職種別のKPIの種類・設定例を注意点と合わせて分かりやすく解説!
2021.11.15
職種を問わず、企業において目標を明確にする指標として注目されているのがKPIです。しかし、KPIの重要性は理解していても、実際にどのように設定すれば良いのか分からないという方も多いでしょう。
この記事では、そんなKPIの種類や設定例、KPIを設定する際の注意点などを、初心者にも分かりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
そもそもKPIとは?
KPIの種類について解説する前に、KPIの基本情報について紹介します。そもそもKPIとは何なのか、KPIと勘違いされることが多いKGIとの違いなどを詳しく解説していくので、見ていきましょう。
KPI
KPIについて簡単に説明すると、自社の目標を達成する上で必要となる計測や監視をするための定量的な指標を指します。
売上高などの目標に向けたプロセスにおける達成度を確認し、評価する中間目標として活用されるのがKPIです。
自社でKPIを設定することによって会社全体の方向性が定まり、最終目標に向けて行動できます。
例えば、営業では訪問件数や受注件数などがKPIとして設定されるケースが多い傾向です。KPIをより具体的に設定すれば、現在の進捗度合いを把握できます。
KGIとの違い
KGIは中間目標として活用されるKPIとは異なり、最終目標となります。簡単に説明すると、KPIは最終的な目標に向けた中間目標、KGIは中間目標の先にあるゴールの目標です。
そのため、効率良く2つを活用するには、まずKGIで最終的なゴールを決めて、そのゴールに向けた中間目標を決めることが重要となります。
KPIの種類~営業~
KPIについて解説してきましたが、ここからはKPIの種類の一つの例として、営業でよく利用されるKPIの種類をご紹介します。営業で設定されるKPIは主に以下の通りです。
- 平均利益率
- 売上原価(COGS)
- LTV
- アポ獲得数
- 商談数
- 受注数
- ROI
- CAC
それでは、一つずつ解説していきます。
平均利益率
平均利益率は、一定の期間でどれだけ利益を出しているかを算出したものです。売上高営業利益率を参考にしており、売上高営業利益率は「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で計算をします。
平均利益率を確認することで、利益率を上げるための戦略が立てやすくなるでしょう。
売上原価(COGS)
売上原価は、自社の商品やサービスを売るためにかかる費用です。基本的には、商品やサービスの製造費や製造にかかる人件費、諸経費などが含まれます。
計算式は以下の通りです。
売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高
また、計算するのが大変という場合は、損益計算書でも確認できます。
顧客生涯価値(LTV)
顧客生涯価値とは、顧客一人ひとりが会社にもたらす利益や価値を指します。
顧客一人ひとりが実際の取引期間中にどれだけの価値をもたらしているのかを確認できれば、顧客の購買意欲を促すためにはどうすれば良いのかを計画するために役立つでしょう。顧客の購買意欲が高まれば、自社の売上向上にもつながります。
顧客一人ひとりの生涯価値を確認できれば、その商品やサービスにどれだけの広告費をかけられるかも検討しやすくなるため、KPIの設定にはおすすめです。
アポ獲得数
アポ獲得数とは、営業活動を行った結果、どれだけ顧客訪問へのアポイントメントにつなげられたかを表す数値です。コロナ禍で直接の訪問が難しい今、アポは訪問だけに限らず、WEB会議なども含まれます。
アポ獲得数を把握しておけば、アポにどのくらいつなげられているのか、失敗した場合は何が原因なのかを把握しやすくなるでしょう。また、アポ獲得数をKPIとして設定する場合は、「ニーズが低い顧客に対してアポを獲得していないか」などもチェックしておくと良いでしょう。
商談数
商談数は文字通り、商談を行った回数を表します。商談数が多ければ多いほど、さまざまな顧客に対して自社製品やサービスのアピールができているという証拠です。
KPIに商談数を設定して、ある程度数値が増えるようになったら、「商談数は多いのに成約につながっていない」などの問題が起きていないかも確認してください。成約につながらない場合には、「顧客のニーズに応えられているか」、「自社の営業方法で伝わりにくいところはないか」など、商談を行う際の問題点を分析して改善していきましょう。
受注数
営業のKPIでは、受注数が設定されることも多い傾向です。受注数は、商品がどのくらい購入されたか、サービスを何件契約できたかなどを表す数値で、営業担当者にとってはKPIの中でも特に分かりやすい指標といえるでしょう。
