PDCAサイクルとは?メリットや効果を高める方法について解説
2022.12.08
「PDCAを回す」「PDCAのサイクルを速くする」という言葉を、ビジネスで耳にする機会は多いでしょう。企業の業務改善やマーケティングにおいてもよく聞く言葉であり、ビジネスパーソンであればこの意味を理解することは非常に重要です。
しかし、ざっくりと概要を知っていても、「PDCAとは何か」を具体的に理解できていない人は意外と多いようです。
今回は、PDCAを知りたいという方に向けて、PDCAの基本的な意味やメリットを紹介した上で、最大限活用する方法について紹介していきます。
PDCAとは
PDCAとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4つの頭文字をとったもので、多くの企業で用いられている業務改善のためのセルフマネジメントメソッドのことを指します。
1950年代に品質管理の父と呼ばれているW・エドワーズ・デミングによって提唱されたフレームワークで、1990年代の終わりからビジネスの現場で使われるようになりました。
この4つのステップを繰り返すことで、継続的な業務の改善ができるというのがPDCAの考え方です。
PDCAのプロセス
PDCAは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の4つの要素からなっているといわれても、表現が抽象的すぎて具体的にどのようなことをすれば良いのか分からない方もいるのではないでしょうか。
それでは、PDCAサイクルの段階ごとに分けて詳しく解説していきます。
Plan(計画)
Plan(計画)とは、目標の設定および目標を達成するためのアクションプランの作成を指します。
この「Plan(計画)」は単に計画を立てれば良いのではなく、5W2Hを意識するなど、自らの仮説に基づいた論理的なPlanを作ることが大切です。その際には、さまざまな指標を用いて定量的な目標設定をするようにしましょう。
Do(実行)
この段階では、さまざまな指標を用いて立案したPlanを実行に移します。なお、この「実行」というのは、あくまでそれが有効なものであるか、より良い方法はないかという点について「検証」するための手段としての実行段階です。
そのため、このPlanについて細分化して「実行」し、それがうまくいかなかったとしても「なぜうまくいかなかったのか」「どれくらいうまくいかなかったのか」を詳細に記録することが重要となります。
Check(評価)
DO(実行)、つまり仮説の検証が済んだら、検証結果の評価を行います。この段階では、以下の2点について評価します。
- 設定した目標の達成度合い
- 計画実行のスムーズさ
そして、設定目標が達成できなかった場合、計画通りに実行できなかった場合はその原因を分析しましょう。成功した場合でも、「なぜ成功できたのか」という成功要因を探っていけば、より価値のある「評価」となります。
Action(改善)
いよいよPDCAの最後の段階、Action(改善)です。この段階では、前段階のCheck(評価)で分析された課題・問題点に対する改善策を考えます。
このActionは、Checkにおける仮説の検証とその要因分析が正しく行われていることが前提条件です。評価において発見した課題や問題点を元に、この計画を今後どうしていくのか検討した上で、再びPDCAサイクルの最初の段階であるPlanに戻ります。
こうしてPDCAサイクルを繰り返すことで、業務プロセスをより良いものに変えていくのです。
OODAとの違い
PDCAは改善までのサイクルに時間がかかることなどから、近年ではOODAというプロセスを活用している企業もいます。では、そんなOODAとはどのようなプロセスなのでしょうか。ここでは、OODAとは何か、PDCAとOODAではどんな違いがあるのか、詳しく解説していきます。
そもそもOODAとは
OODAは下記の4つの頭文字をとったもので、これらを素早くループして繰り返していくことで最善を目指していくプロセスです。アメリカ空軍の大佐が提唱しているもので、素早い状況判断が求められます。
- Observe(観察)
まずは、市場の状況や競合企業の動向、自社の現状などを観察して情報やデータを集めます。ただ情報を集めれば良いというわけではなく、今後自社で行動を決定していく上で役立つ情報を集めるようにしましょう。
- Orient(現状判断)
集めた情報をまとめて現状を把握し、データを分析して本質を理解することで、状況の判断を行っていきます。Observe(観察)の段階で、どのくらいのデータが集められているか、質の高い価値のあるデータになっているかによって、現状判断の精度が変わってきます。
- Decide(決定)
Orient(現状判断)で現状を把握して本質を理解できるようになったら、それに合わせて行動計画を決定します。
- Act(行動)
Decide(決定)の段階で決めた行動計画を実行していくのが最後のフェーズです。実行した結果を観察するためにObserve(観察)のフェーズに戻り、OODAのループを繰り返していきます。
PDCAとOODAの違い
PDCAとOODAはスピード感や重視されるポイントが異なるため、場面ごとに使い分けるのがおすすめです。
PDCAは、数値的なデータを重要視した、中長期的に改善を重ねて成長していくためのモデルとなっています。中長期的な改善が必要な場合はPDCAを取り入れるのが良いでしょう。
