予算策定とは?実行する際の流れやポイントを解説
2022.12.05
企業の経営を行っていく中で、予算策定はとても大切です。予算の策定をきちんと行えば、次の年度の売上増加や利益アップにつなげていけるでしょう。
そこで今回の記事では、予算策定の概要や予算策定が重要とされる理由、予算策定の流れについて詳しく紹介します。予算策定を行う時期やポイントなども解説するので、予算策定について気になっている方、具体的にどのように予算策定を実行していけば良いのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
予算策定とは
「予算策定」という言葉には聞き覚えがあっても、その内容について詳しく知らない、という方も多いのではないでしょうか。
予算策定とは、1年間の予算を決めることです。国や自治体でよく使われる言葉ではありますが、企業経営にとっても重要な意味があります。企業の場合は、1年間の売上予算と経費予算を策定します。
この予算を策定するには、年間の利益目標から逆算して決めるのが一般的です。予算を決めずにその場その場に応じて資金を使っている企業は、経営状態が健全とはいえません。
経営計画を作成する際には、目標を達成するために「いつ何をすべきか」「どう行動するべきか」を具体的に定めます。
予算策定・予算管理との違い
予算策定と似ている言葉に「予算管理」というものがあります。予算管理は、予算策定で決めた予算通りに業務が進められているかを随時チェック、マネジメントすることです。予算の使われ方を確認しながら、問題や課題があれば改善していきます。
継続的な業務改善の考え方として、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルで進めていくPDCAサイクルがありますが、この中で予算策定はPlan(計画)、予算管理は、Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を繰り返す部分にあたります。
また、予算策定は1年に1度行うのに対して、予算管理は1年を通して継続的に行うという点も大きな違いです。
予算策定が重要とされる理由
ここまで、予算策定の概要を説明しました。ここからは、予算策定が企業の経営においてなぜ重要とされるのか、その理由について下記の2つの観点から紹介します。
- 経営の改善が期待できる
- 意思決定のスピード向上が目指せる
それぞれの理由を見ていきましょう。
経営の改善が期待できる
まず、予算策定をきちんと正しく行うことによって、企業の経営の改善が期待できます。予算策定の段階で明確な目標を設定すれば、1年間の業務の見通しを具体的に立てられるのです。目標利益を達成するための最低売上目標やさまざまな経費の上限を設定するので、無駄なものやことへの支出が少なくなります。
予算策定をせずにその場その場で資金を使ってしまうと、いつの間にか無駄に予算を使いすぎていて業績悪化につながる可能性がありますし、最悪の場合は倒産をする恐れもあるでしょう。
意思決定のスピード向上が目指せる
予算策定によって1年間の目標が明確になることで、意思決定のスピード向上も目指せるようになります。そのためには、経営者の経営戦略を予算策定の段階で盛り込み、それを従業員に伝えるのが大切です。従業員が策定された予算を認識していれば、毎日の業務の効率化が図れる他、無駄な業務を減らす結果にもつながるでしょう。
予実策定の流れ
上記の通り、企業において予算策定をきちんと行うことは、経営状況の改善や意思決定のスピード向上など、さまざまなメリットがあります。ここからは、そんな予算策定を行っていく際の具体的な流れをご紹介します。
- 方針・目標を決める
- 部門ごとの予算を決定する
- 全体の予算を決めて調整する
- 目標・予算を共有して実行する
吾輩は猫である。名前はまだない。どこで生れたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。
方針・目標を決める
予算策定をするにあたって最初に行うべきなのは、方針や目標の決定です。会社全体の経営計画をベースに、予算方針を考えていきます。方針が定まっていないと予算の方向性がバラバラになってしまうため、最初に方針を決めるようにしましょう。
予算編成部門が具体的な方針を作成し、予算管理の単位、予算策定スケジュール(ターゲット目標数値)などを決定します。ここで作成された予算の原案を予算会議に提出します。予算編成部門が特別に設けられていない会社では、経理が担当することが多いです。予算会議は、一般的に社長、各部門の現場責任者、予算統括部門メンバーなどが出席します。
部門ごとの予算を決定する
会社全体としての予算策定方針や目標が決まったら、全体の利益目標を達成するための部門ごとの予算を決定します。このときは、それぞれの部門の現場責任者が集まって、予算策定チームを設けることが大切です。予算編成部門から提出されたフォーマットを元に、予算とリソースを割り振っていきます。