また、受注率がKPIとして設定されるケースもあります。受注率は、商談まで進んだ案件の中で、何件が成約までたどり着いたかを示す割合です。受注率が低い場合は、顧客へのアプローチ方法などに問題がある可能性が考えられます。営業活動の改善や見直しをする際の参考にもできるでしょう。
KPIの種類~マーケティング~
続いては、マーケティングでのKPIの種類をご紹介していきます。マーケティングでよく設定されるKPIの種類は以下の通りです。
- サイトトラフィック
- ページビュー数
- セッション数
- コンバージョン率
- リード数
- 直帰率
- SNS
- Eメール
一つずつ解説していくので、参考にしてみてください。
サイトトラフィック
サイトトラックとは、自社のオンラインサイトなどに訪問した顧客の合計で、数値が高いほど多くの人がサイトに訪問しているということになります。
サイトトラフィックを増やすためには、自社のオンラインサイトへ訪問してもらうためのSEO対策やSNS戦略などが重要です。
ページビュー数
ページビュー数は、Webサイトやオンラインサイトのページごとの合計で、何回そのページが閲覧されたかを指します。
会社の売上や知名度を上げるためには、まずはサイトを見てもらわなければ意味がありません。そのためには、ページビュー数を上げることが最優先事項になります。
セッション数
セッション数とは、ページビュー数とは異なり、期間内にどれだけ顧客が訪問したかという数値です。
また、1回の訪問でどれだけの時間サイトに滞在していたかの平均値である、平均セッション継続時間などもKPIの種類として挙げられます。
コンバージョン率
コンバージョン率は、オンラインサイトへ訪問した人の中で、どのくらいの人がアクションを起こしたかの割合を示しています。アクションは商品の購入やサービスの契約だけでなく、資料ダウンロード、セミナーへの参加申し込み、企業への問合せなど、さまざまです。
オンラインサイトの訪問率が高くても、コンバージョン率が低ければ、購入や契約などのアクションに至るまでの段階で何かしらの問題がある可能性が高いでしょう。コンバージョン率は、ターゲットやキーワード選定、サイト内のユーザー導線などを見直すことで改善につながります。
リード
リードは見込み顧客のことです。自社に興味を持っていて顧客になりやすい人を多く獲得していれば、将来的な利益につながりやすくなります。
しかし、リードを獲得したとしても、全て見込みレベルが同じというわけではありません。顧客の興味レベルに応じてリードを分ける必要があります。リードの興味レベルなどに合わせてKPIを設定すると、より具体的で目標が分かりやすくなるでしょう。
直帰率
直帰率は、自社のオンラインサイトを1ページだけを見ただけでサイトを離れてしまうユーザーの割合です。直帰率が高ければ高いほど、ユーザーはすぐに離脱してしまっているということなので、調査や改善が必要になります。
直帰率を減らすことによって売上アップも見込めますので、売上に関するKGIを掲げている場合などもKPIとして設定しやすいです。
SNS
自社の公式SNSがある場合、SNSのフォロワー数などもKPIとして設定できます。フォロワー数は、商品やサービスの認知度、エンゲージメントを測る上で重要な項目です。
また、ユーザーが自社の投稿に関してどのくらい反応しているかを表す、ソーシャルメディアエンゲージメント率などもKPI設定として有効となります。ソーシャルメディアエンゲージメント率によって、顧客から安定した支持を得られているかどうかの判断も可能です。
Eメール
Eメールでの配信やEメールを活用したキャンペーンなどを行う際には、ユーザーがどれだけメールを開封しているか、メール内のURLをクリックした人の割合はどのくらいなのかといった、開封率やクリック率がKPIとして有効です。
不特定多数の人にアピールするSNSと違って、個人に向けてアピールするEメールだからこそ得られる情報もあるので、ぜひ活用してみましょう。
投資対効果(ROI)
投資対効果(ROI)は、自社が投資した額に対して得られた利益です。
投資に対してどれだけの利益が得られたかを確認でき、これからどうやってマーケティングを行えば良いのかという施策を練るために役立ちます。
顧客獲得コスト(CAC)
顧客獲得コストは、自社の商品やサービスを利用するユーザーを獲得するための費用です。
基本的には、自社の商品やサービスを実際に販売するまでにかかる人件費や広告費、などが顧客獲得コストに含まれます。
この顧客獲得コストをどれだけ下げられるかによっても、会社全体の利益率が大きく変わってくるでしょう。
KPIの種類~システム開発~
次に、システム開発のKPIの種類をご紹介します。システム開発で設定されることが多い主なKPIは、以下の3つです。