一方のOODAは、周囲の観察などから迅速に現状を把握して判断することを重要視している、短期間で改善を繰り返していくモデルです。迅速な判断が求められる場合にはOODAを選ぶというように、PDCAとうまく使い分けるようにしてください。
PDCAのメリット
ここまではPDCAとは何かについて説明しましたが、このセルフマネジメント手法には具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。PDCAのメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 目標やタスクが明確になる
- 業務に集中できる
- 課題や問題点が把握しやすい
これらのメリットは、PDCAならではの業務プロセスの体系化とその綿密さから生まれています。それでは、この3つのメリットについて詳しく説明していきましょう。
目標やタスクが明確になる
PDCAの1つ目のメリットとして、目標やタスクを明確にできることが挙げられます。
PDCAの1つ目の段階であるPlanを考える際に、目的を明確化しなければ計画は立てられません。そのため、明確な目標を持って計画を考えられるのです。
また、PDCAにおいてこのPlanを実行・評価するためにはさまざまな数値目標を立てる必要があります。PDCAを回すにあたって、明確な目標を立てながらロジカルに計画を進められるのは、PDCAのメリットの1つといえるでしょう。
業務に集中できる
PDCAの2つ目のメリットとして、業務に集中できることが挙げられます。1つ目のメリットでも述べたように、PDCAとは綿密な目標・目的意識を持ったロジカルな業務プロセスです。
そのため、業務を行う際にもこれらの目標・目的を目指して業務を進められます。これによって、目的を失うことなく業務に集中できて、生産性の向上が期待できます。
課題や問題点が把握しやすい
PDCAの3つ目の大きなメリットは、課題や問題点を把握しやすいことです。PDCAでは、計画段階で数値目標など明確な目標を設定するため、検証段階で計画の成功・失敗が明確に分かるという特徴があります。
また、それぞれの数値目標ごとに達成度や進行度を測れることなどから、課題や問題点の分析をする材料が豊富にあり、改善策を考えやすいです。
PDCAで失敗する原因
ここまで、PDCAのメリットを挙げてきました。一見万能に見えるこのPDCAですが、この方法を用いたからといって、必ずしも業務改善が成功するとは限りません。PDCAで失敗する主な原因としては以下の4つが挙げられます。
- 計画が不十分
- 評価基準が曖昧
- 改善に時間がかかりすぎる
- PDCA自体が目的になってしまう
これらの4つの原因について、どうしてこれが失敗につながってしまうのか1つずつ説明していきます。
計画が不十分
PDCAが失敗する原因の1つ目は、計画の不十分さです。PDCAにおいて計画はすべての基礎になるものであり、この中で指標を用いた目標設定、目的の明確化を行います。そして、その目標設定を用いて計画を実行・評価・改善していくのです。
そのため、この計画段階において適切な目標設定ができなければ、PDCAは機能しません。PDCAを用いる際には、Planの段階でしっかりと重要な指標を選定して、綿密な計画を立てるように注意しましょう。
評価基準が曖昧
計画を立てて検証した結果を評価する際には、定量的な評価が重要になります。ここでの評価結果は、その後問題点や課題を抽出するために用いるものですが、評価結果が具体的でなければ問題点や課題の抽出もできません。
計画段階で目標として設定した数値目標など、具体的かつ定量的な基準に照らし合わせることで、初めてPDCAは価値のあるものとして機能できるのです。
改善に時間がかかりすぎる
PDCAの失敗する4つの原因の1つとして、改善に時間をかけすぎてしまうことが挙げられます。
PDCAは、仮説検証と改善のサイクルを何度も繰り返すことで、より価値のある計画を作り上げ、業務を改善するモデルです。そのため、各プロセスで綿密に実行しながらも、効率良くそのサイクルを回す必要があります。
PDCAのプロセスの1つであるAction(改善)は、それ以前に集めた情報から改善策を導き出すステップです。さまざまな可能性があるため、時間をかけすぎてしまう企業が多い傾向があります。
しかし、重要なのはスムーズにPDCAを回すことであり、この段階に時間をかけすぎては業務の改善が行われません。そのため、タスクの中で優先順位をつけて取捨選択をしながら、効率良くPDCAを回していくことがPDCAの成功につながります。
PDCA自体が目的になってしまう
PDCAの活用に失敗する原因の4つ目として、PDCA自体が目的となってしまうことが挙げられます。これはPDCAを回す際にもっとも陥りやすい現象です。PDCAはあくまで業務プロセスを改善する「手段」であり、それを活用して業務改善という「目的」を達成する必要があります。
しかし、PDCAを回すことに集中するあまり、目標設定や目的意識が薄くなり、本来解決しなければいけない課題を疎かにしてしまう可能性があります。PDCAを回すことを目標にするのではなく、PDCAを回した結果によって得られる成果を重視するようにしましょう。
PDCAの効果を高める方法
