェイが12ヶ月を切った際には企業戦略を見直す必要があります。
自社製品の開発ではなく受託製品の開発にシフトチェンジする、多少バーンレートが高めでも自社の成長につながるような大きな投資をするなど、思い切った判断をしたことがきっかけで、ランウェイを持ち直せた企業は珍しくありません。
また、投資家から「投資するメリットがある企業だ」と判断してもらうことも、ランウェイの回復につながります。現在はスタートアップ企業の生存率がかなり低くなっていますが、そんな中でも生き残ることができた企業には、今後大きな成長が待っているはずです。
固定費の見直しにつながる
ランウェイが短くなってきたら、固定費の削減も検討する必要があるでしょう。企業における固定費とは、時期に関係なく常に一定的に発生する費用全般を指し、主に人件費や福利厚生費、減価償却費、通信費や水道光熱費、賃貸オフィスの場合は家賃などです。
その他にも、会社で使用したコピー用紙や領収書のような消耗品にかかった費用などを含めて、毎月の総支出になります。固定費の削減は難しいですが、会社全体に呼びかけることによって、通信費や水道光熱費は多少削減できます。また、消耗品の使用を軽減できれば、少しでも支出を減らせるでしょう。
KPIやアラートの設定
バーンレートの算出は、KPIやアラートの設定にも活用できます。KPIとは「Key Performance Indicator」の略で「重要業績評価指標」という意味です。これは、企業が設定する目標達成に向けた行動を評価するための指標であり、簡単にいうと目標に対してどの程度進捗しているかが分かる基準値です。バーンレートを把握しておければ、コストや企業利益に関するKPIを、スチを元に具体的に設定できるでしょう。
また、アラートを設定しておけば、適切な時期に企業戦略の練り直しを開始できます。スタートアップ企業がバーンレートやランウェイを把握することは重要ですが、慎重になりすぎると成長時期を逃してしまう可能性もあるでしょう。資金繰りの目安を付けられる程度に、バーンレートやランウェイを把握しておくことが大切です。
資金調達や投資に役立つ
バーンレートを算出すれば、キャッシュイン・キャッシュアウトがどの程度なのかといった、現状把握にもつながります。
これらの把握は、スムーズな資金調達や投資に役立つ可能性が高いです。資金調達を受ける場合、企業のキャッシュフロー全体を考慮して審査が行われ、融資金額が決まります。バーンレートが低く将来性が期待できると判断された場合は、より高額な融資を受けることも可能です。
スタートアップ企業はバーンレートが高くなってしまいますが、支出が売上を下回るようになれば、バーンレートの値はマイナスになります。最初はなかなか難しいですが、より多くの資金を調達するためには、バーンレートをマイナスに近づけることを目指しましょう。
バーンレートの注意点
ここまで、バーンレートの意味から算出方法、具体的な活用方法などを詳しく解説してきました。しかし、バーンレートには注意点もいくつか存在します。注意点も知っておかないと、思わぬ落とし穴によって会社経営を苦しめてしまう可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。
バーンレートには家賃も含まれる
企業における固定費には家賃も含まれています。家賃は固定費の中でもっとも高い支出であり、ベンチャーやスタートアップ企業は頭を悩ませがちです。立地の良い場所や新しいビル内の賃貸オフィスを借りた場合、家賃が高額になることが想定されます。
家賃を抑えられればその分を事業投資に回せるので、家賃を抑える対策を考えることは重要です。最近ではオフィスを持たない会社も存在しています。普段の就業はリモートワークを活用し、全体会議などはコワーキングスペースを借りるなど、就業スタイルをよく検討すれば支出を軽減できるでしょう。
柔軟な働き方ができる現代だからこそできる対策も多いので、ぜひ検討してみてください。
人件費の削減がマイナスに働く場合も
バーンレートを低くするには人件費の削減が効果的です。しかし、人件費削減は従業員のモチベーションなどにも影響するため、場合によっては悪い影響が出る可能性があります。人件費削減は効果的な方法ではありますが、マイナスに働く危険性もあるので、慎重な判断が必要です。
会社を長く存続させるためには資金調達が重要
まだ安定した売上を得られない企業にとって、資金調達はとても重要です。しかし同時に、安定した売上を見込めないスタートアップ企業にとって、資金調達で高い金額を得るのは難しくもあります。
さまざまな資金調達方法を吟味しながら、会社の業績や今後の見通しに合わせて正しい方法で資金調達を行いましょう。
スタートアップ企業の資金調達方法