- エラー件数
- テスト終了件数
- プロダクト改善数
それぞれ詳しく紹介するので見ていきましょう。
エラー件数
エラー件数は、完成度を測るための指標として有効です。エラー件数を設定しておけば、製品の品質を確保する意識が全体で生まれます。製品の品質が向上すればユーザーからの満足度も上がり、売上にも期待ができるでしょう。
テスト終了件数
テスト終了件数を設定することも、進歩情報を確認するためには重要です。
テスト終了をKPIに設定することにより、当初の目標としていた機能の設計漏れがあったなどのミスやトラブルを防げます。納期が迫っている状況では、機能を実装が間に合わないといったケースもありますので、事前にKPIを設定しておくと安心です。
プロダクト改善数
KPIを構築する要素として、プロダクト改善数も重要です。プロダクト改善数はPullRequestとも呼ばれ、コードを変更や修正をした際に他の開発者に反映してもらう機能を指します。
プロダクト改善数を設定することで、商品開発に関わるコストの削減や、プロダクト改善数の増加によるプロセスの深掘りが可能です。
KPIの種類~カスタマーサクセス~
最後に、カスタマーサービスでよく設定されるKPIの種類を紹介します。カスタマーサービスで設定したいKPIは以下の4つです。
- 顧客満足度
- Eメール・電話・チャット
- 平均解決時間
- エスカレーション率
一つずつ解説していくので、ぜひご覧ください。
顧客満足度
何らかの指標で具体的な数値にできる場合は、顧客満足度をKPIに設定することも可能です。顧客からの感謝の言葉の回数を計測したり、商品やサービスの満足度に関するアンケートを行ったりすれば、本来なら明確な数値で設定するのが難しい顧客満足度も、目に見える形で判断できるようになります。
Eメール・電話・チャット数
Eメール・電話・チャット数、それぞれの方法でどのくらいお問い合わせが来たのかなどを分析すれば、顧客に対しての有効なサポート方法を把握できるため、ユーザーの利用率に合わせた改善が可能です。
さらに、応答数や平均応答速度が悪い場合は、KPIで数値の改善を設定すれば、サービスレベルを引き上げる結果につながるでしょう。
平均解決時間
平均解決時間とは、1回の問い合わせにかかる時間の長さを指します。顧客の問題に対してどれくらいの時間で解決できているのかを判断するのと同時に、一人の顧客に対してオペレーターが費やしている時間も把握可能です。
分野などによって問題の種類や解決にかかる時間は大きく変わるため、企業が提供している商品やサービス、今現在の平均解決時間などを参考にしながら設定しましょう。
エスカレーション率
エスカレーションとは、オペレーターが回答できない内容などを責任者やリーダーに相談することです。
顧客の問題を解決するために何度もエスカレーションをすると、やりとりを何回も繰り返したり、改善に時間がかかってしまうため、その分顧客満足度も低下してしまうリスクが考えられます。
なるべくエスカレーション率を低下させて、スムーズに顧客の問題を解決できるようにしましょう。
KPI設定時の注意点
KPIを設定する際は、「SMART」を意識しながら設定します。
- Specific(明確性)
- Measurable(測定可能)
- Achievable(達成可能)
- Specific(明確性)
- Time-bounded(期限設定)
KPIは社員同士で共通する目的なので、社内の誰もが理解できる目標でなければいけません。さらに、人によって解釈の違いが生まれないように明確な数値である必要があります。
注意点としては、あまりにも達成が不可能といえる数値になっていないか、KGIに結びついているかをチェックしておくことです。経営陣だけでKPIを設定してしまうと、現場との意識の違いから達成が不可能なKPIになってしまう可能性もあるため、現場に確認をしながら設定をしましょう。
また、KPIを設定する際には期日も設定してください。期日を設定しないと、いつまでも他の業務を優先してしまって必要なタスクが進まないといった事例が起こりかねません。
KPIを設定した後は、実行しながら必要であればKPIの修正なども行いつつ、定期的に進捗を確認しながら進めていきましょう。
まとめ
KPIとは、売上高などの目標に向けたプロセスにおける達成度を確認するための中間目標です。KPIが中間目標なら、最終目標はKGIとなります。ゴールがハッキリしていないと、それまでの道筋もブレてしまうため、KPIを設定するときはKGIから設定するようにしましょう。
業種や職種、それぞれの企業が設定したKGIなどによってKPIの種類は大きく変わるので、自社に合ったKPIを設定する必要があります。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。