このように、PDCAは正しい方法で利用しなければ効果的に活用できません。ここからは、PDCAを効果的に活用するために、PDCAの効果を高める方法を紹介します。PDCAの効果を高める方法は、主に以下の4つです。
- 目標は具体的に設定する
- 定期的に評価する
- 継続的に続ける
- ツールを活用して効率的に作業を進める
これらの4つの方法がなぜPDCAの効果増大につながるのか、1つずつ見ていきましょう。
目標は具体的に設定する
PDCAの効果を高める方法の1つとして、目標を具体的に設定することが挙げられます。前述の通り、設定した目標・目的がPDCAの成功を左右します。
具体的な目標を設定して、それに向かって計画から改善までを進めていけば、設定した目標によって、進捗度合いやPDCAの成否の評価が可能です。そのため、具体的かつ現実的な目標を定めることでPDCAの効果増大につながります。
定期的に評価する
PDCAの効果を高める方法の2つ目として、進捗状況を定期的に評価することが挙げられます。PDCAを回す中で、目標を見失ってないか、予定通りに進んでいるかを定期的にチェックした上で進捗度合いを評価するのは、PDCAの効果を増大させるためにとても重要です。
そうすることで、計画のどの点に問題があったのか、どこを改善するべきかを発見しやすくなります。そして、評価・改善の段階であるCheck・Actionの際にスムーズに課題を発見しやすくなるというメリットもあるのです。
継続的に続ける
PDCAを効果的に活用する方法の3つ目として、PDCAを継続的に続けることがあります。前述の通り、PDCAは何度も回して成果を得るものなので、その回数は多い方が良いです。そのため、単発でPDCAを回しても成果は得られません。
しかし、PDCAを回す中で思うように進まず、改善案が出てこないこともあるでしょう。その場面で諦めてしまうのではなく、考えられる改善策をできるだけ出して検証してみるのが大切です。
このように、行き詰まったとしても諦めずにやり続けることが、PDCAの効果を高める結果につながります。
ツールを活用して効率的に作業を進める
PDCAの効果を高める4つ目の方法として、ツール活用による作業の効率化があります。PDCAを回す過程では、KPIを設定しながら目標指標と照らし合わせて、進捗や達成率を評価したり活動内容を記録したりするという業務が発生します。これらを行う際にツールを活用することで、作業を効率的に進められます。
また、ツールを活用すれば、目標数値の変更や達成状況などをリアルタイムで関係者に共有できて、さらに素早くPDCAサイクルを回すことが可能です。PDCAサイクルを素早く回すためにも、ツールの活用は必須といえるでしょう。
PDCAの導入に成功している企業の具体例
では、実際にPDCAの導入に成功している企業は、どのような方法で行っているのでしょうか。ここからは、PDCAの導入に成功している企業の具体例を2つ紹介していきます。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は、PDCAを活用して組織や人事の改革に成功した企業です。Planの段階では、「ムリ・ムダ・ムラ」を排除して生産効率を高めるトヨタ独自の「トヨタ生産方式」を採用しています。]
また、Plan、Checkの段階で、5回の「Why」を繰り返し、最後に「How」を考える5W1H方式を実行しており、これによって計画や改善策がより具体的になるのです。「なぜこのような計画を立てたのか」「なぜ好調に進んだのか」「なぜうまくいかなかったのか」を深掘り、抽象的な課題をより具体的にして業務に取り入れていきます。
トヨタ生産方式については、「トヨタ式KPIの特徴とは|応用方法をチェックして失敗しないKPI設定を!」の記事で詳しく紹介しているので、気になる方はこちらを参考にしてみてください。
株式会社リクルート
転職事業のみならず、さまざまな業界で成果を上げているリクルートでも、PDCAは導入されています。リクルートのPDCAは高速でアプローチするのが特徴で、的確に素早く改善策を打ち出すことで、社員にも早期に修正する力が身に付くのです。
ツールを活用して、データを元にした精度の高い施策を実行することで、高い成果を実現しています。
PDCAを効率的に回すならScale Cloud
PDCAを素早く回すためのツールをお探しの方は、Scale Cloudをご検討ください。Sales Cloudはすべての営業活動を単一のプラットフォームで実行できるため、さまざまな情報をリアルタイムで共有することが可能です。
Scale Cloudを活用すれば、目標達成率やKPIの変更などをリアルタイムで関係者に共有ができます。
まとめ
PDCAとは、Plan(計画)からAction(改善)までの一連の流れを繰り返すことで業務改善を図るセルフマネジメント手法で、多くの企業で用いられています。
PDCAのメリットは、目標やタスクが明確になり、課題抽出を含め業務をスムーズに行える点です。ただし、このPDCAも正しく活用しなければ失敗に終わってしまいます。
PDCAの効果を高めるためには、前提となる目標・目的設定を具体的に行う、定期的に評価を行うなどの方法があります。その他、ツールを活用するなども有効な手段といえるでしょう。PDCAサイクルを効率的に回して高い効果を得るために、ぜひScale Cloudを検討してみてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。