部門によって、人件費や減価償却費などの予算策定に時間がかかることもあります。それを見込んで、期限は約1ヵ月としておくのが無難です。
全体の予算を決めて調整する
部門ごとの予算を収集した後は、全体の予算を決めて調整します。取りまとめの際には、それぞれの部門から提出された数値が正しいかどうか、適切かどうかを検証をする必要があります。また、実現可能性や設定した目標の妥当性の判断、全体の利益目標との調整、部門間の予算の調整(重複、不足など)も合わせて行うようにしてください。これらの検証によって、予算編成部門は最終予算案を策定していきます。
目標・予算を共有して実行する
予算編成部門は、策定した最終予算案を取締役会に承認してもらいます。無事に審査が終わり、代表取締役社長などの承認が得られた後は、目標や予算を各部門に共有しましょう。決定した予算案を従業員に共有すれば、会社としての全体的な目標意識を高められます。
予算策定において、目標を決めることに主眼が置かれてしまいやすいですが、重要なのは策定した予算を共有し実行していくことです。
予算策定を行う時期
予算策定を行う時期は、その企業の決算の時期によって異なります。大まかな傾向としては、大企業の場合は決算月の約4~5ヵ月前から、中堅企業の場合は決算月の約3ヵ月前から予算策定を始めるケースが多いです。そして、決算月の前月には最終的な予算が決まる傾向にあります。
日本国内の企業は3月決算が多いため、前年の秋ごろから予算策定が始まり、2月中に予算が決定するというのが一般的です。一方で、外資系企業は12月決算が多いため、同年の夏ごろから予算策定が始まり、11月中には遅くとも予算が決まります。
予算策定におけるそれぞれのフローが実施される時期も、大まかに決まっているので見ていきましょう。例えば、中堅企業が予算策定を行う場合、決算月の約3ヵ月前から方針・目標を決め始めます。次に、約2ヵ月ほど前に部門ごとの予算を決定して、約1ヵ月ほど前に全体の予算を決めて調整するという流れです。決算日の10日ほど前に取締役会が行われ、予算が決定します。
予算策定を行う際のポイント
予算策定を行う流れや時期について把握したところで、予算策定を行う際に押さえておきたいポイントを解説していきます。
- 予算は具体的かつ正確か
- 実現可能な設定になっているか
- 現場の担当者が予算を把握しているか
予算策定を行うときは、これらのポイントに注意してください。
予算は具体的かつ正確か
まず、策定する予算が具体的かつ正確であるかを細かくチェックすることが大切です。全体の予算と部門別の予算に齟齬が生じていないかを確認しましょう。
また、正確な予算を組むためにも、「なぜその予算なのか」という根拠が重要です。目標を設定する際にも、人員や設備の状況や過去の実績や行動プランによる売上を元に決定するようにしましょう。
実現可能な設定になっているか
予算は目標利益から計算して策定しますが、実現不可能な無理な数値を設定するのは避けたほうが良いです。あまりに高い目標を定めると、従業員にとっても現実性がなく、日々の業務へのモチベーション低下につながってしまいます。
予算を実現可能なものにするためには、現場の意見をしっかりと聞くことが大切です。それぞれの部門の現場責任者に対して、丁寧なヒアリングを行いましょう。また、本当に実現可能なのか、具体的な数字やデータを元に厳しくチェックする必要があります。どのような道のりを進んでいけば良いのか、マネジメント層だけでなく、すべての従業員が把握できている状況が理想です。
現場の担当者が予算を把握しているか
全体の予算策定は予算編成部門が担当しますが、部門別の予算策定は現場の担当者が行うのが一般的です。そのため、現場の担当者が予算をしっかりと把握していなければいけません。まったく現場を知らない人が部門の予算を策定しようとすると、的外れのものになってしまいます。
現実的、かつ具体的な部門別予算を策定するためにも、該当する部門の担当者が責任を持って取り組む必要があります。
また、予算編成部門は最終的に予算が確定したら、必ず部門の担当者に伝えましょう。部門の担当者は策定された予算を元に予算管理を行います。
継続的に予算を見直すのも大切
予算は「策定して終わり」ではありません。最初に決めた予算や目標の通りに業務を進められれば問題はありませんが、ビジネスにおいては常に変化や突発的な問題も起こりえます。
そのため、予算策定後も継続的に予算を見直していくことが大切です。定めた予算と実績が大きく乖離していないか、業務の進捗状況は目標に沿っているかなどを細かくチェックします。もし予算と実績に大きな差が出てしまっている場合には、その原因を分析し、改善に向けた具体的なアクションプランを作成しましょう。
なお、予算の見直しをしやすくするため、事前に費用を細分化しておくのも良い方法です。あまりに細かくしすぎると管理の手間がかかり、かえって不都合になるので、予算編成部門や各部門で管理しやすいレベルにしておくようにしましょう。