安定した利益を得られないベンチャーやスタートアップ企業は、資金調達を行うのが難しいとされています。では、どのような方法で資金調達を行えば良いのでしょうか。ここでは、スタートアップ企業におすすめの資金調達方法について、解説していきます。
融資
資金調達の方法として一般的なのが融資です。融資は銀行から受けることが多いですが、公的機関からの融資も存在します。
まず、銀行融資はプロパー融資と信用保証協会付き融資の2種類があります。信用保証付き融資は銀行に貸倒れリスクがないため、審査基準を満たせば融資を受けることが可能です。
次に公的機関からの融資は、政府系金融機関や地方公共団体の制度融資を指します。銀行融資より低金利ですが、その分審査項目や提出書類が多いというのがデメリットです。
銀行融資は一般的な方法ではありますが、まだ実績がほとんどないスタートアップ企業では、審査に落ちてしまう可能性が高いでしょう。公的融資であればスタートアップ企業でも融資をしてもらえるケースも少なくないので、まずは公的融資から検討してみるのがおすすめです。
出資
事業内容によって多額の資金を必要とする、実績が出るまで長期間かかることが想定されるときは、融資を受けられない可能性があります。そういった場合に、特定の団体や個人から資金の提供を受けるのが出資です。
出資と聞くと「返さなくてもいいお金」と考える人もいますが、それは間違いです。出資者は何かしらの魅力や企業の成長性を感じて出資してくれていることがほとんどなので、出資した以上のリターンを期待されているという点を常に頭に入れておきましょう。
助成金・補助金
補助金や助成金の活用も資金調達の一種です。補助金や助成金とは、都道府県や市町村などの自治体から支給されるお金で、原則として返済の必要がありません。都市部から離れるほど、地域の活性化を目的として、企業や事業者に対する補助金・助成金が豊富な傾向にあります。
審査を通過すれば簡単に資金を調達できるので、事業を始める土地で活用できそうな助成金・補助金がないか調べてみましょう。
ファクタリング
ファクタリングは融資やローンと異なり、利子が付いて負債が増えるものではありません。ファクタリングとは、売掛金をファクタリング業者に売却して早期に現金化する、資金調達の一種です。
手数料が発生するデメリットがありますが、売掛先の信用力のみが審査対象になるため、中小企業や個人事業主でも審査に通りやすいというメリットがあります。スタートアップ企業も審査に通りやすく、ファクタリングの利用を検討する企業は多いようです。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、個人投資家から資金を集める近年では人気の高い資金調達方法です。資金調達に限らず、商品サービスの販売・宣伝、マーケティングなど、さまざまな目的で利用されています。
クラウドファンディングを募る際には専用サイトなどを使って自社ページを作りますが、初期費用を一切かけず始めることが可能です。資金が集まる保証はありませんが、個人でも始められるほど手軽な資金調達方法となっています。
資金調達をするなら予実管理が必須
資金調達をする際には、予実管理が必須です。予実管理とは企業会計の実態を把握することで、予算実績管理とも呼ばれます。予算と実績をデータで明確に提示できれば、スタートアップ企業でも融資や出資を受けやすくなるでしょう
また、予実管理を行えば、企業の問題点の明確化やその対策をスムーズに行えるようになるので、企業目標達成にも活用できます。
Scale Cloudなら予実管理も簡単
Scale Cloudは必要な情報をリアルタイムで集め、優先的に改善すべき課題を一目で分かるようにするビジネスツールです。KPIごとの目標も可視化できるため、「計画に対して進捗が遅れているKIPはどれか」、「計画の達成・未達成の原因がどのKPIにあるのか」が把握できます。管理部門に依存せずに、組織全体で予実管理を行えるようになるので、ぜひScale Cloudの活用を検討してみてください。
まとめ
バーンレートとは、企業が1ヶ月にどれだけコストを費やしているかを示す指標です。バーンレートの算出は、コストの見直しやランウェイの把握、KPIやアラートの設定にもつながるため、スタートアップ企業にとって重要とされています。
生存率が低いといわれるスタートアップ企業ですが、戦略次第で業績を伸ばすことが可能です。まずは1年持たせることを目指し、その後さらなる成長を達成しましょう。
会社を長く存続させるためには、資金調達が重要です。しっかりと予実管理を行って、融資や出資を受ける際にデータとして提示できるようにすれば、実績や売上が少ないスタートアップ企業でも資金調達がしやすくなるでしょう。
資金調達のための予実管理には、ぜひScale Cloudを活用してみてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。