MBO(目標管理制度)とは|種類やメリットデメリットを解説
2022.10.07
企業でMBOを取り入れたいと思っているけどKPIやOKRとの違いが分からない、と思っている方もいるのではないでしょうか。そんな方のために、この記事では、MBOとは何か、KPI・KGI・OKRとの違い、MBOの種類、メリットデメリットなどをまとめて解説していきます。MBOを企業に導入したい、どんな種類があるのか詳しく知りたいという方は、ぜひご覧ください。
MBO(目標管理制度)とは
MBO(Management by Objectives)とは、個人やチームで設定した達成度を個人で管理する目標管理制度のことで、経営学者のピーター・ドラッカーが提唱したビジネス用語です。具体的にいうと、どのタスクにどのくらいの時間を掛けるのかを決めて、どのような成果が出たかを社員が把握できるようにします。
実際に、2018年に労務行政研究所が実施した「人事労務諸制度の実施状況調査」によると 79.3%の企業で「目標管理制度を導入している」と回答しています。MBOを重要視している企業は多く、MBOを取り入れることで社員のモチベーションが上がる効果を期待しているところも多いようです。
しかし、これからMBOを取り入れたいと考えている企業の中には、KPIやKGI、OKRなどとの違いがいまいち分からないという方も少なくないでしょう。ここでは、それぞれの違いについて解説していきます。
KPIとの違い
KPI(Key Performance Indicator)は、「重要業績評価指標」という意味になります。プロジェクトの最終的な目標(KGI)を達成するために必要な過程を設定し、どのくらいの数値があれば達成できるかを数値で計算したのがKPIです。
KPIとMBOの違いの1つとして、目標設定の範囲が違う点が挙げられます。KPIはプロジェクトレベルの目標なので、チーム内で目標設定や共有を行うのが中心です。一方、MBOは個人レベルでの目標設定で、上司や経営陣以外の社員には目標に関して共有されない傾向にあります。また、MBOは人事評価に直結するケースもあるようです。
OKRとの違い
MBOと似ている目標管理の方法に、OKR(Objectives and Key Result)があります。「目標と成果指標」という意味で、元インテルSEOのアンドリュー・S・グローブが1990年代に提唱しました。OKRは、難易度が高い目標をあえて設定することで、社員のパフォーマンスを上げるのを目的としています。
個人の目標を上司や同僚と共有するのはMBOと変わりませんが、OKRはあくまでも社員のパフォーマンスを上げることだけに注力しているため、人事評価をするための指標ではありません。
また、目標の達成に対する評価の仕方も、MBOは企業によってやり方が異なるのに対し、OKRは数値化された目標を客観的なデータの結果によって判断するといった点も異なります。
MBOの種類
KPIやKGI、OKRの違いを認識できたところで、次にMBOの種類について見ていきましょう。MBOの種類には以下の3つがあります。
- 組織活性型
- 人事評価型
- 課題達成型
それぞれ説明していきます。
組織活性型
組織活性型は、従業員が目標を設定して自主性を引き出すオーソドックスなMBOです。
社員一人ひとりの考えが反映されやすく、企業やチームが活性化するのが目的で、Y理論が基盤となっています。Y理論とは、経営学者のダグラス・マクレガーの著書「企業の人間的側面」に登場するモチベーションの理論の1つです。
企業の目標と従業員の欲求や目標がはっきりしていれば、企業はもっと能率的に目標を達成できると提唱しています。すなわち、社員の自主性を重んじ、組織を活性化することを目標の達成を狙っていくのが組織活性型の特徴です。
人事評価型
人事評価型は、社員が立てた目標がきちんと達成されているのか、業務上の評価も行いながら個人の成長も狙うMBOです。
企業が人事評価型のMBOを行うようになった背景には、世間の年功序列から脱却する流れがあります。年齢ではなく成果で対等に評価し、人材と企業の成長を中心に考えるようになったのがきっかけです。
一方で、人事評価型で懸念するところは、従業員の行動が人事評価においてプラスとなったとしても、直接企業の売上全体に貢献するわけではない点です。それでも、社員のモチベーションと能力を上げる効果が期待できるため、人事評価型のMBOを取り入れている企業も存在します。
課題達成型
課題達成型は、企業の目標達成を優先し、それに応じた個人の目標を設定するMBOです。
先に紹介した「組織活性型」と「人事評価型」のボトムアップ形式とは異なり、トップダウン形式で管理するのが特徴です。会社全体の目標を最初に決めた後、部署ごとに目標を決め、最後に個人の目標を決めます。各々が目標を達成すると、連鎖的に会社全体の目標も達成できるイメージです。目標を設定する際には、会社全体の目標を高く設定しすぎてしまうと、個人のモチベーションが下がる可能性があるという点に注意してください。さらに、目標を達成したか否かに注目しすぎるあまり、プロセスを重視しなくなる点が考えられます。
MBOのメリット
ここからは、MBOのメリットについて紹介するので、見ていきましょう。MBOのメリットとしては、以下の4つが考えられます。
- 自分でマネジメントを管理できる
- 社員のモチベーション向上が期待できる
- 社内全体で目標を統一できる
- 目標を達成するための施策を考案しやすい
以下で、それぞれ詳しく説明していきます。
自分でマネジメントを管理できる