予算策定を効率化するには
ここまで紹介した通り、予算策定は企業経営にとって欠かせないものですが、策定には手間と時間がかかるのも事実です。そこで最後に、どのようにすれば予算策定を効率的に行えるのかについて解説していきます。
- Excelを使用する
- 予算管理システムを活用する
それぞれの方法について見ていきましょう。
Excelを使用する
予算策定を効率化する際に、もっとも手軽に取り組みやすいのがExcelを使用することでしょう。多くの企業でMicrosoft Officeが導入されているので、特別に新しいツールを購入する必要がないというメリットがあります。
また、普段の業務でExcelを使用しているところも多いため、誰でも使いやすいです。新たなツールを導入するとなると、使い方のレクチャーに時間が取られてしまったり、会社の一部の従業員しか使えない、といった状況も生じかねません。特に中・小規模の企業であれば、Excelでシンプルに予算を策定・管理するのが良いでしょう。
一方で、Excelを使った予算策定にはデメリットもあります。Excelは予算策定や管理に特化したアプリケーションではないため、データの収集や集計に手間取ったり、手動で行わなければならないこともあります。手動での入力や修正、集計となると、どうしても入力ミスが生じやすく、重要な予算の数字を間違えるリスクもあるでしょう。
また、各部門間や各部門と予算編成部門でファイルのやりとりを行う際にも、いちいちデータを送る必要があり、手間となります。また、何度も修正を繰り返しているうちにファイルが破損してしまう可能性も考えられます。
予算管理システムを活用する
予算策定や管理に特化したシステムを活用するのも良い方法です。予算状況をリアルタイムで確認できるため、数値の矛盾などをタイムリーに把握できて、予算の再編成が必要となったときにも手間がかかりません。
また、予算管理システムはデータベースでの一元管理ができるため、データの自動集計が可能です。入力作業もシンプルで、Excelを使用する際の大きなデメリットである集計の手間や入力ミスを防げます。
予算管理システムは、使い続けることにより過去の実績がデータとして蓄積されていくので、次回予算を策定するときにも、過去のデータをすぐに参照できて、時間を短縮できるのです。
さらに、予算管理システムを導入することで、各部門の目標の可視化ができます。目標が可視化されれば、各部門の従業員のモチベーションが上がり、結果として業績の向上につながります。
まとめ
予算策定は手間と時間がかかりますが、ポイントを押さえて進めていくことで、企業経営に大きなメリットがあります。効率的に進めるためにも、Excelの使用や予算管理システムの活用を検討しながら、予算策定を実行してみてください。
予算策定をしたいとお考えの方は、データの一括管理や社内共有、分析などが簡単にできるScale Cloudの利用を検討してみてください。
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監修者
広瀬好伸
株式会社Scale Cloud 代表取締役社長
プロフィール
京都大学経済学部卒、あずさ監査法⼈にてIPO準備や銀⾏監査に従事。
起業後、公認会計⼠・税理⼠として、上場企業役員、IPO、M&A、企業再⽣、社外CFOなどを通じて600社以上の事業に関わる。
公認会計士、 IPOコンサルタント、社外役員として計4度の上場を経験。
株式会社i-plug社外役員、株式会社NATTY SWANKY社外役員。
成長スピードの早い企業におけるKPIマネジメントやファイナンス、上場準備や上場後の予算管理精度の高度化といった経験を踏まえ、KPIのスペシャリストとして、日本初のKPIマネジメント特化SaaS「Scale Cloud」の開発・提供やコンサルティングに注力。
従来のマネジメント手法を飛躍的に進化させ、企業の事業拡大に貢献中。
講演実績
株式会社セールスフォース・ドットコム、株式会社ストライク、株式会社プロネクサス、株式会社i-plug、株式会社識学、株式会社ZUU、株式会社あしたのチーム、ジャフコグループ株式会社、トビラシステムズ株式会社、株式会社琉球アスティーダスポーツクラブなどの主催セミナー、日本スタートアップ支援協会などの経営者団体、HRカンファレンスなどのカンファレンス、関西フューチャーサミットなどのスタートアップイベントなどにおける講演やピッチも実績多数。
論文
特許
「組織の経営指標情報を、経営判断に関する項目に細分化し、項目同士の関連性を見つけて順位付けし、経営に重要な項目を見つけ出せる経営支援システム」(特許第6842627号)
アクセラレーションプログラム
OIH(大阪イノベーションハブ)を拠点として、有限責任監査法人トーマツ大阪事務所が運営するシードアクセラレーションプログラム「OSAP」採択。