Amazonの資金KPIが本当にすごい!
2021.03.04
自社KPIだけではなく他社のKPIはどうなっているのか、という声に応えていきます。
今回は誰もが知る、AmazonのKPIについて触れてみたいと思います。
ここ数年でKPIの活用が一気に広がってきています。しかし、その多くが「売上」に関するKPIだけの活用になっています。
たとえば、
- 新規契約数
- リピート契約数
- 顧客単価
- 商談数
- 成約率
- 商談化率
- リード数
といったKPIです。
こういった「売上」のKPI以外にも、「費用」のKPIと「資金」のKPIがあります。
今回はこのうちの「資金」のKPIについて取り上げてみたいと思います。
Amazonについて
Amazonは、2002年の営業黒字化以降も営業利益は低水準で推移している一方で、営業キャッシュ・フローは飛躍的に増加しています。
同社は、「当社の財務的な焦点は、フリー・キャッシュ・フローの長期的かつ持続可能な成長にある」と公言している通り、経営上、キャッシュ・フローを重要視しており、積極的な経営を支えているのがキャッシュ・フロー・マネジメントです。
- 売上高は前年比21.4%増の6.7億円
- 営業利益は60.8%増の7,127万円
かなり成長しています。
資金KPI
ここで登場するのが資金のKPIです。
それは、「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」と呼ばれるもので、「会社が原材料や商品の仕入などへ現金を投入して在庫になり、それを販売してから最終的に現金化されるまでの日数」を示した指標です。このCCCは小さい方ほど資金効率は良いといえます。
たとえば、小売世界最大手のウォルマート・ストアーズの場合、CCCはプラス約12日です。現金を払って商品を仕入れてから販売して、その代金を回収するまでに約12日かかるということです。小売業界の一般的なCCCはプラス10~20日程度なので、ウォルマート・ストアーズのCCCが決して悪いわけではありません。
しかし、一般的には、現金を払って商品を仕入れてから売上代金を受け取るまでの運転資金は、銀行からの借入などでまかなう必要があり、プラス12日で回収できるといえども、売上高が大きくなればなるほど、1日に必要な運転資金も大きくなります。
つまり、売上高が年間5000億ドル規模のウォルマート・ストアーズであれば、その12日間は約164億ドルに相当し、その運転資金を自己資金又は借入金などで捻出しなければなりません。
Amazonが驚異的なのは、このCCCが平均しておおよそ「マイナス30日程度」であることです。計算上、商品の仕入れ代金を支払う約30日前には商品の代金をもらっているということです。
つまり、先ほどのウォルマート・ストアーズのケースとは逆で、売上高が大きくなればなるほど、手元に入る資金が多くなっていくことになり、まさに「打ち出の小槌」のようにキャッシュを生み出していくのです。その結果、営業利益は低水準であったとしても、多額の営業キャッシュ・フローを稼ぎ出すことができるのです。
これはビジネスモデルとしてはとてもとても秀逸です。
ウォルマート・ストアーズが、売上高が大きくなればなるほどPLは良くなるものの、運転資金がその分必要になってくるというビジネスモデルであるのに対して、Amazonは、売上高が大きくなればなるほどPLはもちろん、運転資金が不要どころか、逆に多額の資金を稼ぎ出すことができるというビジネスモデルになっています。
このように、売上拡大やCCCの徹底的な改善を通して稼ぎ出すキャッシュを活用し、かつ、デット・ファイナンスなどにより調達した資金を加えて、Amazonは新規事業やM&A、既存サービスの改善に向けて大規模な投資を実行し、どんどん事業規模を拡大できるのです。
今回は、資金のKPIについて書きましたが、いまやどんな業界においてもKPIの活用が常識化していっています。
これからのKPIマネジメントについては、「KPI資料」にまとめましたので、気になるものがあればぜひ参考にしてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。