MBOのメリットの1つとして、自分でマネジメントの管理ができる点があります。 MBOを取り入れると、個人個人で目標を達成するまでの方法を検討するため、業務で自分がどんな役割をすべきなのかを主体的に考えて管理しなければなりません。目標の管理は自分で行いたい、自分のペースで管理をしたいという人には大きなメリットといえるでしょう。
社員のモチベーション向上が期待できる
MBOを取り入れる場合は、自ら業務の目標を達成しながら自己評価をしていくので、自主性の強化が期待できます。さらに、自分で決めた目標なのでモチベーションが上がりやすく、責任感の醸成につながる可能性も高いです。以上の理由から、MBOを取り入れると、社員の成長がスピードを早める傾向があり、社員だけでなく企業にもプラスになることが考えられます。
社内全体で目標を統一できる
特に課題達成型のMBOにあてはまることですが、企業の目標に応じて個人の目標も決めるため、社内全体での目標を統一できるメリットがあります。個人が掲げた目標を各々が達成した結果が、企業全体への売上につながるので、社員は会社へ貢献できた満足感と存在意義を感じられるのです。また、チームで目標に関するミーティングを開くなど、企業で工夫して目標管理を進めていけば、コミュニケーションの活性化にもつながるでしょう。
目標を達成するための施策を考案しやすい
MBOでは、自ら目標を管理するため、目標を達成するにはどうすれば良いのかを自分で考える必要があります。しかし、目標を明確に設定していれば、その目標を達成するためには何が足りていないのか、何をすれば良いのかも自然に見えてきます。MBOを取り入れることで、目標を達成するまでの道筋も見えやすくなるのです。
MBOのデメリット
MBOのメリットを紹介しましたが、デメリットはあるのでしょうか。ここでは、MBOの主なデメリットを4つ紹介していきます。
- 個人で自由に目標を設定できない
- 目標達成を意識しすぎて低い目標になる可能性がある
- 社員同士の連携が弱くなる場合がある
- 社員が人事的な評価を意識しすぎてしまうことがある
以下、それぞれ説明していきます。
個人で自由に目標を設定できない
特に課題達成型のMBOであてはまるデメリットですが、企業の目標に応じて個人の目標が決まるため、上司が目標を決めてしまう場合もあります。したがって、社員は低すぎる目標を決められたり、高すぎる目標を設定されたりなど、目標の設定が個人の裁量ではどうにもできない可能性があるのです。
上司から目標を決められるとノルマのように感じてしまって、せっかく目標を達成しても充実感が感じられないという人も少なくないので、注意してください。
目標達成を意識しすぎて低い目標になる可能性がある
また、目標達成を重視するあまり、設定目標が低くなる可能性もあります。理由は、会社からの評価基準が「設定した目標を達成しているかどうか」になる傾向があるからです。設定した目標を達成したか否かで判断すると、社員は自分ができる目標を立ててしまいます。メリットでも紹介した通り、MBOの本来の良さは「社員の能力向上」です。したがって、少し高めの目標を設定する必要があり、目標を達成したかどうかに加え、目標に対してどのくらい努力していたかといったプロセスを評価することも必要といえます。
社員同士の連携が弱くなる場合がある
MBOを取り入れることで、社員同士の連携が弱くなる、つまり個人主義に陥る可能性も考えられます。MBOは個人で目標を設定し、その目標に向かって行動することで企業やチームの目標達成ができる点がメリットでしたが、目標達成にベクトルが向いてしまうばかりに、同僚をフォローするような協調性が失われかねません。特に、部下や同僚と共にタスクをこなさないといけない社員は、連携を取るのを忘れてしまう可能性があるので注意が必要です。
社員が人事的な評価を意識しすぎてしまうことがある
人事評価にMBOを活用している企業は多数存在します。しかし、評価をする際には注意をしなければいけません。人事の評価基準の全てが個人の目標を達成したかどうかだけになると、目標を低く設定するなど、社員のモチベーションが下がって生産性が落ちてしまいかねないのです。企業側は、目標の達成度だけではなく、達成に向けて行ったプロセスを評価する「コンピテンシー評価」の導入など、多面的に見て評価する工夫が必要があるでしょう。
MBOを導入する際の注意点
ここまで、MBOのメリット・デメリットを紹介してきましたが、MBOを導入する場合に、企業はどのような点に注意する必要があるのでしょうか。主な注意点としては、2つ挙げられます。
- 進捗状況を把握する
- 一方的に評価しない
MBOで目標を達成するためには、上司と定期的に面談を実施し、進捗を確認することが大切です。例えば、目標に向けての行動が遅かった場合、行動を早くするようにアドバイスしてフォローすべきでしょう。
また、上司が一方的に部下のMBOを管理しないという点も肝に銘じておかなければいけません。自主性を育てるためには、部下自身の自己評価も大切です。自己評価に対して、今後の行動をどのようにしていくかを共に考えていくことが必要な役割となります。
まとめ
MBOはKPIやKGI、OKRと違って、人材を育てつつ目標を管理していき、適切な目標を設定することが大切です。社員のモチベーションを上げやすいなどのメリットがありますが、人事評価に直結するため、周囲のフォローをしないで目標達成だけに集中する人が出てきてしまうなどのデメリットもあります。
部下の目標を管理する上司は、目標に対しての状況を確認する、一方的に評価しないようにするといった点に注意してみましょう。ぜひ、MBOを現場で取り入れ、活性化に満ちた組織を目指してみてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。